【改訂版アップ】10日間の異世界旅行~帰れなくなった二人の異世界冒険譚~

ばいむ

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第一部 現実になった異世界生活

22. 異世界54日目 同郷の仲間を探す

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 朝起きてからみんなと一緒に朝食をいただく。今日から宿を移るのでみんなとはここでお別れだ。コーランさんや風の翼のメンバーにお礼を言ってから宿を出る。

 コーランさんに今回特に役に立つ話はしなかったけど、よかったのか聞いてみたところ、十分役に立ったと言われてほっとする。
 どうやらアーマトの店で見たワゴンセールなどは自分と話をしてからやってみたそうだ。自分のいた世界では普通のことだったが、この世界ではまだ斬新な商売方法だったみたいである。
 なにか困ったことがあったらお店を訪ねてきてくれと名刺のようなカードをもらったのでほんとに困ったときには使わせてもらおう。

 何かこの世界にないものでも思いついたら製品化を持ちかけるのもありなのかもしれない。自分で売るのはさすがに無理っぽいけど、最低限のアイデア料だけでももらえれば十分だしね。



 さて、とりあえずここまでやってきたんだが、どうやって彼女を探すかが問題である。この世界に来て50日くらいなので同じ額のお金をもらっていたとしたら当初のお金でもまだ生活できている可能性もある。

 正直ちょっと見ただけだから顔もはっきりとは覚えていないので、会ってもわかるかな?結構かわいい顔をしていたようには思うんだけど、会ってみても彼女だと断定する自信がない。
 ちなみにこの世界の美的感覚は自分が持っている感覚と大きな差はないらしい。体型についてはどちらかというとちょっとふくよかなくらいがいいようで、痩せすぎているのはだめみたいだ。時代や場所によって美人の定義は異なるみたいだからねえ。貴族などの中では正直わからないけどね。


 名前は確かジェニファー・クーコだったからジェニファーとか言われているのかな?自分が純一郎でジュンイチとなっていたから呼び名とかが基本になっているんだろうか?
 ジェニファーじゃなかったらちょっとまずいなあ?ジェニファーって名前の呼び名って何が普通なんだろう?たしか海外の場合はもとの名前とちょっと違う言い方をしていたような気もするからよく分からない。

 とりあえず依頼の報告もあるので役場に行ってみることにしよう。高校生か大学生くらいだったからもしかして異世界で冒険者登録をしている可能性もあるかもしれないしね。



 役場にいって窓口に座っている女性に声をかける。

「すみません、特別依頼の完了確認をお願いしたいんですけどいいですか?」

 身分証明証と完了証明書を出してから実績をつけてもらう。冒険者カードと完了書を見比べてちょっと変な顔をしていた。

「並階位で護衛依頼が出るなんてかなりの実力を持っているんですね。」

「いえいえ、階位相当の実力ですよ。今回は知り合いと言うことで依頼を受けることができたんです。正直助かりましたよ。」

「そうなんですね。この階位での護衛依頼の実績はかなり大きいですよ。報酬は途中の経費と相殺と言うことになっていますのでお支払いは残念ながらありません。それで問題ないですか?」

「はい、大丈夫です。ありがとうございます。」

「あとアーマトの町で買い取り対象となっていた薬草も少し手に入れたんですが、買い取りはできますか?」

 途中休憩したときに森の近くで貴重な薬草を少し見つけていたので買い取りをお願いしてみた。資料をチェックしておいて良かったよ。

「わかりました。買い取りの窓口の方に回ってください。対象のものであれば実績ポイントがつきますよ。」

「わかりました。ところで、こちらにいるジェニファーさんに連絡を取りたいんですけど、連絡を取ることはできますか?」

 ジェニファーさんのことを聞くと受付嬢はちょっと顔をしかめていた。

「えっと、ジェニファーさん?とは、どういうご関係なのでしょうか?」

「以前別の町で会ったことがあってこの町に行くという話でしたので、まだこちらにいるかな?と思ったんですよ。2ヶ月くらい前にやってきていると思うんですが・・・。」

「あまり詳細は申し上げられませんが、この町の冒険者でその名前で登録されているのは一人だけです。その方があなたの言われている人なのかは分かりません。ただ最近はこちらには来られていません。」

「そうなんですね。せっかくなので挨拶しようと思ったんですが・・・。ありがとうございます。もし窓口に来ることがあれば”ニホンのジャパン”からきたジュンイチという人間が探していたと伝えてくれないでしょうか?」

