【改訂版アップ】10日間の異世界旅行~帰れなくなった二人の異世界冒険譚~

ばいむ

文字の大きさ
71 / 430
第一部 異世界らしい冒険

59. 異世界250日目 目的と思われる島へ

しおりを挟む
 朝準備をしてから港に行き、ガバナンさんの船で出発。ここから1時間ほど船を走らせて、目星をつけた島の隣の島に上陸する。あくまでこの島が目的の島と言うことで話しておいた方がいいという判断だ。島の大きさは両方とも変わらない感じである。

「岩礁の位置もわからんので、これ以上は近づけん。すまんがここからはボートで渡ってくれ。」

 そう言ってゴムボートのようなものを海面に下ろしてくれた。

「漕ぎ方は分かるか?」

 ボートの中にオールが置いている。

「風魔法で動くので大丈夫です。」

「わかった。ボートは流されないようにしておいてくれ。
 15日後の3時には迎えに来る。シケで来られない場合はシケが過ぎたらすぐにくるつもりだ。そのあとは5日おきだ。日にちと時間は間違えないようにな。」

 今日食べてくれと言って今朝とれた魚を数匹渡してくれた。あとで収納バッグに入れておこう。
 ちなみに魚は生きたまま入れられれば一番いいんだが、収納バッグには生きているものは入れることができないようになっている。安全装置なのかどうかは不明だが、どういう理屈か生き物と認識しているものは入らないようになっている。
 ただおそらく細菌とかは収納されていると思うので、その辺りの区別についてはよく分からない。死ぬと魔素が出なくなるとか言われているので、魔素をまとっているとかいうのが基準になっているのかもしれない。収納するとおそらく細菌とかも死んでしまうので、消毒とかにはもしかしたらいいのかもしれないね。

 島に渡ってガバナンさんを見送ってから船に乗って隣の島に移動する。島までは200mくらいなので風魔法を使って移動するとすぐに到着できた。

 島の近くに行くと波が高くなって危ないんだが、水魔法で波を少しだけだけど押さえてから断崖の下の岩場に上陸。ボートは収納バッグに入ったので入れておく。ここから土魔法で崖に階段を作りながら登っていき、なんとか島への上陸を果たす。崖は高いのでかなり怖いがかなりデコボコもあるのでなんとかなったが、時間もかかったのはしょうがない。



 島の周りは断崖なんだが、テーブルマウンテンのように断崖の上は平らなスペースとなっていた。北側に岩場、南側に山があり、その中央付近が草原と森という感じだった。木が育っているので水は大丈夫なんだろうか?今は冬で少ないけど、もともと雨も結構多い地域だからね。

 索敵で魔獣を探してみると、森の方はやはりそれなりに多いが、岩場や草原の方はそんなにいない印象だ。レベルは並~上階位くらいかなあ?一応見える範囲にも姿はあるが、ある程度離れていると襲っては来ない感じ。とりあえずこの辺りに拠点を作ることにしよう。


 地面に直径10キヤルドくらいの円を描き、ジェンと二人でその線に沿って高さ2キヤルドくらいの壁を作っていく。硬化しないと意味がないので思ったよりは時間がかかってしまった。若干外側に反りを造っているので、壊れる場合は外に倒れるので大丈夫だろう。
 途中襲ってくる魔牛や大角兎を倒しながらひたすら拠点作り。今の自分たちにはこのレベルの魔獣であれば不意を突かれなければ十分に倒せるので正直いい食料という感じでしかない。

 壁ができると、その手前には使った土の分の穴ができるので、高さ2.5m位の壁となっている。そこまで強そうな魔獣もいないのでこれである程度は防ぐことができるだろう。

 塀には特に入口を作っていないが、少し足場さえ作っておけば軽減魔法で飛び上がれば十分に塀を越えられるので大丈夫だろう。入口を作ると扉とかが面倒だからね。一応地面の高さの数カ所に小さな穴を開けて排水もできる様にしておく。


