【改訂版アップ】10日間の異世界旅行~帰れなくなった二人の異世界冒険譚~

ばいむ

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第一部 異世界ものに出てくる賢者

91. 異世界401日目 他の国に行くことにした

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 3月になってそろそろ北上もできるようになってきたので準備を開始することにした。初めての他の国への移動である。

 国王陛下から紹介状を書いてもらったこともあり、今回行くのはこの国ともかなり交流の多い北のアルモニアだ。アルモニアは魔法の技術に力を入れている国で、現代では最高レベルといわれる魔法使いのジョニーファン様がいるところだ。この人を中心に魔法に関する研究が行われており、最新魔法技術はここから発信されているといっても過言ではないらしい。

 普通に考えると、ただの平民が簡単に会えないだろうが、今回はヤーマン国国王陛下の紹介状があるので少しは会ってくれるのではないだろうかと期待している。できれば魔法の扉のことや魔法の威力アップについて話を聞いてみたい。


 他にもヤーマン国との関係も友好で、アルモニアでは共通語としてヤーマン語と同じ言葉が使われているという点も大きい。一応アルモニア語と言われるが一般的にはヤーマン語と言って問題ない。元々ヤーマン国の人間がその地域にいる人々をまとめ上げて興した国なので当たり前だ。

 最初に国として認めるかどうかは色々と揉めたらしいが、最終的に武力では無く平和的に解決したため関係も悪くないようだ。
 当時のヤーマン国王がこのことについてかかなり寛容で、国として認めることを推し進めたらしい。鉱石の採掘などの利権などいろいろ大人の事情もあったらしいけどね。


 ハクセンはヤーマン語に近いとはいえ、若干言葉が異なるため、もっとハクセン語を勉強してからにしたいという思いもある。
 ライハンドリア共通語でも宿泊とか買い物は大丈夫なんだが、やはりその国の言葉を最低限は話せた方がいい。加護のおかげか習得スピードも上がっているしね。


 アルモニアも王政をとっているが、象徴的な王になってきているヤーマンよりも王政は強いらしい。また各領地も貴族によって統治されているみたいだ。
 ただ各領地で絶対的な権限があるわけではなく、ひどい統治をしていると領主の罷免やその家の取り潰しもあるらしい。詳細は公開されていないが、いろいろと調査する機関があるのだろう。「貴族に娘がさらわれた」とか「すごい税金を搾取されている」とかいうことはないと信じたい。


 ちなみにこの国では奴隷制は採用されているようだが、奴隷の人権はある程度は保証されているようだ。まあ精神的に奴属させる魔法とかもないみたいだからね。

 奴隷・・・自由にできる女奴隷・・・。ジェンがいるから無理だし、それ以前にそんな奴隷を買う勇気もない。異世界ものでは成り行きで買うことになるんだけどね。盾役として雇うとしてもやっぱり秘密にしなければならないことが多いのでやめた方がいいだろうなあ。



 国は北の方になるため、3月頃までは寒いし、雪も深いようなので、移動できるのは雪が溶ける4月以降になるだろうな。あとは遅くとも9月初旬には南下しておかないと動けなくなるので、滞在期間は長くても5ヶ月くらいか?まあ状況によっては冬の間閉じこもるのもありだけどね。

 ちなみに北の国なので農作物とか大丈夫かと気になったんだが、今は寒冷地に強い品種などができたため問題ないようだ。もともと農地に向く平地は多かったみたいだしね。北海道みたいな感じかなあ。


 とりあえずある程度早めに北の国境の町サイレウムに移動してタイミングを見てから入国する流れかな?今回はバスじゃないのでいつでも出発できるのがいいね。



 今日までは訓練の予定を入れていたので道場へと向かう。訓練終了後にサクラから移動することを伝えるが、またサクラに来たときにはお世話になるかもしれないのでそのことも伝えておく。ここでも指導を受けたサインを書かされることになった。そんな有名にはならないと思うけどね。

 今回の訓練でも結構スキルは上がったことは実感できるんだが、やはりスキルレベルは上がっていない。どのくらいの技量になれば4に上がるんだか。ちなみにスレインさん達がレベル4なので良階位になるには最低限そのくらいは必要なんだろう。