 どこの国の人かは分からないが、ある程度の知識があれば日本という国はきっと知っているだろう。日本語と英語の両方言えばきっとなにか気がつくはずだ。

「ニホンのジャパンですか?聞いたことがない地名ですね。」

「かなりの田舎ですのであまり知っている人はいないと思います。ですので、自分の訪ねている人であればすぐにわかると思います。」

「わかりました。もし来るようなことがあれば伝えておきますね。」

「お願いします。あとしばらくはこの町で活動すると思いますので冒険者の地域登録もお願いできますか?」

 冒険者は活動する拠点を登録する必要があるので、長期滞在する場合は地域登録することが求められている。必須ではないんだが、やっておいた方が何かあったときに連絡も取りやすいので推奨されており、実際にほとんど人が行っている。

「分かりました。この町の資料についてはあちらのコーナーに置いていますのでご利用くださいね。」

「ありがとうございます。」

 このあと買い取りの窓口に行くと持ってきた薬草はちゃんと買い取り対象だったらしく、無事に買い取りをしてもらうことができた。上級回復薬の原料となるもので、結構貴重な薬草だったようだ。
 事前に確認していたとおり、葉の部分を回収して乾燥させていたので状態も問題なかったようである。一束当たり100ドールだが、10束あったので1000ドールとちょっとした小遣いとなった。このあたりはできるだけ知識として知っておいて損はないね。まあなかなか手に入れることは難しいとは思うけどね。


 町の規模を考えると闇雲に彼女を探しても正直見つけるのは無理と考えていいだろう。まあ運が良ければと言う気もしないでもないが、顔立ちがこっちの人と同じような感じなので果たして見ても分かるかどうか、それが問題だな。



 まずはこの町の情報を集めないといけないので町の状況や周辺の状況や魔獣の生息エリアについて確認をしていく。近くにいる魔獣のレベルはアーマトよりもちょっと上という感じだ。魔素がこっちの方が濃いのだろう。
 アーマトと違うのは海の魔獣について説明が書かれていたことだ。水生の魔獣なんだが、さすがにこちらには手を出さない方がいいだろう。船を使ってまで退治に出たいとは思わない。海岸付近に出てくる水陸対応の魔獣もいるので一応目は通しておく。

 いろいろと調べ物をしているともうお昼前になっていたのでお昼を食べに行くことにした。食堂の多いエリアに移動してから人がそれなりに入っているお店に入ってみる。焼き魚定食で30ドールなので結構物価は安そうだ。味もなかなかいい感じ。おなかも満足したところで町を散策することにした。


 港町なのでせっかくだからと港の方に行ってみると、漁船のような船が停泊しているエリアと大きな船が停泊しているエリアに分かれていた。大きな船が停泊しているのは旅客船や貨物船だろう。機会があれば船にも乗ってみたいねえ。

 船は帆があるタイプとないタイプがあるんだが、あまり詳しくないのでよく分からない。帆がないものは車と同じようにスクリューとかで動いているんだろうか?帆があるタイプも風魔法を使えば風がないときでも対応できると思うしね。
 大きさはテレビで見るような有名な旅客船ほど大きくはないが、前に乗ったことのある瀬戸内航路のフェリーくらいの大きさだった。

 漁船のエリアではすでに荷揚げは終わっているみたいで人の姿は少ない。セリのようなものが行われるのか漁港の近くには大きな建物があった。時間があるときにどんなものか見に来ても面白いかもしれないな。
 漁船の形はテレビでよく見るくらいの大きさのものが数多く並んでいた。さすがに魔法で漁をするわけではなく、網を使ってやっているみたいなので地球とあまり差がないような感じがする。まあ道具関係はおそらく魔道具なんだろうけどね。


 このあと鍛冶屋や雑貨屋、宿屋などいろいろ見て回り、町の状況は大体把握できた。図書館もあったんだが、規模はさすがに小さかった。ただ天文学や魔獣に関する資料は多かったのでとりあえず取り込んでおいた。

 さすがに港町のせいか魚を取り扱っているお店が結構目につく。見たような形の魚や見たことのないような魚までいろいろと置いている。魔獣ではない魚はなんとなく見たことのあるような形なんだが、魔獣の魚はかなり変わった形をしている。こういうときに鑑定を使えるといいんだが、触らないとだめなのでちょっと鑑定はできなかった。


 宿は事前に他の冒険者に聞いていた朝食付きで一泊250ドールという海の家というところに泊まってみることにした。これ以下だと相部屋になってしまうからこの値段はしょうがない。とりあえず1泊だけしてから良ければ長期の拠点にしよう。

 夕食はお昼にも食べたお店で定食を食べる。今回はブイヤベースのようなスープの定食だ。夕食の後は宿に戻りシャワーと洗濯をして眠りにつく。
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