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第一部 現実になった異世界生活
41. 異世界182日目 上階位への挑戦
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今日は役場に行ってから上階位への試験内容について簡単な講習会を受けることになった。講習会は一人100ドールで受けることができる。通常はもっと前に受けておくべきなんだが、日程がないのでしょうがない。
今回の講習内容は上階位と良階位への昇格の時のもので、優階位と特階位の試験は内容がまったく異なるらしい。それ以前に年に1回しか行われないみたいだからね。
学識試験は魔獣や植物、鉱物に関する一般教養や冒険者としてのルールなどになっており、合格率は80%を超えるようだ。試験に出る問題集があり、その中に書かれている500問から1割の50問が出題されるらしく、普通に勉強をしていれば通るものだ。もちろん階位で試験の内容は異なり、上位になればなるほど難しくなる。
実技試験は高レベルの冒険者との実践のようだ。魔法使いや治癒士でも最低限の戦闘能力が求められるが、魔法を使えるのであればかなりその基準は緩くなるようだ。その代わり魔法や治癒の効果が求められることになる。
上階位の実技試験の試験官は良か優階位、良階位の試験官は優階位となるらしいが、良階位の試験は通常首都でしか行われていないようである。他の都市では年に1回各主要都市を持ち回りで行うみたい。
自分たちはどちらで登録するか悩むところだ。魔法使いや特に治癒士だと色々と面倒ごとも抱えそうだからねえ。一応剣術については蠍の尾メンバーからもお墨付きをもらっているので大丈夫っぽいんだが、やっぱり心配なので魔法使いも登録しておいた。
良階位になるときには行動試験というものがあり、数日間の行動試験を達成しなければならないようだ。もちろん学識試験、実技試験をクリアした人だけが受けるもので、内容は毎回変わるらしい。
講習会では説明はなかったが、いろいろと聞いた話ではいままでの実績や行動などがチェックされているらしく、もめ事を起こしているとマイナス評価がされるみたいである。
お昼を食べた後は、鍛冶屋のドルンに紹介してもらっていた鍛冶屋に行くことにした。紹介状をお店で渡すと、店主がやってきた。、どうやら彼らは同じ鍛冶屋で習った同僚だったらしい。
ここに置いているものすべてを自分で造ったものではないらしく、他の人が製作したものも置いているようだ。中には良レベルの装備も扱っていた。なかなかすごいな。まあその分金額も高いんだけどね。
今の時点で買い換えるものはないため、とりあえず装備の調整と手入れをお願いする。明日の朝にはできるらしいので試験の前に回収していくことにした。メンテナンス代はそこまでひどい状態ではなかったこともあり、全部で1500ドールで請け負ってくれた。
翌日、装備を回収してから役場に行って受付をしてから試験会場へと移動する。ここで上階位の試験を受ける人はさすがに少ないみたいで、全部で20人くらいだった。パーティーの中でまだ階位の低い人たちが受けているという感じである。受講料は一人500ドールとそれなりに高い。
受けている人たちは自分たちより年齢が上の人たちが多い感じがする。20代が多く、30代と思われる人たちも少しいる。年齢が低いせいかなんか注目を集めているような気がするが気のせいだろうか?
