51 / 57
すっかり忘れていました
しおりを挟む
「これは終わりそうもないな」
レナードはレイリックから渡された大量の書類を見て、ぽつりと呟く。予想通り、とんでもない量の仕事を渡された。果たして、いつになったら終わらせて戻れるのだろうか。
レナードは海外留学中で、兄の婚約者が気になり、長期休みを利用して一時的に帰って来ただけなのだ。
それにしても婚約って、いまだに夢なんじゃないかって思うんだよな。
それほどまでに衝撃的だった。レイリックが婚約したと聞いたのは、前回の長期休暇の前だった。レイリックから一通の手紙が届いたのだ。
一言
「エバルディ公爵家のリリカ嬢と婚約したから」
とだけ。
もっと説明が欲しかった。
本来ならすぐにでも、せめて前回の長期休暇中には帰って来たかったところだったのだが、学業もあり、さらには公務まで詰め込んでいたため忙殺され、帰ることは叶わなかった。だから今回は早めに全てを終わらせたのだ。
兄さんが女性に騙されるなんてことあり得ないし、相手が公爵令嬢と聞いていたため単なる政略婚約だと思いつつも心配で、飛んで帰って来たのに、心配なんて全くいらなかったな。
僕が兄さんの分の仕事をしてる間、兄さんは二人の時間を満喫しているみたいだし、兄さんの役に立ててるなら、大変だけどたまにはそれもいいかな。
そのようなことを考えながらも仕事を着実に進めていった。
そして、来る日も来る日も仕事をやり続け、長期休暇が終わるギリギリのタイミングでなんとか全て終わらせたレナードは学園にようやく戻れることとなったのだ。
**********
「迷惑かけてごめんね、リリカ嬢。いや、義姉さん」
「ね!?」
これには思わず大きな声を出してしまった。
「だってそうでしょ。兄さんと結婚するんだから。結婚式楽しみにしてるよ。じゃあまた」
レナードはそう告げると慌ただしく帰って行った。そんなレナードの後ろ姿をレイリックはじっと見つめていた。
ホント慌ただしかったわね。っていうか結婚式!? そうよね。いつかはするのよね。
「もしかして忘れてたの?」
隣にいたレイリックに顔を覗き込まれるようにして聞かれ、リリカはギクッと肩を揺らした。
「えっと……」
「僕は楽しみなんだけどな。楽しみにしてたのは僕だけだったのかな?」
眉を下げ、寂しそうな顔で聞かれる。
気のせいかレイリックの頭に犬耳がしょぼんと垂れ下がっているように見えた。
幻覚まで見えてきたわ……。そんな顔されたら楽しみとしか言えないじゃない……。
「いえ、もちろん私も楽しみですわ(少し忘れていただけで)」
まあ、楽しみではあるけれどね。ウェディングドレス、一度でいいから着てみたかったし。
リリカは前世では、結婚する前に亡くなったため一度も着る機会がなかった。
そもそも相手もいなかったけどね……。いつかはと思っていたのよ、私だって。
「成人したらすぐにしようか」
「はい、そうですね」
アルマーニ王国では成人する年度を迎えるまで結婚することが出来ない。逆に言うとその年度を迎えてすぐに、その年度に成人する令嬢と令息の結婚ラッシュが始まる。結婚順だが暗黙の了解というものがあり、その年度に成人する婚約者のいる令嬢や令息の中で最も身分の高い者から順に結婚式を行う。つまりレイリックとリリカの結婚式は新たな年度が始まってすぐに行われる。
「約束だよ。今度はちゃんと覚えておいてね」
リリカが結婚式のことをすっかり忘れていたことに気がついたレイリックに念押しされてしまった。
「ええ、ちゃんと覚えておきますわ」
「楽しみだな」
「そんなに楽しみにしていらっしゃるなんて思いませんでしたわ」
「そう? だって、リリカ嬢の綺麗なドレス姿が見られるんだから、当然でしょ」
「なっ!?」
「きっとすごく似合うに決まっているからね。今から待ち遠しいよ」
そ、そんな恥ずかしいことをすらすらと……。流石は王子様……。随分と女性の扱いに慣れていらっしゃるわ。だけど他の人にも言っているところを想像するとなんだか嫌だわ……。
「言っておくけど、こんなこと誰にでも言うわけじゃないからね」
「えっ!?」
心の声が漏れていたのか、考えを見透かしたように告げられる。
「っていうか初めてだよ」
「え?」
「だから、その……女性にこんなこと言うの初めて、なんだよ」
「っ!!」
リリカはその言葉を聞き、嬉しく思うと同時に恥ずかしくなった。見るとレイリックも恥ずかしさからか耳が赤くなっており、リリカから目を逸らしている。
「さ、さあ、中に入ろうか」
「え、ええ、そうですね」
二人はぎこちなく言葉を交わした。
レナードはレイリックから渡された大量の書類を見て、ぽつりと呟く。予想通り、とんでもない量の仕事を渡された。果たして、いつになったら終わらせて戻れるのだろうか。
レナードは海外留学中で、兄の婚約者が気になり、長期休みを利用して一時的に帰って来ただけなのだ。
