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第一部 異世界ものの定番の人たち
88. 異世界400日目 王族の人たち
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今日はクリスさんに言われて予定を空けている。どこに行くのかと思って宿で待っているとえらく大きな車でやってきた。なんかかなり豪華なんだけど殿下専用車か何かなのか?宿の人もかなり驚いていたんだけど、かなり緊張した顔になっていた。やっぱり王族仕様なのかな?
出発してから郊外に行くのかと思ったが、町の中心に向かっている。「どういうことだ?」とジェンと首を傾げていると、「いきなりですまんが、今日は私の両親に会ってくれ。」と言われる。
えっと、王子の両親って、、、国王陛下?王妃殿下?!
「むりむり、それは無理だよ!!」
なんとか回避しようと思ったが、クリスさんは聞いてくれない。
「そもそもこんな格好だからダメだよね?あと、国王陛下に対する所作なんか知らないから、不敬罪とかで処罰されるとかなってもいやだよ。」
「今日はプライベートなので問題ないよ。普通にしていればいいから。」
「普通って・・・。」
スレインさん達も苦笑いしている。彼女たちはすでに何度か会っているようだ。逃げ出されるかと思ったので直前までどこに行くのか秘密にしていたのか?
「クリスさん、確信犯ですよね?ねえ?そうですよね?」
クリスさんには目をそらされたが、口元が笑っている。くっそ~~~!
結局断りきれずに王宮へと連れてこられてしまった。「どうするんだ?」と、悩んでいる自分を後目にえらく立派な廊下を進んで豪華な部屋に到着した。
収納バッグなどの装備品はすべて預けてから部屋の中へ。立派なテーブルの椅子に座るように促される。ここまできたら覚悟を決めるしかない。少ししてドアが開くと前に遠目に見た国王陛下と王妃殿下が入ってきた。すぐに立ち上がって礼をする。
「そんなにかしこまらなくていいよ。私が父のクマライアス・ヤーマンだ。こっちは第二王妃のアルフィナだ。」
「アルフィナ・ヤーマン、クリストフの母よ。よろしくね。」
「初めまして、アースという冒険者パーティーのジュンイチと言います。今日はおまねきいただきありがとうございます。」
「同じくジェニファーと言います。」
「今日はプライベートで、息子の友人との食事と言うことだから、気にしなくていい。」
両親とはいえ、国王陛下と王妃殿下がやってきてかしこまるなと言う方が無理だよ。みんなが座ったところで自分たちも席に着く。マジでどうすればいいのかわからないよ。
「クリスがいろいろと世話になったらしいし、クリスのやっている事業にもいろいろと助言をしてもらっていると聞いている。」
「いえ、それほどたいしたことではありません。」
クリスさんが行っている事業はレストランの経営と食品の取り扱いだ。国内だけだがいくつかの町に数店舗お店を出していて、そこそこの売り上げを出しているらしい。また他の町にも出店している関係もあり、食品の運送関係もやっているのでそちらの売り上げもあるようだ。
一度お店に招待されて行ってみたんだが、結構美味しかったので知名度だけでなく、実力で売り上げを上げているような印象だった。
何か助言できないかと言われて他のお店の味について聞いてみたのである。やはりお店によって味の差が出てきているようだ。これはシェフのレベルによるので仕方がないところだろう。なかなか任せられる人材ができないため、お店を拡張しようとしてもできない状態になっていた。
お店の修行などについての話をしたところ、よくあるお店の料理について技術は盗めというやり方となっていたのだ。
そこでいろいろと問題や反発は出るかもしれないが、手順や味のマニュアル化、数値化したらどうかと説明したのである。ただ、その話をしたところで問題が出た。識字率のことである。
最近は無償の学校も増えてきていて文字や簡単な算術を教えるようになってきているが、まだ浸透率は低いようだ。子供の労働力に頼っているところも多いみたいだしね。この国の識字率は高い方みたいなんだが、それでも4割くらいらしく、年齢が上がると識字率も下がっていくようだ。