まずは学識試験で、指定の席に座ってから試験の内容について簡単に説明を受ける。試験は60分で終了だったが、そこまで時間もかからずに解答できた。おそらく満点近いと思う。
この試験で大変なのは文字を読み書きできるかの確認の方が大きいような気もする。識字率は最近高くなってきているみたいだが、それでもやはり低いみたいだからねえ。さすがに依頼のことを考えると最低限の識字能力も必要なのだろう。
人数も少ないので続けて実技試験となるようだ。実技試験の会場で係員から試験方法についての説明を受ける。今日は良階位の試験官と戦ってもらうようだが、別に勝つ必要は無く、技量を確認するだけのようだ。
紹介された実技試験の試験官は誰かと思ったらなんと蠍の尾のメンバーだった。説明の後、試験の準備に少し時間がかかるようだったので挨拶に行くと、スレインさんから発破をかけられる。
「評価はちゃんと公平にやるからね!でも合格しなかったらそのときは特訓をしてあげるから覚悟しなさい!」
「もちろんひいきしてくれとは言いませんから大丈夫ですよ。頑張ります。」
スレインさん達と会話していると、なんか周りから驚いたような顔で見られているのはなんなんだろう?あまり人と話すことがない人たちなんだろうか?結構気さくに話してくれる人たちなのにね。
自分たちは10番目と11番目なので試験の様子が見られて助かった。さらに上の階位では試験官のみで他の受験者の見学はできなくなるらしい。
武器は自由だが、魔法で武器の攻撃力をかなり落として行うらしい。そんな魔法があるのか。まあ“鋭利向上”とかいうものがあるから落とすものもあってもおかしくないか。
他の人を見てみると、自分でも勝てそうな人もいるし、自分と同じかもっと強そうな人もいる。自分の順番がやってきたので、前に出ると、相手はスレインさんだった。
剣と盾を持って斬りかかるが、予想通り簡単にあしらわれる。まあ稽古をつけてもらったときも全くかなわなかったしな。これで魔法と治療がメインと言うんだからちょっと悲しい。できる限り剣を打ち込んで戦うこと数分くらい?自分の試験は終了した。評価はどうだっただろうなあ。
ジェンの相手はイントさんで、短剣で攻撃を加えているが、同じように簡単にあしらわれていた。まあこれはしょうがないよな。
やはり剣だけでなく魔法の審査も受けることにしておいて良かったかもしれない。
魔法の審査を受けるのは5人ほどで、自分たちは3番目と4番目だ。10mほど離れた場所にわらのようなもので作った的が作られており、そこに向けて魔法を放つようだ。
1番目の人は火魔法を使っているが、威力はかなり低い。的も少し焦げたくらいだ。2番目の人はかなり時間をかけて風魔法を放ち、的に結構大きな切れ込みが入った。魔法を使うまで結構時間がかかっているんだな。
自分の順番が来たので風斬を的に放つと綺麗に切り裂けた。まあ前の二人に比べるといい感じかな?ジェンは水弾を的に撃ち込んでいたが、的に結構大きな穴が開いたので大丈夫だろう。
5番目の人は石弾で、持ち上げた石を的に向けてはなって穴を開けていた。威力はジェンと同じくらいかな?
やはり一般的には魔法の威力はかなり低い印象だ。もちろん良高位くらいになればカムヒさんみたいに威力も違ってくるんだろうけどね。自分たちも威力は今のところ頭打ちしているからなあ・・・。
治癒士としての能力についてはやはり隠しておくことにした。まあもしこれでだめだったらまた挑戦すればいいや。ちなみに挑戦は2回まで可能だが、2回目に落ちるとまたある程度実績をためなければ受けられないらしい。
試験の結果発表までは1時間ほどかかるようなので遅めのお昼を食べにいく。
「合格できるかなあ?」
「たぶん大丈夫じゃない?スレインさん達からも剣術については十分に上階位の実力があると言われていたし、魔法についても他の人のレベルを考えると十分だと思うわ。」
「そうは言ってもねえ。いくら良階位の人とはいえ、こっちが全力で攻撃しているのに軽くあしらわれてしまうとほんとに大丈夫なのかと思ってしまうよ。」
