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第十四章
633:ロビー隊はいかに進むか?
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休憩中にホンゴウとコナカが測定機器や双眼鏡を準備した。
ロビー、カネサキ、ホンゴウ、オオイダ、コナカ
この五人がロビー率いる探索チームの全メンバーである。
第一次隊のときと比較しても二名減っている上に、第二次隊を構成する他の探索チームは二〇名程度のものが多い。
ロビーのチームは探索可能な量という面では他のチームと比較して不利な状況だ。
逆にアドバンテージがあるとすれば、早く出発しているということと、第一次隊としてドガン山脈の東に到達したことがあることであった。
機器の準備ができたところで、ロビーが状況を確認に行く。
「やはり、サファイア・シー沿いに進むのはちょっと難しそうです」
ホンゴウが双眼鏡から目を離して、ロビーに話しかけた。
計測器に表示されている情報からも、ホンゴウの言葉が事実であることがうかがい知れる。
過去の写真から見る限り、島の最東端はサファイア・シーから流れ出る川の河口部と推測される。
そのため、サファイア・シー沿いに進むのが確実であるが、上から見下ろす限り、このルートを進むのは難しそうだ。
この島へ人類が始めて到達した場所が何故、「はじまりの丘」付近だったのか、ロビーは改めてその理由を知った。
彼らが住む島西部と異なり、東部は広い平地が少ない。
西部と比較して森が多いのと、地形が起伏に富んでいるのがその理由である。
もっとも、ロビーの目に見えているのは、島東部のほんの一部にすぎない。
(写真で見るよりだいぶ厄介そうだな……)
ロビー達が目指す島の東端部は、現在の位置からだとほぼ東南東の方角となる。
南はサファイア・シーやそこから流れ出る川があるため、それを越えて進むのは難しい。
比較的起伏が少なく、視界を遮る木々が少ないのは北側だが、こちらを通った場合、目的の場所へはかなり遠回りとなる。
残るはこれらの中間だが、中間のルートは目印が少ないため、道に迷う可能性が他のルートと比較してかなり高いと考えられる。
出発前の計画では可能な限り南寄りのルートを選択する予定だったが、改めて現場を見渡すと、当初の想定よりはるかに状況が厳しいことがわかる。
「カネサキさん、チップは二千五百枚でしたっけ?」
「そんなものよ。後ろの隊が追加を持ってくるとは思うけど、当分はこの枚数でいくしかないわ。あまりたくさんは持っていけないし」
チップ、と言っているのは、今回の探索から用いられるようになった探索支援用の道具である。
チップが発信する微弱な電波を専用の探知機で受信することで、チップと探知機のかなり正確な位置関係を把握することができる。
今回はこれを利用して、探索の効率を上げるつもりである。
場所にもよるが、探知機は半径数百メートルにあるチップの位置を把握できる。
第二次隊の取り決めとして、探索を実施した場所についてはチップを置くことになっているが、手持ちのチップではせいぜい数十キロ四方の範囲をカバーできる程度である。
ロビーの隊が目指す島の東端は、現在地から三〇〇キロメートル強の距離と推測されている。
そのため手持ちのチップでは、ほぼ直線で島の東端に向かわない限り、途中でチップが不足する可能性が高い。
「どうせ後から来る組のほうが人数が多いんだから、まっすぐ向かってしまえばいいんじゃないの?」
ロビーが考えるそぶりを見せると、すぐにカネサキが反応した。
実際のところ、ロビーもカネサキと同じように考えていたのであるが、今回はロビーの隊だけが実際の探索を行うわけではないので、その点を気にする必要があると思っていたのだ。
カネサキは、それに対して「そこは配慮しなくてもよい」と答えたのである。
隊の中では最上位であっても、ロビーの組織人としての経験は隊の中で最も少ない。
そのため、こうした他組織が絡む問題はそれとなくカネサキやホンゴウがロビーに助言するケースがある。
そして、ロビーも自分の経験不足については正直に認めているため、こうした助言を素直に受け入れることができる。
「ホンゴウさんはどう考える?」
ホンゴウに確認を取るのは、彼がロビーの隊のナンバーツーであることに配慮したためだ。
「時間を考えれば、カネサキさんの仰るとおり可能な限り直線的に進むのがよいと思われます。それと……いえ、今は少しでも先を目指したほうがよいかと」
「ちょっと待って、他に急ぐ理由があるの?」
ホンゴウが何か言いかけたのを聞きとがめたのはカネサキである。
「ホンゴウさん、気になることがあれば先に言ってくれないか? 話してしまえば、後の対処は俺の責任になる」
ロビーの言葉にホンゴウは確証はありませんが、と前置きしてから自らの見解を話し始めた。
ホンゴウによれば、今後、ECN社はポータル・シティやインデストで起きている問題に対して、中心的な立場で対処しなければならなくなる可能性が高い。
しかし、旧「タブーなきエンジニア集団」のメンバーを除けば、ECN社内部にこれらの問題への対処について好意的な者は必ずしも多くないと考えられる。
問題の発端はOP社にあり、現在対処しているメンバーも旧「タブーなきエンジニア集団」が中心であり、従来のECN社からすれば関係ない、という空気があっても仕方のないところである。
ただし、世論はECN社が事態の収拾に関与しないことを許さないであろう。
そのため、旧「タブーなきエンジニア集団」と近いメンバーが事態の収拾に当たらない限り、ミヤハラやサクライといった現経営陣の立場は非常に厳しいものになると思われる。
そして、ロビーの隊は旧「タブーなきエンジニア集団」と近いメンバーが少なくない以上、「東部探索隊」で可能な限り早く成果を出して、本社に戻る必要がある。