日本の感覚で考えると識字率は高いのが普通と思っていたし、結構教養ある人としか接してなかったので気がつかなかった。
とりあえず絵によるレシピと、重さを計らなくても分かるように計量スプーンや計量カップについて勧めてみた。カップで何杯という形にすれば手間もかかりにくいだろう。こうすればある程度のレベルまではできるようになるはずだ。材料や季節によって調整はしなければならないとは思うが、こればかりは個人の力量だろう。
基本的な部分をマニュアル化するだけでも教育時間は短くなるだろうし、その分他のことに時間を費やせるから育成期間も短くなると思われる。
あとはこの世界になかったピーラーやスライサーである。最初の頃は特に気にしていなかったんだが、この世界にはまだ開発されていなかったのだ。これを使うことで下準備の時間はかなり短縮されるはずだ。
これらの道具の使い勝手がいいようであれば商品化してはどうかとカサス商会を紹介してみたところ、かなり好評ですぐに商品化されることになったようだ。
これらは特許のようなものをとることができたので、これもアイデア料としてまたもらうこととなった。
カサス商会からも新たな関係構築についてお礼を言われ、また新人教育のマニュアル化などについても話をしてみたところかなり感謝された。父がマニュアルを最初に作る人は大変だけど、長い目で見ると絶対に効率的だと言っていたからな。
「まあ、それ以上に一番ありがたかったのは今まで女性にあまり興味を持たなかったクリスに妻の候補をあげてくれたことだ。
ほんとに心配していたんだぞクリス。しかもこんな綺麗なお嬢さんを4人もいっぺんに娶ろうとは隅に置けんな。」
「「「「「・・・・」」」」」
黙り込んだ5人は真っ赤になってしまっている。国王にも何度か会っているようなのですでに公認の仲なんだろう。
「そういえは、新人教育のマニュアルという話を聞いたんだが、王宮で働くものにも同じようなものを作ってみようと考えている。そのアイデアを使わせてもらってもかまわないだろうか?」
「それはかまいません。自分はあくまで教育手段の一つとして話しただけですので、それをうまく利用するかどうかは自由ですよ。」
「いいのか?なにか見返りを求めないのか?」
「問題ありません。見返りをもらうほどのことはしていませんので・・・。」
「父上、ジュンイチについては話したとおりでしょう。」
「たしかにな。」
「???」
「あまりに見返りもなく知識を披露してくると言うのでな。今回の件についても何を見返りに求めてくるのかと話していたんだ。しかし、本当にいいのか?なにか希望があれば聞ける範囲で聞くぞ。」
「えっと、それなら可能かどうか分かりませんが、希望と言うことであれば一つあります。
このあとアルモニアに行こうと思っているんですが、そこにいる高名な魔法使いとの面談の紹介状を書いていただくことはできるでしょうか?」
「まあ、紹介状を書くくらいなら大丈夫だろう。ただかなり偏屈と聞いているから、希望するようなことを話せるかは保証できないぞ。そのくらいでいいのか?」
「特に今はそのくらいしか思いつきません。ジェンはなにかある?」
「できれば王国の宝物とか見せてもらいたいわね。」
「わかった。紹介状はおって準備しよう。宝物については見せられる範囲内で良ければいいぞ。」
「「ありがとうございます。」」
「それでは食事の後に案内することにしよう。」
思ったよりも緊張せずに食事は楽しめた。ただ、クリスさんに呼び掛けた時、二人が一瞬固まって笑っていたのはなんだったんだろう?周りの護衛の人達も怪訝な顔をしていた。
食事の後で倉庫の管理をしているという人に案内してもらう。よかった、国王直々に案内されたらしゃれにならないところだった。食事の後はまた仕事に戻っていったのでそんな余裕もないんだろうな。わざわざ自分たちのために時間を割いてくれただけでもすごいことだ。
「これからもクリスと仲良くしてやってくれ。」と国王陛下に言われてしまったけど、いいのかなあ。
中には宝石や魔法に関する装備関係などいろいろと並んでいた。さすがに宝物と言われるだけあって宝石などはかなりすごいものが付いているし、装飾もすごい。
