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第一部 異世界ものの定番の人たち
79. 異世界374日目 車の購入を検討する
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なんか柔らかい感触で目を覚ます。なんだ?と思うと、ジェンだった。なんでジェンがすぐ横にくっついてきているの?そして胸が当たっているんだけど・・・。夕べ寝る前に枕で仕切っていたはずなのになんで無くなっているんだ?
固まったままどうしようかと思案していると、ジェンの目が開いた。
「あ、おはよ。」
「・・・おはよ・・・。」
「夕べはすごかったわね。」
「・・・わざと言っているだろう。何もしてないぞ。」
「そのくらいいいじゃない。横にこんなかわいい女の子が寝ているのに速攻で寝てしまうなんてちょっと失礼よ。」
「自分でかわいいって言うか・・・。否定はしないけど。昨日もいろいろとあって疲れていたんだからしょうがないだろう。
それにジェンの方が先に寝てたよね?そしてなんで自分に抱きついているんだ?」
「抱き枕。うーん、抱き心地はイマイチかな?」
体を擦り付けてくる。まずいよ。
「お願いだから、あまり刺激を与えないでくれ・・・」
なんとかジェンの手を振りほどいてトイレへ。やばかった・・・。ほんとにやばかった・・・。
準備をしてからまずは朝食へ。それから部屋を確認して、荷物を移しておくようにお願いする。
カサス商会へ行き、受付にアドバイザーの名刺を出すと、すぐに部屋に通されてカルニアさんがやってきた。
まずは残りの魔符核を500個納めることにした。
「とりあえず言われていた魔符核の残り500個を作ってきましたので納めさせていただきます。」
「おお、ありがとうございます。まさかこんなに早く納めてくれるとは思っていませんでした。」
「実はこのあと他の国に行こうと思っているので、先に依頼分を収めようと思った次第です。さすがに今回のペースで納めてくれと言われても対応はできませんので、もし追加の場合は連絡してください。」
「そうでしたか、ちなみにどちらの国に行く予定なのでしょうか?」
「まだはっきりとは決めていないのですが、アルモニアかハクセンのどちらかを考えています。いろいろと情報を集めているところなので、おすすめの国とかありますか?」
「そうですね、その二つの国であれば目的で異なってきますね。アルモニアは魔術、ハクセンは武術に力を入れている国ですから。
国の形態はヤーマンと同じ王制ですが、ヤーマンよりは領を治める貴族の権限が強い感じですね。ナンホウ大陸や特にトウセイ大陸ほどではありませんけどね。
あとは季節を考えて移動しないと動けなくなる可能性もあります。ハクセンはまだ雪が少ないのですが、アルモニアは雪が多いですからね。」
他の大陸の国についてもある程度情報を教えてもらう。他の人からもできるだけ情報を集めてから行く国を決めた方がいいだろうな。
今回カルニアさんに会いに来たのは車の購入についてである。資金的にも余裕が出てきたこともあり、車の購入を本格的に検討することにしたのである。
車の運転には免許が必要らしいが、運転自体は簡単なこと、試乗だけであれば免許がなくてもできること、新車購入の場合は納入に時間がかかることから先に車を頼もうと思ったのである。
話を聞くと、車を生産している商会は世界でもまだ5社くらいしかなく、この国で取り扱っているのはそのうちの3社のみらしい。
販売だけは多くの店で行っており、購入を決めた後の注文生産と言うことになっている。カサス商会はそのうち1社に出資しているみたいなので、取り扱いは基本的にその会社のものとなるようだ。
カサス商会でも一応車は扱っているが、1社のみなので、せっかくなら車販売の専門のお店に行った方がいいだろうと言うことでお店を紹介してもらうこととなった。紹介状を店長に渡すように言われるが、うちとも関係があるところなので変な商売はしないはずと言われている。
