【改訂版アップ】10日間の異世界旅行~帰れなくなった二人の異世界冒険譚~

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36. 異世界265日目 新たな収入源と今後の予定

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36. 異世界265日目 新たな収入源と今後の予定
 できるだけ快適な拠点を作ってはいたんだけど、やっぱり宿にはかなわないようでかなりぐっすり眠っていたみたいだ。収納バッグが手に入ったからベッドもいい物を買っておくのもありかなあ?

 朝はゆっくりと起きてから宿の朝食をとる。そのあと部屋に戻ってジェンと今後の話をする。

「冬の間はこの町にいるつもりだけど、まとまったお金も入ったことだし、サクラと同じように鍛錬に当てようと思っているんだ。」

「そうね。ちゃんとしたところで本格的に習うのもいいかもしれないわ。ある程度技量は上がってきたとは思うけど、自分だけだと進歩が見えなくなってきているのよね。」

「うん、自分もそう思ってるんだ。サクラでこっちの道場のことをいろいろと聞いてきたからいくつかまわって決めようと思っている。」

「わかったわ。」

「3月くらいには一度サクラに戻ろうと思っているんだけど、その辺りは鍛錬の状況次第かな。その後どうするかはまたいろいろと話しを聞いて決めればいいと思う。」

「どこの街に行くにしても他の国に行くにしてもいったんサクラに戻らないと行きにくいからね。それでいいわ。」



 狩り場のことや魔獣や素材について改めてガイド本などで調べてからお昼を食べに行く。そのあと魔道具についての話を聞くためにカサス商会へと行ってみる。

 受付に声をかけると、すぐに奥の部屋に通された。なんかえらく焦っている感じだったんだけど、何かあったんだろうか?出されたお茶を飲んでいると、ステファーさんだけでなくコーランさんもやってきた。

「ジュンイチさん、ジェニファーさん、お久しぶりです。」

「あ、ど、どうも。お久しぶりです。こちらに来られていたんですね。」

「お久しぶりです。相変わらず精力的にやっていますね。」

「ええ、建物に閉じこもっているよりもいろいろなところに行く方が性に合っていますからね。」

 コーランさんがいきなり現れたのでちょっとびっくりだ。まあ、あちこち回っているらしいからここにやってきてもおかしくないんだけどね。


 ここ最近の話をした後、ステファーさんから先日の試作品についての話があった。

「預けてもらった魔符核についていろいろ検証させてもらったんだがね、80ヤルドの大きさに効果増強の補助刻印をするのが最も効率がよいという結論となったよ。性能と価格を考えると渡してもらっていた鉄の素材で十分だね。
 今出回っている重量軽減バッグは1日の消費魔素100くらいで20%の重量軽減の効果なんだがね、今回のものだと消費魔素30くらいで50%の重量軽減が見込める感じかね。」

 一人が10~20kg運ぶとして、今まで12~25kgだったものが、20~40kgと2倍持てるようになるというのは大きいよな。

「今の重量軽減の魔道具がおおよそ5千ドールで売られていますので、これよりも高くても十分需要が見込めると見込んでいます。今までの性能だと使用中に壊れてしまうリスクもあって購入を控えていた人もいたと思いますが、この性能であれば買おうと思う人も増えると思いますよ。
 バッグの販売価格については現在調整中なのですが、魔符核の買い取り額は一つあたり3000ドールくらいは考えていますがいかがでしょうか?」

「1個3千ドールですか?それでどのくらい買い取ってくれるのでしょうか?」

 結構な額なんだけど、定期的に購入してもらえるのならかなり大きな収入になるな。

「どのくらいのペースで納入できるかにもよりますが、まずは1000個という事を考えていますが、間違いなく売れる商品と思っていますので、あくまで最初に収めてもらう分と考えていただければと思います。納入する数は出来る範囲でかまいません。ただ販売のことを考えると最初は100個程度は収めていただきたいですね。」

