【改訂版アップ】10日間の異世界旅行～帰れなくなった二人の異世界冒険譚～

第一部 異世界ものに出てくる賢者

104. 異世界465日目 北の拠点へ

　翌朝一緒に朝食を食べてから移動開始。昨日と同じ配置だが、もう拘束することはやめておいた。さすがにいつまでも腕を縛っているのも気が引けるしね。本人達は「拘束しないんですか？」と言ってきたけど。

　車で移動しながらお昼代わりにサンドイッチを食べて3時間ほどでサクランの町に到着する。入り口で受付を済ませてから町の中へ。
　それほど大きな町ではないせいか、門番もミルファーさんとスイートさんのことを知っていたくらいだ。「カルサイオはどうしたんだ？」とちょっと自分たちに不審の目を向けてきたのがちょっといやだった。


　スイートさんは両親と一緒に住んでいるみたいなので、いったんミルファーさんの家に行くことになった。町の外れにあるミルファーさんの家は夫婦で住むには十分な大きさの建物だった。家の中はいかにも新婚の夫婦という感じで、旦那さんが亡くなったことが余計につらそうだ。

　この後のことはどうするかまだ決まっていないが、旦那さんが亡くなったことは説明しないといけないので両親には話すことになりそうだ。スイートさんも彼氏に話すかどうか悩んでいるらしい。

　二人ともこの町で仕事をしているらしいのでとりあえず食うには困らないみたいだが、何かあったときのためにと思って盗賊達が持っていたお金を渡そうとしたが断られてしまった。

「助けていただいた上、ここに来るまでいろいろと支払ってくれたのにお金までもらえません。」

　そう言われてしまえば、これ以上無理に渡すわけにもいかない。自分たちは帰りにもこの町を通るのでまたそのときに何かあれば相談して下さいと言って出発する。



　途中で盗賊退治があったので予定より1日遅れの6日後の夕方にトルイトの町に到着する。手続きを終えて町に入り、まずは役場へと向かう。

　受付に依頼書を見せてから遺跡の場所を尋ねると、ここから歩いて2日かかるところらしいという返事をもらう。ただ車で行けるような道はないらしい。
　まだ調査が行われているので、遺跡の周りには町の兵士が滞在しているらしく、詳細はそこで聞いてくれと言われる。野営地として拠点は作られているが、宿泊道具や食料などはちゃんと準備していった方がいいみたいだ。


　いつまでも持っていても仕方がないので盗賊達の装備一式を売ることにした。装備のレベルが低いとはいえ、さすがに数が多かったので全部で35万ドールほどになった。魔道具や装飾品はそれほど価値がなかったんだが、それでも10万ドールほどだ。魔獣石は全部で15万ドールくらいあったので報奨金と合わせるとかなりの金額になった。
　そして車についてはさすがにぼろとはいえ、もとの値段が値段だったので2台で68万ドールと結構な値段となった。車は盗まれたものかと思ったんだが、盗賊がちゃんと購入したものだったようだ。もっと大きな町で売った方が高く売れる可能性も高いと言われたんだが、場合によっては下がることもあるようなのでここで売っておく。

　この日は役場に聞いたおすすめの宿というところでツインの部屋を取り、夕食の後はそうそうに寝ることにした。

～ジェンSide～
　今回も盗賊に襲われるというアクシデントがあった。イチが車を改造してくれていたので事なきを得たけれど、一歩間違えればやられていたかもしれないと考えるとちょっと怖い。
　やっぱり時間はかかるけど、ちゃんとした街道を通った方がいいと改めて思い知らされたわね。最初イチが遠回りでも安全な道を通った方がいいというのをちゃんと聞いていればよかったわね。まあ、女性も助けられたことを考えると結果オーライといえなくもないけど、もっと慎重に行動すべきね。


　こっちの世界に来てからいろいろ話には聞いていたけれど、盗賊にさらわれた女性への対応は難しわね。もとの世界でも被害に遭った女性の話は聞くけど、直接の知り合いじゃなかったので詳細はわからない。でもしばらくすると見かけなくなったりしていたのでどこかに引っ越したとかしたのかもしれない。根が深い問題だわ。

　こっちの世界でも問題は被害に遭った女性への周りの対応なのよね。本人達がどこまで話をするかだけど、寛容ではない人も多いと思う。まあ他の町に移住するという選択肢もあるからなんとかなると思いたい。ネットなどがない世界だから住むところが変わればやり直しやすいかな？
　でも盗賊なんかのせいで人生を全て棒に振るっておかしくないかな。彼女たちのせいでそうなったわけでもないのに。頑張って幸せになってほしいわ。

　もし自分も同じような被害に遭ったらイチはどんな反応なんだろう？穢らわしいと思われるのだろうか？受け入れてくれるんだろうか？
　まあ恋人同士にもなっていないので考えても意味が無いかな？