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第一部 観光気分の異世界旅行
7. 異世界3日目 初めての魔獣狩りはスライムから
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疲れているのか目覚ましが鳴ってもなかなか起きることができなかった。さすがに筋肉痛でしゃれにならないので最初にもらっていた治療薬を飲むことにする。もったいないかもしれないけど、そうそう使うことも無いと思うしね。
回復薬と治療薬があるけど、回復は病気とか毒の治療なので筋肉痛は治療薬の方かな?とりあえず初級治療薬を飲んでみると一気に体が軽くなった。すごいな。
朝食は昨日とほとんど同じメニューだ。ハムがソーセージになったくらいか?準備をしてから今日も役場へと向かう。
まずは魔獣について書かれたファイルを読んでみることにした。書かれているのは町の周りの簡単な魔獣の出現マップ、魔獣の生態、素材に利用されている部位の説明などである。
もともと魔素は場所によって一定ではなく、魔素ができるだけ少ないところに町が作られている。そして魔獣を狩っていくと徐々に魔素が薄くなっていき、魔獣が出現しにくくなるようだ。ある程度古い町は人の活動で魔素が消費されていることもあるが、長年の魔獣の討伐により出現することがほぼゼロとなっているらしい。
町から離れれば離れるほど魔素が濃い地域であることと、魔獣討伐の頻度が少ないことから魔獣が強くなっていくことになる。魔獣を狩ることをやめるとまた魔素が濃くなっていくので、少しでも魔獣を多く倒すことが町の維持に必要となる。
あたらしい町を造るには数年から数十年単位で魔獣を討伐していかなければならないため、かなりの労力が必要となるみたい。空いている土地だからと言ってすぐに町ができるわけではないんだね。今残っている土地はある程度魔素が濃い場所ってことだからね。
街道についてもできるだけ魔素が少ないエリアを通るように造られているため結構迂回しているところもあるらしい。街道沿いも定期的に魔獣の討伐が行われているので出現しにくくはなっているようだ。
町から近い魔獣で注意しなければならないのは狼のような群れで行動する魔獣らしい。一匹一匹が弱くても数の暴力は驚異のようだ。ある程度狩られてはいるのだが、やはり行動範囲も広いので追いつかないようだ。
注意点として書かれているのは魔獣の上位種への進化である。魔獣は魔獣や人間と戦って経験を積んだり、同族を体内に取り込んだりすることで進化することがあり、その場合はその地域に現れる魔獣より格上の魔獣となるので気をつけないといけないようだ。
特に危ないのは、同種の魔獣を瀕死状態で複数放置しておくと意思が統合されて短時間で進化してしまう場合があることだ。このため、魔獣討伐の際にはできるだけきちんととどめを刺すことが重要と書かれていた。
これを怠って被害が出るようなことになった場合はかなりの厳罰が下されるようだ。まあそれ以前に死んでしまっている可能性が高いけど。
異世界体験として魔獣を倒してみたいので、まずは自分でも倒せそうなスライムの討伐を行うことにした。注意すれば普通のスライムであれば初心者でも十分倒せると書いているしね。上位種になると初心者にはかなり厳しくなるらしい。毒とかもあるようだからね。
持っている武器は短剣だけなので、まずは鍛冶屋に行って剣を購入することにした。もちろんそんなにお金があるわけではないが、最低限の攻撃力はいるだろう。
鍛冶屋は主に町の東の方に固まっているんだが、扱っているものが店によって結構異なっている。その店で作っているところもあれば販売のみしているところもある。鍛冶というとドワーフのイメージなんだが、特にそういうわけではないようだ。
昨日訓練を一緒に受けた人たちから「最初に装備をそろえるならここが一番いいよ。」と言われたところは鍛冶屋・ドルンというお店だった。町の外れの方にあるんだが、自分で作成した装備を売っているお店で特に剣類が充実しているらしい。