古代遺跡から発見された魔道具も展示されている。中には道しるべの玉もあったが、並なので登録数が少ないのかもしれない。触らない状態では鑑定レベルが低いので詳細が分からないのが悲しいところだ。
この辺りの本は一部しか閲覧を許可されていないと言われるが、本を見ることができるのでおそらく取り込みができているはずだ。
もしかしてジェンはこれを狙っていたのか?と、ジェンの方を見るとちょっと口元が緩んでいる。ばれたらやばいな。まあこの世界の人にはガイド本は使えないと思うけどね。
一通りの宝物を見せてもらってから挨拶をしてお城を後にする。スレインさん達はこのあとも用事があるみたいなので自分たちだけが先に城を出ることとなった。車で宿まで送り届けてもらったけど、降りたときの周りの目が痛かった。
宿に戻ってからガイド本を見てみると、本の取り込みができていた。いろいろとまずそうなことまで書かれているので時間があるときに読んでみよう。
~国王陛下side~
今日はクリスの婚約者候補の女性達とクリスの友人という二人との昼食会だった。
最初に話を聞いたときは何事かと思ってしまった。今まで女性にほとんど興味を持たなかったのに急に付き合いたい女性がいると聞き、驚いたものだ。しかも四人とは。
実際に彼女たちに会って話を聞くととてもよい女性たちだった。クリスの肩書きではなく、クリス本人を見ている感じで好感が持てた。素性を調べると元貴族だったようだが、すでにヤーマン国民となっていることだし、おそらく問題はないだろう。
冒険者だったアルフィナもかなり気に入ってもう娘同然に扱っているからな。他の妃達からも特に反対は出ていないし、孫達は冒険の話を聞いてかなり喜んでいたからな。
そのきっかけとなったのが今日会った二人ということだが、いろいろ調べたが詳細な素性がわからなかった。
一年ほど前にナンホウ大陸から入国し、ヤーマン国民として申請されている。そのあとアーマトで冒険者として登録したとなっている。身分証明証にもおかしなところもない。そのあとは地道に訓練をして今は上階位まで上がっており、実績も生活態度もよいようだ。特別依頼もいくつかこなしており、長年達成できていなかった依頼も達成したと聞いている。
そのほかいろいろな商会とも良好な関係を築いており、特に最近躍進しているカサス商会では相談役として雇われているらしい。ただしあまり表沙汰にはしていないようだが、なにか事情があるのだろうか?
たしかにクリスの商売にも助言をしてもらったようだが、そのアイデアは斬新でかなり効率的なものが多かった。新人教育を兼ねたマニュアルについてはかなり効率的で、確認したあとで王宮での教育に導入する方向で進めていた。いろいろと反対意見もあったが、簡単なものを作成して使ってみたところ、特に新人には喜ばれた。
正直素性が不明なため不安はあったがクリスの勧めもあり、会ってみることにしたのだが、確かにクリスの言うこともわかる気がした。
教育のためのマニュアルの話をした際にも特に褒美を求めないのには驚いた。結局求めたのは紹介状と宝物庫の見学だけだった。
クリスのことを「クリスさん」と呼んだのには驚いた。クリスも気にしていなかったし、人前ではクリストフ殿下と呼んでいるようなのでそのあたりはちゃんとわきまえているようだ。そういう友人がいてもいいものだろう。
クリスにも小さな頃からの友人はいるが、残念ながらクリスには親友という感じの友人はできなかったからな。年齢は少し離れているようだが、いい関係になってくれるとありがたい。
あの年齢にしては知識量がちょっと高すぎることがやはり不思議だ。伝承にある知識人というのは大げさか?過去に今までとは違う知識を持った人がいたという話もあるが、数日で煙のように消えてしまったとある。
今のところ特に害もなく、クリスとも良好な関係を気付いているし、我が国への恩恵も大きそうなので温かく見守っていくほうがいいだろう。
出発してから郊外に行くのかと思ったが、町の中心に向かっている。「どういうことだ?」とジェンと首を傾げていると、「いきなりですまんが、今日は私の両親に会ってくれ。」と言われる。
えっと、王子の両親って、、、国王陛下?王妃殿下?!
