【改訂版アップ】10日間の異世界旅行~帰れなくなった二人の異世界冒険譚~

ばいむ

文字の大きさ
3 / 430
第一部 観光気分の異世界旅行

3. 異世界1日目 異世界へやってきた

しおりを挟む
 一瞬まぶしさを感じて目を閉じたんだが、目を開けるとまた違う世界が広がっていた。

 目に飛び込んできたのは緑の葉の茂った木々だった。木々が多いのでまさか森の中かと思ったが、森にしては木々の間隔も広いし、その向こうに建物も見えるので公園みたいなところなのかもしれない。地面は芝生のようなものが植わっていて、その上に転移されたという感じだ。とりあえず森の中に転送されていきなり何かに襲われると言うことはなさそうでほっとする。
 気温はちょっと寒いと感じるくらいで、基本的な気候が違うかもしれないし、季節があるのか分からないが、日本の感覚で言うと春か秋くらいの感じだ。広葉樹っぽい葉の状態からすると春なのかな?世界が違うと言っても全く異世界という雰囲気ではないのでちょっと安心だ。
 呼吸をした感じも違和感がないし、ちょっとしゃべった感じでもおかしなところはなさそうだ。空気の組成はあまり変わらないと考えていいのかもしれない。


 木々の間を抜けると石畳の歩道のようなところがあり、散歩している人たちの姿も見えるので、とりあえず見える範囲では平和そうだ。治安とかが悪ければこんなにのんびりはしていないだろう。公園のようなところがあると言うことは文明としてもある程度成熟していると考えていいかもしれない。

 せっかくの異世界といっても分からないことだらけだからまずは慎重に行動しないといけないよね。よく分からなくて動き回ってトラブルに巻き込まれるとかしたくないし。とりあえず近くにあったベンチのようなところに座って今の状況を確認してみる。


 服は木綿か何かで作られものみたいなので着心地にあまり違和感はない。装備を兼ねているのか、厚手のシャツも上に着ている。下着も現地の物になっているんだが、これにはゴムのようなものも使われているのでそれほど大きな違和感は見当たらない。下着はトランクスが普通なのかな?ブリーフがあるのか分からないけど。

 腰の革のようなベルトには短剣が下がっているが、銃刀法違反とかはないよね?あとは厚手の布で作られたようなリュックの中に着替えやコンタクト関係(洗浄液の入れ物は現地のものに変わっている感じ)と眼鏡ケース、携帯食らしき食べ物、水筒、巾着のような財布の中にお金が少々。細かいところは宿とかとって部屋で見た方がいいだろう。さすがにすべての荷物をここで広げるわけにもいかない。
 とりあえず眼鏡がこの世界で一般的なのか分からないのでコンタクトに変えておく。とりあえずは2週間用が10枚あるので十分だろう。洗浄液も十分あるので大丈夫だと思いたい。

 お金・・・は、なんなんだろう?財布に入っているのでこれがお金だと思うんだが・・・。赤い500円硬貨くらいのものなんだが、何も描かれていない。5万ドールと言っていたからこれが50枚あるので1枚が1000ドールってことか?区別はどうやってするんだろうか?

 それと身分証明のようなプラスチックのようなカードが一枚。名前とかが書かれているので何かの時にはこれを見せればいいのかな?

 あとは事前に聞いていた手帳サイズのガイド本で、最初のページには残りの滞在時間が記載されている。頭から年、日、時間、分、秒かな?もとの世界の時間で記載されているので、こっちの時間とずれがあるのか確認しやすいな。とりあえずざっくりと読んでみよう。ちなみに書かれているのは日本語だ。

 ガイド本は本人しか読むことができないらしく、他の人には差し障りのない内容が書かれているただの本という認識になるようだ。本はかなり薄いんだが、中のページは見た目以上のページとなっている不思議仕様だ。タブレットでページをめくるような感じと言った方がいいかもしれない。
 正直これの原理については説明しようがないな。異世界に転移させられたときのためにササミさんがいたあの世界で作られたものなのだろう。こればかりは正直理解することは不可能だ。


 地図の項を見るといくつかの手法で書かれた世界地図のようなものと国名が記載されていた。世界地図の形状から考えると平たい大地があるのではなく、地球と同じような感じみたい。
 ただこれがここでどのように認識されているかはまだ分からない。天動説や地動説もよく分からないし、場合によっては異端者扱いされる可能性もある。はっきりとわかるまではこの話題はしない方がいいだろう。

 天体の名前はライハンドリアとなっている。大陸はイメージで言うと、ユーラシア大陸、アフリカ大陸、北アメリカ大陸、南アメリカ大陸という感じだ。
 自分がいるのはそのうちのユーラシア大陸にあたるホクサイ大陸の中国のあたりにあたるヤーマンという国だ。現在いるのはこの国の首都であるサクラではないが、首都の南西にある大きな町のアーマトというところのようだ。