「わ、わかりました。どのくらいで納入出来るかについては少し考えさせていただけますか?」

「はい、それでかまいませんよ。」


 商談についての話が一段落したところでコーランさんが真剣な表情になって話してきた。

「ジュンイチさん、ジェニファーさん。一つ重要な話をさせていただきたいのですが、よろしいでしょうか?」

 なにやらかなり重たそうな話のようだ。

「お二人のことについてはあまり詮索するつもりありません。ですが、お二人の知識、技術は我々が考えているよりも非常に高いように思われます。現在いろいろと助言をさせてもらっていますが、ジュンイチさん達のことについての詳細は商会の中でも限られたメンバーにしか伝えていません。
 もし知識や技術が外に漏れた場合、お二人の安全が犯される可能性があります。これらの情報を我々だけで独占したいという気持ちがないとは言い切れませんが、できるだけ広めないようにしていただいた方がよいかと思っています。」

 やはりこっちの世界では自分たちの知識はちょっと常識外れだったか。このあたりについてはジェンとも少し話をしていたので考えていた話をする。

「自分たちの知識が一般的なものとは異なることはある程度自覚しています。ただこのことを特に広めるつもりはありません。コーランさんのことは信頼していますので、今まで通りの関係を維持できたらと思っています。
 自分たちの知識についてですが、詳しくは話せませんが、あえて言うのであれば古代文明についていろいろと研究したデータを持っていると言うことです。
 自分たちも自分たちの知っていることがどこまで応用できるのか、どこまでできるかについてはわかっていない状態ですので、いろいろと試している段階なのです。」

 ちなみにこちらの世界でも自然科学を研究している人たちもいる。実際に本に書かれていることもある。ただ魔法の力が大きすぎて魔法での説明の方が簡単なこともあり、一般的には受け入れられていないのが現状だ。

「・・・わかりました。いずれ話していただけたらと思います。また信頼していただいいていること、とてもうれしく思います。」

「ただ魔刻印については変わった文字を使っているという認識はありますが、それほどのことなんでしょうか?」

「驚いたのは文字というより従来のものより格段に効率が高いことですね。かなり簡単な文字で火や水を出す効果も得られたと聞いています。今回の重量軽減の効果は目を見張るものがありました。
 またジェニファーさんの調合についても治癒魔法を使えていたとしても指導もなく良レベルの薬をいきなり作れるというのはやはりすごいことですね。あと錬金の効率も初心者としてはかなり早かったと聞いています。」

 魔刻印だけじゃなくて調合や錬金についてもちょっとやらかしていたのか・・・。

「そうでしたか。いろいろとやってみることが好きで、どうやったら効率よくできるかを常に考えるようにしていることがよかったのかもしれません。」

 ジェンがフォローしてくれた。

 一通りの話が終わったところで、また夕食の時間に迎えにきてくれるようなので、それまでに納品できる量と価格について決めておくこととなった。



 いったん宿に戻り、今回のことを相談する。

「やっぱりちょっとこっちの世界では自分たちは異質すぎるみたいだなあ。このことは事前に話していて良かったよ。」

「そうね。異世界というのはさすがに話すのは難しいから古代文明の研究というのは正解だったと思うわ。まあそれがすべてとは思ってないでしょうけどね。」

「元の世界に戻れるのがいつになるか分からないからね。こっちでもある程度力を持っていて信頼できる人を作っておかないと何かの時に困ると思うんだよね。コーランさんならいろいろと力になってくれると思うし。」

 納品数についてどうするか悩んだんだけど、あのレベルの魔符核を造るのに1個あたり30分かかっている。慣れてくればもっと早くなるかもしれないけど、頑張っても精神的に連続2時間が限度なので最大で8個くらいか?1週間で80個なので二人で160個となる。
 ただこれだけに集中する気もないので寝る前に少し作って行くと考えると1日二人で3~4個、すると1週間で35個くらいか?とりあえずは月に100個くらいかなあ。
 最初に100個と言われているけど、狩りの途中とかで作ったものがあるので大きさを変えるくらいでなんとかなりそうだな。