「むりむり、それは無理だよ!!」
なんとか回避しようと思ったが、クリスさんは聞いてくれない。
「そもそもこんな格好だからダメだよね?あと、国王陛下に対する所作なんか知らないから、不敬罪とかで処罰されるとかなってもいやだよ。」
「今日はプライベートなので問題ないよ。普通にしていればいいから。」
「普通って・・・。」
スレインさん達も苦笑いしている。彼女たちはすでに何度か会っているようだ。逃げ出されるかと思ったので直前までどこに行くのか秘密にしていたのか?
「クリスさん、確信犯ですよね?ねえ?そうですよね?」
クリスさんには目をそらされたが、口元が笑っている。くっそ~~~!
結局断りきれずに王宮へと連れてこられてしまった。「どうするんだ?」と、悩んでいる自分を後目にえらく立派な廊下を進んで豪華な部屋に到着した。
収納バッグなどの装備品はすべて預けてから部屋の中へ。立派なテーブルの椅子に座るように促される。ここまできたら覚悟を決めるしかない。少ししてドアが開くと前に遠目に見た国王陛下と王妃殿下が入ってきた。すぐに立ち上がって礼をする。
「そんなにかしこまらなくていいよ。私が父のクマライアス・ヤーマンだ。こっちは第二王妃のアルフィナだ。」
「アルフィナ・ヤーマン、クリストフの母よ。よろしくね。」
「初めまして、アースという冒険者パーティーのジュンイチと言います。今日はおまねきいただきありがとうございます。」
「同じくジェニファーと言います。」
「今日はプライベートで、息子の友人との食事と言うことだから、気にしなくていい。」
両親とはいえ、国王陛下と王妃殿下がやってきてかしこまるなと言う方が無理だよ。みんなが座ったところで自分たちも席に着く。マジでどうすればいいのかわからないよ。
「クリスがいろいろと世話になったらしいし、クリスのやっている事業にもいろいろと助言をしてもらっていると聞いている。」
「いえ、それほどたいしたことではありません。」
クリスさんが行っている事業はレストランの経営と食品の取り扱いだ。国内だけだがいくつかの町に数店舗お店を出していて、そこそこの売り上げを出しているらしい。また他の町にも出店している関係もあり、食品の運送関係もやっているのでそちらの売り上げもあるようだ。
一度お店に招待されて行ってみたんだが、結構美味しかったので知名度だけでなく、実力で売り上げを上げているような印象だった。
何か助言できないかと言われて他のお店の味について聞いてみたのである。やはりお店によって味の差が出てきているようだ。これはシェフのレベルによるので仕方がないところだろう。なかなか任せられる人材ができないため、お店を拡張しようとしてもできない状態になっていた。
お店の修行などについての話をしたところ、よくあるお店の料理について技術は盗めというやり方となっていたのだ。
そこでいろいろと問題や反発は出るかもしれないが、手順や味のマニュアル化、数値化したらどうかと説明したのである。ただ、その話をしたところで問題が出た。識字率のことである。
最近は無償の学校も増えてきていて文字や簡単な算術を教えるようになってきているが、まだ浸透率は低いようだ。子供の労働力に頼っているところも多いみたいだしね。この国の識字率は高い方みたいなんだが、それでも4割くらいらしく、年齢が上がると識字率も下がっていくようだ。
日本の感覚で考えると識字率は高いのが普通と思っていたし、結構教養ある人としか接してなかったので気がつかなかった。
とりあえず絵によるレシピと、重さを計らなくても分かるように計量スプーンや計量カップについて勧めてみた。カップで何杯という形にすれば手間もかかりにくいだろう。こうすればある程度のレベルまではできるようになるはずだ。材料や季節によって調整はしなければならないとは思うが、こればかりは個人の力量だろう。
