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最終章
1032:LH八四年━━インデスト鉄鋼博物館の事件━━ IMPUの有志が頼った人物
一方、鉄鋼博物館を占拠しているIMPUの有志も次の策を考えていた。
鉄鋼博物館の移転計画の見直しを求める裁判を起こすことも検討された。
しかし、その場合、エクザローム国の法では裁判中に当初計画通り移転を進めてしまうことを防止できないため、他の策を優先した方がよいという判断となった。
そこで、有名人を巻き込み、世論を味方につけて地下の柱の移設を産業省に受け入れさせることを画策した。
IMPUの有志が目をつけたのは、「タブーなきエンジニア集団」の関係者であった。
柱のメッセージは、「タブーなきエンジニア集団」のトップが残したものであったからだ。
候補となる関係者のうち、トップのウォーリー・トワ、そしてウォーリーが後継者と見込んでいたエリック・モトムラは既に故人であった。
他の有力な幹部となるとノリオ・ミヤハラかアツシ・サクライの二名に絞られる。二名より下の立場となると、知名度や影響力の点で大きく見劣りするためだ。
二名のうちミヤハラはニ〇年近く前に政界を去っており、その後は隠居したらしいという情報があるのみであった。表舞台に顔を出すことが少なく、現在の状況ははっきりしない。
一方、サクライは五、六年前までECN社の社長を務めており、引退後はポータル・シティの東側に住んでいるという情報が得られていた。
そこでIMPUの有志は情報量の多いサクライと連絡を取ることを決めた。
現在のECN社の社長はレイカ・メルツのライバルともいわれたニーナ・レーナルトであったが、彼女を通じて現在のサクライの連絡先を得た。
連絡を取るとサクライは興味を持ったようで、「柱を見学したい」と回答した。
事実、要請から二週間後にインデストへ飛んできたのであった。
「これが……トワマネージャーが残したメッセージ、なのか。確かにマネージャーの字だな……」
「ええ、間違いありません」
サクライは鉄鋼博物館の地下でウォーリーが残したというメッセージを目の前にして、驚きを隠せなかった。
案内をした老人は、元「タブーなきエンジニア集団」のメンバーで、その後IMPUに転じた者であり、サクライとも面識があった。
「確かにこれは残しておきたいが……」
サクライはいったん地下から引き上げ、鉄鋼博物館占拠のリーダー格達との会談に臨んだ。
「……柱を残したい、というのは理解できるし、私もそうしたい。資金を集めて移設の方法を提案したところも評価できる。ただし、ここを占拠したことだけは受け入れられない。法に則って裁判で決着させるべきだろう」
会談の冒頭、サクライはきっぱりと言い切った。
「産業省と交渉しましたが、けんもほろろに追い返されました。警察も現場の方は交渉を望んでいるように見えますが、上層部が『いかなる手段でも柱の移設は認められない』と頑なで、話になりません。裁判を起こすことも考えましたが、裁判中に例の柱を処分されてしまう可能性があるので……」
「だからといって、公共の施設を占領してよい、という理由にはならないが」
「サクライさん、仰ることはわかります。ただ、産業省は真っ先に地下から解体を始める腹積もりです。それにこの博物館の建物と土地はIMPUが所有しています」
「ならば、私が産業省に掛け合ってみよう」
そう言ってサクライが立ち上がろうとした瞬間、博物館の入口の方から人が言い争う声が聞こえてきた。
「倒れて病院に入院していると説明したではないですか! IMPU記念病院に確認してください!」
「偽物の可能性がある! 監禁されていないか、中を調べさせてもらう。やましいところがなければ、警察の捜査は受け入れられるはずだ!」
「何だあれは?」
サクライが入口の方に目をやりながら尋ねた。
「ああ、サクライさんにはお知らせしていなかったですね。産業省からアカシ元代表が交渉役として派遣されてきたのですが、交渉の開始前に体調不良を訴えられまして、我々で病院に運んだのです」
「そんなことがあったのか。それで、アカシさんの容体は?」
「深刻、とのことです。倒れて三日になりますが、まだ意識が戻っていないそうです」
「政府の連中は、そのことを知らないのか?」
サクライは誰もが思い当たるであろう疑問を口にした。
「もちろん、説明しました。ですが、替え玉ではないか? 本人を隠しているのではないか? とこちらの言い分を聞いてもらえる状況ではありませんでした」
答えを聞いたサクライが怪訝な顔をした。
