【改訂版アップ】10日間の異世界旅行~帰れなくなった二人の異世界冒険譚~

ばいむ

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第二部 異世界の貴族達2

192. 異世界1239日目 サビオニアへ

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 朝早くから開いているお店で朝食をとってからサビオニアへの門へと向かう。それなりには混んでいると思っていたんだが、ほとんど人がいない。まあ朝早いこともあるんだけど、それでも少なすぎるような気がする。やっぱりサビオニアに行く人が少ないのかねえ?
 特に平民用の方はガラガラだ。まあもともと平民は国外に出ることができないようなことを言っていたから当たり前なのかもしれない。爵位を持っていなかったら行くのはやめておいた方が良かったかもしれないというレベルだな。
 ここは貴族でも入国税が取られるようだ。それも一人2000ドールとかなりの金額である。あまり国の経営がうまくいっていないということだからお金を稼ぎたいのかな?

 国境の門を越えてラルトニアの町へと入ると、そのまま貴族エリアへと続いていた。貴族エリアの方はそこそこ綺麗な感じなんだが、平民エリアはどうなっているのかわからない。エリアは完全に分かれているが、行くことはできるようなのであとで行ってみることにしよう。
 町は整備された感じなんだが、何やらすこし匂いが漂っている。これって平民エリアからの匂いだろうか?下水関係がちゃんと整備されていないのかもしれない。そのせいでかなり香水の臭いが充満していてさらにむごい。

 役場に行ってから受付を済ませて話を聞いて見る。どうも貴族の冒険者の数はかなり少ないみたいで受付も閑散としている。貴族はそもそも護衛を雇っていることが普通らしく、冒険者を護衛に雇うと言うことはあまりないらしい。

 宿は結構高いがこれは仕方が無いだろう。宿自体は高級な感じなんだが、普通では2000ドールという感じのところでも4000ドールとかなりの値段になっていた。事前に聞いていたことなのでしょうが無いか。お店なども見ていくが、やはり値段が倍くらいしているのはものが少ないのか、単純に値段が高いだけなのか・・・。



 簡単な装備に着替えてから平民エリアへの門へと向かう。門にいる係員からは本当に行くのかと何度も確認された後、いろいろと注意事項を受ける。路地裏や危なそうなところに行かないこと、スリなどに気をつけることなど色々と言われてしまった。
 門をくぐるとそこはデパートのようなお店につながっていて、店の中を抜けて表通りに抜けるようになっていた。貴族と言うことを少しでもごまかすための処置だろうか?

 町に入るとやはり結構匂いが漂っている。下水処理があまりきちんとできていないのか、単純にそこら中でやっているかのどちらかだろう。
 町の人通りは多いが、歩いている人の服装の質は良くない感じだ。お店を覗いてみるが、商品の棚もかなり空きが目立っていて、商品自体が少ない。うーん・・・かなりやばそうな感じだなあ。
 認識阻害を使っているけど、この服装だと結構目立ってしまいそうなのでいったんお店に入ってから服のランクを下げることにした。


 いろいろと町中を見て回るが、やはり生活レベルはかなり低いことがわかる。お昼はここで食べることにしたが、結構よさげなお店でも料理の味は低い。料理自体は頑張っているんだが、香辛料があまり使われていないのと材料の質が悪いせいだろうか?それでも値段が150ドールとなっているのでこのエリアでは高級料理になるのかもしれない。
 夕方になったところで役場に行ってみると、冒険者と思われる人達が結構いた。話を聞いている限りでは並階位や上階位といったところか?しばらく様子を見てから男女二人組の冒険者に目をつける。
 年齢は30歳くらいで、装備は使い込んではいるが結構上等なものをつけているし、歩き方などを見ても結構な腕前のような印象を受ける。他の冒険者との対応を見ても変な感じではないし、女性とのペアだとこっちも話しかけやすいからね。

 二人が役場を出たので後をつけていくと、二人は夕食をとるのか居酒屋のようなところに入って行った。お店はあまり混んではないようだが、大テーブルに座ったのでよかった。

「こんにちは。すみませんが、少し話をさせてもらってもよいですか?」

「なんだい?変な依頼は受けないよ。」

 声をかけると女性の方が答えてきた。

「いえ、この国に来たのが始めてなのでいろいろと話を聞きたいと思いまして。もしよろしければ情報代として夕食はおごりますよ。」

「・・・もしかして役場から着いてきたのはあなたたちかい?変な気配を感じていたんだけど。」

 こっちを気にするような感じがあったけど、気付かれていたのか。

「すみません。その通りです。あなたたちが実力もあって声をかけやすそうだったので後をつけさせてもらったんです。でもよくわかりましたね。」

「素直に認めるんだね。まあまだ上階位だけどこれでも良階位くらいの実力はあると思ってるからね。ただあんたたちも結構な実力もってるよね。魔道具だけであれだけ気配は消せないからね。」

「これでも一応良階位の冒険者ですので・・・」

「他の国から来たにしてはサビオニア語をちゃんと話せるんだね?まあちょっとなまりはあるけどね。」

「頑張って勉強したので通じるようで良かったです。」

「いいさ。おごってくれるって言うのは本当だろうね。お酒代も入るってことでいいんだよね。」

「おいおい。さすがにそこまでたかるなよ。」

 一緒にいた男性の方が遠慮して声を上げてきた。

「いえ、そのあたりは気にしなくていいです。おごると言ったからにはちゃんと責任は持ちますよ。」

「よし、言質はとったからね。マスター!!」

 自分たちも食事を頼み、お酒を酌み交わす。まあお酒の相手は主にジェンに任せたけどね。一緒にいた男性もお酒はほどほどみたいで、自分と食べ物をつまみながら話すこととなった。

 彼らはタルミとマイトという二人組で、今は上級平民として活動しているらしい。やはりこの国から出るのはかなり厳しいみたいで、貴族でも国を出るのに許可がいるらしい。やはり貴族と平民の格差が大きくて、その土地の領主によっては悲惨な生活を強いられているようだ。
 このため冒険者になる人は多いらしいが、実力が付く前に亡くなる人もそれ以上に多いらしい。彼女達もかなり苦労はしたが最初のころに運良く他の国の冒険者と知り合えていろいろと教えてもらったので生き残ることができたらしい。
 ただ平民が良階位へ昇格するのはかなり厳しいみたいでなかなか階位があげられないようだ。このため上階位でくすぶっている冒険者は結構いるらしい。ちなみに貴族は普通に昇格試験は受けられるし、試験もかなり甘いという話のようだ。そういえばサビオニアの貴族の冒険者階位は当てにならないとか聞いたなあ。

 1時間ほどいろいろと話を聞いたところで二人と別れて宿に戻ることにした。かなり飲み食いしたこともあり、800ドールもしたが、宿代を考えると安いものだ。
 しかし聞いた限りでは貴族が絡むとろくなことがなさそうなのであまり町には寄らない方がいいかもしれないね。いろいろと見て回りたい気持ちはあるけど、余計なトラブルは極力避けたほうがいいだろう。
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