店構えは雑貨屋という感じで鍛冶屋という感じではないんだが、中に入ると武器や防具が整然と並べられて売られていた。店頭に武器とか展示しているところが多いんだけど、ここは看板があるだけなので知らないとわからないような気がする。
もちろん新品だけでなく中古品も扱っており、値段もピンキリだ。ただ数が多すぎてどれを買えばいいのか正直わからない。まあ今まで触れたことがないのでわからなくて当然なんだけど・・・。とりあえず店員に聞いてみるしかない。
「すみません、ほんとに初心者なんですが、おすすめの剣とか防具ってありますか?」
するといくつか異なる大きさの剣を渡されて振ってみるように言われる。昨日習ったようにいくつか剣を振ってみると、大きさや形状によって感じが違っていた。
剣を振るときの動きを見てもらい、刃渡り50cmくらいの片手剣ということになった。まだ筋力がないのでこのくらいにした方がよいとのことだった。筋力がつけば片手で扱って盾を持てばいいが、それまでは盾なしで両手を使った方がよいと言われる。
予算を伝えると、新品ならこのあたり、中古ならこのあたりと低レベルのものを薦められる。初心者であればまだどのような武器がいいのかもきっちり決まってないからそれが決まるまでは下手にいい武器を買ってももったいないだけと説明される。
あと中古品でもいきなり壊れると言うことはないし、手入れもきちんとしているので新品と比べて極端に性能が落ちるわけではないようだ。
ちなみに装備品にはその品質や付与魔法によってグレードがあり、低、並、高、良、優、特と6段階となっている。初心者であれば低グレードの中古品でも十分だということらしい。
まずは形などからいくつかの候補を選んで、軽く振って一番しっくりくる鉄の剣を購入することにした。低グレードの中古品とはいえ、価格は4,000ドールだった。
防具関係については厚手のシャツはあるのでいいが、少なくともグローブやブーツ、帽子はあった方がいいと言われこちらも購入することにした。こっちはサイズがちょうどいい中古もなかったので新品を購入することとなったが、併せて5,000ドールと結構な出費となってしまった。
おまけで武器や防具の手入れ道具をつけてくれたので手入れ方法についても簡単に聞いておいた。特に武器については毎日手入れをしないとまずいらしい。鉄や銅などは錆びてくるし、皮も固くなってくるので手入れをするかしないかで装備の寿命が断然違ってくるようだ。買い換えるにしても下取り価格がかなり変わってくるようだ。
もちろんもっと安いものでもいいんだが、予算的に余裕があるならこの程度のものは身につけておいた方がよいと薦められたものである。まあ最初に予算も10,000ドールくらいと言っていたのでそれに合わせてくれたんだろうけどね。
昨日行ったお店だと20,000ドールくらいと言われていたのでやはりこっちの店に来て正解だったかもしれない。まあ新品やもっとグレードの高いものの価格だったかもしれないけどね。ここでは今後の装備の買い方とかもいろいろと教えてくれたのでよかったと思う。
回復薬などは最初にもらっているものが使えるので、あとは屋台でお昼用のサンドイッチを購入してから門へと向かう。
出入り口には門番が立っており、入るときには身分を証明するものを提示しなければならないことになっているが、出るときは通常チェックはない。なにか事件があったときは出るときにもチェックが入るようだけどね。
町を出てから農地を過ぎて、さらに歩いたところにある林のようなところへとやってきた。このあたりはスライムなど弱い魔獣が多いというエリアらしい。命に関わるほどの魔獣はほぼ出ないらしいが、気をつけないと行けない。木の上からいきなり襲われないように確認しながら、林の中を進んでいく。
しばらく歩いていると茂みの奥になにやらぷよぷよしたものがいた。どうやらこれがスライムのようだ。某ゲームのようにまんじゅうのような形ではなく泡のスライムみたいだな。
直径は1mくらいに広がっており、厚さは10cmくらいという感じだ。色は緑色で、真ん中付近に核と言われる黒っぽい丸い玉のようなものがある。これを攻撃すればいいのだろう。動きは遅いので慎重に核部分を攻撃すれば良いので早速斬りかかってみる。
「ズバッ」