「もう、いまさら言ってもしょうがないでしょ。せっかくのお昼なんだから食事を楽しもうよ。」
今日のお昼はハンバーガーのお店で軽く済ませている。フライドポテトまであるのでこの辺りは地球とあまり変わらない。
ただ今回のフードコートでも思ったんだが、自分で配膳するというスタイルはこちらではまだ珍しいみたいだ。このお店も席で注文して持ってきてもらうスタイルであり、カウンターで注文をしてから受け取るというものはまだ見かけたことがない。
フードコートで説明したけど、お客さんがこのスタイルを受け入れてくれるかはまだ分からないんだよなあ。最初はやり方を教えるスタッフを置くようには言っておいたけどね。
4時になったところで役場に戻り、合格発表を待つ。合格発表みたいに名前が張り出されるのかと思ったが、一人一人呼び出されてよかった点と悪かった点が述べられて合否を告げられるようだ。
なかなか合格者が出ないので自信はあるんだが、かなり怖い。自分の名前が呼ばれて前に出る。
「ジュンイチ。学識試験はほぼ満点だったので問題はない。剣術については剣のスキルはまあまあだが、まだ剣と盾の使い方がちぐはぐな感じだ。もう少し両方をうまく使うように鍛錬してほしい。魔法については十分な威力を持っているので今後も精進してくれ。合格だ。」
「おっしゃ~~!!」
やっぱり試験に合格するとうれしいものだ。
「ジェニファー。学識試験は満点だったので知識は十分だ。剣術についてはまだ精進してもらいたいところだが、盾をうまく使っているのは認められるところだ。魔法については十分な威力を持っていることから、後衛職としては十分な能力と判断できる。合格だ。」
「ありがとうございます!!」
ジェンもかなりうれしそうにしている。
試験は20人受けていたんだが、合格したのは4人とかなり狭き門のようだった。実力の判断基準が分からないが、受かったあとの2人は実技で自分よりも強いと思った4人の内の1人と自分でも勝てるかなと思った人の一人だった。強い人とかは学識とかで問題があったのかな?
このあと受付でカードの更新をしてもらうと、表示が冒険者(上階位)になっていた。ちょっとうれしい。合格した人だけが集められて、上階位についての簡単な説明を受ける。
上階位になると、特別依頼を依頼されることがあること、内容にもよるが基本的に受けなければならないこと、罰則と降格についてなどである。
コーランさん達と夕食を食べてから部屋に戻ってこの後のことについてジェンと話をする。
狩りについてはやってみないとどのくらい稼げるかはわからないが、今までのことを考えると1日2000~3000ドールは稼げると思っている。ただ稼ぎ如何に関わらず、今はお金にも余裕があるので、少なくとも一ヶ月くらいはここに滞在してはどうかと提案した。
この町だと剣などの講習のレベルも高そうだし、図書館も大きいので学識スキルを上げるのにもいいかもしれない。あとせっかくなら鍛冶や特に付与について学んでみたいのである。
ジェンもせっかくだから他にもいろいろと買い物とかこっちの文化にも触れてみたいというので一緒に滞在することにしたようだ。
明日からはここをでて他の宿に移るつもりだが、ここで問題が発生した。
アーマトとかで泊まっていた宿と同じレベルの宿だと一日1000ドールなので二人で2000ドールとなるんだが、ジェンが同じ2000ドールならツインでもっといいところに泊まろうと言ってきたのだ。
確かに2000ドールのツインの部屋ならお風呂もある宿に泊まることができるのでかなり魅力的だ。もちろんシングルを二つにする方法もあるんだが、それだと3500ドールと2倍近くになってしまうのだ。さすがにいくら今はお金があるとはいっても1ヶ月で4万ドールの差は大きすぎる。
しかし、ツインの部屋ってことは同棲みたいなものだぞ。「いいのか?」と何度も念押ししても「問題ない!」の一点張りだ。普通は男の方から「なにもしないから」と言って提案して同意を求めるものではないのか?自分の本の読み過ぎなのか?
