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第八章 本番へ――
訓練飛行(3)
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何だかんだで、G3レースの対策は、順調に進んでいる。
レース本番で考えられるシチュエーションを想定した、飛行訓練も何度かこなし、そのたびに機体の調整と整備を繰り返している。準備はもう、万端に近い。
残り日数も、後三日、こうした飛行訓練も恐らく最後だろう。思い返せば、意外に短かった準備期間だった。
いや、むしろ準備期間としては長かった方かもしれない。何しろ今回は特に、フウマは張り切っていた、そのせいで単に短く感じた部分が、結構多かったのかもしれない。
――今まで以上に……僕は全力を出して、勝利してみせる。僕を信じてくれる、彼女の為にも――
そうフウマは、自分の幼馴染である少女、ミオの事を思い浮かべる。
彼女はメカニックとしてテイルウィンドの整備と周囲を行い、フウマをサポートいるが、それ以上に幼馴染として、彼の心の支えになっている。
二人は今まで親密ではあったが、あくまで幼馴染。だったのだが……
〈お疲れ様フウマ。今回の飛行データも、無事にこっちにも届いたわ。これで、最後の機体調整も、上手く行きそうだわ。まぁ、もう調整もあらかた済んだから、後はシステム関係の軽い微調整だけなんだけどね〉
ヘルメットに備えてある通信機能に、地上にいるミオからの通信が入る。
バイザーには向こうからの映像も送られ、少し長いショートカットの髪の、快活でボーイッシュな少女――ミオの姿が映される。
ミオにもフウマの姿は見えているらしく、彼女はニコッと、画面越しに微笑みかける。
「ああ、ミオ。テイルウィンドの調子も、初めとは全然、比べ物にならないくらい凄くいい!」
〈そして、フウマの操縦もね。いつもよりもずっと、生き生きとしていて張り切っている感じだったじゃない?〉
フウマはもちろんと、頷く。
「もちろんだよ。だって…………ミオと約束したからね。君の為にも、僕達の将来のためにも、全力で頑張らないと」
〈フウマってば……もう、大げさなんだから〉
頬を少し赤らめ、ミオは照れる。ボーイッシュな彼女だが、こんな反応は、とても女の子らしく可愛い――と、フウマはつい思う。
長い付き合いで、その上互いに両想いの二人、今まではただの親友、幼馴染として収まっていた。しかし、この間の親善試合での告白がきっかけで、一気に進展した。
……G3レースが終わった時、フウマとミオは晴れて、恋人同士になる。あの時、そうフウマとミオは約束した。
つまりまだ、二人は幼馴染のままである。……が、それでもあんな告白をした後だ、恋人になるのは少し早いと分かっていても、告白する前よりもずっと、距離は短くなった気がする。
「……さてと、もう少しこの景色を楽しみたいけど、そろそろ船内に戻るさ。もうすぐ惑星に降下する、準備をしないといけないし」
〈うん、待っているわね。あ……そうそう〉
ミオが何かを思い出したかのように、言葉を続ける。
〈丁度、私の所にお客さんが来ているの。フウマがよく知っている、あの人よ〉
「はははっ、多分また、リッキーの奴が来たんだろ? 誰かさんに似て、意外に世話焼きな奴だからね」
〈誰かさんって、もうっ! でも、誰が来ているのかは……フウマの想像に任せるわ。
それじゃあ、私は地上で待っているわね〉
ミオとの通信は、そこで終わった。
――さてと、じゃあ僕も船に戻ろうか――
目の前に映る星に背を向け、フウマは元来た道を引き返して、船内へと戻った。
レース本番で考えられるシチュエーションを想定した、飛行訓練も何度かこなし、そのたびに機体の調整と整備を繰り返している。準備はもう、万端に近い。
残り日数も、後三日、こうした飛行訓練も恐らく最後だろう。思い返せば、意外に短かった準備期間だった。
いや、むしろ準備期間としては長かった方かもしれない。何しろ今回は特に、フウマは張り切っていた、そのせいで単に短く感じた部分が、結構多かったのかもしれない。
――今まで以上に……僕は全力を出して、勝利してみせる。僕を信じてくれる、彼女の為にも――
そうフウマは、自分の幼馴染である少女、ミオの事を思い浮かべる。
彼女はメカニックとしてテイルウィンドの整備と周囲を行い、フウマをサポートいるが、それ以上に幼馴染として、彼の心の支えになっている。
二人は今まで親密ではあったが、あくまで幼馴染。だったのだが……
〈お疲れ様フウマ。今回の飛行データも、無事にこっちにも届いたわ。これで、最後の機体調整も、上手く行きそうだわ。まぁ、もう調整もあらかた済んだから、後はシステム関係の軽い微調整だけなんだけどね〉
ヘルメットに備えてある通信機能に、地上にいるミオからの通信が入る。
バイザーには向こうからの映像も送られ、少し長いショートカットの髪の、快活でボーイッシュな少女――ミオの姿が映される。
ミオにもフウマの姿は見えているらしく、彼女はニコッと、画面越しに微笑みかける。
「ああ、ミオ。テイルウィンドの調子も、初めとは全然、比べ物にならないくらい凄くいい!」
〈そして、フウマの操縦もね。いつもよりもずっと、生き生きとしていて張り切っている感じだったじゃない?〉
フウマはもちろんと、頷く。
「もちろんだよ。だって…………ミオと約束したからね。君の為にも、僕達の将来のためにも、全力で頑張らないと」
〈フウマってば……もう、大げさなんだから〉
頬を少し赤らめ、ミオは照れる。ボーイッシュな彼女だが、こんな反応は、とても女の子らしく可愛い――と、フウマはつい思う。
長い付き合いで、その上互いに両想いの二人、今まではただの親友、幼馴染として収まっていた。しかし、この間の親善試合での告白がきっかけで、一気に進展した。
……G3レースが終わった時、フウマとミオは晴れて、恋人同士になる。あの時、そうフウマとミオは約束した。
つまりまだ、二人は幼馴染のままである。……が、それでもあんな告白をした後だ、恋人になるのは少し早いと分かっていても、告白する前よりもずっと、距離は短くなった気がする。
「……さてと、もう少しこの景色を楽しみたいけど、そろそろ船内に戻るさ。もうすぐ惑星に降下する、準備をしないといけないし」
〈うん、待っているわね。あ……そうそう〉
ミオが何かを思い出したかのように、言葉を続ける。
〈丁度、私の所にお客さんが来ているの。フウマがよく知っている、あの人よ〉
「はははっ、多分また、リッキーの奴が来たんだろ? 誰かさんに似て、意外に世話焼きな奴だからね」
〈誰かさんって、もうっ! でも、誰が来ているのかは……フウマの想像に任せるわ。
それじゃあ、私は地上で待っているわね〉
ミオとの通信は、そこで終わった。
――さてと、じゃあ僕も船に戻ろうか――
目の前に映る星に背を向け、フウマは元来た道を引き返して、船内へと戻った。
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