契約婚のはずが、腹黒王太子様に溺愛されているようです

星月りあ

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すっかり忘れていました

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「これは終わりそうもないな」

レナードはレイリックから渡された大量の書類を見て、ぽつりと呟く。予想通り、とんでもない量の仕事を渡された。果たして、いつになったら終わらせて戻れるのだろうか。

レナードは海外留学中で、兄の婚約者が気になり、長期休みを利用して一時的に帰って来ただけなのだ。

それにしても婚約って、いまだに夢なんじゃないかって思うんだよな。
それほどまでに衝撃的だった。レイリックが婚約したと聞いたのは、前回の長期休暇の前だった。レイリックから一通の手紙が届いたのだ。

一言
「エバルディ公爵家のリリカ嬢と婚約したから」
とだけ。

もっと説明が欲しかった。

本来ならすぐにでも、せめて前回の長期休暇中には帰って来たかったところだったのだが、学業もあり、さらには公務まで詰め込んでいたため忙殺され、帰ることは叶わなかった。だから今回は早めに全てを終わらせたのだ。

兄さんが女性に騙されるなんてことあり得ないし、相手が公爵令嬢と聞いていたため単なる政略婚約だと思いつつも心配で、飛んで帰って来たのに、心配なんて全くいらなかったな。

僕が兄さんの分の仕事をしてる間、兄さんは二人の時間を満喫しているみたいだし、兄さんの役に立ててるなら、大変だけどたまにはそれもいいかな。
そのようなことを考えながらも仕事を着実に進めていった。



そして、来る日も来る日も仕事をやり続け、長期休暇が終わるギリギリのタイミングでなんとか全て終わらせたレナードは学園にようやく戻れることとなったのだ。



**********

「迷惑かけてごめんね、リリカ嬢。いや、義姉さん」
「ね!?」
これには思わず大きな声を出してしまった。

「だってそうでしょ。兄さんと結婚するんだから。結婚式楽しみにしてるよ。じゃあまた」
レナードはそう告げると慌ただしく帰って行った。そんなレナードの後ろ姿をレイリックはじっと見つめていた。



ホント慌ただしかったわね。っていうか結婚式!? そうよね。いつかはするのよね。

「もしかして忘れてたの?」
隣にいたレイリックに顔を覗き込まれるようにして聞かれ、リリカはギクッと肩を揺らした。

「えっと……」
「僕は楽しみなんだけどな。楽しみにしてたのは僕だけだったのかな?」
眉を下げ、寂しそうな顔で聞かれる。

気のせいかレイリックの頭に犬耳がしょぼんと垂れ下がっているように見えた。

幻覚まで見えてきたわ……。そんな顔されたら楽しみとしか言えないじゃない……。

「いえ、もちろん私も楽しみですわ(少し忘れていただけで)」
まあ、楽しみではあるけれどね。ウェディングドレス、一度でいいから着てみたかったし。
リリカは前世では、結婚する前に亡くなったため一度も着る機会がなかった。
そもそも相手もいなかったけどね……。いつかはと思っていたのよ、私だって。

「成人したらすぐにしようか」
「はい、そうですね」

アルマーニ王国では成人する年度を迎えるまで結婚することが出来ない。逆に言うとその年度を迎えてすぐに、その年度に成人する令嬢と令息の結婚ラッシュが始まる。結婚順だが暗黙の了解というものがあり、その年度に成人する婚約者のいる令嬢や令息の中で最も身分の高い者から順に結婚式を行う。つまりレイリックとリリカの結婚式は新たな年度が始まってすぐに行われる。

「約束だよ。今度はちゃんと覚えておいてね」
リリカが結婚式のことをすっかり忘れていたことに気がついたレイリックに念押しされてしまった。

「ええ、ちゃんと覚えておきますわ」
「楽しみだな」
「そんなに楽しみにしていらっしゃるなんて思いませんでしたわ」
「そう? だって、リリカ嬢の綺麗なドレス姿が見られるんだから、当然でしょ」
「なっ!?」
「きっとすごく似合うに決まっているからね。今から待ち遠しいよ」

そ、そんな恥ずかしいことをすらすらと……。流石は王子様……。随分と女性の扱いに慣れていらっしゃるわ。だけど他の人にも言っているところを想像するとなんだか嫌だわ……。

「言っておくけど、こんなこと誰にでも言うわけじゃないからね」
「えっ!?」
心の声が漏れていたのか、考えを見透かしたように告げられる。

「っていうか初めてだよ」
「え?」
「だから、その……女性にこんなこと言うの初めて、なんだよ」
「っ!!」
リリカはその言葉を聞き、嬉しく思うと同時に恥ずかしくなった。見るとレイリックも恥ずかしさからか耳が赤くなっており、リリカから目を逸らしている。

「さ、さあ、中に入ろうか」
「え、ええ、そうですね」
二人はぎこちなく言葉を交わした。
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