肉体改造

空乃参三

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 どうも最近、調子が優れない。

 どこかが痛いとか、むくんでいるといったことはないのだけど、何となくスッキリしない。不快だ。

 この状態が続くのは嫌だと思い、私はこうしたことに詳しい者に相談することにした。

「あー、これアレだね。キミの中にいる連中が色々悪さをしているのさ」
「悪さ、って何をしているのですか?」
「キミの中にいる連中は、自身やキミを守るために他の何かと戦って撃退するだろう? そのバランスが崩れちゃっているんだよ」
「そう、ですか……」

 話を聞く限り、読者の皆でいうところの「免疫システム」が悪さをしているらしい。
 私は (多分)読者の皆とは種類が異なる存在だから、ちょっと違っているかもしれないけど……

 自分の中にいる連中が悪さをしていると聞いて、思い当たる節がある。
 最近、自分の中のことについて気を遣っていなかった。そのツケが回ってきたのだろう。
 だが、一縷の望みを託して私は質問した。

「あ、あの……しばらく大人しくしていれば元に戻りますよね?」

「……最近ずっとモヤモヤした気分じゃないかい? このままだと取り返しがつかなくなるかもしれないね……」

 ガーン! 予想はしていたけど、ちょっとやそっとじゃ治らないみたい。
 ずっと大人しくしているなんて耐えがたいのだけど……

「何となく調子が良くないな、って感じていました……」

「そうだろうね。ここを見てごらん。本来なら一番と書いた存在はこのくらいの大きさなのだけど……」
 私の前には、私の中の様子を模式化した絵が映し出されている。

 本来一番と書かれた存在は、今の四、五倍くらいの大きさのはずだった。
 だけど、二番という存在と三番という存在が一番を攻撃して、一番が縮んでしまっている。

 これは読者の皆に例えると、免疫システムの異常で体が自分の組織を攻撃しているような状態だ。

「……このままだと一番は消えちゃうかもしれない。それと四番だけど、小さくなっているだけではなくて、本来ある場所から違う場所へと押しのけられているね……」

 調べた結果、私の中の存在はあるものがあるものを攻撃して破壊しかけていたり、本来ある場所から別の場所へと押しのけられたり、無理矢理別の存在へと書き換えられようとしているらしい。
 あまりに異常がある場所が多すぎて、クラクラしてきた……

「あのー、どうすればよくなりますか?」

 一縷の望みをかけて尋ねてみる。

「そうだね。方法としてはふたつ、かな?」
「聞かせてください!」

 ふたつも方法があるなら、イケるかもしれない!

「ひとつめは……中の連中が余計なことをしないよう常に睨みをきかせ続けることだね。放っておくと連中はロクでもないことをするから、油断は禁物だよ。この方法は辛くて厳しい道だからあまりおススメはしないけど」

 この答えにはげんなりした。
 ずっと睨みをきかせ続ける、なんて不可能に近い。
 私はそんなにストイックな性質ではないし、ずっと睨みをきかせ続けていたら他のことができなくなっちゃう! これ大事!

「次は、根治療法になる。キミの中味がちょっと別物になってしまうけど、一度治療を受ければ二度と今のようなことにはならないよ」
「別物になる? ちょっと怖いですけど……」

 中味が別物になったら、私はどうなってしまうのだろう?
 根治療法というのは魅力的だけど……

「実は僕もこの治療を受けたのだけど、中の存在を書き換えるのさ。意思を表明することはできるけど、他者に一切関与できない存在にするんだよ。こうすると中の存在が悪さをすることができなくなるから、ずっといい調子でいることができる。最初はちょっと慣れが必要だけどね」
「はあ……」

 気を遣うことなくずっといい調子でいられるというのはイイ!
 最初に慣れが必要だというのと、中味が別物になるというのが気になるけど……

「いますぐ選択しなくてもいいとは思うけど、あまり時間の余裕はないからね?」
「……」

 考える時間はあるらしいけど、そんなに長くはない、ということか……
 今、決めなかったら、結論が出ないまま取り返しのつかないことになるかもしれない。
 だったらここで決めないと!

「……最初に慣れが必要ってどういうことですか?」
「何て言うのかな……色々見えすぎたり聞こえすぎたりする、って感じかな。すぐに慣れるよ」
「だったら根治療法でお願いしますっ!」

 色々見えすぎたり聞こえすぎるくらいなら別にいい。
 そのくらいなら今の状態よりよっぽどマシだ。

 私はこうして根治療法を受けることにした。

※※

「……このくらいなら。ちょっとうるさいけど、気になるほどじゃないわね」
 根治療法を受けた後、私は晴れやかな気分で過ごしていた。
 今までの不快感は一体何だったのだろう?

 ちなみに私の中の連中は、読者の皆が想像しやすいように説明すると、こんな存在になった。

 肉体は持たないけど、精神は永遠にあり続ける。
 思っていることを声に出すことも出さないこともできる。
 周りを見ることはできるけど、動くことはできない。

 この状態がずっとずっと続くのだ。私も、そして中にある連中も。

 今は私の中の連中が考えていることが垂れ流しになっているので、私にはちょっとうるさく感じる。
 でも、じきにこの騒音にも慣れるだろう。

 一体私は誰かって?
 読者の皆からは「世界」とか「宇宙」と呼ばれているけど……

 じゃあね。
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