かといってコーランさんのところにこのまま泊めてもらうというのもやっぱり違う。結局自分が折れてツインの部屋を取ることにしたんだが、また明日宿を取るときに話してみよう。
「ほんとにいいのか?襲ってもしらないぞ!」って言っても「襲う度胸があるならやってみてよ」とすべてを見通したような顔で言ってくるのでどうしようもない。
どうせそんな度胸はないですよ。
~他の受検した人たちSide~
「なんかえらく若いのが二人いるな?もう上階位になる実績ポイントをためたのか?」
「どこかの金持ちの坊ちゃんとお嬢ちゃんで実績ポイントだけを早急にためたんだろう。どうせ実技試験で落ちるさ。」
「なんで実技試験があることが分かっているのに試験を受けようとするんだろうな。金持ちの考えることはよく分からねえ。」
「うわ、今回の実技試験の担当は蠍の尾のメンバーかよ。運が悪いなあ。」
「男が相手だとかなり厳しい評価されるからなあ。試験官の人選も考えてほしいよな。」
「おい、あの若いやつ蠍の尾のところに挨拶に行ってるぞ。落ちたな、あいつ。」
「こっちでは見ない顔だから蠍の尾のことを知らないんだろう。変に声をかけて印象悪くするとは、かわいそうになあ。」
「なんで蠍の尾のメンバーが男とあんなに気さくに話しているんだ?」
「いつもは最低限の会話しかしないし、しかもあんな表情とかほとんど見たことないぞ。」
「しかもほとんど話をしないアルドさんまで話に加わっているぞ。まじか?」
男嫌いで通っている蠍の尾メンバーがジュンイチと普通に、しかも笑い声まで上げながら会話している姿は周りに衝撃を与えていた。
ジュンイチ達が離れた後、「今は機嫌がいいのか?」と声をかけた勇者がいた。先ほどまでの和らいだ雰囲気ではないが、今までよりはかなり対応が丁寧だったのでみんなが驚いていた。
「あの二人、剣や短剣もそれなりのレベルなのに、並階位だったにしては魔法の威力が高くないか?」
「発動までの時間も早くてあの威力だから、時間をかければもっと高くなるって、余裕で上階位のレベルに達しているじゃねえか。だれだ実力がないとかいっていたやつは。」
どうやら魔法に関しては二人が認識している以上に高いレベルのようである。
今回の講習内容は上階位と良階位への昇格の時のもので、優階位と特階位の試験は内容がまったく異なるらしい。それ以前に年に1回しか行われないみたいだからね。
学識試験は魔獣や植物、鉱物に関する一般教養や冒険者としてのルールなどになっており、合格率は80%を超えるようだ。試験に出る問題集があり、その中に書かれている500問から1割の50問が出題されるらしく、普通に勉強をしていれば通るものだ。もちろん階位で試験の内容は異なり、上位になればなるほど難しくなる。
実技試験は高レベルの冒険者との実践のようだ。魔法使いや治癒士でも最低限の戦闘能力が求められるが、魔法を使えるのであればかなりその基準は緩くなるようだ。その代わり魔法や治癒の効果が求められることになる。
上階位の実技試験の試験官は良か優階位、良階位の試験官は優階位となるらしいが、良階位の試験は通常首都でしか行われていないようである。他の都市では年に1回各主要都市を持ち回りで行うみたい。
自分たちはどちらで登録するか悩むところだ。魔法使いや特に治癒士だと色々と面倒ごとも抱えそうだからねえ。一応剣術については蠍の尾メンバーからもお墨付きをもらっているので大丈夫っぽいんだが、やっぱり心配なので魔法使いも登録しておいた。
良階位になるときには行動試験というものがあり、数日間の行動試験を達成しなければならないようだ。もちろん学識試験、実技試験をクリアした人だけが受けるもので、内容は毎回変わるらしい。
講習会では説明はなかったが、いろいろと聞いた話ではいままでの実績や行動などがチェックされているらしく、もめ事を起こしているとマイナス評価がされるみたいである。
お昼を食べた後は、鍛冶屋のドルンに紹介してもらっていた鍛冶屋に行くことにした。紹介状をお店で渡すと、店主がやってきた。、どうやら彼らは同じ鍛冶屋で習った同僚だったらしい。
ここに置いているものすべてを自分で造ったものではないらしく、他の人が製作したものも置いているようだ。中には良レベルの装備も扱っていた。なかなかすごいな。まあその分金額も高いんだけどね。
今の時点で買い換えるものはないため、とりあえず装備の調整と手入れをお願いする。明日の朝にはできるらしいので試験の前に回収していくことにした。メンテナンス代はそこまでひどい状態ではなかったこともあり、全部で1500ドールで請け負ってくれた。
翌日、装備を回収してから役場に行って受付をしてから試験会場へと移動する。ここで上階位の試験を受ける人はさすがに少ないみたいで、全部で20人くらいだった。パーティーの中でまだ階位の低い人たちが受けているという感じである。受講料は一人500ドールとそれなりに高い。
受けている人たちは自分たちより年齢が上の人たちが多い感じがする。20代が多く、30代と思われる人たちも少しいる。年齢が低いせいかなんか注目を集めているような気がするが気のせいだろうか?
