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第二部 長かった異世界旅行?

250. 異世界2239日目 遺跡のある島へ

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 サクラで数日過ごした後、町を出てから一気にルイサレムに向かう。車の性能も上がっているのでペースも速いが、それ以前に振動が少なくて快適だ。
 途中の宿泊は拠点のみだが、食べ物とかも十分に仕入れてきたので不便は全くない。今は荷物の容量の心配はほぼないと考えていいくらいだからね。サクラでもかなりいろいろと仕入れてきたからなあ。

 拠点での宿泊がさらに便利になった一つにいろいろと試作して電子レンジのようなものを作れたことが大きい。このおかげで準備が大分楽になったし、食べ物も簡単に温められるようになったからね。お弁当関係も温められるので、前以上にお弁当関係を買い込んでいる。おかげで収納の分類を細分化することになったよ。
 水分子を振動させるような魔符核をいくつか組み込んで試行錯誤することでなんとかそれっぽいものが完成した。おそらく最初の頃の電子レンジの性能しかないかもしれないけど、それだけでもかなり大きい。

 いろいろと組み込んだこともあり、サイズがかなり大きくなったので普通だと持ち運びも厳しいものだ。収納魔法がなければとてもではないが持ち運べない。
 さすがにこの理論はこの世界には広められないので完全に自分たち用に使っている。コーランさんに見つかったらとんでもないことになってしまいそうだ。重量軽減の魔符核と同じようにこの魔符核もたぶん自分たちにしか作れないよな。



 ルイサレムに着いてから、まずは港に顔を出していろいろと魚を仕入れていく。以前お世話になったガバナンさんも元気にしており、お昼もごちそうになった。魚の処理は手伝わされたけどね。
 他の知り合いにも声をかけてくれて、かなりの量を買い取る約束を済ませた。明日にはかなりの量を手に入れることが出来るので、これでしばらく魚に困ることはなくなるだろう。


 ここでふと重要なことに気がついた。

「なあ、どうやって島に渡ろうか?」

「え?それは船で・・・って、そう簡単にはいかないわね。」

「そうなんだよ。ガバナンさんに頼めば連れて行ってくれるだろうけど、なんでまた行くんだと言われそうだもんなあ。出来ればあの遺跡を発見されるリスクは避けたいよね。」

「確かにそうよね。またあの島に行くとしたら何かあると思われるわね。飛んで行くのはちょっと距離があるし、近くの島まで運んでもらってから飛んで行く?」

「どっちにしろ理由がないからちょっと厳しいよ。」

 誰かに頼むのが難しいなら自分で船を運転していくか?船は漁船レベルであれば簡単な講習さえ受ければ操船してもいいらしいので買ってみるのも手かな?普段は収納バッグに入れておけば問題ないし、持ち運べればどこの海でも使えるのが便利だ。

「運転はすぐに覚えられるみたいだから船を買ってしまうのも一つかもしれない。値段がどのくらいか分からないけど、幸い結構な資金はあるからね。」

「それもありかもしれないわね。それでどこで買うの?」

「どこだろう?」


 とりあえずよく分からないのでカサス商会に行ってみたんだが、船関係には手を出していないみたい。一応そういう商会を紹介することは出来るみたいなのでもしもの時はお願いすることにした。

「ここに長く住んでいるショウバンさんならなんとかなるかもしれないからそっちに聞いてみようか?もしだめならカサス商会か、あとはガバナンさんたち漁師経由しかないよ。」

 カルミーラ商店に行き、以前海賊の依頼を受けたショウバンさんに取り次いでもらう。少し待つことになったが会ってくれるようだ。

「お久しぶりです。以前はいろいろとお世話になりました。」

「久しいな。クリストフ王爵の結婚式の時以来か?あのときは結婚式に参加していて驚いたよ。まさか王爵と知り合いだったとはな。」

「クリストフ王爵とは冒険者だった奥さん達の縁で知り合ったんですよ。」

「そうだったのか。」

 しばらく挨拶をした後、今回の目的について話をする。

「中古でもかまわないのでそこそこの大きさの船が手に入らないかと思っています。外洋に出るわけではないので漁船レベルのものでもかまわないのですが、相場もお店もよく分からないので相談に乗ってもらえないかと思いまして。」

「船か・・・」

 しばらく考えた後、話し始めた。

「中古でもいいのなら私がもっている船を安く譲ってやっても良いが・・・どうかな?」

 新品の必要も無いし、ショウバンさんの持っている船ならそんなに程度も悪くないだろう。

「本当ですか!?もし譲ってくれるのならお願いしたいです。」

「わかった。いくつかあるので一度実物を見てから判断すればいい。」

 以前は海によく出ていたが、最近は出る機会もめっきり減ってしまったようだ。全部で3艘所有していて、どれでもいいのでほしいものがあれば譲ってくれると言ってもらえた。


 船の管理担当をしているラクニアさんという人が案内してくれるみたいで、一緒に港の方へと移動する。ほしい船があれば、値段についても彼に相談すればいいみたい。

 船は港の近くにある倉庫にあったんだが、思ったよりも大きなもので、一番小さなものでも10キヤルドと漁船くらいの大きさがあった。その上は15キヤルド、20キヤルドという大きさだ。
 どれも運転は一人でも出来るような簡単なもので、どの船にもキッチンや寝室など一通りの生活が出来るようになっている。もちろん大きなものほど設備が豪華だ。中古とは言っているが、整備が行き届いているので古さを感じない。

