テイルウィンド

双子烏丸

文字の大きさ
32 / 204
第三章 新たな強敵(ライバル)達 

惑星ツインブルー

しおりを挟む

 惑星ツインブルーは、第三テスア星系に位置する、二つに並ぶ青い二重惑星の総称だ。
 かつて一つのガス惑星が分裂したツインブルーは、他のガス惑星と比べて、かなり小型である。
 互いの重力に引かれて、二つの惑星を形成する蒼色のガスが放出され、それぞれの星を中心に八の字を描くその姿は、かなり美しい星の姿であると言える。
 そして今、一隻の宇宙船が長いワープ航行を終え、銀色の輝きながら船はワープ空間から通常空間に実体化、ツインブルー付近の宇宙空間へと出現した。


 宇宙船はツインブルーの片方へと進路を向けて、船を進める。
 向かう先は、惑星上に浮かぶスペースコロニーだ。
 ドーナツ型の居住リングを持つ、トーラス型スペースコロニー。中央に長く伸びる太いハブと、そこから幾筋も放射状に延びリングへと繋がるスポーク、この全体像を見るとキノコの一種に見える。
 このコロニーは重力制御装置が開発される以前の、リングの開店による遠心力で重力を形成するコロニーであり、建造後数百年経った今でも、改修され続けながら使われている。
 その大きさはかなり巨大であり、コロニーのハブへと接近する宇宙船を比較しただけでも、まるでアリと電柱のスケールだ。
 接近した宇宙船に反応し、ハブの側面ハッチが開き、そこから一対の誘導レーザーが伸びる
 宇宙船は誘導に従ってハッチを潜り、ハブ内部にある宇宙港に入港した。

 
 宇宙港に停泊した船から、フウマ達はデッキに降りる。
 周囲は無重力により、多くの宇宙船が内部の壁面一面に繋がれている。一方でデッキには重力制御装置が埋め込まれ、小規模ながらも発生される重力により、デッキの上では地上と同じように歩くことができた。
 この場所も、かつてコロニーに改修が施された一つである。
 彼ら三人の他にも、道の広いデッキには、別の宇宙船に乗り降りする何人もの人間もいる。
 フウマは長いデッキの上を歩きながら、前方後方、上下に並ぶ船を見てまわった。
「……どうしたの? そんなにキョロキョロして」
「せっかくだから、先にどんな機体があるか、レースの前に見たくてね」
「へぇー。確かに、私も少し気になるわ。メカニックの端くれとして
、どんな機能や構造を備えているか、そしてレーサーが機体をどうチューニングしているか、それにね……」
 どうやらメカニックとしてのスイッチが入ったらしい、ミオは機体の重量とエネルギー出力性能の比重について、制御システムについてなど、専門的な事を熱を入れて語り出した。
 そんなミオと、彼女にたじたじとなっているフウマに、リッキーは愉快そうに笑う。
「選手の機体はここじゃないぜ、小型船の停泊区域は別の場所さ。まぁ、そう急がなくても、すぐに見られるさ」
 彼は上を指さす。
「会場はこの遥か上、コロニー最上階の多目的ドームだ。時間を考えれば、まだオープンセレモニーには、少し早い。上手く行けば、先に来ている選手とも会えるかもな」
 ミオはフウマに笑いかける。
「良かったじゃない。フウマは他のレーサーよりキャリアも少ないし、互いに知り合えるいい機会でしょ?」
「そうだなミオ、この際だから僕の存在を、レーサー達に知らしめてやるさ」
 三人そう話していると、前から一人の男が歩いて来た。
 体格の良い壮年の男性、彼はフウマ達に話しかける。
「久しぶりだなフウマ、それに、リッキーも。君たちにこうして会えて……私も嬉しい」
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

死んだはずの貴族、内政スキルでひっくり返す〜辺境村から始める復讐譚〜

のらねこ吟醸
ファンタジー
帝国の粛清で家族を失い、“死んだことにされた”名門貴族の青年は、 偽りの名を与えられ、最果ての辺境村へと送り込まれた。 水も農具も未来もない、限界集落で彼が手にしたのは―― 古代遺跡の力と、“俺にだけ見える内政スキル”。 村を立て直し、仲間と絆を築きながら、 やがて帝国の陰謀に迫り、家を滅ぼした仇と対峙する。 辺境から始まる、ちょっぴりほのぼの(?)な村興しと、 静かに進む策略と復讐の物語。

日本の運命を変えた天才少年-日本が世界一の帝国になる日-

ましゅまろ
歴史・時代
――もしも、日本の運命を変える“少年”が現れたなら。 1941年、戦争の影が世界を覆うなか、日本に突如として現れた一人の少年――蒼月レイ。 わずか13歳の彼は、天才的な頭脳で、戦争そのものを再設計し、歴史を変え、英米独ソをも巻き込みながら、日本を敗戦の未来から救い出す。 だがその歩みは、同時に多くの敵を生み、命を狙われることも――。 これは、一人の少年の手で、世界一の帝国へと昇りつめた日本の物語。 希望と混乱の20世紀を超え、未来に語り継がれる“蒼き伝説”が、いま始まる。 ※アルファポリス限定投稿

老聖女の政略結婚

那珂田かな
ファンタジー
エルダリス前国王の長女として生まれ、半世紀ものあいだ「聖女」として太陽神ソレイユに仕えてきたセラ。 六十歳となり、ついに若き姪へと聖女の座を譲り、静かな余生を送るはずだった。 しかし式典後、甥である皇太子から持ち込まれたのは――二十歳の隣国王との政略結婚の話。 相手は内乱終結直後のカルディア王、エドモンド。王家の威信回復と政権安定のため、彼には強力な後ろ盾が必要だという。 子も産めない年齢の自分がなぜ王妃に? 迷いと不安、そして少しの笑いを胸に、セラは決断する。 穏やかな余生か、嵐の老後か―― 四十歳差の政略婚から始まる、波乱の日々が幕を開ける。

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

中身は80歳のおばあちゃんですが、異世界でイケオジ伯爵に溺愛されています

浅水シマ
ファンタジー
【完結しました】 ーー人生まさかの二週目。しかもお相手は年下イケオジ伯爵!? 激動の時代を生き、八十歳でその生涯を終えた早川百合子。 目を覚ますと、そこは異世界。しかも、彼女は公爵家令嬢“エマ”として新たな人生を歩むことに。 もう恋愛なんて……と思っていた矢先、彼女の前に現れたのは、渋くて穏やかなイケオジ伯爵・セイルだった。 セイルはエマに心から優しく、どこまでも真摯。 戸惑いながらも、エマは少しずつ彼に惹かれていく。 けれど、中身は人生80年分の知識と経験を持つ元おばあちゃん。 「乙女のときめき」にはとっくに卒業したはずなのに――どうしてこの人といると、胸がこんなに苦しいの? これは、中身おばあちゃん×イケオジ伯爵の、 ちょっと不思議で切ない、恋と家族の物語。 ※小説家になろうにも掲載中です。

処理中です...