 続いて塀の中に4キヤルド四方くらいの広さで土台を作り、高さ2キヤルドくらいの建物を作っていく。こっちの壁は強度を見てから30ヤルドくらいの薄い感じで作っていく。中はベッドと荷物置きに使うだけなのでこれだけの広さがあれば十分だ。
 屋根は土魔法で10ヤルドの薄い板を作り固定しておく。これで雨は防げるだろう。厚さはないが、結構強いので簡単に割れることはないはずだ。一応中央に柱も立てて補強しておく。
 部屋の中にベッドとなる台を作り、間に仕切りを入れようとしたんだが、「狭いからいらない」とジェンに却下されてしまった。だから、普通は逆でしょうが・・・。

 壁には雨が入らないように窓代わりの明かり取りを作り、いくつか換気口も開けておく。夜はある程度冷えてきているが、寝袋などもあるのでその辺りは大丈夫だろう。寒い場合は最悪暖炉のようなものを作る手もある。ドアは薄い板のようなものを作ってはめ込むことにした。さすがにちゃんとしたドアを作るのは面倒だ。

 今回はまずは15日間の予定なので夜はちゃんと寝るように考えている。昼は探索もあるので、夜を交代で寝ていたらかなりきつい。とりあえず塀とこの建物があれば、魔獣が来たとしてもいきなり襲われると言うことはないはずだ。一応魔獣よけの魔道具も持ってきているので魔獣もよほどでなければ近寄ってこないだろう。索敵した感じではそんなに強い魔獣もいなそうなのでこれだけで十分対応できると信じたい。


 家の前にはテーブルを作り、使うときにはテーブルクロスを掛ければいいかな。浄化魔法もあるしね。かまどや作業台も作ってコンロを設置し、持ってきたパラソル二つをテーブルとかまどの上に立てて完成だ。
 基本的には現地調達のもので食事をするつもりだが、本格的に雨が降っているときは、部屋の中で出来合のものを食べてもいいからね。残飯関係は収納バッグに入れておいて、まとめて海に捨てれば問題ない。収納バッグがこういうときには便利だ。

 トイレは塀の中の離れたところに小さめの部屋を作って穴を堀り、便器を設置して完成だ。ジェンが気になるかもしれないので、建物にはサイレントの風魔法を出す魔道具を設置しておく。終わった後は浄化魔法があるのでトイレは完璧だ。


 一通り建物ができたところで持ってきたマットや寝袋を敷いてベッドは完成。その他に探索に持って行かないものについては部屋の中の棚にしまっていくことにした。自作した魔道具で簡単な冷凍冷蔵庫もできているので狩った肉などはこの中に保存しておくこともできる。期間が長そうだったら収納バッグに入れておくこともできるし、それは臨機応変に行こう。
 いろいろと魔道具をセットしているので、魔獣石が消費されていくのは仕方がないところか?合計で1日100ドールくらいは消費されていく感じだけど、快適な生活を送るにはしょうがないと割り切ろう。


 さすがにここまで本格的な拠点を作ったのは初めてだったので、休憩しながらで作るのに3時間近くかかってしまったのはしょうがないところか?なんかこり出したら止まらなくなってしまったんだなもんなあ。まあ少なくとも15日間は拠点にするところだからこれで良かったんだと納得することにした。魔力操作や土魔法のレベルが上がってきたらもっと短時間で作れるようになるのかねえ?

「ここまで作れば十分だろう。」

「そうね。部屋の中が殺風景なのは仕方がないとして、これなら宿と同じくらいには過ごせるかな?」

 持ってきた野菜と今日手に入れた魔牛肉のスープを作り、あとは肉を焼いていく。かなり豪華な内容だが、しっかり体力をつけておかないと気力が続かないからなあ。
 明かりは光魔法で照明の代わりになるし、食べ物の匂いも風魔法で拡散を防げるし、魔法を使えるようになって良かった。この程度の魔法だったら常時使っているレベルなので精神的な負担もほぼないしねえ。

 食事の後は持ってきた珈琲を入れてちょっとくつろぐ。明日からはエリアを分割して探索していくが、まずは島の全貌を確認するために南の山の方から行ってみようかな。まあ山というよりは丘という感じなんだけどね。
 一息ついたところで建物の中に入り、眠りにつくが、慣れない場所のせいか、気分が高揚しているのかなかなか眠れなかった。



「なあ、起きてるか?」

「なに?」

「知り合ってからそれなりに時間もたつけど、まだ1年もたっていないのに自分と二人でいても不安はないのか?これでも一応男だよ。こんなところで二人きりだから何をされても助けなんてこないぞ。」