 翌日はお世話になったお店を回り、カサス商会にも顔を出す。カルニアさんに面談を申し込むとすぐに時間をとってくれた。

「そうですか、アルモニアに行かれるんですね。」

「ええ、魔法について行き詰まっていることもあって、なにかのきっかけになればと思っているんですよ。」

「わかりました。ところで重量軽減バッグなんですが、前にお話しましたように、売れ行きは好調なんですが、ある程度行き渡ったみたいで、売れるペースは落ち着いてきています。
 今はこの大陸のアルモニア、ハクセン、タイガで販売しているんですが、近々ナンホウ大陸にも出荷しようと思っているんですよ。それで申し訳ないのですが、追加で魔符核を500個納めてほしいのですが、国を出る前に可能でしょうか?」

「一応ある程度作っておいたのでとりあえず200個までは今納められますよ。残りの300個はすぐには無理ですが、できる限り国を出る前にサイレウムで納めるということでよいでしょうか?」

 最近は作るペースもかなり上がってきているからね。実は時間をかければもっと小さく刻むことができるようになっているんだが、納入用には同じレベルのものを作っている。ある程度行き渡ったところで高級版として売り出せばいいと思っているからね。

「それで十分です。ありがとうございます。また何かあれば連絡しますので、もし追加納入がある場合はどこかの支店に卸して下さると助かります。」

「承知しました。」

「通常であれば新しい魔道具が出ると、その数ヶ月後には似たようなものが他の商会からも販売されるものなんですが、このバッグについてはまだ類似品すら出ていません。まだしばらくは独占販売ができると思いますよ。」


 他の状況を確認すると、インスタントラーメンの販売はかなり順調で、未だに売り上げは上がっているようだ。このため現在も生産が追いつかず、作った分だけ出て行く状態のようだが即売れではなくなってきており、生産量についておおよそのめどが付きそうだと言うことだった。
 このため、徐々に他の国での販売にも踏み切るつもりのようなので、売り上げは期待してくださいと言われる。

「そうそう、先日作成を始めたピーラーや計量カップなどですが、かなり好評で生産が全く追いつかないくらいです。こちらはすでに他の国でも販売を始めていますが、どこの国でも評判がすごくて一気に広まっていますよ。」

「まあ特にピーラーは使ってみたら便利さに驚きますからね。」

「形は単純なものなんですが、そのとおりですね。計量カップや計量スプーンもレシピ本と併せてかなり売れ行きが好調です。今はイベントで料理教室を行ったりしているんですが、そのときの説明がかなり楽になったと講師の方達から言われていますよ。」

 今まで発行されていたレシピ本もこの道具を使った形に書き換えられて出版されているようで、かなりの速度で広がっているようだ。


 ショッピングモールやフードコートは他の主要都市でも営業を始めており、盛況らしい。事前にいくつかの有名店と専属契約を結んでいて出店の際にはその店も出してもらっているらしい。フードコートだけでなく、レストラン街として少し高級なエリアも作り出したようだ。
 そのエリアにはインスタントラーメンの販売の他、無料コンサートなどのイベントを行うことでかなりの人がやってきているようだ。子供向けのイベントはかなり人気らしく、整理券を配るくらいになっている状態らしい。

 そろそろ他の商会もノウハウを身につけて競争に参加してくると思うのでそこは頑張ってくださいと言っておく。
 イベントのアイデアやお店を出す場合の注意点などいろいろと伝えておいたけどね。「どこでそんなアイデアを思いつくのですか?」と言われても、地球では普通だったからねえ・・・。しかもこっちでは魔法まであるし。



 今日は夕方からクリスさんやスレインさん達と食事をすることにしている。今回もスレインさんの家に招待されたので行ってみると、クリスさんはすでに到着していた。今日は護衛の人が建物を監視してくれると言うことでクリスさんも泊まっていけるようだ。

 アルドさんがメインとなって作ってくれた食事を堪能し、ジェンの提供するお酒に特にデルタさんは大興奮していた。夕食の後はみんなでいろいろと話をする。スレインさんたちもクリスさんと普通に話しているので大分慣れてきたのかもしれない。