このあと早めの昼食をとり、車のお店へと向かう。
紹介された車のお店はチューリッヒ商会という車関係のものを主に取り扱っているお店だった。さすがに車が高級品となっているだけあってお店もちょっと高級志向で入りにくい感じだ。
お店に入ると、店員が出迎えてくれるが、ちょっと場違いな感じ。店員も笑顔なんだが、ちょっと微妙な感じをしている。なんか両親に聞いた話が思い出される。
海外に旅行に行ったときに結構ラフな格好で行くことが多く、お店に入っても半分放置される感じだったらしい。ゆっくり見られて楽だったが、買うと言ったらかなり驚かれて、店員の態度が一変し、いろいろと勧めてきだしたようだ。
高級店だとそれなりの格好をしているにもかかわらず、年齢的なものなのか、露骨にその態度は見えないが、やはり同じような感じだったようだ。
勝手に見ていいのかなあとジェンと話をしていると、若い担当者がやってきた。
「いらっしゃいませ。お車をお探しでしょうか?中古車でしょうか?新車でしょうか?」
うん、ここに来て車購入じゃなかったら何だというのだろう?さりげなく中古車を先に勧めてきたね。まあ自分でもこんな若い普通の服を着た男女がきても購入するとは思わないよね。
「とりあえずいろいろと見せてほしいんだけど。あ、これ紹介してもらったお店から店長に渡してもらうように言われた手紙なんですが、お願いできますか?」
「???店長宛ですか?失礼ですが、どなたからの紹介でしょうか?」
「カサス商会のカルニアさんからです。」
「え?カルニアさんですか?支店長の?」
「支店長?店長とは聞いているけど、どうなんだろう?たぶんその方だと思います。」
「一応確認させていただいてもいいでしょうか?」
「いいですけど、開封はしないでくださいね。店長に直接渡すように言われていますので。」
手紙をチェックしていた店員はかなり慌てた感じで「こちらで少々お待ちください。」と言ってテーブルを勧め、奥に引っ込んでしまった。奥の方で「あの方達にお茶を出してくれ!さい・・・」と聞こえてきた。
少しして女性店員がお茶を出してくれたんだが、なかなかおいしい紅茶だった。一緒にケーキも出てきてこれまたおいしい。やっぱり高級店だけあって出してくるお茶請けもひと味違うね。
しばらくお茶菓子を堪能していると、先ほどの店員がもう一人年配の人を連れてやってきた。
「ジュンイチ様、ジェニファー様。本日はわざわざご足労いただきありがとうございます。この店で店長をしているチューリッヒといいます。カサス商会のカルニア様からのお手紙を拝見しました。車の購入をご検討されているということでよろしいですか?」
「ええ、中古にするか新車にするか、サイズについてもどうするのかも決めていないのでいろいろと話を聞かせてもらいたくてやってきました。」
「わかりました。私から説明させてもらいますがよろしいですか?」
「いやいや、店長自らだと気を遣いそうですから、最初に来てくれた店員の彼にお願いしたいのですがいいですか?」
「いや、このものはまだ新人でどこまで説明できるか分かりませんので・・・。」
「いえいえ、大丈夫ですよ。分からないときは聞いてもらいますので。よろしくお願いします。」
「わ、わかりました。クーロン、くれぐれも粗相のないようにな。」
「は、はい。」
要望としては冒険者としての狩りに使うことが前提であること、荷物の積載性はそこまで重視しなくていいので、少々悪い道でも走れる方がいいこと、燃費はそれなりにあればいいことなどを伝える。
いくつか候補があるらしく、カタログのようなものを見せてくれる。良い点だけでなく欠点もちゃんと伝えてくれるのでいい店員に当たったのかもしれない。
最新の車の車内はかなり静かになっているらしい。以前の車は車軸とタイヤからかなり音が出ていたのでうるさかったんだが、かなり改善されているようだ。