それにしても婚約って、いまだに夢なんじゃないかって思うんだよな。
それほどまでに衝撃的だった。レイリックが婚約したと聞いたのは、前回の長期休暇の前だった。レイリックから一通の手紙が届いたのだ。
一言
「エバルディ公爵家のリリカ嬢と婚約したから」
とだけ。
もっと説明が欲しかった。
本来ならすぐにでも、せめて前回の長期休暇中には帰って来たかったところだったのだが、学業もあり、さらには公務まで詰め込んでいたため忙殺され、帰ることは叶わなかった。だから今回は早めに全てを終わらせたのだ。
兄さんが女性に騙されるなんてことあり得ないし、相手が公爵令嬢と聞いていたため単なる政略婚約だと思いつつも心配で、飛んで帰って来たのに、心配なんて全くいらなかったな。
僕が兄さんの分の仕事をしてる間、兄さんは二人の時間を満喫しているみたいだし、兄さんの役に立ててるなら、大変だけどたまにはそれもいいかな。
そのようなことを考えながらも仕事を着実に進めていった。
そして、来る日も来る日も仕事をやり続け、長期休暇が終わるギリギリのタイミングでなんとか全て終わらせたレナードは学園にようやく戻れることとなったのだ。
**********
「迷惑かけてごめんね、リリカ嬢。いや、義姉さん」
「ね!?」
これには思わず大きな声を出してしまった。
「だってそうでしょ。兄さんと結婚するんだから。結婚式楽しみにしてるよ。じゃあまた」
レナードはそう告げると慌ただしく帰って行った。そんなレナードの後ろ姿をレイリックはじっと見つめていた。
ホント慌ただしかったわね。っていうか結婚式!? そうよね。いつかはするのよね。
「もしかして忘れてたの?」
隣にいたレイリックに顔を覗き込まれるようにして聞かれ、リリカはギクッと肩を揺らした。
「えっと……」
「僕は楽しみなんだけどな。楽しみにしてたのは僕だけだったのかな?」
眉を下げ、寂しそうな顔で聞かれる。
気のせいかレイリックの頭に犬耳がしょぼんと垂れ下がっているように見えた。
幻覚まで見えてきたわ……。そんな顔されたら楽しみとしか言えないじゃない……。
「いえ、もちろん私も楽しみですわ(少し忘れていただけで)」
まあ、楽しみではあるけれどね。ウェディングドレス、一度でいいから着てみたかったし。
リリカは前世では、結婚する前に亡くなったため一度も着る機会がなかった。
そもそも相手もいなかったけどね……。いつかはと思っていたのよ、私だって。
「成人したらすぐにしようか」
「はい、そうですね」
アルマーニ王国では成人する年度を迎えるまで結婚することが出来ない。逆に言うとその年度を迎えてすぐに、その年度に成人する令嬢と令息の結婚ラッシュが始まる。結婚順だが暗黙の了解というものがあり、その年度に成人する婚約者のいる令嬢や令息の中で最も身分の高い者から順に結婚式を行う。つまりレイリックとリリカの結婚式は新たな年度が始まってすぐに行われる。
「約束だよ。今度はちゃんと覚えておいてね」
リリカが結婚式のことをすっかり忘れていたことに気がついたレイリックに念押しされてしまった。
「ええ、ちゃんと覚えておきますわ」
「楽しみだな」
「そんなに楽しみにしていらっしゃるなんて思いませんでしたわ」
「そう? だって、リリカ嬢の綺麗なドレス姿が見られるんだから、当然でしょ」
「なっ!?」
「きっとすごく似合うに決まっているからね。今から待ち遠しいよ」
そ、そんな恥ずかしいことをすらすらと……。流石は王子様……。随分と女性の扱いに慣れていらっしゃるわ。だけど他の人にも言っているところを想像するとなんだか嫌だわ……。
「言っておくけど、こんなこと誰にでも言うわけじゃないからね」
「えっ!?」
心の声が漏れていたのか、考えを見透かしたように告げられる。
「っていうか初めてだよ」
「え?」
「だから、その……女性にこんなこと言うの初めて、なんだよ」
「っ!!」
リリカはその言葉を聞き、嬉しく思うと同時に恥ずかしくなった。見るとレイリックも恥ずかしさからか耳が赤くなっており、リリカから目を逸らしている。
「さ、さあ、中に入ろうか」
「え、ええ、そうですね」
二人はぎこちなく言葉を交わした。
4
あなたにおすすめの小説
「婚約破棄された転生令嬢ですが、王城のメイド五百人に慕われるメイド長になりました。なお元婚約者は私のメイドに土下座中です」
まさき
恋愛
社畜OLとして過労死した私は、異世界の令嬢・アリア・ヴェルナーに転生した。
目が覚めたら、婚約破棄されていた。
理由は「地味で面白みがない」から。
泣く暇もなかった。翌朝、王城のメイド採用面接に向かった。
最初は鼻で笑われた。雑用係からのスタートだった。
でも——前世で叩き込まれた仕事術と、一人ひとりの話を聞く姿勢で、少しずつメイドたちが集まってきた。
厨房が変わった。リネンが変わった。王城全体が変わっていった。
そして就任スピーチで宣言した。