ホンゴウはそれ以上のことを指摘しなかったが、ロビーにもある程度のことは理解できる。
ロビー、カネサキ、ホンゴウ、オオイダ、コナカ
この五人がロビー率いる探索チームの全メンバーである。
第一次隊のときと比較しても二名減っている上に、第二次隊を構成する他の探索チームは二〇名程度のものが多い。
ロビーのチームは探索可能な量という面では他のチームと比較して不利な状況だ。
逆にアドバンテージがあるとすれば、早く出発しているということと、第一次隊としてドガン山脈の東に到達したことがあることであった。
機器の準備ができたところで、ロビーが状況を確認に行く。
「やはり、サファイア・シー沿いに進むのはちょっと難しそうです」
ホンゴウが双眼鏡から目を離して、ロビーに話しかけた。
計測器に表示されている情報からも、ホンゴウの言葉が事実であることがうかがい知れる。
過去の写真から見る限り、島の最東端はサファイア・シーから流れ出る川の河口部と推測される。
そのため、サファイア・シー沿いに進むのが確実であるが、上から見下ろす限り、このルートを進むのは難しそうだ。
この島へ人類が始めて到達した場所が何故、「はじまりの丘」付近だったのか、ロビーは改めてその理由を知った。
彼らが住む島西部と異なり、東部は広い平地が少ない。
西部と比較して森が多いのと、地形が起伏に富んでいるのがその理由である。
もっとも、ロビーの目に見えているのは、島東部のほんの一部にすぎない。
(写真で見るよりだいぶ厄介そうだな……)
ロビー達が目指す島の東端部は、現在の位置からだとほぼ東南東の方角となる。
南はサファイア・シーやそこから流れ出る川があるため、それを越えて進むのは難しい。
比較的起伏が少なく、視界を遮る木々が少ないのは北側だが、こちらを通った場合、目的の場所へはかなり遠回りとなる。
残るはこれらの中間だが、中間のルートは目印が少ないため、道に迷う可能性が他のルートと比較してかなり高いと考えられる。
出発前の計画では可能な限り南寄りのルートを選択する予定だったが、改めて現場を見渡すと、当初の想定よりはるかに状況が厳しいことがわかる。
「カネサキさん、チップは二千五百枚でしたっけ?」
「そんなものよ。後ろの隊が追加を持ってくるとは思うけど、当分はこの枚数でいくしかないわ。あまりたくさんは持っていけないし」
チップ、と言っているのは、今回の探索から用いられるようになった探索支援用の道具である。
チップが発信する微弱な電波を専用の探知機で受信することで、チップと探知機のかなり正確な位置関係を把握することができる。
今回はこれを利用して、探索の効率を上げるつもりである。
場所にもよるが、探知機は半径数百メートルにあるチップの位置を把握できる。
第二次隊の取り決めとして、探索を実施した場所についてはチップを置くことになっているが、手持ちのチップではせいぜい数十キロ四方の範囲をカバーできる程度である。
ロビーの隊が目指す島の東端は、現在地から三〇〇キロメートル強の距離と推測されている。
そのため手持ちのチップでは、ほぼ直線で島の東端に向かわない限り、途中でチップが不足する可能性が高い。
「どうせ後から来る組のほうが人数が多いんだから、まっすぐ向かってしまえばいいんじゃないの?」
ロビーが考えるそぶりを見せると、すぐにカネサキが反応した。
実際のところ、ロビーもカネサキと同じように考えていたのであるが、今回はロビーの隊だけが実際の探索を行うわけではないので、その点を気にする必要があると思っていたのだ。
カネサキは、それに対して「そこは配慮しなくてもよい」と答えたのである。
隊の中では最上位であっても、ロビーの組織人としての経験は隊の中で最も少ない。
そのため、こうした他組織が絡む問題はそれとなくカネサキやホンゴウがロビーに助言するケースがある。
そして、ロビーも自分の経験不足については正直に認めているため、こうした助言を素直に受け入れることができる。
「ホンゴウさんはどう考える?」
ホンゴウに確認を取るのは、彼がロビーの隊のナンバーツーであることに配慮したためだ。
「時間を考えれば、カネサキさんの仰るとおり可能な限り直線的に進むのがよいと思われます。それと……いえ、今は少しでも先を目指したほうがよいかと」
「ちょっと待って、他に急ぐ理由があるの?」
ホンゴウが何か言いかけたのを聞きとがめたのはカネサキである。
「ホンゴウさん、気になることがあれば先に言ってくれないか? 話してしまえば、後の対処は俺の責任になる」
ロビーの言葉にホンゴウは確証はありませんが、と前置きしてから自らの見解を話し始めた。
ホンゴウによれば、今後、ECN社はポータル・シティやインデストで起きている問題に対して、中心的な立場で対処しなければならなくなる可能性が高い。
しかし、旧「タブーなきエンジニア集団」のメンバーを除けば、ECN社内部にこれらの問題への対処について好意的な者は必ずしも多くないと考えられる。
問題の発端はOP社にあり、現在対処しているメンバーも旧「タブーなきエンジニア集団」が中心であり、従来のECN社からすれば関係ない、という空気があっても仕方のないところである。
ただし、世論はECN社が事態の収拾に関与しないことを許さないであろう。
そのため、旧「タブーなきエンジニア集団」と近いメンバーが事態の収拾に当たらない限り、ミヤハラやサクライといった現経営陣の立場は非常に厳しいものになると思われる。
そして、ロビーの隊は旧「タブーなきエンジニア集団」と近いメンバーが少なくない以上、「東部探索隊」で可能な限り早く成果を出して、本社に戻る必要がある。
ホンゴウはそれ以上のことを指摘しなかったが、ロビーにもある程度のことは理解できる。
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