 途中でクリスさんとこっそり話をしたところ、今のところ付き合いはうまくいっているみたい。商売の方もかなり順調らしく、収入も上がってきているので王族を抜けても十分やっていくめどが立ったらしい。
 一緒に販売しているレシピ本の売り上げもかなりの額になっているようだ。相変わらずこの本の売り上げの一部をといってくるが、それはお断りしている。

「順調にいけば来年の春頃には王族から抜ける予定だ。それでそのあとで結婚しようかと思っている。」

「ほんとですか!でもえらく早くないですか?まだ付き合いだして1ヶ月くらいだし、知り合ってからでも2ヶ月くらいですよね?」

「たしかに付き合っている期間は短いが、一緒に行動する時間は結構長いからね。彼女たちとの相性も問題ないようだから大丈夫だと思うんだ。」

 こっちの世界ではある程度相性を把握できるみたいで、直感を結婚の指標としている人たちも多いらしい。このため出会ってから数週間で結婚するということも多く、実際離婚率は低いらしい。

「本当はもっと早く結婚したいのだが、王族を抜けるには手続きが結構かかってしまうんだ。王族として結婚すると結構面倒だからね。
 それでできれば結婚式にはジュンイチとジェニファーにも参加してほしいと思っているのだが大丈夫か?」

「招待してくれるのならもちろん参加しますよ。それまでにはこちらの国に戻ってくるようにしますね。正式に決まったら連絡してくれると助かります。」

「わかった。日取りが決まったら連絡するようにするよ。今後もお互い頑張ろうな。」

「もちろん頑張りますよ。まずはクリスさんたちと同じ良階位を目指しますよ。」

「・・・そういう意味じゃないんだけどな。」

 なぜかクリスさんがため息をつきながら複雑な顔をしていた。



 翌日もお昼までいろいろと話をしておいとまする。それからお店で色々と買い出しをしてから夕方に役場に行って町を移動する連絡をしておく。
 他の冒険者にも挨拶をしてから夕食を食べて宿に戻る。ここの冒険者は遠征に出ていることが多いのであまり交流がなかったんだよね。まあ上階位の自分たちだと合同イベントのようなこともなかったしね。お風呂に入ってから早々に就寝。明日は朝から出発だ。



 ベッドに入って寝ようとしていると、頭の中に声が聞こえてきた。

「聞こえるかしら?私はこの世界の神の1柱のイギナよ。」

「「えっ?」」

 ジェンにも聞こえているみたいで驚きの声が聞こえてきた。

「新たな道具の申請を受けたわ。今後も頑張ってほしいと言うことで、私の祝福を与えることにしたの。今後も頑張ってね。」

 なんかまた祝福をもらえたようだ。

「こんなにいっぱい祝福をもらってもいいのか?」

「特許のような申請がそもそもなかなか通らないみたいだから普通はあまりないってことなんだろうけど、3つももらっているというのはちょっと怖いわねえ。まあ一つは今回の件のお詫びだしね。」

 スキルを確認すると、イギナの祝福の「芸術吸収上昇」がついていた。芸術は今のところあまりやる機会がないからそこまで恩恵がないなあ・・・。もう少し落ち着いてからだね。

「イチ!!!クラスのところを見てみて!!」

 ジェンがなぜかかなり興奮している。クラスのところを見てみると、神の祝福の効果が「物理耐性上昇-3、魔法耐性上昇-3」と順当に上がっているのは今までと同じなんだが、「能力吸収上昇-1」というのが追加されていた。

「能力ってことはすべての能力吸収が上昇するってこと?」

「そう考えていいのかも。」

「どのくらい上がるかわからないけど、武術と魔術についても吸収能力が上がりやすくなったってことなのかな?さらに知識、技術、芸術については上乗せか?まあ、あくまで補助的なものだとは思うけど、これはかなりうれしいね。」

「ほんと、よかった。イミザ神とカムヒ神についてはなかなか祝福をもらうのは難しそうだしね。」

 身分証明証のクラスの表示は変わらないからまだ大丈夫かな。神の祝福自体はそれなりにはいるみたいだしね。
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