 夕方にコーランさんが車で迎えに来てくれたので一緒に食事へ向かう。夕食は海鮮を使った料理の店で、いつものように個室を用意してくれていた。

 まずは食事の前に商売の話となった。まあお酒が入ったらどうしようもなくなってしまうからね。

 魔符核の納入について、まずは最初に100個は今月末に納入できること、そのあと月末に100個くらいということで話をする。現段階ではどこまで対応できるか分からないのでこのくらいにしておかないと対応は厳しいと言うことで了解を得ることができた。
 ちなみに魔道具は8千ドールで売り出すことになったらしく、補助の術式や販売を考えて買い取り価格としては1個あたり3500ドールでお願いしたいというので了承する。

 あとインスタントラーメンの売れ行きは好調で、今月入金されるのは15000ドールほどだが、来月からは他の町でも販売を始めるため10万ドール以上は振り込めるだろうという話だった。

「あと、勝手なお願いで申し訳ないのですが、お二人をカサス商会のアドバイザーと言う形にしてもらえないでしょうか?」

 コーランさんがなんか変なことを言ってきた。

「現在、商売のやり方に助言をしていただいている点についてはカサス商会の社員内でも結構知れ渡っている状態です。ですが、魔道具などについては支店長クラスしか話は伝わっていません。また、お金の支払いや商品の納入について便宜上何かしらの役職を与えた方がスムーズにできます。
 もちろんカサス商会に取り込みたいという気持ちがないわけではありませんが、他の商会に対する牽制にもなりますので、こちらの方が良いかと思っています。」

 ジェンとも相談の上、この話を受けることにした。すでに肩書きの入った名刺まで準備していたようで、受け取っておく。状況によって使わせてもらうのもありかもしれないね。ちなみにこの名刺は仕掛けが入っているみたい。

 食事はかなりおいしくていろいろな話も聞けて楽しかった。さすがに商売を手広くやっているだけあって他の町や異国のことについてもかなり詳しい。今のところヤーマン国のあるホクサイ大陸、南方のナンホウ大陸、東にあるトウセイ大陸まで支店を広げているらしい。



 宿に戻ってからジェンと話をする。

「魔道具やラーメンの収入だけでそれなりに収入が見込めるように思うけど、せっかくなので今のまま冒険者として活動していきたいんだよね。せっかくなのでいろいろ見て回りたいというのが本音だけどね。
 正直お金を貯めてもいつか地球に帰ることになると思うと、お金を使えるところは使っていろんなことをやってみたいと思っているんだ。たとえ記憶がなくなるとしてもね。」

「そうね。私も同じ考えよ。確かに普通に暮らして行くには十分だと思うし、他にもお金になる魔道具は作れるかもしれない。でもせっかく普通じゃ体験できないことができるのにそれをしないというのももったいないわ。」

「ただ何かの時に対応できる力もいると思うので、自分たちの能力を高めていく必要はあると思っているんだ。幸いある程度の固定収入のめども立ったので、あまりケチらずに訓練していこうと思ってるよ。」

「たしかにそうね。武術系の個人レッスンでも1日千ドールくらいだから、そっちの方が効率いいわね。」

「あとお金がある程度貯まったら車の購入も考えているよ。」

「いいわね~~~。バスでの移動もいいけど、やっぱり車があると自由がきくからね。ただ運転が大変なのがつらいかも。」

「最悪運転手は雇うこともできるから、それも考えてもいいかもしれないよ。まあとりあえず買ってからの話になるけどね。」

「やっぱり、お金って、あればできることも広がるから必要だねえ。」

「たしかにね。泊まるところも最初の頃は一泊200とか300ドールのところに泊まっていたからなあ。それでもまだ相部屋じゃなかったからいい方だったんだけどね。」

 収入がある程度確保できそうになったので、いろいろとやりたいことができてきた。とりあえずレベルが一つ上がるくらいはがんばりたいな。

「本格的に鍛錬を進めることにしたけど、やっぱり何かあった時のことを考えて治療・回復系のレベルも上げておきたいと思っているんだよね。
 自分たちで体を傷つけるとかじゃなくて治療と回復のレベルを上げるいい方法ないかなあ?さすがに自分で骨を折って治療というのはちょっとつらいし、同じような怪我だとレベルも上がらないような気がするんだよなあ。
 ゲームだったら何でもいいから魔法を使ったらレベルが上がったりするけど、この世界ではそういうわけではなさそうだしね。まあそもそもそのゲーム設定が現実的には無理がありすぎるんだけどね。」