という爽快な音ではなく、「グシャ」というような潰れた音とともに、地面まで剣を立ててしまった衝撃で腕がしびれる。まずい・・・。手のしびれはまだいいんだが、剣は・・・。とりあえず刃こぼれ等はなかったようだ。よかった。しかし初めての戦闘にしては悲しい結果である。
核を破壊されたスライムは死んだみたいで、核の残骸のようなものの中から黒い小さな硬貨がでてきた。スライム1匹だと1ドールか?ゲームだったら「経験値1と1ゴールドを手に入れた!」とかいう説明が出そうだな。まあ一番弱い魔獣らしいのでおそらく魔素量は1くらいだろう。
スライムは残念ながら買い取り対象はないので得られる報酬はこの魔獣石のみである。もう少し上位のスライムになると体液が利用できるものがあるらしい。まあきれいな体液の回収が必要になるのでそれはそれで大変そうだけどね。
このあとはゴルフのスイングのように剣を使ってスライムを倒していく。正直棍棒のようなもので潰していった方が効率はいいのかもしれないが、まあ気分の問題だ。
ゲームだったら最初は木の棒や竹の槍とか棍棒から始めるんだろうけどねえ・・・。親の影響でやった最初のゲームは勇者と竜王の出てくるものだったが、檜の棒から棍棒、銅の剣、鉄の剣とかいう感じだったなあ。いきなり鉄の剣というのは贅沢すぎだね。
このエリアは魔獣がそんなに頻繁にいるわけではないので数を狩るのは難しい。途中で兎のような角兎を発見するが、襲ってくるわけでもなく逃げていくので狩ることはできなかった。魔獣すべてが好戦的ではないようだ。魔獣と言っても動物と一緒なのかもしれない。角兎を倒すには遠距離攻撃ができないと無理そうだな。
途中で買ってきたサンドイッチを食べておなかを満足させ、スライムを30匹狩ったところで今日は終了することにした。手に入れた魔獣石は30枚で、おそらく30ドール少々だろう。どう考えても小遣いレベルだ。それでも3時間近く歩き続けていたので結構疲れてきている。しかも手が豆だらけで痛い。
さすがにこのままだとつらいので初級治療薬を使うことにした。朝は飲んだんだが、今回は手のひらにかけてみると早送りのように傷が治っていった。自己治癒能力を高める効果なのかな?おかげで手のひらのまめはキレイに直ってくれた。うーん、魔法万歳!
町の入り口には少し行列ができているが、最初に町に入るときに一緒に発行してもらう滞在カードを持っている人たちの通る入り口はほとんど行列がない。バッグの中にはこの滞在カードもあったので、身分証明証と滞在カードの確認だけですぐに通り抜けられた。大きな荷物の時はだめみたいだけどね。
この滞在カードは1ヶ月に一回役場で更新しなければならないので面倒なんだが、毎回入口でチェックを受けるよりは楽なのでみんな更新は行っているようだ。まあ外に出ない人は用事ができたときに更新しているみたいだけどね。
このあと宿に戻り、装備の手入れをする。まあ今回はスライムだけだったのでそこまでいたんでいるような感じはないが、言われたとおり磨いておくことにした。
夕食の時間になったところで食堂に行くと、今日はミートソースパスタという感じのものだった。味も普通なので食事に関してはほぼ不満はない。
食事の後にシャワーを浴びてから部屋に戻る。宿に関してはいろいろと聞いてここよりも安そうなところや高そうなところを確認しているのでこのあとそれぞれ泊まっていくことにしよう。高級宿に泊まるのは最終日だな。さて、明日は魔法の鍛錬だ。楽しみ・・・。さすがに疲れたのか、今日も速攻で眠りに落ちていった。
~装備~
ジュンイチの装備:鉄の短剣、鉄の剣(低)、厚手のシャツ、厚手のズボン、皮の籠手(低)、皮の帽子(低)、皮のブーツ(低)
~魔獣紹介~
スライム:
初階位下位の魔獣。草原、森、岩場などあらゆる場所に生息する。緑色の液体のような体を持ち、中央に黒い核が見える。動物や魔獣の死体などを食料とし、消化液で溶かしながら吸収する。
自ら襲ってくることはほとんどないが、攻撃されると反撃してくることがある。ただし動きが遅いため攻撃力はほとんど無いと考えてよい。木の上などから落ちてくることもあり、顔を覆われると窒息死してしまうこともあるのでその点は注意が必要。
