【改訂版アップ】10日間の異世界旅行~帰れなくなった二人の異世界冒険譚~

ばいむ

文字の大きさ
137 / 430
第一部 異世界の貴族達

121. 異世界557日目 ハクセン国へ

しおりを挟む
 温泉宿を出発してからひたすら車を走らせる。拠点に泊まりながら国境の町のトレラムの町までやってきた。到着したのはすでに夕方近かったんだが、さっさとハクセンに移動することにした。

 受付には長い列ができているんだが、まあなんとかなるだろう。入国の時に払うお金はヤーマンからと同じく300ドールだ。身分証明証のチェックはあっさりと終わりハクセン側の町であるタブロムへと入る。

 ハクセンはアルモニアよりも貴族の権力が強い国と聞いているので気をつけないといけない。特にジェンは目立つのでありがちな展開にはならないようにフードを深めに被ってもらっている。できるだけ変なことにはならないようにしたいからね。

「そこまで気にする必要ある?」

「ありがちな展開にはなりたくないんだよ。大丈夫とは思うけど、貴族と平民できちんと分けられているところを見るとやっぱり貴族の権力が強いので気になるよ。」

 ハクセンに入って思ったのはお店の入口にマークが記載されていることだ。マークは貴族専用、平民専用、指定なしの3種類となっている。

「今の地球でこんなに分けられているところってほぼ無いだろ?どういう展開になるのかわからないからね。」

「まあ、全くないとは言わないし、誰でも入れないお店とかはあったけど、確かにここまで徹底しているのは見ないわね。昔海外では普通にあったらしいけどね。」

 事前に聞いていたところでは、他国の貴族でも貴族扱いとはなるようだ。貴族は身分証明証の職業か賞罰のところに記載されているらしい。貴族と一緒の場合は入ることができるらしいが、いい顔はされないみたいだ。まあ貴族のお店はほとんどが個室になっているからそこまで問題は無いみたいだけどね。


 こっちの世界の貴族は国によって若干の差はあるようだが、基本的に上位爵、中位爵、下位爵の3段階となっている。感覚的に上位爵が公爵・侯爵、中位爵が伯爵、下位爵が子爵・男爵という感じだろう。
 アルモニアは貴族が領地を治めているが、ある程度は任命制だ。ハクセンはそれぞれの土地をそれぞれの貴族が治めるという形となっている。とはいえ、あまりに横暴な貴族は平民からでも嘆願ができるようにはなっているらしい。どこまで対応しているのかわからないし、嘆願書もどこまで効果があるのかわからないが・・・。


 とりあえずはまずは聞いていた宿に行って今日の宿泊を確保する。入口には平民専用と書かれていた。このあと役場に行って資料などを確認してから夕食は宿の併設の食堂で食べることにする。武器とかも見てみたいけど、それはもっと大きな町で見ればいいだろう。

 宿は平均的なところよりは若干ランクが下がるという感じか?まあその分値段が安いんだが、いいところは貴族専用となってしまうらしい。また平民用の高級宿はあまりないみたい。依頼は王都のハルストニアに移動しなければならないので、ここからだと15日くらいだろうか?


~ジェンside~
 マイムシの町を出発してから拠点に泊まりながら移動を繰り返した。拠点では二人で料理を作ったりしてなんか新婚気分だわ。結婚しても一緒に料理を作ったりするのかなあ?なぁんて考えていたらちょっと恥ずかしくなってしまった。


 イチが行きに泊まった温泉宿に今回も泊まりたいというので寄っていくことになったけど、今回は温泉を堪能したいので3泊はしていきたいというので久しぶりにのんびりしようと言うことになった。ここに泊まっている間は訓練も禁止としたので本当に久しぶりののんびり気分だ。

 部屋に入るとイチは予想通りお風呂に行ったので私も後から入ることにした。私が入ってくるのは予想していたのかあまり驚きはなさそうだったけど、水着を着ていないとは思ってないようだったわ。ふふふ。
 体を洗ってから湯船に入ってしばらくしたところで気がついたみたいでかなり驚いていた。そのあとのイチはかなり挙動不審に陥っていたのがおかしくて、笑いを堪えるのが大変だったわ。私が手をイチの顔に当てたところで勢いよくお風呂から出て行ったので、やっぱりまだまだかな。