「誰かの治療をすればいいんだけど、あまり周りに知られたくないし、教会に目をつけられたくもないもんね。」

「普段治療できない人を治療すれば教会にも目をつけられにくいと思うけど、そうするとスラムとかの人になるんだよなあ・・・。」

「治療に出かけて襲われてもいやだしね。」

 普通の人は怪我や病気の時は薬を買ったり、教会で治療してもらったりしているけど、貧困層の人たちは基本的に治療を受けられないのが実情だ。この国ではまだ国や町の援助があるのでそこまでひどくはないけど、やはり貧困層の人たちが集まっているエリアはある。

「とりあえず孤児院とかに行ってみようか?」

 だいたいの大きな町には親を亡くした子供達を保護している孤児院があり、町からの補助と、寄付で成り立っているらしいがけど、経営が厳しいというのを聞いている。おそらく治療などは受けられないと思うので、そこに売り込んでみるか?

「自分達のことがばれても困るので、最近作った変装の魔道具で見た目をごまかせばいいかな?あまり大きな変装ではないけど、髪や肌や目の色と髪型を変えるだけでも印象は変わるし、それに加えて少し見た目も変えていれば分からないと思うよ。」

 もともと変装の魔道具は売っているんだけど、髪の色を変える、目の色を変えるくらいのものしか出回っていない。おそらく故意に表立って流通していないと思うんだけど、その程度だと意味がないので自作した。まだちゃんとしたものではないので、魔素の消費が多いのが難点だけどそれは仕方がないだろう。

「お互いに使ってもぱっと見は分からないから全く知らない人が見たら同一人物とは分からないと思うわ。あまりに印象を大きく変えすぎると表情とかがおかしくなってしまうしね。」


 宿を出てからある程度郊外に行ったところで、路地の陰に入って変装をする。衣類についてはフードをかぶっていたのでちょっと怪しくなったのはしょうがないところだ。まあこっちの世界ではそういう格好の人もいるからいいけどね。お互いに姿を確認してから移動を開始する。

 目的の孤児院に訪問すると、年配の女性が出てきた。

「突然の訪問で済みません。私たちは治療と回復の魔法の修行中で、ある程度のレベルまで修行はしてきました。いろいろな治療の経験を積みたいのですが、事情があってあまり公にしたくないんです。そこでここで治療の必要な人がいれば治療をさせてもらえないかと思って訪問させてもらいました。
 もちろんいきなりこんな風に言われても怪しいというのは分かっています。特に見返りとかを求めているわけではありませんが、いかがでしょうか?
 申し訳ありませんが、身分証明などを提示することはできませんので、信用してもらうしかありませんが・・・。」

 もちろん怪しいというのは認識しているし、こんな申し出を受けて素直に受け入れてくれるとは思えない。まあダメ元での提案なんだけどね。

 さすがにいきなりこんなことを言われてかなり混乱しているのが見て取れる。しばらく悩んだ後、「すこしお待ちください。」と言って奥へと入っていった。
 索敵をしてもしもの時は飛んで逃げるように考えているけど、中で他の人と話しているような感じだから大丈夫か?しばらくすると、年配の男性を伴って戻ってきた。

「治療を無償で行うということを聞いたのですが、どういう意図でしょうか?正直そのようなことをする意味が分からないのです。」

 まあそれはそうだろうな。ただで治療をしてくれるというのはどう考えても怪しいし。

「警戒されていると思いますが、特にたいした理由ではありません。まず一つは治療や回復の実践を行って経験を積みたいこと、もう一つは治療や回復スキルが使えることをあまり公にしたくないことがあります。
 この世界では治療や回復のスキルは貴重で、特に高レベルになればなるほどその傾向が強くなります。教会はそのような人を囲い込もうとしますし、また冒険者なども同じ傾向にあると聞いています。できればそのようなことには関わりたくないのです。
 あとはせっかく治療や回復をするのであればその治療を受けられない人に行えば、治療で収入を得ている人へ迷惑にもなりませんし、自分たちもいい気分になれるというものです。まあ自己満足ですけどね。」