いくつか見せてもらい、やはり一度実物が見てみたいところだが、残念ながら候補の車すべてが置いているわけではないようだ。候補としては3台なんだが、中古でも置いているものは2台のみだ。
とりあえず2台を見せてもらい、店の敷地で少し試乗させてもらう。ランクルのような感じの車で最大で5人乗れる上、後ろに荷台も付いている。
型は違うが最新のタイプについては郊外に移動していろいろと走らせてもらうが、地球の車くらいまで音が改善されていた。これなら車内でも十分に会話ができるな。
新車価格はそれぞれ180万ドールと280万ドールだ。中古品だと程度にも寄るが、普通のレベルで100万ドールと150万ドールとなるようだが、まだ最新のタイプはないらしい。もう一台はその間という感じだ。
もう一台はスレインさん達が持っているものなのでまだ、予想はできる。ジェンとも話をしたが、とりあえず中古はないな。あの音の差は大きい。
注文してから納入までは普通は4週間くらいかかるようだが、なんとか2週間で納めてくれるようだ。いったん持ち帰って検討してから明日また来ると連絡してからお店を後にする。
今日からは前のようにツインの部屋になったので気分は大分楽だ。やはりダブルベッドに寝るのはさすがにきつい。昨日はその前日あまり寝ていなかったことと、結構疲れていたからすぐに眠れたけどね。
「ダブルの部屋じゃ無くなってなんかうれしそうね。」
なんかジェンが怒った感じで言っていた。
「いや、それは、やっぱり気になって眠れなくなるからね。」
「昨日ぐっすり眠っていたのは誰だったかしら。ダブルの部屋の方がちょっと豪華なのに・・・。明日からまだダブルの部屋にしない?」
「勘弁してください。あと、それ普通は男の方が言う台詞だからね。何もしないからとか言って。」
「どうせ私には誘惑する魅力がないみたいだから大丈夫でしょ?」
「いや、魅力ありすぎるから困るんだ。って何を言わせるんだ!」
「あ、いや、そうなの・・・?まあ、それならツインの部屋で勘弁しておいてあげるわ。」
なんなんだか・・・。大切な人がいるというならもっと自分を大事にしてほしいよ。自分が誘惑?に負けて襲い掛かったらどうするつもりなんだよ。
夕食を取ってからお風呂に入り一息ついたところでカタログを見ながら再確認する。
候補となっているのはどれも同じようなタイプの車でサイズと馬力が異なるものだ。二人と割り切れば一番安いものでもいいんだが、何かの時の汎用性が低い。
大きなものはそれだけ便利そうだが、大きすぎて町中だと使いにくい。やっぱり結局はスレインさん達と同じものになるのかな?スレインさん達に聞いたときも使い勝手がかなり良いみたいだしね。
もちろん新車というのは確定事項だ。今までの車だと走りながらの会話も大変だからね。あとミラーとか音楽かけられるようにとか細かい修正も頼んでみよう。
お金は特許代で毎月5万ドール以上入ってくるし、やっぱり魔符核の収入が大きいね。全部で300万ドールだからね。おかげで今は残金が500万ドールを超えている。ここで車を買ったとしても十分だろう。
~チューリッヒSide~
二人がお店を後にしたと、店長のチュイーリッヒがほっとしていた。案内をしたクーロンも状況が分かっているのでかなり安堵しているようだ。他の店員は「何事か?」という表情をしていたが、クーロンが話をしたみたいでかなり驚いていた。
紹介状には二人はカサス商会のアドバイザーとして来てもらっているかなりの重要な地位の方達であると書かれていた。無理は言わないが、できるだけ融通してほしいということだ。さらにコーラン会長のお気に入りとか。
カサス商会にはかなり世話になっているので、紹介状まで持ってきてもらったお客をむげにすることはできない。しかも支店長自らの直筆の手紙である。特別扱いはしなくていいと書いているが、どこまで対応すればいいのか・・・。
