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第1章 力の目醒め〜リスニング〜

〜 1-1 オワリハジマリ 〜

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 あれは中学3年の冬。俺、加藤 加撫(カトウ カナデ)(現在27才)は高校への推薦入学はすでに決まっていたが、学力も容姿も『並み』、もちろん彼女なんていない。友達は少なめで164㎝と小柄だけど筋肉質が売りってだけの男だった。そして、俺には『音』が無い。

 中学でバスケ部だった俺は、体格的にガードとしての役割を果たせる様に全体練習後もみっちり自主練をしていた。

ボールコントロール・シュート練習・ゾーンディフェンスのイメージアップと、なかばルーティンの様になりつつある練習を行い、20時をまわった頃、顧問の先生もさすがに帰るように促してきたので、早々に片付け着替えてあの日は1人で帰ったのを覚えてる。
『音』、特に声を発せず聞く事が出来ない俺にはアイコンタクトと基礎を徹底してやる事しか方法がなかった。
自主練の時間はいくらあっても足りないくらいだった。

 雪国の冬は、道は大体どこもツルツル、足裏全体で地面を捉える様に歩かないとたちまち転んでしまう様な状態だ。

歩道と道路の間には雪山が立ちはだかってて、まるで小さいアルプス山脈の様に、この真っ直ぐ続く国道沿いの通学路の見えるラインを連ねている。

家まではあと、横断歩道を3つ渡る事が出来れば帰れたのに、
青表示の横断歩道を渡り始めた俺に、アルプス山脈の死界からスリップしたワゴン車が突っ込んできた。

 俺の記憶はそこで一度切れた。
次に目を覚ましたときは、あたり一面真っ白な世界に、同じく真っ白な白装束?を着た自分と、目の前には同じ白装束なような物を着てるけど、あきらかに普通の人間と雰囲気が異なる女性がいた。

何故なら、目の前にいるこの女性、翼が生えている。異世界ものの本を読むのが好きだった俺、一瞬頭をよぎった‥〈『コレって‥俺死んだんじゃね?転生ってやつ?』〉 気持ちを押し殺して第一声。

加撫『あなたは‥‥‥⁉︎  俺、‥話せる⁉︎なんで!!?』
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