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エピローグ:風に舞う譜面
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「オアシス・モリオ」に、また新しい朝が訪れました。
かつて「迷いの森」と呼ばれ、誰もが恐れたその場所は、今や遠い国々からも旅人が訪れる「癒やしの聖域」となっていました。人々はここで、失いかけた希望を取り戻し、ルルルが見つけた泉の水を飲み、ポポリンが遺した調べを耳にします。
泉のほとりにある大きな石碑には、古びた、けれど大切に手入れされた文字でこう刻まれています。
> 「音楽と土があれば、どこだって理想郷になれる。信じる心こそが、最強の武器である」
>
ある日の午後。
一人の若い旅人が、オアシスの中心にある「大樹の広場」に座り、おぼつかない手つきで小さな笛を取り出しました。彼は自分の故郷を追われ、心に深い傷を負っていました。
彼が震える指で最初の一音を奏でた、その時です。
どこからともなく、一匹の黒猫が音もなく現れ、彼の足元にそっと寄り添いました。
その猫は、夜の闇を溶かしたような艶やかな毛並みを持ち、金色の瞳で静かに旅人を見上げました。
旅人が驚いて手を止めると、黒猫は鳴く代わりに、優しく喉を鳴らしました。
ゴロゴロ、ゴロゴロ……。
それは、どんな楽器よりも温かく、どんな言葉よりも深く心に響くリズムでした。
「……ありがとう。君が、噂の守護神なんだね」
旅人は涙を拭い、再び笛を構えました。今度は、少しだけ力強く、澄んだ音が森に響き渡りました。
その様子を、少し離れた丘の上から見守る影がありました。
白髪の混じった柔らかな笑顔の女性と、逞しい肩幅をした一人の男性。彼らは互いの手を取り合い、満足そうに頷くと、風に溶けるように森の奥へと消えていきました。
オアシスの森に吹く風は、今日もポポリンの旋律を運び、ユーが耕した大地の香りを届け、そしてルルルの金色の眼差しで、迷える者たちを導き続けています。
物語はここで一度終わります。
けれど、オアシス・モリオの調べは、今この瞬間も、どこかで誰かの心の中で鳴り響いているのです。
制作・監修
* 著者: 山本一義(ポポリン)
* 編集: ジェミニ
かつて「迷いの森」と呼ばれ、誰もが恐れたその場所は、今や遠い国々からも旅人が訪れる「癒やしの聖域」となっていました。人々はここで、失いかけた希望を取り戻し、ルルルが見つけた泉の水を飲み、ポポリンが遺した調べを耳にします。
泉のほとりにある大きな石碑には、古びた、けれど大切に手入れされた文字でこう刻まれています。
> 「音楽と土があれば、どこだって理想郷になれる。信じる心こそが、最強の武器である」
>
ある日の午後。
一人の若い旅人が、オアシスの中心にある「大樹の広場」に座り、おぼつかない手つきで小さな笛を取り出しました。彼は自分の故郷を追われ、心に深い傷を負っていました。
彼が震える指で最初の一音を奏でた、その時です。
どこからともなく、一匹の黒猫が音もなく現れ、彼の足元にそっと寄り添いました。
その猫は、夜の闇を溶かしたような艶やかな毛並みを持ち、金色の瞳で静かに旅人を見上げました。
旅人が驚いて手を止めると、黒猫は鳴く代わりに、優しく喉を鳴らしました。
ゴロゴロ、ゴロゴロ……。
それは、どんな楽器よりも温かく、どんな言葉よりも深く心に響くリズムでした。
「……ありがとう。君が、噂の守護神なんだね」
旅人は涙を拭い、再び笛を構えました。今度は、少しだけ力強く、澄んだ音が森に響き渡りました。
その様子を、少し離れた丘の上から見守る影がありました。
白髪の混じった柔らかな笑顔の女性と、逞しい肩幅をした一人の男性。彼らは互いの手を取り合い、満足そうに頷くと、風に溶けるように森の奥へと消えていきました。
オアシスの森に吹く風は、今日もポポリンの旋律を運び、ユーが耕した大地の香りを届け、そしてルルルの金色の眼差しで、迷える者たちを導き続けています。
物語はここで一度終わります。
けれど、オアシス・モリオの調べは、今この瞬間も、どこかで誰かの心の中で鳴り響いているのです。
制作・監修
* 著者: 山本一義(ポポリン)
* 編集: ジェミニ
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