「うーん・・・。私ね、小さな頃から人間関係にはいろいろあってこういうことには勘が働くんだ。もちろん知り合った後で変わってしまった人もいっぱいいたけどね。イチはずっといるけど信用できると思ってるの。だからね、ずっと信用できるままだったらうれしいな。」

「そんなこと言われたら変なことはできないじゃないか。まあしないけどさあ。」

「別に私を・・・・・」

「???なに?」

「何でもない!!イチは不誠実なことはしないと信じているからね。」

 なんかよく聞き取れなかったけど、まあ信用されているようだからこちらも変なことはできないよなあ。前に地球に大事な人がいると言っていたから手を出すわけにはいかない。

 さて、寝よ、寝よ。気にしたらダメだ。



~ジェンSide~
 ルイサレムにやってきて宝探しという依頼を受けることになった。地球にいたときにはこんな冒険譚のようなことはなかったのでちょっとわくわくしているのは気のせいではないだろう。

 依頼を受けたのはいいけど、なかなか手がかりが見つかるものではなかった。5年たっても見つかっていないものなのでそう簡単に見つかるものではないのは当たり前だけどね。でもガイド本のおかげでヒントを見つけることができたのは良かったけど、これってこっちの人だったらまず分からないわよね。

 調べたことがあっているのかは現地に行ってみないと分からないので船に乗って移動することになった。目的の地点と思われる場所に島はあったんだけど、どう考えても拠点になるようには思えない地形だ。でも地図からはこことしか思えないのでここを調査することにした。

 船を出してくれたガバナンさんが刺身を食べていたのでイチは大喜びで食べていた。私も何度か食べたことがあったので食べさせてもらったのだけど、この間のものよりさらにおいしくて驚いた。刺身を理解する人がうれしかったのか、夜は宴会に誘われてお酒までいただいて楽しかったわ。


 島に行く準備をしている途中でカサス商会の店長に呼び止められた。ここでイチは試作していた魔符核を渡していた。イチはそこまで重要なものと思っていないようだけど、これを見たステファーさんの目の色が変わったのが分かったわ。コーランさんのことを考えると無茶な要求はしてこないとは思うけど、注意はしておかないといけないわね。


 島に移動してから拠点を作ることになったのだけど、思ったよりも立派なものができたと思う。気を遣っているのか、寝るところを分けようとしていたので取り除いておいたわよ。イチは何か言っていたけど、いまさらだよ。

 寝るときにいろいろと私たちのことについて話をした。イチは知り合って間もないのにこんなに信頼していいのか?と聞いてきたけれど、何か企んでいる人はそもそもそんなことを聞いてこないよ。いつまでも信頼させてほしいなあ。
 ジュンイチは遊びで手を出してくるとは思えないので、そのときはちゃんと責任をとってくれると思う。もしジュンイチが私に手を出してきたとしたら・・・私は受け入れてしまうんだろうか?でも、それ以前に手を出してくるのかな?これでも結構もてていたと思うんだけど、ジュンイチの好みとは違うのかなあ?
しおりを挟む
感想 49

あなたにおすすめの小説

異世界生活〜異世界に飛ばされても生活水準は変えません〜 番外編『旅日記』

アーエル
ファンタジー
カクヨムさん→小説家になろうさんで連載(完結済)していた 【 異世界生活〜異世界に飛ばされても生活水準は変えません〜 】の番外編です。 カクヨム版の 分割投稿となりますので 一話が長かったり短かったりしています。

スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~

深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】 異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!

おいでよ!死にゲーの森~異世界転生したら地獄のような死にゲーファンタジー世界だったが俺のステータスとスキルだけがスローライフゲーム仕様

あけちともあき
ファンタジー
上澄タマルは過労死した。 死に際にスローライフを夢見た彼が目覚めた時、そこはファンタジー世界だった。 「異世界転生……!? 俺のスローライフの夢が叶うのか!」 だが、その世界はダークファンタジーばりばり。 人々が争い、魔が跳梁跋扈し、天はかき曇り地は荒れ果て、死と滅びがすぐ隣りにあるような地獄だった。 こんな世界でタマルが手にしたスキルは、スローライフ。 あらゆる環境でスローライフを敢行するためのスキルである。 ダンジョンを採掘して素材を得、毒沼を干拓して畑にし、モンスターを捕獲して飼いならす。 死にゲー世界よ、これがほんわかスローライフの力だ! タマルを異世界に呼び込んだ謎の神ヌキチータ。 様々な道具を売ってくれ、何でも買い取ってくれる怪しい双子の魔人が経営する店。 世界の異形をコレクションし、タマルのゲットしたモンスターやアイテムたちを寄付できる博物館。 地獄のような世界をスローライフで侵食しながら、タマルのドキドキワクワクの日常が始まる。