スライムの口から出される消化液は炎症を起こすため、体にかかった場合はすぐに洗い流した方がよい。このため洗い流すための水は持っていた方がいいだろう。大きなスライムほど消化液の威力が強くなるため注意が必要。
体の中央にある核を攻撃することで倒すことができるが、体内の核は動かすことができるため、棍棒などの大きな武器で倒す方が有効である。
素材として買い取り対象はない。
回復薬と治療薬があるけど、回復は病気とか毒の治療なので筋肉痛は治療薬の方かな?とりあえず初級治療薬を飲んでみると一気に体が軽くなった。すごいな。
朝食は昨日とほとんど同じメニューだ。ハムがソーセージになったくらいか?準備をしてから今日も役場へと向かう。
まずは魔獣について書かれたファイルを読んでみることにした。書かれているのは町の周りの簡単な魔獣の出現マップ、魔獣の生態、素材に利用されている部位の説明などである。
もともと魔素は場所によって一定ではなく、魔素ができるだけ少ないところに町が作られている。そして魔獣を狩っていくと徐々に魔素が薄くなっていき、魔獣が出現しにくくなるようだ。ある程度古い町は人の活動で魔素が消費されていることもあるが、長年の魔獣の討伐により出現することがほぼゼロとなっているらしい。
町から離れれば離れるほど魔素が濃い地域であることと、魔獣討伐の頻度が少ないことから魔獣が強くなっていくことになる。魔獣を狩ることをやめるとまた魔素が濃くなっていくので、少しでも魔獣を多く倒すことが町の維持に必要となる。
あたらしい町を造るには数年から数十年単位で魔獣を討伐していかなければならないため、かなりの労力が必要となるみたい。空いている土地だからと言ってすぐに町ができるわけではないんだね。今残っている土地はある程度魔素が濃い場所ってことだからね。
街道についてもできるだけ魔素が少ないエリアを通るように造られているため結構迂回しているところもあるらしい。街道沿いも定期的に魔獣の討伐が行われているので出現しにくくはなっているようだ。
町から近い魔獣で注意しなければならないのは狼のような群れで行動する魔獣らしい。一匹一匹が弱くても数の暴力は驚異のようだ。ある程度狩られてはいるのだが、やはり行動範囲も広いので追いつかないようだ。
注意点として書かれているのは魔獣の上位種への進化である。魔獣は魔獣や人間と戦って経験を積んだり、同族を体内に取り込んだりすることで進化することがあり、その場合はその地域に現れる魔獣より格上の魔獣となるので気をつけないといけないようだ。
特に危ないのは、同種の魔獣を瀕死状態で複数放置しておくと意思が統合されて短時間で進化してしまう場合があることだ。このため、魔獣討伐の際にはできるだけきちんととどめを刺すことが重要と書かれていた。
これを怠って被害が出るようなことになった場合はかなりの厳罰が下されるようだ。まあそれ以前に死んでしまっている可能性が高いけど。
異世界体験として魔獣を倒してみたいので、まずは自分でも倒せそうなスライムの討伐を行うことにした。注意すれば普通のスライムであれば初心者でも十分倒せると書いているしね。上位種になると初心者にはかなり厳しくなるらしい。毒とかもあるようだからね。
持っている武器は短剣だけなので、まずは鍛冶屋に行って剣を購入することにした。もちろんそんなにお金があるわけではないが、最低限の攻撃力はいるだろう。
鍛冶屋は主に町の東の方に固まっているんだが、扱っているものが店によって結構異なっている。その店で作っているところもあれば販売のみしているところもある。鍛冶というとドワーフのイメージなんだが、特にそういうわけではないようだ。
昨日訓練を一緒に受けた人たちから「最初に装備をそろえるならここが一番いいよ。」と言われたところは鍛冶屋・ドルンというお店だった。町の外れの方にあるんだが、自分で作成した装備を売っているお店で特に剣類が充実しているらしい。
店構えは雑貨屋という感じで鍛冶屋という感じではないんだが、中に入ると武器や防具が整然と並べられて売られていた。店頭に武器とか展示しているところが多いんだけど、ここは看板があるだけなので知らないとわからないような気がする。
もちろん新品だけでなく中古品も扱っており、値段もピンキリだ。ただ数が多すぎてどれを買えばいいのか正直わからない。まあ今まで触れたことがないのでわからなくて当然なんだけど・・・。とりあえず店員に聞いてみるしかない。