「このくらいかな?」

「そうねえ。あまり大きくても困るし、一番大きなものはないわね。」

 ジェンもクルーザーは持っているようだが、よく使うのは40~60フィート(12~18キヤルド)のサイズらしい。まあ最低限の移動が出来れば十分だし、一番小さいサイズでも十分かな?

「ラクニアさん。一番小さいのと真ん中のものはどのくらいの価格になるのでしょうか?」

「一番小さなものはもともとの価格は1000万ドールほどでした。改造費などはかかっていますが、すでに10年ほど経っているので300万ドールで良いそうです。
 真ん中のサイズはもともとの価格は2000万ドールほどでしたが、すでに20年ほど経っていますので450万ドールですね。
 おそらく普通であれば中古のものでもこの値段では手に入らないかと思いますし、中の設備もかなり贅沢なものが付いていますよ。主人からも本体価格のみの相場でかまわないといわれていますので、どちらを選んでもかなりお得ですよ。」

 正直なところ船の値段というのはよく分からないんだよなあ。カサス商会でざっくり聞いたところ、ショウバンさんが言っているように安いものでも1000万ドールはするみたいだし、中古でも500万ドールはするみたいだからね。しかも中の装備は本当に贅沢だしね。


 お店に戻る途中でジェンとどれにするかの話をする。一番大きなサイズはないが、残りの二つでかなり悩んでいる。金額的には十分足りるけどね。まあ収納には困ることもないし、やっぱり真ん中のものかな?
 お店に戻ってからショウバンさんと話をする。

「それでは真ん中のサイズのものを購入したいと思います。」

「それを選んだのか。私が一番よく使っていた船だな。中の設備も一番力を入れているものなのでかなりお買い得だと思うよ。
 思い入れはあるが、このまま使われないよりもいろいろと使ってもらった方がいいだろう。」

 支払いを済ませてから船の取り扱いについて話をしたが、収納できることを伝えると驚いていた。ラクニアさんに再び案内してもらい、船の所有権を移行する。
 ちなみにこういうものは収納魔法や収納バッグに簡単に入れられないように制約をかけることができるようになっている。なので制約をかけている場合はちゃんと設定しなおさないと収納が出来ないことになる。そうでなければ大きな収納バッグを手に入れれば簡単に盗まれてしまうからね。



 翌日は朝からガバナンさん達のところに行って大量の魚を仕入れる。鮮度もいいし、なかなかいいものを買うことが出来た。本当は個人にここまでの量を売ってくれないらしいが、特別だと言って売ってくれたんだけど、おそらく差し入れのお酒が効いたんだろう。

 その後、役場で船の操縦についての講習を受ける。講習は2時間で基本的なルールや船の取り扱いなどが説明されるだけだ。免状は身分証明証に登録するまでのものではなく、講習修了証が渡されるだけだった。

 航海に必要な設備はだいたい乗っているが、買い足さなければならないものもあったので、いろいろと買い出しする。


 次元魔法から船を取り出すときは慎重にしないと壊れてしまうので、収納する場合は台車に乗せた状態で収納し、それから陸上に取り出すことが普通らしい。ただそれだと面倒なのでなんとかならないかといろいろと試してみることにした。

 飛翔魔法で海面近くに移動し、ゴムボートを使って試してみた。最初は海面に出したとたんにはねてしまったりとか、水の中に出てきたりと結構苦労したが、何度かやっていくうちにうまく出せるようになった。
 それから実際の船で試してみるが、なかなか難しい。海面より上に出すとまずいので海面に少し潜るくらいに出すと、海水がよけていい感じに浮かんでくれるんだが、どのくらいの高さが一番いいのかを試さないとだめだった。収納は結構楽だったので何度か試してちょうどいい感覚をつかむことが出来た。



 翌日の朝早くに港近くの海上に移動してから船を出して出発する。運転はハンドルだけなのでかなり簡単だった。問題は船が接近したときに注意するくらいだからね。
 魔獣除けは自分が使っている能力の高いものに交換したのでおそらくこの近海では魔獣に襲われることはないだろう。

 地図を頼りに船を走らせて目的の島に到着する。海底の状況が分からないのでかなり離れたところで飛翔魔法で浮かんでから船を収納し、崖の下にある隠し扉のあるところまで移動する。ボタンを押すと扉が開いて中に入ることが出来た。
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