 部屋に戻るとイチはくつろいでいたんだけど、襲いたくなるような発言をしてくる。その勇気も無いのにね。襲ってくるくらいならもうとっくに手を出しているでしょ。


 温泉は地球にいた時も結構あちこち行っていたみたいでいろいろな話を聞かせてくれた。行ってみたいなあ・・・。戻ったら連れて行ってあげると言ってこないのは記憶がなくなってしまうと思っているからだろうな。ちょっと悲しい。
 そう考えるとこの世界のことは夢みたいなものなのかな?でも、それでもいいの。記憶が完全になくなるわけではないみたいだから、いっぱい思い出を作っていたら元の世界に戻っても何か覚えているかもしれないわ。



 夕食の前に少しお酒を飲みたいのでつまみになりそうな料理だけ先に出してもらっていた。お酒の持ち込みについて係の人に聞いていたのだけど、係の人がなぜか驚いて出て行った。少しして戻ってきたときにはオーナー達を連れてきたので何があったのかと思ったわ。
 お酒が大好きみたいで、今回見てもらったお酒がどうしても気になったらしい。まあかなり珍しいものらしいからね。ここまで言われるとさすがにかわいそうなので試飲してもらうことにしたんだけど、かなり感激したのか最上級の部屋に変更してくれたのには驚いたわ。
 あとで聞いたところ、オークションの値段はまだ安い方だったらしいのよね。どうやら自分たちがギリギリに持ち込んだので参加者が少なかったみたい。あとで出品していたことを聞いてかなり悔しかったらしいわ。


 翌日からの食事はかなり豪華になって十分すぎる内容だった。デザートの果物は美味しかったけど、値段を聞くのが怖い気がする。昼は町の中をぶらぶらとデートして楽しかった。久しぶりにゆっくりした感じだったわ。

 この日の夕食ではイチも結構お酒を飲んでいたんだけど、かなり酔っ払ったみたい。早々に寝てしまったので私もベッドに入って眠りについた。まあ拠点だとそこまで気を抜けないからねえ。

 夜中におもむろに抱きしめられたので侵入者かと焦ったんだけどイチだった。酔っ払ってこっちのベッドに来てしまったようだ。
 寝ぼけているのか私に抱きついてくる、ん・・・胸に顔を押しつけないで・・・。なんかいい夢を見ているのか笑っているような表情をしていた。仕方が無いかと諦めて抱かれるままにしておいた。



 翌朝イチの声で目を覚したのだけど、どうやらまた私が冗談でイチのベッドに潜り込んだと思ったみたい。でも私のベッドだとわかって焦っていた。まあ抱きしめられたけど、それ以上は何もしてこなかったし、朝の状況を見てもほんとに寝ぼけていたんだろうな。逆に責任とってって迫った方がよかったかな?
 こっそりと思い出しているのか顔をにやけさせているのは気がつかないふりをしておいた方がいいわよね。

 結局3泊もかなり豪華な部屋で温泉と食事を堪能できた。さすがにここまでしてもらうというのは悪いので、秘蔵のお酒を一本渡すと、かなり喜んでくれたのでよかった。



 ハクセンの国に入ってからイチからフードを被って顔を出すなと念押しされた。余計なトラブルに巻き込まれたくないからと言うことなんだけど気にしすぎよね。でも「ジェンはかわいいから、ほんとに危ないから。」と真顔で言われたら従うしかないわよね。
 うふふ・・・かわいいだって。言った後でかなり照れていたけど、からかうのはさすがにやめてあげたわ。
しおりを挟む
感想 49

あなたにおすすめの小説

異世界生活〜異世界に飛ばされても生活水準は変えません〜 番外編『旅日記』

アーエル
ファンタジー
カクヨムさん→小説家になろうさんで連載(完結済)していた 【 異世界生活〜異世界に飛ばされても生活水準は変えません〜 】の番外編です。 カクヨム版の 分割投稿となりますので 一話が長かったり短かったりしています。

スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~

深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】 異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!