まずは学識試験で、指定の席に座ってから試験の内容について簡単に説明を受ける。試験は60分で終了だったが、そこまで時間もかからずに解答できた。おそらく満点近いと思う。
この試験で大変なのは文字を読み書きできるかの確認の方が大きいような気もする。識字率は最近高くなってきているみたいだが、それでもやはり低いみたいだからねえ。さすがに依頼のことを考えると最低限の識字能力も必要なのだろう。
人数も少ないので続けて実技試験となるようだ。実技試験の会場で係員から試験方法についての説明を受ける。今日は良階位の試験官と戦ってもらうようだが、別に勝つ必要は無く、技量を確認するだけのようだ。
紹介された実技試験の試験官は誰かと思ったらなんと蠍の尾のメンバーだった。説明の後、試験の準備に少し時間がかかるようだったので挨拶に行くと、スレインさんから発破をかけられる。
「評価はちゃんと公平にやるからね!でも合格しなかったらそのときは特訓をしてあげるから覚悟しなさい!」
「もちろんひいきしてくれとは言いませんから大丈夫ですよ。頑張ります。」
スレインさん達と会話していると、なんか周りから驚いたような顔で見られているのはなんなんだろう?あまり人と話すことがない人たちなんだろうか?結構気さくに話してくれる人たちなのにね。
自分たちは10番目と11番目なので試験の様子が見られて助かった。さらに上の階位では試験官のみで他の受験者の見学はできなくなるらしい。
武器は自由だが、魔法で武器の攻撃力をかなり落として行うらしい。そんな魔法があるのか。まあ“鋭利向上”とかいうものがあるから落とすものもあってもおかしくないか。
他の人を見てみると、自分でも勝てそうな人もいるし、自分と同じかもっと強そうな人もいる。自分の順番がやってきたので、前に出ると、相手はスレインさんだった。
剣と盾を持って斬りかかるが、予想通り簡単にあしらわれる。まあ稽古をつけてもらったときも全くかなわなかったしな。これで魔法と治療がメインと言うんだからちょっと悲しい。できる限り剣を打ち込んで戦うこと数分くらい?自分の試験は終了した。評価はどうだっただろうなあ。
ジェンの相手はイントさんで、短剣で攻撃を加えているが、同じように簡単にあしらわれていた。まあこれはしょうがないよな。
やはり剣だけでなく魔法の審査も受けることにしておいて良かったかもしれない。
魔法の審査を受けるのは5人ほどで、自分たちは3番目と4番目だ。10mほど離れた場所にわらのようなもので作った的が作られており、そこに向けて魔法を放つようだ。
1番目の人は火魔法を使っているが、威力はかなり低い。的も少し焦げたくらいだ。2番目の人はかなり時間をかけて風魔法を放ち、的に結構大きな切れ込みが入った。魔法を使うまで結構時間がかかっているんだな。
自分の順番が来たので風斬を的に放つと綺麗に切り裂けた。まあ前の二人に比べるといい感じかな?ジェンは水弾を的に撃ち込んでいたが、的に結構大きな穴が開いたので大丈夫だろう。
5番目の人は石弾で、持ち上げた石を的に向けてはなって穴を開けていた。威力はジェンと同じくらいかな?