「500人全員の名前を、覚えます」
冷酷と噂される王太子は、静かに見ていた。
悪役令嬢は妨害を仕掛けてきた。
元婚約者は——後悔し始めていた。
婚約破棄された令嬢が、500人に慕われるメイド長になるまでの物語。
なお元婚約者は、私のメイドたちの前で土下座中です。
悪役令嬢は死んで生き返ってついでに中身も入れ替えました
蒼黒せい
恋愛
侯爵令嬢ミリアはその性格の悪さと家の権威散らし、散財から学園内では大層嫌われていた。しかし、突如不治の病にかかった彼女は5年という長い年月苦しみ続け、そして治療の甲斐もなく亡くなってしまう。しかし、直後に彼女は息を吹き返す。病を克服して。
だが、その中身は全くの別人であった。かつて『日本人』として生きていた女性は、異世界という新たな世界で二度目の生を謳歌する… ※同名アカウントでなろう・カクヨムにも投稿しています
十三回目の人生でようやく自分が悪役令嬢ポジと気づいたので、もう殿下の邪魔はしませんから構わないで下さい!
翠玉 結
恋愛
公爵令嬢である私、エリーザは挙式前夜の式典で命を落とした。
「貴様とは、婚約破棄する」と残酷な事を突きつける婚約者、王太子殿下クラウド様の手によって。
そしてそれが一度ではなく、何度も繰り返していることに気が付いたのは〖十三回目〗の人生。
死んだ理由…それは、毎回悪役令嬢というポジションで立ち振る舞い、殿下の恋路を邪魔していたいたからだった。
どう頑張ろうと、殿下からの愛を受け取ることなく死ぬ。
その結末をが分かっているならもう二度と同じ過ちは繰り返さない!
そして死なない!!
そう思って殿下と関わらないようにしていたのに、
何故か前の記憶とは違って、まさかのご執心で溺愛ルートまっしぐらで?!
「殿下!私、死にたくありません!」
✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼
※他サイトより転載した作品です。
私だけが愛して1度も笑ったことの無い夫が、死んだはずの息子を連れてもどってきた
まつめ
恋愛
夫はただの一度も私に笑いかけたことは無く、穏やかに夫婦の時間をもったこともない。魔法騎士団の、騎士団長を務める彼は、23年間の結婚生活のほとんどを戦地で過ごしている。22歳の息子の戦死の知らせが届く。けれど夫は元気な息子を連れて私の元に戻って来てくれた。
王太子妃専属侍女の結婚事情
蒼あかり
恋愛
伯爵家の令嬢シンシアは、ラドフォード王国 王太子妃の専属侍女だ。
未だ婚約者のいない彼女のために、王太子と王太子妃の命で見合いをすることに。
相手は王太子の側近セドリック。
ところが、幼い見た目とは裏腹に令嬢らしからぬはっきりとした物言いのキツイ性格のシンシアは、それが元でお見合いをこじらせてしまうことに。
そんな二人の行く末は......。
☆恋愛色は薄めです。
☆完結、予約投稿済み。
新年一作目は頑張ってハッピーエンドにしてみました。
ふたりの喧嘩のような言い合いを楽しんでいただければと思います。
そこまで激しくはないですが、そういうのが苦手な方はご遠慮ください。
よろしくお願いいたします。
【完結】無口な旦那様は妻が可愛くて仕方ない
ベル
恋愛
旦那様とは政略結婚。
公爵家の次期当主であった旦那様と、領地の経営が悪化し、没落寸前の伯爵令嬢だった私。
旦那様と結婚したおかげで私の家は安定し、今では昔よりも裕福な暮らしができるようになりました。
そんな私は旦那様に感謝しています。
無口で何を考えているか分かりにくい方ですが、とてもお優しい方なのです。
そんな二人の日常を書いてみました。
お読みいただき本当にありがとうございますm(_ _)m
無事完結しました!
【完結】旦那様!単身赴任だけは勘弁して下さい!
たまこ
恋愛
エミリーの大好きな夫、アランは王宮騎士団の副団長。ある日、栄転の為に辺境へ異動することになり、エミリーはてっきり夫婦で引っ越すものだと思い込み、いそいそと荷造りを始める。
だが、アランの部下に「副団長は単身赴任すると言っていた」と聞き、エミリーは呆然としてしまう。アランが大好きで離れたくないエミリーが取った行動とは。
好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】
皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」
「っ――――!!」
「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」
クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。
******
・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる