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第一部 異世界らしい冒険

65. 異世界264日目 依頼の報告

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島上陸15日目

 夜が明ける前に起きてから準備をする。今日でここの拠点ともお別れだ。

「もし転移魔法を使えるようになったらここを拠点にしたいよ。それまでは見つからないでいてくれるといいなあ。」

「まあ、島の魔獣のレベルとか考えてもわざわざここにくるようには思えないけどね。宝探しの依頼が取り下げられたら特にね。」

「そう思いたい。」


 ここの設備を考えると、今は入れないところにもかなりいい設備があるように思える。一番はどうやって魔素を維持しているかだね。わかればかなり役に立つんだけどなあ。
 とりあえず解錠の魔法を覚えないとダメだけど、どうすればいいのかが分からないんだよね。


 入口を隠してから階段を取り除いておく。東側の断崖に移動してから上ってきたときの階段で海面へ。ボートを出してから隣の島に移動する。ここで毛皮などの素材はリュックに入れて、魔獣狩りをしていた風を装うことにした。



 お昼には持ってきたお弁当を食べながら待っていると、約束通りガバナンさんが迎えにやってきてくれた。ボートで船の近くまで移動してから船に乗り込む。

「で、宝は手に入れたのか?」

「残念ながらそれらしきものは見つかりませんでした。なのであとはずっと狩りをしていて、移動代くらいは稼ぐことができたのでまだ良かったですよ。」

 大きな荷物を見せる。

「まあそんなに簡単に見つかるもんじゃねえからな。それじゃあ出発するぜ。」

「お願いします。」


 1時間ほどかかって港に戻り、残りのお金を返却してもらう。「また何かあれば声をかけてくれ。おいしい刺身も食べさせてやるからな。」と声をかけられた。お礼を言ってから港を後にする。



 カルミーラ商店に行き、ショウバンさんに取り次いでもらう。しばらくすると部屋に案内された。

「アースのメンバーだったかな?なにか聞きたいことでもできたのかな?」

「いえ、依頼を達成したので報告に来ました。」

 そう言って宝玉と言われる紫色の玉を見せる。

「は?・・・達成した?
・・・
・・・
 たしかに日記にあった玉と同じ色だな。ちょっと鑑定させてもらっていいか?」

 玉を受け取ったショウバンさんは鑑定をしたみたいでかなり驚いていた。

「道しるべの玉(良)・・・・。日記に書かれていた名前だ。これを本当にあの地図を頼りに見つけたのか?」


 このあと詳細な島の場所は説明しなかったが、島の位置については地図を頼りに見つけたこと、その島に海賊の住処と思われる場所があり、そこで宝玉を見つけたこと、海賊の宝については収納バッグに入っていて消えてしまっていたため、手に入れたのは少しの装飾品関係だったことを簡単に説明した。

 静かに話を聞いていた彼は、話を聞き終わるとなぜか涙を流し出した。

「嘘をついていたわけではなかったんだ。本当に最初から討伐しようとしていたんだ・・・。」

 どうやら彼は海賊の住処を調べることに成功して討伐軍を案内した人の子孫だったようだ。最近になってそのときの日記と今回渡してもらった地図が見つかったらしい。


 日記には海賊討伐までの経緯が書かれていたようだ。

 海賊に親を殺されたため、その復讐として保護された海軍にスパイとして海賊に入ることを伝えて潜入した。新人のうちは本拠地には連れて行かれないし、行くようになってからも船室に閉じ込められて本拠地の場所はわからなかった。
 海賊としてそこにいる間、人殺しまではしなかったが、多くの被害者を見て見ぬふりするのにかなり悩んでいたらしい。そして1年たった頃になってやっと島の位置がわかり、海軍へ報告を行った。
 島に行ってみたが、言われた場所に入り口はなく、海賊の本拠地は見つけられなかった。その間に町が襲われ多くの死者が出てしまい、さらに町に戻ろうとした討伐隊も殲滅されてしまった。このときに討伐隊に捕虜として捕まっていたと言うことで、彼自身は海賊に保護されたようだ。
 このあとの討伐隊には本拠地ではなく、船の位置を知らせることで無事に海賊を殲滅することができたが、海賊の本拠地を偽り、保身のための海賊の情報を改めて売ったと言われ、町から追放されたようだ。
 実際に起こったことから考えたらそう解釈されてもしょうがないと、彼は言い訳もせず、処刑されなかっただけでも良かったと素直に刑に従ったらしい。その後、彼は他の町に移り住んで商売を初めたようだが、このことは死ぬまで黙っていたようだ。

 日記の中に入っていた地図のようなもので海賊の住処が見つかれば自分の先祖は嘘を言っていなかったと証明できると思い、調査を依頼していたようだ。


 もちろん今更このことを公表する気はないが、自分の血に誇りを持つことができたようだ。約束通り海賊の拠点については詮索もしないし、詳細な説明も求めないことは彼の先祖に誓って約束すると言ってくれた。また宝玉については今後の冒険に役立ててくれともらうことができた。


 依頼書の完了証明をしてもらったが、すぐに依頼を撤回したらあなたたちが海賊の宝を得たと思われて困るかもしれないので、もし発見されてもしばらくは依頼を掲載したままにしておくようになっているらしい。その後は依頼が完了したわけではなく、依頼の取り下げと言うことで対応することになっているようだ。


 あと持って帰ることのできたお酒について確認してもらうことにした。正直飲めるのかどうかについてはわからないが、古いお酒というだけで結構なプレミアがつくことも多いらしい。当時の安いお酒についてはおそらく価値は低そうだが、上等なお酒も混じっているみたい。
 オークションに出したらそれなりの値段になるかもしれないと言われるが、どうするか?ジェンがせっかくだから少しは自分で飲んでみたいというので、ウイスキー、ブランデー、ワインなどよい銘柄と言われているものを何本かとっておくことにした。
 一応鑑定で腐っているものは除外しているので大丈夫なはずだ。お酒の名前も鑑定するとわかったしね。かなり興味があったのか、お酒の名前を書き出していたようなので、どこかで確認したいらしい。

 勝手がわからないので残りは委託という形でオークションに出してもらうことにした。いくらで売れたとしても個人を特定ができないので防犯上もその方が良さそうだ。今回のお礼もあるので特に手数料はいらないらしい。
 オークションは年に3回サクラで行われるらしいが、遅くともオークションの10日前にはサクラに運んでほしいと言うこととなった。サクラのお店には連絡しておくのでお店を訪ねれば良いようだ。まあそれまではそのまま収納バッグに入れておけばいいかな?

 ついでに手に入れた装飾品も買い取ってもらう。そこまでの価値はないが全部で5万2千ドールとなった。溶けた金は何かに使えるかもしれないので持っておくことにした。



 お店を出てから役場に行き、窓口に完了通知を持って行くが、内容が内容なので、とりあえず別の部屋で説明させてくれないかお願いしてみる。「どうしたのだろう?」という顔をされたが、何か事情があると思ったのかすぐに準備してくれた。部屋に入ったところで、今回の依頼のことについて説明する。

 詳細まで話せないが、ある島で海賊の住処だったと思われる場所を発見したこと、依頼主に確認してもらい、宝玉が目的のものだったことを説明する。

「ほんとに達成したんですね?すごいです!!聞いてはいけないことかもしれませんが、海賊の宝はすごかったですか?」

「この収納バッグに入っていたみたいなんですが、確認したら中身が消滅していました。なので見つけた宝はこの収納バッグとちょっとした宝飾品だけでしたよ。」

「そうなんですか、それは残念でしたね。」

「ええ、でも面白い依頼ができたし、収納バッグも手に入ったのでそれだけでも十分です。」



 このあと、依頼書の掲示期間について確認をとり、成功報酬は振り込みにしてもらった。実績ポイントも結構ついたのはありがたい。それでも良階位の実績まではまだ半分も達成できていないようなのでまだまだ時間はかかりそうだ。まあ冒険者になって1年にもなっていないのにここまで実績ポイントをためている方がすごいことらしいけどね。その前に実力をつけないと意味がないけど。



 なんか冒険という感じの依頼を達成できたのでちょっとテンションが上がっている。まあハラハラドキドキという感じではなかったのと、最終的に宝物というものが見つからなかったのが残念だったけど、まあ仕方がない。

 しかし、かなりの大きさの収納バッグが手に入ったのは大きい。とりあえずこれだけあれば普通の狩りで荷物がいっぱいになることはないだろう。ただ問題はあまりに大きな収納バッグを持っていると目をつけられると言うことだ。その辺りはどうやって行くかが問題だな。

 このあと素材の買い取りのお店に行って持って帰った素材や肉を買い取ってもらう。肉についてはある程度収納バッグに入れたままだ。素材になるものもあまりなかったこともあり、買取額は全部で1万3千ドールくらいだった。

 前に泊まっていた宿にチェックインしてから荷物を回収して夕食へと向かう。今日はせっかくなのでちょっと豪華な感じで行くことにした。お酒も飲んでいい気分になったところで宿に戻り、そのまま眠りについた。

~ジェンSide~
 海賊の拠点となったと思われる島にやってきたんだけど、なかなか手がかりが見つからなくてかなり落ち込んでしまっていた。イチは元気づけようといろいろと食事に気を遣ってくれているので、これじゃだめだと自分も頑張って明るく振る舞うようにした。こんなことで落ち込んでいてもしょうが無いからね。

 湖の水の動きが変なことに気がついてから地下空間を調べてみると何かおかしなところがあって、ちょっとテンションが上がってしまった。そして崖の調査をしてイチから報告があったときはほんとに最高だった。でも安全をみて探索は明日にしようと言われて「え~~~~!!」とは思ったけど、何があるかわからないから仕方が無いと割り切った。興奮してなかなか眠れなかったけど、イチも同じようだった。

 見つけた扉から中に入って行くと、途中から人工的なところになって驚いた。しかも照明までついている。”古代遺跡”という言葉が頭に浮かんだ。
 いろいろ調査をして海賊の頭だったと思われるヘンリーバッハの亡骸を見つけたときはかなりテンションが上がってしまった。骸骨を見つけて驚く以上にお宝の方が興奮したからね。ただ収納バッグの中身がなくなっていたのはとても残念だった。
 イチは収納バッグだけでもかなりの財産だと言っていたけど、やっぱり海賊の宝、金銀財宝って言うのはどんなものなのか見たかったわ。

 このあと他の部屋を調査したけど、一番興味が引かれたのはお酒よね。こっちの世界のお酒もなかなか美味しいのでどのくらいの味なのか気になるわ。売るって言う話もあるけど少しは自分用に確保しておかないと。
 シャワーを浴びるとき、ドアがないのでイチには念押ししたけど、本当にのぞきに来なかったわね。ぜったいのぞきに来ると思っていたけど、よく考えたら索敵スキルで居場所がばれるわね。隠密を使っても気配が消えたらすぐばれるしね。まあちょっとくらい覗いても知らないふりしてやってもいいけどね。


 一通りの調査の後は迎えが来るまではのんびりすることになった。もしかしてと思って持ってきていた水着の出番だわ。イチは悩殺されるかしらね?水着でくつろいでいると気にしない風を装っているけど結構チラチラ見ているわね。ふふふ・・・。
 全く関係ない人に見られるのは不快感しかないけど、イチに見られるのは恥ずかしさもあるけどちょっとうれしい気もするわ。
 「お嬢様、飲み物をご用意しました。」とか言ってトロピカルジュースみたいなものを作ってきてくれたのはナイスだわ。

 ほんとにここを拠点にできたら素晴らしいのになあ。転移魔法が簡単に使えるのなら絶対ここに住みたいわ。って、もとの世界に帰ることを考えないといけないのに、こっちの世界で住むことを考え出しているのはちょっとまずいわね。
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