おいでよ!死にゲーの森~異世界転生したら地獄のような死にゲーファンタジー世界だったが俺のステータスとスキルだけがスローライフゲーム仕様

あけちともあき
ファンタジー
上澄タマルは過労死した。 死に際にスローライフを夢見た彼が目覚めた時、そこはファンタジー世界だった。 「異世界転生……!? 俺のスローライフの夢が叶うのか!」 だが、その世界はダークファンタジーばりばり。 人々が争い、魔が跳梁跋扈し、天はかき曇り地は荒れ果て、死と滅びがすぐ隣りにあるような地獄だった。 こんな世界でタマルが手にしたスキルは、スローライフ。 あらゆる環境でスローライフを敢行するためのスキルである。 ダンジョンを採掘して素材を得、毒沼を干拓して畑にし、モンスターを捕獲して飼いならす。 死にゲー世界よ、これがほんわかスローライフの力だ! タマルを異世界に呼び込んだ謎の神ヌキチータ。 様々な道具を売ってくれ、何でも買い取ってくれる怪しい双子の魔人が経営する店。 世界の異形をコレクションし、タマルのゲットしたモンスターやアイテムたちを寄付できる博物館。 地獄のような世界をスローライフで侵食しながら、タマルのドキドキワクワクの日常が始まる。

駆け落ち男女の気ままな異世界スローライフ

壬黎ハルキ
ファンタジー
それは、少年が高校を卒業した直後のことだった。 幼なじみでお嬢様な少女から、夕暮れの公園のど真ん中で叫ばれた。 「知らない御曹司と結婚するなんて絶対イヤ! このまま世界の果てまで逃げたいわ!」 泣きじゃくる彼女に、彼は言った。 「俺、これから異世界に移住するんだけど、良かったら一緒に来る?」 「行くわ! ついでに私の全部をアンタにあげる! 一生大事にしなさいよね!」 そんな感じで駆け落ちした二人が、異世界でのんびりと暮らしていく物語。 ※2019年10月、完結しました。 ※小説家になろう、カクヨムにも公開しています。

異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた

りゅう
ファンタジー
 異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。  いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。  その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。

キャンピングカーで走ってるだけで異世界が平和になるそうです~万物生成系チートスキルを添えて~

サメのおでこ
ファンタジー
手違いだったのだ。もしくは事故。 ヒトと魔族が今日もドンパチやっている世界。行方不明の勇者を捜す使命を帯びて……訂正、押しつけられて召喚された俺は、スキル≪物質変換≫の使い手だ。 木を鉄に、紙を鋼に、雪をオムライスに――あらゆる物質を望むがままに変換してのけるこのスキルは、しかし何故か召喚師から「役立たずのド三流」と罵られる。その挙げ句、人界の果てへと魔法で追放される有り様。 そんな俺は、≪物質変換≫でもって生き延びるための武器を生み出そうとして――キャンピングカーを創ってしまう。 もう一度言う。 手違いだったのだ。もしくは事故。 出来てしまったキャンピングカーで、渋々出発する俺。だが、実はこの平和なクルマには俺自身も知らない途方もない力が隠されていた! そんな俺とキャンピングカーに、ある願いを託す人々が現れて―― ※本作は他サイトでも掲載しています

スマホアプリで衣食住確保の異世界スローライフ 〜面倒なことは避けたいのに怖いものなしのスライムと弱気なドラゴンと一緒だとそうもいかず〜

もーりんもも
ファンタジー
命より大事なスマホを拾おうとして命を落とした俺、武田義経。 ああ死んだと思った瞬間、俺はスマホの神様に祈った。スマホのために命を落としたんだから、お慈悲を! 目を開けると、俺は異世界に救世主として召喚されていた。それなのに俺のステータスは平均よりやや上といった程度。 スキル欄には見覚えのある虫眼鏡アイコンが。だが異世界人にはただの丸印に見えたらしい。 何やら漂う失望感。結局、救世主ではなく、ただの用無しと認定され、宮殿の使用人という身分に。 やれやれ。スキル欄の虫眼鏡をタップすると検索バーが出た。 「ご飯」と検索すると、見慣れたアプリがずらずらと! アプリがダウンロードできるんだ! ヤバくない? 不便な異世界だけど、楽してダラダラ生きていこう――そう思っていた矢先、命を狙われ国を出ることに。 ひょんなことから知り合った老婆のお陰でなんとか逃げ出したけど、気がつけば、いつの間にかスライムやらドラゴンやらに囲まれて、どんどん不本意な方向へ……。   2025/04/04-06 HOTランキング1位をいただきました! 応援ありがとうございます!

レベルアップは異世界がおすすめ!

まったりー
ファンタジー
レベルの上がらない世界にダンジョンが出現し、誰もが装備や技術を鍛えて攻略していました。 そんな中、異世界ではレベルが上がることを記憶で知っていた主人公は、手芸スキルと言う生産スキルで異世界に行ける手段を作り、自分たちだけレベルを上げてダンジョンに挑むお話です。

処理中です...