やはり一般的には魔法の威力はかなり低い印象だ。もちろん良高位くらいになればカムヒさんみたいに威力も違ってくるんだろうけどね。自分たちも威力は今のところ頭打ちしているからなあ・・・。
治癒士としての能力についてはやはり隠しておくことにした。まあもしこれでだめだったらまた挑戦すればいいや。ちなみに挑戦は2回まで可能だが、2回目に落ちるとまたある程度実績をためなければ受けられないらしい。
試験の結果発表までは1時間ほどかかるようなので遅めのお昼を食べにいく。
「合格できるかなあ?」
「たぶん大丈夫じゃない?スレインさん達からも剣術については十分に上階位の実力があると言われていたし、魔法についても他の人のレベルを考えると十分だと思うわ。」
「そうは言ってもねえ。いくら良階位の人とはいえ、こっちが全力で攻撃しているのに軽くあしらわれてしまうとほんとに大丈夫なのかと思ってしまうよ。」
「もう、いまさら言ってもしょうがないでしょ。せっかくのお昼なんだから食事を楽しもうよ。」
今日のお昼はハンバーガーのお店で軽く済ませている。フライドポテトまであるのでこの辺りは地球とあまり変わらない。
ただ今回のフードコートでも思ったんだが、自分で配膳するというスタイルはこちらではまだ珍しいみたいだ。このお店も席で注文して持ってきてもらうスタイルであり、カウンターで注文をしてから受け取るというものはまだ見かけたことがない。
フードコートで説明したけど、お客さんがこのスタイルを受け入れてくれるかはまだ分からないんだよなあ。最初はやり方を教えるスタッフを置くようには言っておいたけどね。
4時になったところで役場に戻り、合格発表を待つ。合格発表みたいに名前が張り出されるのかと思ったが、一人一人呼び出されてよかった点と悪かった点が述べられて合否を告げられるようだ。
なかなか合格者が出ないので自信はあるんだが、かなり怖い。自分の名前が呼ばれて前に出る。
「ジュンイチ。学識試験はほぼ満点だったので問題はない。剣術については剣のスキルはまあまあだが、まだ剣と盾の使い方がちぐはぐな感じだ。もう少し両方をうまく使うように鍛錬してほしい。魔法については十分な威力を持っているので今後も精進してくれ。合格だ。」
「おっしゃ~~!!」
やっぱり試験に合格するとうれしいものだ。
「ジェニファー。学識試験は満点だったので知識は十分だ。剣術についてはまだ精進してもらいたいところだが、盾をうまく使っているのは認められるところだ。魔法については十分な威力を持っていることから、後衛職としては十分な能力と判断できる。合格だ。」
「ありがとうございます!!」
ジェンもかなりうれしそうにしている。
試験は20人受けていたんだが、合格したのは4人とかなり狭き門のようだった。実力の判断基準が分からないが、受かったあとの2人は実技で自分よりも強いと思った4人の内の1人と自分でも勝てるかなと思った人の一人だった。強い人とかは学識とかで問題があったのかな?
