【改訂版アップ】10日間の異世界旅行~帰れなくなった二人の異世界冒険譚~

ばいむ

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第一部 異世界王族からの依頼

146. 異世界778日目 王家の婚姻の試練

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 翌朝、宿で朝食をとっていると、役場から連絡が入った。至急の用事みたいだったのですぐに準備をしてから役場に向かう。
 受付に行くと、人捜しの緊急依頼が入ったらしい。「なんで自分たちに?」と思ったんだが、すぐに別室に案内される。なんと王宮からの指名依頼らしく、詳細についてはここで説明できないためすぐに王宮に向かってくれと言われて驚いた。どういうことだ?クリスさんになにかあったのか?


 大急ぎで王宮に向かって受付に話すとすぐに通してくれた。えらく簡単に通してくれたな?兵士に案内されて部屋に入ると、兵士だけでなく、国王陛下が座っていて驚いた。なにごとだ?席に着くとすぐに話が始まった。

「突然の話で驚いたと思うが、少し話を聞いてくれるか?非公式の場なので普通に話してもらってかまわない。」

「わ、わかりました。」

 二日前にクリスさんたちは王族が結婚する場合に行う試練に向かったようだ。試練と行ってもこの町から少し離れたところにある古代遺跡に王家の印を奉納する儀式らしく、国王陛下だけでなく、王家の男性とその相手は全員行く行事らしい。
 今回も今までと同じように簡単に終わる儀式のはずだった。事前に遺跡内の魔獣はすべて退治されており、危険は無いはずだった。奉納の場に5人が入って行ったんだが、規定の時間を過ぎても出てこなかったらしい。しばらくして儀式の見届け人が中を確認したが5人の姿がなかったようだ。
 誘拐の可能性については周りに兵士がいたことから考えにくく、索敵で確認を行っていた兵士の話だと突然気配が消えてしまったと言っていた。
 すぐに調査が開始され、さらに遺跡などに詳しい冒険者や学者にも調査を依頼したが全く進展がなかったようだ。

「なぜ自分たちに話が来たのでしょうか?」

「クリスのこともあったのでいろいろと話は聞いているからな。海賊の宝の依頼達成、アルモニアでの遺跡の調査結果とその実績、他にもいろいろと聞いていることがあるのでな。冒険者としての実績は少ないが、調査に関する能力については優れているという判断だ。依頼を受けてくれるのであればできる限りの情報は提供しよう。」

 うーん、どうするか?とりあえず詳細を聞かないとわからないし、クリスさんたちのことも気になる。ジェンの方を見てもうなずいている。

「わかりました。どこまでできるかわかりませんが、友人のクリストフ殿下たちのことでもありますので精一杯やらせてもらいたいと思います。」



 内容については口外しないことを条件に話を聞くことになった。このため魔道具で防音した部屋の中で話をする。
 まずは王家の試練について話を聞いたが、その儀式で使う物の一つは道しるべの玉のことだった。対外的にはただの案内の道具と言うことになっているが、古代文明の遺物ということはわかっているようだ。
 儀式というのはこの道しるべの玉に示される王家の遺跡にある祭壇に赴き、そこに書かれている王家の誓いを宣誓して王家の印をそこに奉納してくるというもののようだ。

 王家の遺跡は車で30分くらい走ったところみたいなので後で行くことにして、まずはその道しるべの玉を見せてもらう。


 ここからマイスターという係の人に変わり、前に見せてもらった宝物庫に案内される。いくつかある道しるべの玉は白色で、鑑定してみると転送の機能はすでに使用された後だった。

名称:道しるべの玉(並)
詳細:登録した場所までの残りの距離を示す。転移魔法を使うときの道しるべとなる。必要魔素がある場合に限り、1回のみ登録地点に転移することができる。
品質:並
耐久性:並
効果:並
効力:現在地表示-1、地点登録-1、転移-1(使用不可)

 魔素を流してみると、数字が表示されたが、どの玉も同じ場所を示しているようだ。

「行く場所はここに表示される場所が0になる地点と言うことですか?」

「よくわかりましたね?ああ、前に見たことがあるという話でしたね。示される数字の前の文字については意味がわかっていませんが、その後にある二つの数字が0となるあたりにある祭壇が目的地となります。」