下手に私が対応するよりは最初に担当したクーロンに任せてしまった方がいいのだろうか?二人は特に気にした風もなく、上機嫌で帰っていったようなので問題ないようだ。もしうまく売れるようだったらクーロンにはボーナスを出してあげないといけないだろうな。
~ジェンSide~
前にも泊まっていた宿に泊まろうと行ってみたらツインもシングルも満室と言われてしまった。どうも他国から団体の客が来ているみたい。
諦めて他の宿にしようかということになったんだけど一応聞いてみたらダブルの部屋なら空いていると言われたので速攻で取ってもらうことにした。
イチに話すとあっさりと泊まることになったので、「ダブルでも気にしないのかな?」と思ったら意味が分かっていないだけだったみたい。そのあとかなりうろたえている姿は面白かったわ。
拠点用のベッドマットのことに気がついてしまい、これを出すことになってしまったのでイチがお風呂に入っている間に洗浄をお願いして持っていってもらった。
戻ってきたイチはかなり悩んでいたが、諦めてベッドに入ってきた。しばらくドキドキしていたのだけど何もしてこない。ふと見ると本気で寝ていた・・・。
「は~~~。」
まあ、そうなるかもとは思ったけどね。そんなに魅力ないかなあ。同じベッドで寝ているのに速攻で眠られる?手を出して欲しいわけじゃないけど、ちょっと悲しくなってしまう。ご丁寧に間に枕で仕切りまで作ってるし。
枕をのけてイチにくっつくと何故か安心できた。やっぱり好きになってるのかなあ?
翌朝起きるとイチが固まっていた。知らないうちにイチに抱きついたまま寝ていたようだ。ちょっと冗談を言ったら怒られてしまった。でも私のこと可愛いとは思ってくれているみたい。だけどちょっと刺激が強かったみたいだった。イチ、ごめんね。
夜ツインの部屋になってうれしそうにしていたのでちょっと嫌みを言ってしまった。ダブルの部屋にしようかと提案したけど魅力的すぎて困ると言っていた。魅力を感じていないわけではないのね。顔がにやけるのを必死で耐えるしかなかった。
嫌われてはないと思うけど手を出そうとしないのは奥手だから?私から言わないと進展はしないのかなあ。日本人はあまり積極的に行かない人が多いというのも聞いたことがあるからイチもそうなのかなあ?
今のままでいいと思っている自分もいるし、なにか進展させたいと思っている自分もいる。私ってこんな性格だったかなあ?
固まったままどうしようかと思案していると、ジェンの目が開いた。
「あ、おはよ。」
「・・・おはよ・・・。」
「夕べはすごかったわね。」
「・・・わざと言っているだろう。何もしてないぞ。」
「そのくらいいいじゃない。横にこんなかわいい女の子が寝ているのに速攻で寝てしまうなんてちょっと失礼よ。」
「自分でかわいいって言うか・・・。否定はしないけど。昨日もいろいろとあって疲れていたんだからしょうがないだろう。
それにジェンの方が先に寝てたよね?そしてなんで自分に抱きついているんだ?」
「抱き枕。うーん、抱き心地はイマイチかな?」
体を擦り付けてくる。まずいよ。
「お願いだから、あまり刺激を与えないでくれ・・・」
なんとかジェンの手を振りほどいてトイレへ。やばかった・・・。ほんとにやばかった・・・。
準備をしてからまずは朝食へ。それから部屋を確認して、荷物を移しておくようにお願いする。
カサス商会へ行き、受付にアドバイザーの名刺を出すと、すぐに部屋に通されてカルニアさんがやってきた。
まずは残りの魔符核を500個納めることにした。
「とりあえず言われていた魔符核の残り500個を作ってきましたので納めさせていただきます。」
「おお、ありがとうございます。まさかこんなに早く納めてくれるとは思っていませんでした。」
「実はこのあと他の国に行こうと思っているので、先に依頼分を収めようと思った次第です。さすがに今回のペースで納めてくれと言われても対応はできませんので、もし追加の場合は連絡してください。」
「そうでしたか、ちなみにどちらの国に行く予定なのでしょうか?」