 各大陸に大小複数の国が存在しており、過去に統一されたことはないようだ。統治機構は国王を中心とした君主制や支配者層の議会制、市民を含めて民主制など国によっていろいろあるようだが、君主制の国の方が多い感じだ。戦争に対する備えもあると思うが、魔獣に対抗するためにどこの国もそれなりの兵力を有しているようだ。

 ヤーマン国は国王がいるが、国王が治めている地域を含めて5つの州に分かれており、国王が絶対権力を持っているわけではなく、5つの領主のリーダーという立ち位置のようである。それぞれの領地でさらに細分化されてそれぞれ行政官が管理をしているようだ。
 支配者層との身分差はそれほど大きくないらしいのでまだ大丈夫かもしれない。正直貴族とかいたらどのような態度をとればいいのか分からないよ。不敬罪とかで死刑になったらしゃれにならない。
 このあたりは簡単な概略しか書いていないのでこれ以上はわからないが、10日間だったらそこまで意識することはないだろう。


 食べ物についてみてみると、米やパンや麺類もあり、食にこだわっているようなことも書かれているので食事については心配なさそうである。異世界もの小説で食べ物が美味しくないというのは定番だが、その心配はなさそうだ。これについてはお店に行って確認した方がいいかな。


 あとは科学的な機器ではないが、魔法で動く機器があってそれで代用されているみたい。乗り物に関しても魔法の乗り物が出回っているようだが、列車や飛行機などの大量輸送向けは魔獣のせいでほとんど普及していないようだ。とりあえず異世界ものでよくある中世ヨーロッパが舞台の馬車という感じではないようだな。
 確かに説明されたように文明のレベルはもとの世界とあまり差がないような気もする。大量輸送向けの規模のものがないだけで飛行機のように空を飛ぶための魔道具もあるみたいだしね。


 魔法について読んでみると、世界には魔素と言われるものが漂っており、この魔素が魔法の基本となるらしい。
 また魔獣と言われる生き物はある程度の時間がたつと魔素が固まり生まれてくるらしい。なんかゲームのポップアップみたいだな。一度形になった魔獣は同族と子供を作ることもできるようなので、最初の生まれ方は違うけど動物と同じような感じだな。魔素が濃ければ濃いほど強い魔獣が生まれるようだ。
 その魔獣を倒すと得られる魔素の固まった魔獣石がお金に使っている硬貨である。・・・って、お金って作っていなくて魔獣が落としたものを使っているの?
 この魔獣石を持っているものが魔獣と言われる生き物で、魔獣ではない普通の動物もいるらしい。ただ大体が魔獣の餌になってしまうようだが・・・。魔獣石を持っている生き物はどちらかというと好戦的なようである。


 魔獣の討伐に関しての統制を行っているところがあるみたいなのでとりあえず情報を収集してから見てみるのもありかもしれない。まあ今あるお金だけで10日間は生活できそうだけど、せっかくだから異世界らしいことも味わってみたいからね。一番はやっぱり魔法か?


 能力についての記載を見ると、ゲームのようなレベルという概念はないようだ。レベルを上げて身体能力を上げると言うことはできないため、普通に訓練とか勉強で能力を高めていくしかないようである。
 武器や魔法などの扱いに慣れたり、知識を得たりするとスキルを取得することができ、さらに複数のスキルを伸ばしていくことでそのスキルにあったクラスといわれる職業が与えられるようだ。クラスがもらえるとそのクラスにあった身体能力に補正がかかるみたいだ。身体能力の上昇は自分で普通に鍛える他はこのクラスの取得くらいのようだ。

 所詮10日しかいない世界なのであまり詳しく知ってもしょうがないからまあこんなものか。そこまで危険はなさそうだし、まずは町の中を散策してみるかな?


~備考~
 あくまで現地の言葉の表記を日本語に読み替えているという前提ですので、単語の意味はジュンイチの主観での翻訳と言うことで理解してください。日本語と同じく、同じものでも複数の書き方で記載されているものもありますが、下のように表記は統一しています。
 鍛冶製作所、武器防具屋、装備販売所 → 鍛冶屋
 集合宿泊所、宿屋、宿泊施設、ホテル → 宿屋
しおりを挟む
感想 49

あなたにおすすめの小説

異世界生活〜異世界に飛ばされても生活水準は変えません〜 番外編『旅日記』

アーエル
ファンタジー
カクヨムさん→小説家になろうさんで連載(完結済)していた 【 異世界生活〜異世界に飛ばされても生活水準は変えません〜 】の番外編です。 カクヨム版の 分割投稿となりますので 一話が長かったり短かったりしています。

スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~

深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】 異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!