「目的は分かりました。ただ通常は魔獣や動物などを治療したりすると聞いていますが、それは行わないのですか?」

「最初の頃はそれでも良かったんですが、それなりに治癒レベルが上がってくると人間と動物では体の構造が異なってくるため、細かな治療でずれが生じてくるのです。これは治療のやり方の違いもあるかもしれませんが、少なくとも私たちが行っている治療では大きな差となります。」

「ちなみにどの程度までの治療ができますか?」

「現段階でそこまではお話しできません。というのも自分たちもどこまでできるかは分からないからです。経験で言えば骨折までは治療した経験があります。」

「わかりました。ちょうど治療をしてほしい子供がいるのでそちらを見てもらえますか?」


 そう言って一つの部屋に案内された。そこにはかなり衰弱してしまっている女の子が横たわっていた。辺りには不審な動きはない。

「今朝屋根から落ちてあちこちを骨折してしまいました。現在できる対応は行いましたが、我々ではここまでが限度です。このままだとおそらくもって数日かと思います。」

 かなり酷そうだ。出血も完全に止まってないみたいでシーツも赤くなっている。血液ってある程度出たらアウトとかじゃなかったかな?

「わかりました、できる限りのことはやってみます。」


 まずは洗浄の魔法をかけて体やベッドを綺麗にする。
 それから体の内部について確認して行くが、もちろん専門ではないのではっきりとは分からない。両足の骨が折れて皮膚を突き破っている場所があるので両足ともに複雑骨折だろう。折れたのはすねの部分なのでまだいいかもしれない。関節だと結構大変だ。
 あとは肋骨が折れているけど、内臓の方は大丈夫そうだ。内臓には特に出血らしきものは見つからない。その他は擦り傷や打撲くらいだろうか?

 まずはジェンと二人で足の治療に取りかかる。骨がバラバラになっているのをもとの形に戻るように調整して行き、切れた血管や筋肉についても修復するイメージで治療をしていく。思ったよりもうまくいったみたいで顔色が一気に良くなった。
 このあと肋骨など骨の治療をしてから体全体に治癒魔法をかけると打撲や擦り傷も治ったようだ。女の子なので皮膚に跡が残らないように頑張った。しばらくすると彼女は目を開けて何があったんだという感じでこっちを見てきた。

「痛いところはない?」

 ジェンが声をかけると、「うん、大丈夫だよ。」と返事が返ってきた。なんとか回復はできたようだ。良かった・・・。

 とりあえずは大丈夫そうでほっとする。

「申し訳ありませんでした!!まさかこんな高位の治癒士とは思いませんでした!」

 先ほどの二人は土下座する勢いで謝ってきた。

「いえ、いきなりこんな話を聞いても信じられないのは普通だと思います。気にしないでください。」

「いえ、正直諦めていたんです。そしてダメだった時には責任を擦りつけようと思っていたんです。」

 謝ってきたのはそういう意味だったのね。

「これだけの治療をしたら数十万ドール以上の治療費を取られてもおかしくないくらいです。ほんとに無償でやってもらって良かったのでしょうか?」

「あくまで自分たちの修行のためにやっていることで、怪我や病気の人たちを利用させてもらっただけです。こちらに全くメリットがないわけではありませんので気にしないでください。」


 やっと落ち着いたところで他の人への治療についても話をして治療をしていくことになった。全体的に栄養不足のようなので、少しだけど魔獣の肉や食べ物を寄付することにした。

 他の子供達も何かしらの治療が必要な人が多く、前に骨折して変な風に回復した人もいたのですべての治療を終えると夕方になっていた。ちなみに病気についても回復魔法で治療できたので良かった。

 あくまで修行の一環として行っていることで、この町にずっといるわけでもないので当てにされすぎても困ること、ただまだしばらくはこちらにいるのでそれまでは定期的にやってくることを伝えておく。ただし、正体については秘密にすることだけは念押ししておいた。



 後日「無償で上級治癒魔法で治療をするさすらいの治癒士」という噂を聞くことになった。ただ真偽についてはかなり怪しいということになっているのでこれはこれでいいだろう。


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