「まだはっきりとは決めていないのですが、アルモニアかハクセンのどちらかを考えています。いろいろと情報を集めているところなので、おすすめの国とかありますか?」
「そうですね、その二つの国であれば目的で異なってきますね。アルモニアは魔術、ハクセンは武術に力を入れている国ですから。
国の形態はヤーマンと同じ王制ですが、ヤーマンよりは領を治める貴族の権限が強い感じですね。ナンホウ大陸や特にトウセイ大陸ほどではありませんけどね。
あとは季節を考えて移動しないと動けなくなる可能性もあります。ハクセンはまだ雪が少ないのですが、アルモニアは雪が多いですからね。」
他の大陸の国についてもある程度情報を教えてもらう。他の人からもできるだけ情報を集めてから行く国を決めた方がいいだろうな。
今回カルニアさんに会いに来たのは車の購入についてである。資金的にも余裕が出てきたこともあり、車の購入を本格的に検討することにしたのである。
車の運転には免許が必要らしいが、運転自体は簡単なこと、試乗だけであれば免許がなくてもできること、新車購入の場合は納入に時間がかかることから先に車を頼もうと思ったのである。
話を聞くと、車を生産している商会は世界でもまだ5社くらいしかなく、この国で取り扱っているのはそのうちの3社のみらしい。
販売だけは多くの店で行っており、購入を決めた後の注文生産と言うことになっている。カサス商会はそのうち1社に出資しているみたいなので、取り扱いは基本的にその会社のものとなるようだ。
カサス商会でも一応車は扱っているが、1社のみなので、せっかくなら車販売の専門のお店に行った方がいいだろうと言うことでお店を紹介してもらうこととなった。紹介状を店長に渡すように言われるが、うちとも関係があるところなので変な商売はしないはずと言われている。
このあと早めの昼食をとり、車のお店へと向かう。
紹介された車のお店はチューリッヒ商会という車関係のものを主に取り扱っているお店だった。さすがに車が高級品となっているだけあってお店もちょっと高級志向で入りにくい感じだ。
お店に入ると、店員が出迎えてくれるが、ちょっと場違いな感じ。店員も笑顔なんだが、ちょっと微妙な感じをしている。なんか両親に聞いた話が思い出される。
海外に旅行に行ったときに結構ラフな格好で行くことが多く、お店に入っても半分放置される感じだったらしい。ゆっくり見られて楽だったが、買うと言ったらかなり驚かれて、店員の態度が一変し、いろいろと勧めてきだしたようだ。
高級店だとそれなりの格好をしているにもかかわらず、年齢的なものなのか、露骨にその態度は見えないが、やはり同じような感じだったようだ。
勝手に見ていいのかなあとジェンと話をしていると、若い担当者がやってきた。
「いらっしゃいませ。お車をお探しでしょうか?中古車でしょうか?新車でしょうか?」
うん、ここに来て車購入じゃなかったら何だというのだろう?さりげなく中古車を先に勧めてきたね。まあ自分でもこんな若い普通の服を着た男女がきても購入するとは思わないよね。
「とりあえずいろいろと見せてほしいんだけど。あ、これ紹介してもらったお店から店長に渡してもらうように言われた手紙なんですが、お願いできますか?」
「???店長宛ですか?失礼ですが、どなたからの紹介でしょうか?」
「カサス商会のカルニアさんからです。」
「え?カルニアさんですか?支店長の?」
「支店長?店長とは聞いているけど、どうなんだろう?たぶんその方だと思います。」
「一応確認させていただいてもいいでしょうか?」
「いいですけど、開封はしないでくださいね。店長に直接渡すように言われていますので。」
手紙をチェックしていた店員はかなり慌てた感じで「こちらで少々お待ちください。」と言ってテーブルを勧め、奥に引っ込んでしまった。奥の方で「あの方達にお茶を出してくれ!さい・・・」と聞こえてきた。
少しして女性店員がお茶を出してくれたんだが、なかなかおいしい紅茶だった。一緒にケーキも出てきてこれまたおいしい。やっぱり高級店だけあって出してくるお茶請けもひと味違うね。
