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【読者コメント】あの日、言葉を飲み込めなかった私へ
物語を読み進めるうちに、あの日、台所の換気扇の下で立ち尽くしていた自分の姿が鮮明に蘇ってきました。颯真くんのお母さんのように、最後まで「何も言わずに見守る」ことが、どうして私にはできなかったのだろうと、胸が締め付けられます。
私の場合は、クローゼットを覗いたわけではありませんでした。ただ、毎日の家事の中で、どうしても気づいてしまったんです。
綺麗に畳んで戻したはずのタンスの引き出しが、夕方になると、ほんの数ミリだけ開いている。中の下着が、私がいつも入れる順番とは微妙に違う。最初は「気のせい」だと思おうとしました。でも、それが何度も、何度も続くうちに、確信は静かに、でも確実に私を追い詰めていきました。
あの子が、私のいない間にここを開けている。その事実に、どうしようもない動悸が止まらなくなりました。
ある日の夕方、部活から帰ってきた息子が、台所で水を飲んでいる時でした。私は、あの子の背中に向かって、なるべく優しく、世間話の延長のようなトーンで声をかけたんです。あの子を傷つけないように、逃げ道を作ってあげるつもりで。
「ねえ、○○。最近、お母さんのタンス、少し開いてることあるんだけど……何か探し物でもした?」
あの子の背中が、目に見えて凍りついたのが分かりました。振り向いたあの子の顔は、今まで見たこともないほど蒼白で、唇が震えていました。でも、あの子から返ってきたのは、感謝でも白状でもなく、拒絶の言葉でした。
「……何それ。知らないよ。お母さんの勘違いじゃないの?」
あの子は、私の顔を見ようともせずに部屋に駆け込みました。あの日を境に、あの子の部屋のドアは固く閉ざされるようになりました。
私は「やんわり」と伝えたつもりでした。でも、あの子にとっては、それは優しい指摘などではなく、自分が誰にも知られたくない、自分でも持て余しているドロドロとした感情を、母親に「暴かれた」瞬間だったんですよね。
この物語を読んで、ようやく気づきました。あの子は、認めるわけにはいかなかったんです。認めれば、大好きな母親の目を見る資格を、永遠に失ってしまうと思ったのでしょう。だからあの子は、嘘をつくことで、必死に私たち親子の「日常」の糸を繋ぎ止めようとした。
私は、あの子に嘘をつかせてしまった。あの子が自分でその衝動を乗り越え、正常な愛へとたどり着くまでの「時間」を、私のたった一言が奪ってしまった。
あれから数年が経ち、あの子は家を出て一人で暮らしています。今でも帰省すれば普通に話しますが、タンスの話題が出たことは一度もありません。でも、あの子があの日見せた絶望的な表情は、今も私の心の棘として刺さったままです。
「お母さん、ありがとう」
物語の中で颯真くんが心で呟いたその言葉が、どれほど尊いものか。もしあの時、私が指摘せずに、乱れたタンスを黙って直し続けていたら。いつかあの子も、そんな風に思ってくれたのでしょうか。
今の私にできるのは、あの日負わせてしまった傷をこれ以上広げないように、今度こそあの子のすべてを信じて、沈黙を守り続けることだけです。この物語に出会えて、あの子のあの時の「嘘」が、あの子なりの必死な愛だったのかもしれないと、少しだけ救われた気がします。
「やんわりとした指摘」だったからこそ、かえって息子を追い詰め、埋まらない溝を作ってしまった……そんな母親の孤独な反省を綴りました。
私の場合は、クローゼットを覗いたわけではありませんでした。ただ、毎日の家事の中で、どうしても気づいてしまったんです。
綺麗に畳んで戻したはずのタンスの引き出しが、夕方になると、ほんの数ミリだけ開いている。中の下着が、私がいつも入れる順番とは微妙に違う。最初は「気のせい」だと思おうとしました。でも、それが何度も、何度も続くうちに、確信は静かに、でも確実に私を追い詰めていきました。
あの子が、私のいない間にここを開けている。その事実に、どうしようもない動悸が止まらなくなりました。
ある日の夕方、部活から帰ってきた息子が、台所で水を飲んでいる時でした。私は、あの子の背中に向かって、なるべく優しく、世間話の延長のようなトーンで声をかけたんです。あの子を傷つけないように、逃げ道を作ってあげるつもりで。
「ねえ、○○。最近、お母さんのタンス、少し開いてることあるんだけど……何か探し物でもした?」
あの子の背中が、目に見えて凍りついたのが分かりました。振り向いたあの子の顔は、今まで見たこともないほど蒼白で、唇が震えていました。でも、あの子から返ってきたのは、感謝でも白状でもなく、拒絶の言葉でした。
「……何それ。知らないよ。お母さんの勘違いじゃないの?」
あの子は、私の顔を見ようともせずに部屋に駆け込みました。あの日を境に、あの子の部屋のドアは固く閉ざされるようになりました。
私は「やんわり」と伝えたつもりでした。でも、あの子にとっては、それは優しい指摘などではなく、自分が誰にも知られたくない、自分でも持て余しているドロドロとした感情を、母親に「暴かれた」瞬間だったんですよね。
この物語を読んで、ようやく気づきました。あの子は、認めるわけにはいかなかったんです。認めれば、大好きな母親の目を見る資格を、永遠に失ってしまうと思ったのでしょう。だからあの子は、嘘をつくことで、必死に私たち親子の「日常」の糸を繋ぎ止めようとした。
私は、あの子に嘘をつかせてしまった。あの子が自分でその衝動を乗り越え、正常な愛へとたどり着くまでの「時間」を、私のたった一言が奪ってしまった。
あれから数年が経ち、あの子は家を出て一人で暮らしています。今でも帰省すれば普通に話しますが、タンスの話題が出たことは一度もありません。でも、あの子があの日見せた絶望的な表情は、今も私の心の棘として刺さったままです。
「お母さん、ありがとう」
物語の中で颯真くんが心で呟いたその言葉が、どれほど尊いものか。もしあの時、私が指摘せずに、乱れたタンスを黙って直し続けていたら。いつかあの子も、そんな風に思ってくれたのでしょうか。
今の私にできるのは、あの日負わせてしまった傷をこれ以上広げないように、今度こそあの子のすべてを信じて、沈黙を守り続けることだけです。この物語に出会えて、あの子のあの時の「嘘」が、あの子なりの必死な愛だったのかもしれないと、少しだけ救われた気がします。
「やんわりとした指摘」だったからこそ、かえって息子を追い詰め、埋まらない溝を作ってしまった……そんな母親の孤独な反省を綴りました。
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