基本的な部分をマニュアル化するだけでも教育時間は短くなるだろうし、その分他のことに時間を費やせるから育成期間も短くなると思われる。
あとはこの世界になかったピーラーやスライサーである。最初の頃は特に気にしていなかったんだが、この世界にはまだ開発されていなかったのだ。これを使うことで下準備の時間はかなり短縮されるはずだ。
これらの道具の使い勝手がいいようであれば商品化してはどうかとカサス商会を紹介してみたところ、かなり好評ですぐに商品化されることになったようだ。
これらは特許のようなものをとることができたので、これもアイデア料としてまたもらうこととなった。
カサス商会からも新たな関係構築についてお礼を言われ、また新人教育のマニュアル化などについても話をしてみたところかなり感謝された。父がマニュアルを最初に作る人は大変だけど、長い目で見ると絶対に効率的だと言っていたからな。
「まあ、それ以上に一番ありがたかったのは今まで女性にあまり興味を持たなかったクリスに妻の候補をあげてくれたことだ。
ほんとに心配していたんだぞクリス。しかもこんな綺麗なお嬢さんを4人もいっぺんに娶ろうとは隅に置けんな。」
「「「「「・・・・」」」」」
黙り込んだ5人は真っ赤になってしまっている。国王にも何度か会っているようなのですでに公認の仲なんだろう。
「そういえは、新人教育のマニュアルという話を聞いたんだが、王宮で働くものにも同じようなものを作ってみようと考えている。そのアイデアを使わせてもらってもかまわないだろうか?」
「それはかまいません。自分はあくまで教育手段の一つとして話しただけですので、それをうまく利用するかどうかは自由ですよ。」
「いいのか?なにか見返りを求めないのか?」
「問題ありません。見返りをもらうほどのことはしていませんので・・・。」
「父上、ジュンイチについては話したとおりでしょう。」
「たしかにな。」
「???」
「あまりに見返りもなく知識を披露してくると言うのでな。今回の件についても何を見返りに求めてくるのかと話していたんだ。しかし、本当にいいのか?なにか希望があれば聞ける範囲で聞くぞ。」
「えっと、それなら可能かどうか分かりませんが、希望と言うことであれば一つあります。
このあとアルモニアに行こうと思っているんですが、そこにいる高名な魔法使いとの面談の紹介状を書いていただくことはできるでしょうか?」
「まあ、紹介状を書くくらいなら大丈夫だろう。ただかなり偏屈と聞いているから、希望するようなことを話せるかは保証できないぞ。そのくらいでいいのか?」
「特に今はそのくらいしか思いつきません。ジェンはなにかある?」
「できれば王国の宝物とか見せてもらいたいわね。」
「わかった。紹介状はおって準備しよう。宝物については見せられる範囲内で良ければいいぞ。」
「「ありがとうございます。」」
「それでは食事の後に案内することにしよう。」
思ったよりも緊張せずに食事は楽しめた。ただ、クリスさんに呼び掛けた時、二人が一瞬固まって笑っていたのはなんだったんだろう?周りの護衛の人達も怪訝な顔をしていた。
食事の後で倉庫の管理をしているという人に案内してもらう。よかった、国王直々に案内されたらしゃれにならないところだった。食事の後はまた仕事に戻っていったのでそんな余裕もないんだろうな。わざわざ自分たちのために時間を割いてくれただけでもすごいことだ。
「これからもクリスと仲良くしてやってくれ。」と国王陛下に言われてしまったけど、いいのかなあ。
中には宝石や魔法に関する装備関係などいろいろと並んでいた。さすがに宝物と言われるだけあって宝石などはかなりすごいものが付いているし、装飾もすごい。
