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最終章
1021:ECN社案の根本とは?
遅れて到着したヌマタが空いた席に着いた。
これでようやく全員が揃ったことになる。
「到着してからでは遅いですが、今日、俺がここに来てしまってよいのですかね?」
ヌマタがミヤハラに尋ねた。
ヌマタも本日の集まりの目的が「シシガをミヤハラと会わせて話をさせる」ということを知っている。
その場に自分が呼ばれる理由がない、とヌマタは考えていた。
声をかけたのがオイゲンでなければ、何かと理由をつけて出席を拒んだであろう。
「ヌマタさんに来てもらったのは、君が思想的な面で中心人物だからなんだ」
ミヤハラの代わりにオイゲンが答えた。
「はぁ……役どころは想像できたので、それで良いですわ。飯もあるってことなので」
オイゲンの言葉にヌマタはため息をつきながらも、席に着いた。
尊敬するウォーリー・トワのもと上司というオイゲンの肩書は、ヌマタにとって絶対的なものですらあったのだ。もちろん、ヌマタは肩書だけではなくオイゲンの人となりも評価している。
「ところでヌマタさん、一連の事件の真相は明らかになりそうなのですか?」
シシガが身を乗り出すようにしてヌマタに尋ねた。
彼の言う「一連の事件」とは、今年の冬から春にかけて『民意の代表者』なる団体によって引き起こされた立てこもり事件や、これに関連して発生した事件のことであった。
当初はアツシ・サクライとロビーの二人が中心となって調査していたが、後にサクライの指示でヌマタを調査メンバーに追加したのだった。
「あのなぁ……守秘義務ってものがあるんだぞ。まあ、どちらにせよ年内で調査は終わりだがな」
ヌマタが露骨に嫌そうな顔を見せた。シシガに遠慮がないことは彼も重々承知しているが、このような場面ではその性質が面倒に思えてくる。
調査がなされている以上、その結果を知りたいという要望があることはヌマタも理解しているから、シシガの要求が不当なものだとは思わない。それだけに対応が厄介だ。
「だとすると時間がありません。ここにいらしているということは、真相が明らかになる目途は立った、ということですね?」
「……そこは想像するのだな」
さすがに言質をとられてはかなわないので、ヌマタは言葉を濁した。
本来ならこうだと断言したいところだが、状況が状況なのでそれも憚られる。
自らの性質に合わない対応を余儀なくされたことで、ヌマタとしても苦笑するしかなかった。
「今回はECN社さんという私企業の話ですのでこれ以上の追及はやめておきますが、島の運営をされる際は、このようなことが発生しないようにお願いしたいものです」
シシガがさらっと言ってのけたのに対し、ヌマタは辟易した様子で飲み物に手をつけていた。どうにか追及をかわしたものの、気分はすっきりしない。
ヌマタにとって腹立たしいのは、彼自身、シシガと同じような考えであったからだ。
一方、シシガは何食わぬ顔で目の前の料理を楽しんでいた。
不意にミヤハラが隣に座っているオイゲンを肘で突いた。
「ああ、そうだ。僕が質問するのはアリかな?」
オイゲンの問いに、シシガはもちろん、と肯く。
「ありがとう。島の運営に関して、ECN社案の作成に関与した立場で質問させてもらうけど、僕らの案で気になったことはないだろうか?」
「そうですね、根本にある思想が明確に表現されていない点が引っかかりますね」
「具体的にどうすればよいか、参考までに教えてもらえないだろうか?」
「いいでしょう、食事をしながらお答えします。食事の中にも明確に答えは出ていますので」
シシガは慌てないでと言わんばかりに手で皆を制した。
本来であれば礼を失した行為ではあるものの、この場では咎める者はなかった。
正確にはヌマタが咎めようとしたのだが、オイゲンが構わないと首を横に振ったのであった。オイゲンが許可するのであれば、ヌマタに逆らう理由はない。
シシガは料理を楽しみながら周囲の様子に注意を払っているようであった。
しばらく食事と他愛のない会話が続いたが、不意にシシガがミヤハラの方に目をやった。
そして、今度はちらりとカヤノの方を見てから、オイゲンの方に向き直った。
「……たった今、答えとなる出来事がありましたので説明しましょう。もっとも、このくらいは当たり前のこととして気付いていただきたいのですが……」
嫌味ともいえるシシガの言葉に、オイゲンは「理解が悪くて申し訳ないですが説明をお願いします」と頭を下げて応じた。
オイゲンやカヤノなどシシガをよく知る人から見れば、本人は嫌味を言っているのではなく、率直な感想を述べているだけであった。
だからオイゲンも咎めることはせずに、素直にシシガに教えを請うた。
「承知しました。始めましょう」
シシガはオイゲンの配慮にも関わらず、少々嫌味にも見えるもったいぶった態度を崩そうとはしなかった。
