【改訂版アップ】10日間の異世界旅行~帰れなくなった二人の異世界冒険譚~

ばいむ

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第一部 現実になった異世界生活

33. 異世界149日目 再び旅にでることになる

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 今日は31日で祝日なので自分たちもこの日は休みを取ることにしている。まだまだ暑い日は続いているが、北の方は徐々に涼しくなってきているらしい。このあたりは滅多にないが、北の方は雪が結構積もったりもするようだ。
 このため北の方にいる冒険者達は冬の間は別の仕事をしたり、南の方に移ったりするらしく、蓄えが十分な人たちは訓練や休養に当てるなど様々なようだ。自分たちもどうするか考えないといけないなあ。
 お金は稼がないとしょうがないので他の仕事をするか、この辺りで頑張るかという二択しかないんだけどね。


 今日は朝もゆっくり起きてから遅めの朝食を食べていると、久しぶりにコーランさんから連絡があった。
 買い物がてらカサス商会に行って話を聞くと、こっちにやってきたので久しぶりに一緒に夕食でもどうかとの話だった。パーティーのメンバーと一緒でよいかと話すと、問題ないということだったのであとでジェンと一緒に来ることを伝える。



 お昼は最近暇を見て作っているインスタントラーメンを食べることにした。以前某博物館で即席麺作り体験をしていたので、本を読みながら再現がしやすかった。
 麺はこっちの麺をそのまま利用することができたので、スタンダードに揚げてみたり、魔法で乾燥させてみたりして作ることができた。粉末だしも市販の粉末だしにスープを乾燥させたものを混ぜてそれなりのものができたので、いわゆるインスタントラーメンを再現していたのである。

 せっかくなので箸も作って使っているので懐かしい記憶がよみがえってくる。ジェンも最初の頃は四苦八苦しながら箸を使って食べていたが、最近は大分使い方にも慣れてきている。


 お昼の後は鍛冶屋に行って盾を探してみる。ジェンよりも少し大きめでいい感じの鉄の盾(並)があったのでこれを買ってみることにした。これだったら盾を持って片手で剣を扱うこともできる。3万ドールしたが、この金額はしょうがないだろう。まずは体が一番大事だからねえ。

 いろいろと買い物もしたのでいったん宿に戻って荷物を置いてからカサス商会へ。すぐにコーランさんがやってきて挨拶もそこそこに車に乗って移動となった。



 やってきたのは結構高級そうなお店だった。ドレスコートの心配をしたが、特に気にしなくていいようだ。個室に通されて食事となる。うーん、なんかいつも上客のように扱われるのですごく恐縮してしまう。いいのだろうか?ジェンもちょっと驚いている。

 コーランさんは相変わらず忙しいみたいでこっちにいる間も精力的に活動しているようだ。こちらもジェンと二人でパーティーを組んでやっていることなどいろいろと話をする。

 首都のサクラにあるお店で実験的に新しいお店を始めたところ、かなり繁盛しているそうだ。どうやら前に話したフードコートとショッピングモールのようなところを作ったみたいで、いくつか有名なお店にも入ってもらったらしい。
 食事をするならここに来ればいろいろ選べるということで人が集まってきており、それに伴って併設するお店の売り上げも上がっているようだ。
 また併せて惣菜の販売コーナーも始めたらしく、売り上げも上がっているらしい。こっちは出来合いの食べ物がサンドイッチとか焼き鳥とかで家庭用の惣菜とかほとんど見なかったからねえ。
 どうやらこの間の移動の時に話したことをさっそく実践したようである。行動が早いなあ・・・。だけど、失敗しても責任は持てないよ。


 このあとサクラに戻る予定だが、もし良ければ一緒に行かないかという話になった。どうやらフードコートについて、実際に見てからもう少し助言してもらいたいようだ。途中にかかる経費は払うし、護衛代と相談料と言うことでお金を出すと言ってきたがいいのだろうか?

 出発は2日後で、10日後にアーマトの町へ。そこで5日滞在後に首都サクラに向けて出発し、さらに15日後に到着する感じで、全部で30日の行程となる。

 返事は明日の朝までに欲しいようなので、一晩考えてくれないかとのことだ。もちろんジェンも一緒に行ってもいいようである。
 また何かいいアイデアがあったら教えてほしいと言ってきた。そういえばインスタントラーメンとかはどうなんだろう。それなりにいい感じにできあがっているので試食してもらうか?

 食事の後は車で宿まで送ってもらい、明日の朝にまた連絡することを約束する。



 部屋に戻ってから今回の申し出についてジェンと話をする。

「自分はせっかくなので行ってみたいと思っているよ。もし合わなければまた別の町に移動すればいいだけだし、せっかくの異世界なのでいろいろな町を見て回りたいんだ。」

「たしかに首都と言われるサクラは興味引かれるわね。」

「特に今回は移動の費用もかからないし、護衛代も出ると言うことだからそこから移動する旅費くらいは出ると思う。サクラまで行くことを考えると移動費だけで数万ドールかかるはずなのでそれがただというのはかなりお得だからね。」

「一応確認なんだけど、今回護衛を依頼してきたコーランさんは信用のおける人なの?わざわざ並階位の私たちに護衛費用や相談料だけでなく、途中の経費も払ってくれるなんてなにか裏があるように思えるんだけど。」

「いろいろと商売の話をしていたらなぜか気に入られてね。前回も色々話をしてくれるのなら乗せていけるといわれたんだ。途中の経費は自分持ちだったんだけど、食事とかはほとんどおごってくれて助かったんだよ。」