「すみません、ほんとに初心者なんですが、おすすめの剣とか防具ってありますか?」
するといくつか異なる大きさの剣を渡されて振ってみるように言われる。昨日習ったようにいくつか剣を振ってみると、大きさや形状によって感じが違っていた。
剣を振るときの動きを見てもらい、刃渡り50cmくらいの片手剣ということになった。まだ筋力がないのでこのくらいにした方がよいとのことだった。筋力がつけば片手で扱って盾を持てばいいが、それまでは盾なしで両手を使った方がよいと言われる。
予算を伝えると、新品ならこのあたり、中古ならこのあたりと低レベルのものを薦められる。初心者であればまだどのような武器がいいのかもきっちり決まってないからそれが決まるまでは下手にいい武器を買ってももったいないだけと説明される。
あと中古品でもいきなり壊れると言うことはないし、手入れもきちんとしているので新品と比べて極端に性能が落ちるわけではないようだ。
ちなみに装備品にはその品質や付与魔法によってグレードがあり、低、並、高、良、優、特と6段階となっている。初心者であれば低グレードの中古品でも十分だということらしい。
まずは形などからいくつかの候補を選んで、軽く振って一番しっくりくる鉄の剣を購入することにした。低グレードの中古品とはいえ、価格は4,000ドールだった。
防具関係については厚手のシャツはあるのでいいが、少なくともグローブやブーツ、帽子はあった方がいいと言われこちらも購入することにした。こっちはサイズがちょうどいい中古もなかったので新品を購入することとなったが、併せて5,000ドールと結構な出費となってしまった。
おまけで武器や防具の手入れ道具をつけてくれたので手入れ方法についても簡単に聞いておいた。特に武器については毎日手入れをしないとまずいらしい。鉄や銅などは錆びてくるし、皮も固くなってくるので手入れをするかしないかで装備の寿命が断然違ってくるようだ。買い換えるにしても下取り価格がかなり変わってくるようだ。
もちろんもっと安いものでもいいんだが、予算的に余裕があるならこの程度のものは身につけておいた方がよいと薦められたものである。まあ最初に予算も10,000ドールくらいと言っていたのでそれに合わせてくれたんだろうけどね。
昨日行ったお店だと20,000ドールくらいと言われていたのでやはりこっちの店に来て正解だったかもしれない。まあ新品やもっとグレードの高いものの価格だったかもしれないけどね。ここでは今後の装備の買い方とかもいろいろと教えてくれたのでよかったと思う。
回復薬などは最初にもらっているものが使えるので、あとは屋台でお昼用のサンドイッチを購入してから門へと向かう。
出入り口には門番が立っており、入るときには身分を証明するものを提示しなければならないことになっているが、出るときは通常チェックはない。なにか事件があったときは出るときにもチェックが入るようだけどね。
町を出てから農地を過ぎて、さらに歩いたところにある林のようなところへとやってきた。このあたりはスライムなど弱い魔獣が多いというエリアらしい。命に関わるほどの魔獣はほぼ出ないらしいが、気をつけないと行けない。木の上からいきなり襲われないように確認しながら、林の中を進んでいく。
しばらく歩いていると茂みの奥になにやらぷよぷよしたものがいた。どうやらこれがスライムのようだ。某ゲームのようにまんじゅうのような形ではなく泡のスライムみたいだな。
直径は1mくらいに広がっており、厚さは10cmくらいという感じだ。色は緑色で、真ん中付近に核と言われる黒っぽい丸い玉のようなものがある。これを攻撃すればいいのだろう。動きは遅いので慎重に核部分を攻撃すれば良いので早速斬りかかってみる。
「ズバッ」
という爽快な音ではなく、「グシャ」というような潰れた音とともに、地面まで剣を立ててしまった衝撃で腕がしびれる。まずい・・・。手のしびれはまだいいんだが、剣は・・・。とりあえず刃こぼれ等はなかったようだ。よかった。しかし初めての戦闘にしては悲しい結果である。