しばらくお茶菓子を堪能していると、先ほどの店員がもう一人年配の人を連れてやってきた。
「ジュンイチ様、ジェニファー様。本日はわざわざご足労いただきありがとうございます。この店で店長をしているチューリッヒといいます。カサス商会のカルニア様からのお手紙を拝見しました。車の購入をご検討されているということでよろしいですか?」
「ええ、中古にするか新車にするか、サイズについてもどうするのかも決めていないのでいろいろと話を聞かせてもらいたくてやってきました。」
「わかりました。私から説明させてもらいますがよろしいですか?」
「いやいや、店長自らだと気を遣いそうですから、最初に来てくれた店員の彼にお願いしたいのですがいいですか?」
「いや、このものはまだ新人でどこまで説明できるか分かりませんので・・・。」
「いえいえ、大丈夫ですよ。分からないときは聞いてもらいますので。よろしくお願いします。」
「わ、わかりました。クーロン、くれぐれも粗相のないようにな。」
「は、はい。」
要望としては冒険者としての狩りに使うことが前提であること、荷物の積載性はそこまで重視しなくていいので、少々悪い道でも走れる方がいいこと、燃費はそれなりにあればいいことなどを伝える。
いくつか候補があるらしく、カタログのようなものを見せてくれる。良い点だけでなく欠点もちゃんと伝えてくれるのでいい店員に当たったのかもしれない。
最新の車の車内はかなり静かになっているらしい。以前の車は車軸とタイヤからかなり音が出ていたのでうるさかったんだが、かなり改善されているようだ。
いくつか見せてもらい、やはり一度実物が見てみたいところだが、残念ながら候補の車すべてが置いているわけではないようだ。候補としては3台なんだが、中古でも置いているものは2台のみだ。
とりあえず2台を見せてもらい、店の敷地で少し試乗させてもらう。ランクルのような感じの車で最大で5人乗れる上、後ろに荷台も付いている。
型は違うが最新のタイプについては郊外に移動していろいろと走らせてもらうが、地球の車くらいまで音が改善されていた。これなら車内でも十分に会話ができるな。
新車価格はそれぞれ180万ドールと280万ドールだ。中古品だと程度にも寄るが、普通のレベルで100万ドールと150万ドールとなるようだが、まだ最新のタイプはないらしい。もう一台はその間という感じだ。
もう一台はスレインさん達が持っているものなのでまだ、予想はできる。ジェンとも話をしたが、とりあえず中古はないな。あの音の差は大きい。
注文してから納入までは普通は4週間くらいかかるようだが、なんとか2週間で納めてくれるようだ。いったん持ち帰って検討してから明日また来ると連絡してからお店を後にする。
今日からは前のようにツインの部屋になったので気分は大分楽だ。やはりダブルベッドに寝るのはさすがにきつい。昨日はその前日あまり寝ていなかったことと、結構疲れていたからすぐに眠れたけどね。
「ダブルの部屋じゃ無くなってなんかうれしそうね。」
なんかジェンが怒った感じで言っていた。
「いや、それは、やっぱり気になって眠れなくなるからね。」
「昨日ぐっすり眠っていたのは誰だったかしら。ダブルの部屋の方がちょっと豪華なのに・・・。明日からまだダブルの部屋にしない?」
「勘弁してください。あと、それ普通は男の方が言う台詞だからね。何もしないからとか言って。」
「どうせ私には誘惑する魅力がないみたいだから大丈夫でしょ?」
「いや、魅力ありすぎるから困るんだ。って何を言わせるんだ!」
「あ、いや、そうなの・・・?まあ、それならツインの部屋で勘弁しておいてあげるわ。」
なんなんだか・・・。大切な人がいるというならもっと自分を大事にしてほしいよ。自分が誘惑?に負けて襲い掛かったらどうするつもりなんだよ。
夕食を取ってからお風呂に入り一息ついたところでカタログを見ながら再確認する。