「全部が0の場所というわけではないんですね?」

「そうですね、最後の数値は0にはなりません。」

「ちょっと相談させてください。」

『まだ遺跡の場所には行ってないけど、おそらく道しるべの玉で転移してしまったと考える方が妥当だよね?三つ目のうらの位置が0になっていないと言うことはおそらく地下か上空ってことになるんじゃないかな?』

『そう考えるのが妥当だと思うわ。一度遺跡の場所を確認させてもらった方がいいと思う。』

 しばらくジェンと意見交換をしてからマイスターさんに言って遺跡に移動することにした。車に乗せてもらい30分ほど走ったところで小高い丘にある遺跡に到着する。
 この遺跡は王家が管理しているようで、遺跡全体が塀に囲まれていた。結構広そうなエリアになっている。

 ここは王家の神聖な土地と言うことで、洗礼を受けてから中に入ることになった。

「通常は王家のものしか中には入れないことになっている場所です。王家の方が結婚する際にここで儀式を行います。王家を出られた方も1代限りはその儀式を行うことになっています。事前に魔獣の退治するときと、護衛の数名のみがここに入れます。」

 説明を受けながら遺跡の中に入り、奉納の場所へとやってきた。

「ここが目的の場所です。」

 建物の中に祭壇が造られており、岩に何かの型が作られていた。

「ここで王家の印をはめ込むということですか?」

「そうですね。道しるべの玉に祈った後、印をはめ込んでから血をそのプレートに垂らすというのが一連の儀式です。儀式の後、プレートが光っていることを見届け人が確認して終了となります。」

 血を垂らすということは王家の人間か確認するということかな?過去に光らなかった人とかもしかしたらいたかもね。

「今回、いなくなった後に印もなかったということで間違い無いですか?」

「はい。ですので最初の祈りの時に何かあったのではないかと思われます。」


 そこに古代ホクサイ語で文字が書かれていた。

「王家の方は古代ホクサイ語を読むことができるのですか?」

「ええ、古代ホクサイ語は王家の方の必修科目となっています。もちろんすべての文字が解明されているわけではありませんが、ここに書かれている文字などは十分に読むことができるはずです。」

 位置を確認すると、やはり転送先はここの地下になるようだ。空飛ぶ島だったらもっとテンションも上がっていたかもね。「ラピュタはやっぱりあったんだ!!」とか新しい冒険譚になりそう。
 文章の中に道しるべの玉に魔素を入れて念じることで道を開けると書かれているのでもしかしたら転送の発動条件になってしまった可能性があるな?

 転移先はここから下に50mくらい行ったところだろうか?探索してみるが、岩盤のような物に当たって全く探索できない。もしかして島で見たようなものなのか?これだと下に何かがあるとは思えないけど、地下に空洞がある可能性があるな。

『ねえ、前に禁書を読んだときにここのことが書かれていたように思うの。もともとは遺跡の内部だったけど、事情により封鎖して今の位置になったというようなことが書いてあったと思うわ。ただそのあたりの詳細については記載が無かったのでわからないけど。』

『たしかにあったね。封印のために入口を閉ざすという感じだったよね。』

 もし島と同じような感じだったら岩盤を破るのは無理と思っていいだろう。おそらく壁を維持する魔法が施されているはずだ。ただ元々出入りしていたと考えるとどこかに入口があるはずだ。でも遺跡の広さを考えると、隠されてしまっていたらまずわからないよね。
 前と同じように探索で通路を探してみるか?でももし通路が延びていなかったら出入り口はわからないだろう。島の探索でも数日かかったから時間との勝負になるな。他に方法がなかったらその手も考えよう。

『とりあえず国王陛下に話を振ってみて、入口がわからないようだったら転移を考えないといけないかもしれない。』

『でも未使用のものはなかったでしょ?』

『もしかしたらどこかにあるかもしれないのでそれも含めて確認しないとどうしようも無いと思う。』

 確認しなければならないことがあるのでいったん王宮に戻ることを伝えて車で引き返すことになった。
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