母の下着 タンスと洗濯籠の秘密

MisakiNonagase

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【読者コメント】語られなかった「拒絶」と、消えた下着の記憶

読みながら、あの頃の自分の指先に残っていた布の感触と、それを失った瞬間の凍りつくような感覚が鮮明に蘇ってきました。

​僕も颯真くんと同じでした。中学から高校にかけて、母の下着に触れ、自室に持ち出すことが止められなくなっていました。自分でも「狂っている」と分かっているのに、母が買い物に出かける足音を聞くと、磁石に吸い寄せられるようにタンスへ向かってしまう。

​僕は完璧に隠せていると思っていました。ミリ単位で引き出しの位置を戻し、シワ一つないように畳み直す。その「完璧な工作」こそが、母との唯一の繋がりであるかのように錯覚していたんです。

​でもある日、突然その「繋がり」が断たれました。

いつものように家族が不在の隙を突いてタンスを開けると、そこには、昨日まであったはずのものが、何一つなかったんです。

古いものも、新しいものも、レースのものも。母の下着だけが、その引き出しから完全に消えていました。

​洗濯籠を確認しても、そこには父と僕ら兄弟のものだけ。翌日も、その翌日も、母の下着が家の中から消えました。

​その時、悟ったんです。「ああ、気づかれていたんだ」と。

母は、僕を問い詰めることも、叱ることも、泣いてすがることも選びませんでした。ただ、僕の手が届かない場所へ、自分自身の尊厳をすべて隠してしまった。

​それは、颯真くんのお母さんのような「見守る沈黙」ではなく、僕という存在への「静かな拒絶」だったのだと思います。

​その後、母はどこに下着を隠したのか、僕には分かりません。自分の部屋に鍵をかけたのか、別の場所に保管したのか。ただ、家のどこを探しても見つからなくなったその日から、僕たちの間に流れる空気は変わってしまいました。

​母はいつも通りに朝ごはんを作り、いつも通りに「いってらっしゃい」と言いました。でも、その瞳が僕を映すとき、そこには拭いきれない「警戒」と「不信」が潜んでいるように見えて仕方がありませんでした。

僕は、母に「触れてはいけないもの」として扱われるようになった。そのことが、どんな罵倒を浴びせられるよりも辛く、自分という人間が底なしの沼に沈んでいくような感覚でした。

​物語の颯真くんが、彩花さんとの出会いを通じて過去を許され、お母さんに感謝する姿が、本当に羨ましいです。

僕にとって、あの出来事は「感謝」ではなく、今も癒えることのない「断絶」の記憶です。母は僕を裁かなかったけれど、僕との間に、一生消えない境界線を引いたのです。

​今、僕は自立して別の場所で暮らしていますが、母と会うたびに、あの空になった引き出しの白さを思い出します。

もしあの時、僕がもっと早く踏みとどまっていれば。あるいは、母がもう少しだけ僕の「未熟さ」を信じて、物語のように黙って元の場所に戻し続けてくれていたら。「沈黙」が救いになるか、それとも拒絶になるか。

それは、どれほど薄い氷の上を歩くような、危うい親子関係だったのだろうかと、今更ながらに震えています。
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