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第八章 本番へ――
訓練飛行(1)
しおりを挟む広がるのは快晴の青空、そんな空の中、フウマの乗るテイルウィンドは飛行する。
さながら航空機を思わせる、シャトル型の宇宙船。両側の翼のようなブースターから、燃料を噴かして高速で飛行していた。
地上には渓谷が幾つも地面に刻まれ、荒涼とした砂漠があった。
かつて大昔に惑星開発、テラフォーミングによって環境が整備された惑星エアケルトゥングだが、場所によっては生命の存在しなかった死の惑星だった名残が多く残っており、この砂漠地帯もその一つだった。
こんな場所では人が住むことも、土地を利用することも殆どない。だからこうして、テイルウィンドの飛行訓練にも、使用することが許されている。
――やっぱり、重力があると感じは違う。飛ぶのが重いと言うか……まぁ、惑星上で飛行するなら当然だけど――
操縦しながらフウマは、そんな事を感じている。
一見すれば十三、四才くらい幼く見え、少し可愛げのある子供っぽい少年だが、これでも宇宙船を駆使して行う、宇宙レースの一流レーサーである。
そして彼は、数日後に行われる、銀河各地から凄腕のレーサーが集まる大レース、『グランド・ギャラクシー・グランプリレース』、通称『G3レース』を控えていた。
G3レースに合わせ、機体も何度か、細かい調整を行っている。何しろコースについての詳細は、既に連絡はされていた、今こうして飛んでいるのも、その対策としてだった。
テイルウィンドは上空から、下の大渓谷へと降下する。幾つも刻まれた渓谷のうちでは取り分け大きく、真下には河川が流れている。
――渓谷での飛行、あのアシュクレイでの試合を思い出すな――
ほぼ一本道の渓谷内を、一直線に飛ぶテイルウィンド。渓谷を抜けた先には……。
渓谷、いや渓谷を流れる河川が繋がっていた先は、海のように広大な巨大湖だ。
この辺りは風は少なく、普段は穏やかな湖面だが、低空飛行するテイルウィンドの影響で激しく波立ち、飛んだ跡に二筋の白い筋を水面にのこす。
ディスプレイにも、その様子は映されていた。
そしてフウマは……次の行動に移る、準備をする。
燃料の燃焼率を特殊最大の200%に引き上げ、各部にいくつも存在する機体制御のスラスターを収納、揚力を得るために展開していた両翼のブースターのパネルも閉じ、空気抵抗を最小限に抑える。最後にフウマは、操縦桿を握りしめ――――強く引いた。
巨大湖に水飛沫が高く上がる。そして、水飛沫の中からテイルウィンドが再び現れ、天に向けて急上昇する。
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