 全部は覚えていないが、コーランさんに話した内容を説明する。

「それって対価を払ってもらってもいいものじゃないの?いくらもとの世界では普通のことだったとしても、こっちではかなり有用な情報でしょ?」

「いや~、どうせ自分では本格的に商売をやるまで手を出せないから、やれる人がいたらやってもらった方がいいよ。自分がやったとしても、資金があるところにまねされて潰される可能性の方が高いと思うしね。うまくやってくれたらやってくれたで、その方が自分たちも便利になるんだからいいんじゃない?」

「まあ確かに資金力とか販路を考えたら誰かにやってもらった方がいいとは思うけど・・・。」

「そのあたりは気を遣っていろいろとおごってくれたりもしているんだから大丈夫だよ。ほんとに悪い人だったら情報だけ入手したり、どこかに監禁されたりしてしまうと思うんだ。そのあたりはきちんと対応してくれていると思うよ。」

「わかったわ。イチの目を信じるわ。」

「よかった。もしかしたら一人で行くことになるかと思っていたよ。」

「これだけ一緒にやっていていきなり一人なんてことはないわよ。」

「ありがとう。」

「それじゃあ、サクラのことに戻るけど、前に少し調べたんだけど、サクラは魔素がかなり薄いところにできた町の上、人も多いことから出てくる魔獣のレベルも低いし、数が絶対的に少ないらしいの。それで自分たちがやっているような町の近くで素材狩りをするような活動は厳しいらしいわ。
 サクラの冒険者は高階位の人がほとんどで、護衛やかなり珍しい素材の注文を受けて遠征する、または長期間の遠征をする前提で拠点を構えているというスタンスみたいなの。特別依頼は多いみたいだからね。」

 今が6/31なのでサクラに到着するのは7月末だろう。話に聞いたところでは10月になるとかなり冷え込んでくるという話だ。とりあえず2ヶ月くらいは滞在してそれからまた南下してもいいし、状況によってはサクラにそのまま滞在するのもありかもしれない。

「まあ、到着してから冬になるまでは2ヶ月以上はあるし、厳しいと思ったら少しだけ滞在して、それから南下していくのもありだと思う。」

「それもそうね。それじゃあ後でメイサン達にそのことを話さないといけないわね。」

 とりあえず今はまだお客の相手で忙しそうなのでもう少し後で話すことにした方が良さそうだ。


「あと、売り出したいものとしてインスタントラーメンはどうかと思ってるんだ。」

「私もなにかこちらで売り出せないかと考えていたんだけど、大体のものが魔道具であるし、食べ物についても大体のものがそろっていたのでいわゆる異世界チートは諦めていたのよね。」

「自分も同じように厳しいと思っていたんだけど、これはこっちの世界ではないみたいだからいいとは思ったけど、売り出す手段が見つからなかったから悩んでいたんだ。」

「一応こっちの世界の経済について調べておいたんだけど、販売の登録や認定など色々と面倒なこともあるようなので、新規に商売に参入するのは厳しいみたい。なのでもし何か売るとかなら、今回のように既存のお店と提携する方がいいと思うわ。
 あと、新しいアイデアについては特許のようなものがあって登録すると3年間は独占販売ができるらしいの。もちろんその権利を譲ることもできるらしいけどね。」

「自分たちとコーランさんで申請すればいいのかな。ある程度似たものが販売される可能性もありそうだけど・・・。」

「内容はもとの世界で言う特許とは違って、ほんとにこの世界で初めての独創的な考えとその実物のみに与えられるもので、登録される数はそこまで多くないらしいわ。類似のものまですべて含まれることになるみたい。」

「この世界で先に同じようなものがあったらだめと言うことか。」

「とりあえずカサス商会に話してから考えていいと思うわ。」

「そうだね。魔法の保存食料はあるけどかなり高いので値段が安くできれば十分需要が出ると思うんだよね。インスタントラーメンは麺の内容を変えればいろいろと応用ができるから、かなり売れると思う。地球でも半端ない数が売れていたと聞いたことがあるし。」

「自分たちには拡販するルートがないのでもしうまく話が進むようなら、販売をやってもらってその利益からアイデア料という形でもらうのがいいかもしれないわね。
 アイデア料は普通10~30%ほどとっているみたいだけど、研究とかもあるだろうから10%くらいでお願いすれば受けてくれるんじゃないかな?」

「まあそこは交渉次第だけど、それはジェンに任せるよ。自分はあまり経済とかわからないし、交渉とか無理だから。」

「わかったわ。ある程度勉強しているし、交渉事はそれなりに経験があるので大丈夫だと思う。」

「まかせたよ。何年こっちの世界にいないといけないかもわからないし、冒険者の収入以外でも固定収入があるとありがたいからね。」


 麺は油で揚げたもの、水魔法で水分を抜いたもの、風魔法で一気に乾燥させたものと3パターン作っているので、麺の食感が違うので好みが分かれるはずだ。ただ油で揚げるもの以外は魔法が必要なので実質は油で揚げたものが最有力である。
 スープの素は粉末だしがあったのでそれを流用している。あとはどのくらい持つのか試すために3ヶ月ほど前に作った試作品も持って行くことにしよう。


 宿の仕事が一段落した辺りでの宿の経営者であるメイサンとルミナ夫妻と話をする。今回の経緯を話して、他の町に行くことを伝えると、やはり引き留められてしまった。
 ジェンのことを心配しているのもあるが、毎日ではないが、かなり助けになっていたこと、ジェン目当てのお客も多くて売り上げに貢献していたことも大きいようだ。しかし冒険者として活動することは前に話していたこともあり、最後は納得してくれた。

 話があったため寝るのが遅くなってしまったが、明日はほぼ一日時間があるのでなんとかなるだろう。
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