このあと受付でカードの更新をしてもらうと、表示が冒険者(上階位)になっていた。ちょっとうれしい。合格した人だけが集められて、上階位についての簡単な説明を受ける。
上階位になると、特別依頼を依頼されることがあること、内容にもよるが基本的に受けなければならないこと、罰則と降格についてなどである。
コーランさん達と夕食を食べてから部屋に戻ってこの後のことについてジェンと話をする。
狩りについてはやってみないとどのくらい稼げるかはわからないが、今までのことを考えると1日2000~3000ドールは稼げると思っている。ただ稼ぎ如何に関わらず、今はお金にも余裕があるので、少なくとも一ヶ月くらいはここに滞在してはどうかと提案した。
この町だと剣などの講習のレベルも高そうだし、図書館も大きいので学識スキルを上げるのにもいいかもしれない。あとせっかくなら鍛冶や特に付与について学んでみたいのである。
ジェンもせっかくだから他にもいろいろと買い物とかこっちの文化にも触れてみたいというので一緒に滞在することにしたようだ。
明日からはここをでて他の宿に移るつもりだが、ここで問題が発生した。
アーマトとかで泊まっていた宿と同じレベルの宿だと一日1000ドールなので二人で2000ドールとなるんだが、ジェンが同じ2000ドールならツインでもっといいところに泊まろうと言ってきたのだ。
確かに2000ドールのツインの部屋ならお風呂もある宿に泊まることができるのでかなり魅力的だ。もちろんシングルを二つにする方法もあるんだが、それだと3500ドールと2倍近くになってしまうのだ。さすがにいくら今はお金があるとはいっても1ヶ月で4万ドールの差は大きすぎる。
しかし、ツインの部屋ってことは同棲みたいなものだぞ。「いいのか?」と何度も念押ししても「問題ない!」の一点張りだ。普通は男の方から「なにもしないから」と言って提案して同意を求めるものではないのか?自分の本の読み過ぎなのか?
かといってコーランさんのところにこのまま泊めてもらうというのもやっぱり違う。結局自分が折れてツインの部屋を取ることにしたんだが、また明日宿を取るときに話してみよう。
「ほんとにいいのか?襲ってもしらないぞ!」って言っても「襲う度胸があるならやってみてよ」とすべてを見通したような顔で言ってくるのでどうしようもない。
どうせそんな度胸はないですよ。
~他の受検した人たちSide~
「なんかえらく若いのが二人いるな?もう上階位になる実績ポイントをためたのか?」
「どこかの金持ちの坊ちゃんとお嬢ちゃんで実績ポイントだけを早急にためたんだろう。どうせ実技試験で落ちるさ。」
「なんで実技試験があることが分かっているのに試験を受けようとするんだろうな。金持ちの考えることはよく分からねえ。」
「うわ、今回の実技試験の担当は蠍の尾のメンバーかよ。運が悪いなあ。」
「男が相手だとかなり厳しい評価されるからなあ。試験官の人選も考えてほしいよな。」
「おい、あの若いやつ蠍の尾のところに挨拶に行ってるぞ。落ちたな、あいつ。」
「こっちでは見ない顔だから蠍の尾のことを知らないんだろう。変に声をかけて印象悪くするとは、かわいそうになあ。」
「なんで蠍の尾のメンバーが男とあんなに気さくに話しているんだ?」
「いつもは最低限の会話しかしないし、しかもあんな表情とかほとんど見たことないぞ。」
「しかもほとんど話をしないアルドさんまで話に加わっているぞ。まじか?」
男嫌いで通っている蠍の尾メンバーがジュンイチと普通に、しかも笑い声まで上げながら会話している姿は周りに衝撃を与えていた。
ジュンイチ達が離れた後、「今は機嫌がいいのか?」と声をかけた勇者がいた。先ほどまでの和らいだ雰囲気ではないが、今までよりはかなり対応が丁寧だったのでみんなが驚いていた。
「あの二人、剣や短剣もそれなりのレベルなのに、並階位だったにしては魔法の威力が高くないか?」
「発動までの時間も早くてあの威力だから、時間をかければもっと高くなるって、余裕で上階位のレベルに達しているじゃねえか。だれだ実力がないとかいっていたやつは。」
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