古代遺跡から発見された魔道具も展示されている。中には道しるべの玉もあったが、並なので登録数が少ないのかもしれない。触らない状態では鑑定レベルが低いので詳細が分からないのが悲しいところだ。
この辺りの本は一部しか閲覧を許可されていないと言われるが、本を見ることができるのでおそらく取り込みができているはずだ。
もしかしてジェンはこれを狙っていたのか?と、ジェンの方を見るとちょっと口元が緩んでいる。ばれたらやばいな。まあこの世界の人にはガイド本は使えないと思うけどね。
一通りの宝物を見せてもらってから挨拶をしてお城を後にする。スレインさん達はこのあとも用事があるみたいなので自分たちだけが先に城を出ることとなった。車で宿まで送り届けてもらったけど、降りたときの周りの目が痛かった。
宿に戻ってからガイド本を見てみると、本の取り込みができていた。いろいろとまずそうなことまで書かれているので時間があるときに読んでみよう。
~国王陛下side~
今日はクリスの婚約者候補の女性達とクリスの友人という二人との昼食会だった。
最初に話を聞いたときは何事かと思ってしまった。今まで女性にほとんど興味を持たなかったのに急に付き合いたい女性がいると聞き、驚いたものだ。しかも四人とは。
実際に彼女たちに会って話を聞くととてもよい女性たちだった。クリスの肩書きではなく、クリス本人を見ている感じで好感が持てた。素性を調べると元貴族だったようだが、すでにヤーマン国民となっていることだし、おそらく問題はないだろう。
冒険者だったアルフィナもかなり気に入ってもう娘同然に扱っているからな。他の妃達からも特に反対は出ていないし、孫達は冒険の話を聞いてかなり喜んでいたからな。
そのきっかけとなったのが今日会った二人ということだが、いろいろ調べたが詳細な素性がわからなかった。
一年ほど前にナンホウ大陸から入国し、ヤーマン国民として申請されている。そのあとアーマトで冒険者として登録したとなっている。身分証明証にもおかしなところもない。そのあとは地道に訓練をして今は上階位まで上がっており、実績も生活態度もよいようだ。特別依頼もいくつかこなしており、長年達成できていなかった依頼も達成したと聞いている。
そのほかいろいろな商会とも良好な関係を築いており、特に最近躍進しているカサス商会では相談役として雇われているらしい。ただしあまり表沙汰にはしていないようだが、なにか事情があるのだろうか?
たしかにクリスの商売にも助言をしてもらったようだが、そのアイデアは斬新でかなり効率的なものが多かった。新人教育を兼ねたマニュアルについてはかなり効率的で、確認したあとで王宮での教育に導入する方向で進めていた。いろいろと反対意見もあったが、簡単なものを作成して使ってみたところ、特に新人には喜ばれた。
正直素性が不明なため不安はあったがクリスの勧めもあり、会ってみることにしたのだが、確かにクリスの言うこともわかる気がした。
教育のためのマニュアルの話をした際にも特に褒美を求めないのには驚いた。結局求めたのは紹介状と宝物庫の見学だけだった。
クリスのことを「クリスさん」と呼んだのには驚いた。クリスも気にしていなかったし、人前ではクリストフ殿下と呼んでいるようなのでそのあたりはちゃんとわきまえているようだ。そういう友人がいてもいいものだろう。
クリスにも小さな頃からの友人はいるが、残念ながらクリスには親友という感じの友人はできなかったからな。年齢は少し離れているようだが、いい関係になってくれるとありがたい。
あの年齢にしては知識量がちょっと高すぎることがやはり不思議だ。伝承にある知識人というのは大げさか?過去に今までとは違う知識を持った人がいたという話もあるが、数日で煙のように消えてしまったとある。
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