駆け落ち男女の気ままな異世界スローライフ

壬黎ハルキ
ファンタジー
それは、少年が高校を卒業した直後のことだった。 幼なじみでお嬢様な少女から、夕暮れの公園のど真ん中で叫ばれた。 「知らない御曹司と結婚するなんて絶対イヤ! このまま世界の果てまで逃げたいわ!」 泣きじゃくる彼女に、彼は言った。 「俺、これから異世界に移住するんだけど、良かったら一緒に来る?」 「行くわ! ついでに私の全部をアンタにあげる! 一生大事にしなさいよね!」 そんな感じで駆け落ちした二人が、異世界でのんびりと暮らしていく物語。 ※2019年10月、完結しました。 ※小説家になろう、カクヨムにも公開しています。

異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた

りゅう
ファンタジー
 異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。  いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。  その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。

キャンピングカーで走ってるだけで異世界が平和になるそうです~万物生成系チートスキルを添えて~

サメのおでこ
ファンタジー
手違いだったのだ。もしくは事故。 ヒトと魔族が今日もドンパチやっている世界。行方不明の勇者を捜す使命を帯びて……訂正、押しつけられて召喚された俺は、スキル≪物質変換≫の使い手だ。 木を鉄に、紙を鋼に、雪をオムライスに――あらゆる物質を望むがままに変換してのけるこのスキルは、しかし何故か召喚師から「役立たずのド三流」と罵られる。その挙げ句、人界の果てへと魔法で追放される有り様。 そんな俺は、≪物質変換≫でもって生き延びるための武器を生み出そうとして――キャンピングカーを創ってしまう。 もう一度言う。 手違いだったのだ。もしくは事故。 出来てしまったキャンピングカーで、渋々出発する俺。だが、実はこの平和なクルマには俺自身も知らない途方もない力が隠されていた! そんな俺とキャンピングカーに、ある願いを託す人々が現れて―― ※本作は他サイトでも掲載しています

スマホアプリで衣食住確保の異世界スローライフ 〜面倒なことは避けたいのに怖いものなしのスライムと弱気なドラゴンと一緒だとそうもいかず〜

もーりんもも
ファンタジー
命より大事なスマホを拾おうとして命を落とした俺、武田義経。 ああ死んだと思った瞬間、俺はスマホの神様に祈った。スマホのために命を落としたんだから、お慈悲を! 目を開けると、俺は異世界に救世主として召喚されていた。それなのに俺のステータスは平均よりやや上といった程度。 スキル欄には見覚えのある虫眼鏡アイコンが。だが異世界人にはただの丸印に見えたらしい。 何やら漂う失望感。結局、救世主ではなく、ただの用無しと認定され、宮殿の使用人という身分に。 やれやれ。スキル欄の虫眼鏡をタップすると検索バーが出た。 「ご飯」と検索すると、見慣れたアプリがずらずらと! アプリがダウンロードできるんだ! ヤバくない? 不便な異世界だけど、楽してダラダラ生きていこう――そう思っていた矢先、命を狙われ国を出ることに。 ひょんなことから知り合った老婆のお陰でなんとか逃げ出したけど、気がつけば、いつの間にかスライムやらドラゴンやらに囲まれて、どんどん不本意な方向へ……。   2025/04/04-06 HOTランキング1位をいただきました! 応援ありがとうございます!

レベルアップは異世界がおすすめ!

まったりー
ファンタジー
レベルの上がらない世界にダンジョンが出現し、誰もが装備や技術を鍛えて攻略していました。 そんな中、異世界ではレベルが上がることを記憶で知っていた主人公は、手芸スキルと言う生産スキルで異世界に行ける手段を作り、自分たちだけレベルを上げてダンジョンに挑むお話です。

処理中です...