おいでよ!死にゲーの森~異世界転生したら地獄のような死にゲーファンタジー世界だったが俺のステータスとスキルだけがスローライフゲーム仕様

あけちともあき
ファンタジー
上澄タマルは過労死した。 死に際にスローライフを夢見た彼が目覚めた時、そこはファンタジー世界だった。 「異世界転生……!? 俺のスローライフの夢が叶うのか!」 だが、その世界はダークファンタジーばりばり。 人々が争い、魔が跳梁跋扈し、天はかき曇り地は荒れ果て、死と滅びがすぐ隣りにあるような地獄だった。 こんな世界でタマルが手にしたスキルは、スローライフ。 あらゆる環境でスローライフを敢行するためのスキルである。 ダンジョンを採掘して素材を得、毒沼を干拓して畑にし、モンスターを捕獲して飼いならす。 死にゲー世界よ、これがほんわかスローライフの力だ! タマルを異世界に呼び込んだ謎の神ヌキチータ。 様々な道具を売ってくれ、何でも買い取ってくれる怪しい双子の魔人が経営する店。 世界の異形をコレクションし、タマルのゲットしたモンスターやアイテムたちを寄付できる博物館。 地獄のような世界をスローライフで侵食しながら、タマルのドキドキワクワクの日常が始まる。

駆け落ち男女の気ままな異世界スローライフ

壬黎ハルキ
ファンタジー
それは、少年が高校を卒業した直後のことだった。 幼なじみでお嬢様な少女から、夕暮れの公園のど真ん中で叫ばれた。 「知らない御曹司と結婚するなんて絶対イヤ! このまま世界の果てまで逃げたいわ!」 泣きじゃくる彼女に、彼は言った。 「俺、これから異世界に移住するんだけど、良かったら一緒に来る?」 「行くわ! ついでに私の全部をアンタにあげる! 一生大事にしなさいよね!」 そんな感じで駆け落ちした二人が、異世界でのんびりと暮らしていく物語。 ※2019年10月、完結しました。 ※小説家になろう、カクヨムにも公開しています。

異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた

りゅう
ファンタジー
 異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。  いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。  その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。

キャンピングカーで走ってるだけで異世界が平和になるそうです~万物生成系チートスキルを添えて~

サメのおでこ
ファンタジー
手違いだったのだ。もしくは事故。 ヒトと魔族が今日もドンパチやっている世界。行方不明の勇者を捜す使命を帯びて……訂正、押しつけられて召喚された俺は、スキル≪物質変換≫の使い手だ。 木を鉄に、紙を鋼に、雪をオムライスに――あらゆる物質を望むがままに変換してのけるこのスキルは、しかし何故か召喚師から「役立たずのド三流」と罵られる。その挙げ句、人界の果てへと魔法で追放される有り様。 そんな俺は、≪物質変換≫でもって生き延びるための武器を生み出そうとして――キャンピングカーを創ってしまう。 もう一度言う。 手違いだったのだ。もしくは事故。 出来てしまったキャンピングカーで、渋々出発する俺。だが、実はこの平和なクルマには俺自身も知らない途方もない力が隠されていた! そんな俺とキャンピングカーに、ある願いを託す人々が現れて―― ※本作は他サイトでも掲載しています

スマホアプリで衣食住確保の異世界スローライフ 〜面倒なことは避けたいのに怖いものなしのスライムと弱気なドラゴンと一緒だとそうもいかず〜

もーりんもも
ファンタジー
命より大事なスマホを拾おうとして命を落とした俺、武田義経。 ああ死んだと思った瞬間、俺はスマホの神様に祈った。スマホのために命を落としたんだから、お慈悲を! 目を開けると、俺は異世界に救世主として召喚されていた。それなのに俺のステータスは平均よりやや上といった程度。 スキル欄には見覚えのある虫眼鏡アイコンが。だが異世界人にはただの丸印に見えたらしい。 何やら漂う失望感。結局、救世主ではなく、ただの用無しと認定され、宮殿の使用人という身分に。 やれやれ。スキル欄の虫眼鏡をタップすると検索バーが出た。 「ご飯」と検索すると、見慣れたアプリがずらずらと! アプリがダウンロードできるんだ! ヤバくない? 不便な異世界だけど、楽してダラダラ生きていこう――そう思っていた矢先、命を狙われ国を出ることに。 ひょんなことから知り合った老婆のお陰でなんとか逃げ出したけど、気がつけば、いつの間にかスライムやらドラゴンやらに囲まれて、どんどん不本意な方向へ……。   2025/04/04-06 HOTランキング1位をいただきました! 応援ありがとうございます!

レベルアップは異世界がおすすめ!

まったりー
ファンタジー
レベルの上がらない世界にダンジョンが出現し、誰もが装備や技術を鍛えて攻略していました。 そんな中、異世界ではレベルが上がることを記憶で知っていた主人公は、手芸スキルと言う生産スキルで異世界に行ける手段を作り、自分たちだけレベルを上げてダンジョンに挑むお話です。

処理中です...