これでようやく全員が揃ったことになる。
「到着してからでは遅いですが、今日、俺がここに来てしまってよいのですかね?」
ヌマタがミヤハラに尋ねた。
ヌマタも本日の集まりの目的が「シシガをミヤハラと会わせて話をさせる」ということを知っている。
その場に自分が呼ばれる理由がない、とヌマタは考えていた。
声をかけたのがオイゲンでなければ、何かと理由をつけて出席を拒んだであろう。
「ヌマタさんに来てもらったのは、君が思想的な面で中心人物だからなんだ」
ミヤハラの代わりにオイゲンが答えた。
「はぁ……役どころは想像できたので、それで良いですわ。飯もあるってことなので」
オイゲンの言葉にヌマタはため息をつきながらも、席に着いた。
尊敬するウォーリー・トワのもと上司というオイゲンの肩書は、ヌマタにとって絶対的なものですらあったのだ。もちろん、ヌマタは肩書だけではなくオイゲンの人となりも評価している。
「ところでヌマタさん、一連の事件の真相は明らかになりそうなのですか?」
シシガが身を乗り出すようにしてヌマタに尋ねた。
彼の言う「一連の事件」とは、今年の冬から春にかけて『民意の代表者』なる団体によって引き起こされた立てこもり事件や、これに関連して発生した事件のことであった。
当初はアツシ・サクライとロビーの二人が中心となって調査していたが、後にサクライの指示でヌマタを調査メンバーに追加したのだった。
「あのなぁ……守秘義務ってものがあるんだぞ。まあ、どちらにせよ年内で調査は終わりだがな」
ヌマタが露骨に嫌そうな顔を見せた。シシガに遠慮がないことは彼も重々承知しているが、このような場面ではその性質が面倒に思えてくる。
調査がなされている以上、その結果を知りたいという要望があることはヌマタも理解しているから、シシガの要求が不当なものだとは思わない。それだけに対応が厄介だ。
「だとすると時間がありません。ここにいらしているということは、真相が明らかになる目途は立った、ということですね?」
「……そこは想像するのだな」
さすがに言質をとられてはかなわないので、ヌマタは言葉を濁した。
本来ならこうだと断言したいところだが、状況が状況なのでそれも憚られる。
自らの性質に合わない対応を余儀なくされたことで、ヌマタとしても苦笑するしかなかった。
「今回はECN社さんという私企業の話ですのでこれ以上の追及はやめておきますが、島の運営をされる際は、このようなことが発生しないようにお願いしたいものです」
シシガがさらっと言ってのけたのに対し、ヌマタは辟易した様子で飲み物に手をつけていた。どうにか追及をかわしたものの、気分はすっきりしない。
ヌマタにとって腹立たしいのは、彼自身、シシガと同じような考えであったからだ。
一方、シシガは何食わぬ顔で目の前の料理を楽しんでいた。
不意にミヤハラが隣に座っているオイゲンを肘で突いた。
「ああ、そうだ。僕が質問するのはアリかな?」
オイゲンの問いに、シシガはもちろん、と肯く。
「ありがとう。島の運営に関して、ECN社案の作成に関与した立場で質問させてもらうけど、僕らの案で気になったことはないだろうか?」
「そうですね、根本にある思想が明確に表現されていない点が引っかかりますね」
「具体的にどうすればよいか、参考までに教えてもらえないだろうか?」
「いいでしょう、食事をしながらお答えします。食事の中にも明確に答えは出ていますので」
シシガは慌てないでと言わんばかりに手で皆を制した。
本来であれば礼を失した行為ではあるものの、この場では咎める者はなかった。
正確にはヌマタが咎めようとしたのだが、オイゲンが構わないと首を横に振ったのであった。オイゲンが許可するのであれば、ヌマタに逆らう理由はない。
シシガは料理を楽しみながら周囲の様子に注意を払っているようであった。
しばらく食事と他愛のない会話が続いたが、不意にシシガがミヤハラの方に目をやった。
そして、今度はちらりとカヤノの方を見てから、オイゲンの方に向き直った。
「……たった今、答えとなる出来事がありましたので説明しましょう。もっとも、このくらいは当たり前のこととして気付いていただきたいのですが……」
嫌味ともいえるシシガの言葉に、オイゲンは「理解が悪くて申し訳ないですが説明をお願いします」と頭を下げて応じた。
オイゲンやカヤノなどシシガをよく知る人から見れば、本人は嫌味を言っているのではなく、率直な感想を述べているだけであった。
だからオイゲンも咎めることはせずに、素直にシシガに教えを請うた。
「承知しました。始めましょう」
シシガはオイゲンの配慮にも関わらず、少々嫌味にも見えるもったいぶった態度を崩そうとはしなかった。
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