核を破壊されたスライムは死んだみたいで、核の残骸のようなものの中から黒い小さな硬貨がでてきた。スライム1匹だと1ドールか?ゲームだったら「経験値1と1ゴールドを手に入れた!」とかいう説明が出そうだな。まあ一番弱い魔獣らしいのでおそらく魔素量は1くらいだろう。
スライムは残念ながら買い取り対象はないので得られる報酬はこの魔獣石のみである。もう少し上位のスライムになると体液が利用できるものがあるらしい。まあきれいな体液の回収が必要になるのでそれはそれで大変そうだけどね。
このあとはゴルフのスイングのように剣を使ってスライムを倒していく。正直棍棒のようなもので潰していった方が効率はいいのかもしれないが、まあ気分の問題だ。
ゲームだったら最初は木の棒や竹の槍とか棍棒から始めるんだろうけどねえ・・・。親の影響でやった最初のゲームは勇者と竜王の出てくるものだったが、檜の棒から棍棒、銅の剣、鉄の剣とかいう感じだったなあ。いきなり鉄の剣というのは贅沢すぎだね。
このエリアは魔獣がそんなに頻繁にいるわけではないので数を狩るのは難しい。途中で兎のような角兎を発見するが、襲ってくるわけでもなく逃げていくので狩ることはできなかった。魔獣すべてが好戦的ではないようだ。魔獣と言っても動物と一緒なのかもしれない。角兎を倒すには遠距離攻撃ができないと無理そうだな。
途中で買ってきたサンドイッチを食べておなかを満足させ、スライムを30匹狩ったところで今日は終了することにした。手に入れた魔獣石は30枚で、おそらく30ドール少々だろう。どう考えても小遣いレベルだ。それでも3時間近く歩き続けていたので結構疲れてきている。しかも手が豆だらけで痛い。
さすがにこのままだとつらいので初級治療薬を使うことにした。朝は飲んだんだが、今回は手のひらにかけてみると早送りのように傷が治っていった。自己治癒能力を高める効果なのかな?おかげで手のひらのまめはキレイに直ってくれた。うーん、魔法万歳!
町の入り口には少し行列ができているが、最初に町に入るときに一緒に発行してもらう滞在カードを持っている人たちの通る入り口はほとんど行列がない。バッグの中にはこの滞在カードもあったので、身分証明証と滞在カードの確認だけですぐに通り抜けられた。大きな荷物の時はだめみたいだけどね。
この滞在カードは1ヶ月に一回役場で更新しなければならないので面倒なんだが、毎回入口でチェックを受けるよりは楽なのでみんな更新は行っているようだ。まあ外に出ない人は用事ができたときに更新しているみたいだけどね。
このあと宿に戻り、装備の手入れをする。まあ今回はスライムだけだったのでそこまでいたんでいるような感じはないが、言われたとおり磨いておくことにした。
夕食の時間になったところで食堂に行くと、今日はミートソースパスタという感じのものだった。味も普通なので食事に関してはほぼ不満はない。
食事の後にシャワーを浴びてから部屋に戻る。宿に関してはいろいろと聞いてここよりも安そうなところや高そうなところを確認しているのでこのあとそれぞれ泊まっていくことにしよう。高級宿に泊まるのは最終日だな。さて、明日は魔法の鍛錬だ。楽しみ・・・。さすがに疲れたのか、今日も速攻で眠りに落ちていった。
~装備~
ジュンイチの装備:鉄の短剣、鉄の剣(低)、厚手のシャツ、厚手のズボン、皮の籠手(低)、皮の帽子(低)、皮のブーツ(低)
~魔獣紹介~
スライム:
初階位下位の魔獣。草原、森、岩場などあらゆる場所に生息する。緑色の液体のような体を持ち、中央に黒い核が見える。動物や魔獣の死体などを食料とし、消化液で溶かしながら吸収する。
自ら襲ってくることはほとんどないが、攻撃されると反撃してくることがある。ただし動きが遅いため攻撃力はほとんど無いと考えてよい。木の上などから落ちてくることもあり、顔を覆われると窒息死してしまうこともあるのでその点は注意が必要。
スライムの口から出される消化液は炎症を起こすため、体にかかった場合はすぐに洗い流した方がよい。このため洗い流すための水は持っていた方がいいだろう。大きなスライムほど消化液の威力が強くなるため注意が必要。
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