「病院に問い合わせれば済みそうな話ではないか? 警察も絡んでいるのだし」
「そうなのですが、警察は『病院に確認したが、本人とは特定できなかった』の一点張りで……」
サクライは警察の対応に違和感を覚えた。病院と警察が協力すれば本人確認など容易なはずだからだ。
こうなると逆に警察の説明の方が疑わしく感じられる。
そう考えたサクライは、確認させてもらう、と言い残して言い争いの声の方へ向けて走った。
鉄鋼博物館の移転計画の見直しを求める裁判を起こすことも検討された。
しかし、その場合、エクザローム国の法では裁判中に当初計画通り移転を進めてしまうことを防止できないため、他の策を優先した方がよいという判断となった。
そこで、有名人を巻き込み、世論を味方につけて地下の柱の移設を産業省に受け入れさせることを画策した。
IMPUの有志が目をつけたのは、「タブーなきエンジニア集団」の関係者であった。
柱のメッセージは、「タブーなきエンジニア集団」のトップが残したものであったからだ。
候補となる関係者のうち、トップのウォーリー・トワ、そしてウォーリーが後継者と見込んでいたエリック・モトムラは既に故人であった。
他の有力な幹部となるとノリオ・ミヤハラかアツシ・サクライの二名に絞られる。二名より下の立場となると、知名度や影響力の点で大きく見劣りするためだ。
二名のうちミヤハラはニ〇年近く前に政界を去っており、その後は隠居したらしいという情報があるのみであった。表舞台に顔を出すことが少なく、現在の状況ははっきりしない。
一方、サクライは五、六年前までECN社の社長を務めており、引退後はポータル・シティの東側に住んでいるという情報が得られていた。
そこでIMPUの有志は情報量の多いサクライと連絡を取ることを決めた。
現在のECN社の社長はレイカ・メルツのライバルともいわれたニーナ・レーナルトであったが、彼女を通じて現在のサクライの連絡先を得た。
連絡を取るとサクライは興味を持ったようで、「柱を見学したい」と回答した。
事実、要請から二週間後にインデストへ飛んできたのであった。
「これが……トワマネージャーが残したメッセージ、なのか。確かにマネージャーの字だな……」
「ええ、間違いありません」
サクライは鉄鋼博物館の地下でウォーリーが残したというメッセージを目の前にして、驚きを隠せなかった。
案内をした老人は、元「タブーなきエンジニア集団」のメンバーで、その後IMPUに転じた者であり、サクライとも面識があった。
「確かにこれは残しておきたいが……」
サクライはいったん地下から引き上げ、鉄鋼博物館占拠のリーダー格達との会談に臨んだ。
「……柱を残したい、というのは理解できるし、私もそうしたい。資金を集めて移設の方法を提案したところも評価できる。ただし、ここを占拠したことだけは受け入れられない。法に則って裁判で決着させるべきだろう」
会談の冒頭、サクライはきっぱりと言い切った。
「産業省と交渉しましたが、けんもほろろに追い返されました。警察も現場の方は交渉を望んでいるように見えますが、上層部が『いかなる手段でも柱の移設は認められない』と頑なで、話になりません。裁判を起こすことも考えましたが、裁判中に例の柱を処分されてしまう可能性があるので……」
「だからといって、公共の施設を占領してよい、という理由にはならないが」
「サクライさん、仰ることはわかります。ただ、産業省は真っ先に地下から解体を始める腹積もりです。それにこの博物館の建物と土地はIMPUが所有しています」
「ならば、私が産業省に掛け合ってみよう」
そう言ってサクライが立ち上がろうとした瞬間、博物館の入口の方から人が言い争う声が聞こえてきた。
「倒れて病院に入院していると説明したではないですか! IMPU記念病院に確認してください!」
「偽物の可能性がある! 監禁されていないか、中を調べさせてもらう。やましいところがなければ、警察の捜査は受け入れられるはずだ!」
「何だあれは?」
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サクライは誰もが思い当たるであろう疑問を口にした。
「もちろん、説明しました。ですが、替え玉ではないか? 本人を隠しているのではないか? とこちらの言い分を聞いてもらえる状況ではありませんでした」
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「病院に問い合わせれば済みそうな話ではないか? 警察も絡んでいるのだし」
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