候補となっているのはどれも同じようなタイプの車でサイズと馬力が異なるものだ。二人と割り切れば一番安いものでもいいんだが、何かの時の汎用性が低い。
大きなものはそれだけ便利そうだが、大きすぎて町中だと使いにくい。やっぱり結局はスレインさん達と同じものになるのかな?スレインさん達に聞いたときも使い勝手がかなり良いみたいだしね。
もちろん新車というのは確定事項だ。今までの車だと走りながらの会話も大変だからね。あとミラーとか音楽かけられるようにとか細かい修正も頼んでみよう。
お金は特許代で毎月5万ドール以上入ってくるし、やっぱり魔符核の収入が大きいね。全部で300万ドールだからね。おかげで今は残金が500万ドールを超えている。ここで車を買ったとしても十分だろう。
~チューリッヒSide~
二人がお店を後にしたと、店長のチュイーリッヒがほっとしていた。案内をしたクーロンも状況が分かっているのでかなり安堵しているようだ。他の店員は「何事か?」という表情をしていたが、クーロンが話をしたみたいでかなり驚いていた。
紹介状には二人はカサス商会のアドバイザーとして来てもらっているかなりの重要な地位の方達であると書かれていた。無理は言わないが、できるだけ融通してほしいということだ。さらにコーラン会長のお気に入りとか。
カサス商会にはかなり世話になっているので、紹介状まで持ってきてもらったお客をむげにすることはできない。しかも支店長自らの直筆の手紙である。特別扱いはしなくていいと書いているが、どこまで対応すればいいのか・・・。
下手に私が対応するよりは最初に担当したクーロンに任せてしまった方がいいのだろうか?二人は特に気にした風もなく、上機嫌で帰っていったようなので問題ないようだ。もしうまく売れるようだったらクーロンにはボーナスを出してあげないといけないだろうな。
~ジェンSide~
前にも泊まっていた宿に泊まろうと行ってみたらツインもシングルも満室と言われてしまった。どうも他国から団体の客が来ているみたい。
諦めて他の宿にしようかということになったんだけど一応聞いてみたらダブルの部屋なら空いていると言われたので速攻で取ってもらうことにした。
イチに話すとあっさりと泊まることになったので、「ダブルでも気にしないのかな?」と思ったら意味が分かっていないだけだったみたい。そのあとかなりうろたえている姿は面白かったわ。
拠点用のベッドマットのことに気がついてしまい、これを出すことになってしまったのでイチがお風呂に入っている間に洗浄をお願いして持っていってもらった。
戻ってきたイチはかなり悩んでいたが、諦めてベッドに入ってきた。しばらくドキドキしていたのだけど何もしてこない。ふと見ると本気で寝ていた・・・。
「は~~~。」
まあ、そうなるかもとは思ったけどね。そんなに魅力ないかなあ。同じベッドで寝ているのに速攻で眠られる?手を出して欲しいわけじゃないけど、ちょっと悲しくなってしまう。ご丁寧に間に枕で仕切りまで作ってるし。
枕をのけてイチにくっつくと何故か安心できた。やっぱり好きになってるのかなあ?
翌朝起きるとイチが固まっていた。知らないうちにイチに抱きついたまま寝ていたようだ。ちょっと冗談を言ったら怒られてしまった。でも私のこと可愛いとは思ってくれているみたい。だけどちょっと刺激が強かったみたいだった。イチ、ごめんね。
夜ツインの部屋になってうれしそうにしていたのでちょっと嫌みを言ってしまった。ダブルの部屋にしようかと提案したけど魅力的すぎて困ると言っていた。魅力を感じていないわけではないのね。顔がにやけるのを必死で耐えるしかなかった。
嫌われてはないと思うけど手を出そうとしないのは奥手だから?私から言わないと進展はしないのかなあ。日本人はあまり積極的に行かない人が多いというのも聞いたことがあるからイチもそうなのかなあ?
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