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第八章 本番へ――
新たな翼
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――――
一週間以上前……あの親善試合の後、リッキーは父親である、リオンド・マーティスに呼び出されていた。
――今更、何のようで俺を呼んだ? あの親父――
指定された場所は、Bエリア第18番停泊デッキの、入り口前だった。
宇宙港のデッキは船舶の用途、規模により停泊デッキのエリア、区画は分けられ、フウマ達が待っている帰りの便となる客船は、Aエリアに位置する。
Bエリアは小型船、自家用船舶のためのエリアだ。また他には多目的の停泊デッキであるCエリアも存在し、今回はレース機体の停泊の為に、使用されていた。
リッキーの歩く、Bエリアのターミナルは、先ほどいたAエリアのターミナルと異なり、人の数がかなり少ない。18番停泊デッキと、そこにいるリオンドの姿を見つけるのも、さほど時間はかからなかった。
「それで、一体何のようだ。要件があるならとっとと済ませてくれ」
露骨に不機嫌そうな様子で、リッキーはリオンドに言った。
「やはりまだ……私の事を怒っているのか」
「別に、それとこれとは、関係ないだろ」
少し、寂しそうな様子の父親を、無視するリッキー。
それでも、リオンドは構わず続ける。
「まぁいい、実はお前に、渡したいものがあるんだ」
「何だよ、渡したいものって?」
疑問を投げかけるリッキーに、彼は笑みを見せる。
「お前に――必要なものさ。さぁ、私の後について来るといい」
停泊デッキには、一隻の小型宇宙船が無重力に浮かぶ。
「――これは?」
外見はテイルウィンドに酷似している、シャトル型の機体であるが、全長と大きさはそれを幾らか上回り、外装も堅牢なものとなっている。
勿論、その分重量も増しているだろうが、それは左右の翼状のブースターと更に、機体上部に取り付けられた、筒状の大型ブースターが重量の分を補い、余るほどの加速を保障している。
リッキーの問いに、リオンドは頷く。
「お前のために、用意していた機体だ。本当なら……もう少し前に渡すつもりだったが、タイミングがなくてな。
元の機体を失った代わりに、この機体をG3レースに登録しておいた。まぁ、勝手な事なのかも、しれないがね」
新たな乗機となる、その機体――。リッキーは目の前に存在するそれを眺める。
「俺の為に…………この機体を……」
リオンドは少し、すまなそうな表情を見せた。
「……お前には、何も出来ていなかったことが、多かったからな。これは、せめてもの償いだ。
機体の名は、ワールウィンド。フウマに譲ったテイルウィンドの兄弟機だ。だが、タイプはシュトラーダに近い加速型だ、操作系統もそれに近いものに換えておいた。きっと、使いこなせるはずだ」
「……親父」
今までは、自らのことなど、気にもしていないと、思っていた。
だが――それは、ただ機会が見つからなかった、それだけかもしれない。
実際、分からないことは多いが、この機体、ワールウィンドは、リッキーの為のものだ。
それならば……。
「ん、何だ?」
「正直……俺にもまだ、煮え切らない部分もあるし、アンタを何て思えばいいか分からない。
だが、今回は俺のために、ここまでしてくれた。――感謝するよ、親父」
リッキーはリオンドに、慣れていないが、精一杯の礼を言った。
対する彼は、少しだけ、嬉しそうにほほ笑む。
「ありがとう、リッキー。その資格があるか分からないが、私も陰ながら……応援しているぞ」
一週間以上前……あの親善試合の後、リッキーは父親である、リオンド・マーティスに呼び出されていた。
――今更、何のようで俺を呼んだ? あの親父――
指定された場所は、Bエリア第18番停泊デッキの、入り口前だった。
宇宙港のデッキは船舶の用途、規模により停泊デッキのエリア、区画は分けられ、フウマ達が待っている帰りの便となる客船は、Aエリアに位置する。
Bエリアは小型船、自家用船舶のためのエリアだ。また他には多目的の停泊デッキであるCエリアも存在し、今回はレース機体の停泊の為に、使用されていた。
リッキーの歩く、Bエリアのターミナルは、先ほどいたAエリアのターミナルと異なり、人の数がかなり少ない。18番停泊デッキと、そこにいるリオンドの姿を見つけるのも、さほど時間はかからなかった。
「それで、一体何のようだ。要件があるならとっとと済ませてくれ」
露骨に不機嫌そうな様子で、リッキーはリオンドに言った。
「やはりまだ……私の事を怒っているのか」
「別に、それとこれとは、関係ないだろ」
少し、寂しそうな様子の父親を、無視するリッキー。
それでも、リオンドは構わず続ける。
「まぁいい、実はお前に、渡したいものがあるんだ」
「何だよ、渡したいものって?」
疑問を投げかけるリッキーに、彼は笑みを見せる。
「お前に――必要なものさ。さぁ、私の後について来るといい」
停泊デッキには、一隻の小型宇宙船が無重力に浮かぶ。
「――これは?」
外見はテイルウィンドに酷似している、シャトル型の機体であるが、全長と大きさはそれを幾らか上回り、外装も堅牢なものとなっている。
勿論、その分重量も増しているだろうが、それは左右の翼状のブースターと更に、機体上部に取り付けられた、筒状の大型ブースターが重量の分を補い、余るほどの加速を保障している。
リッキーの問いに、リオンドは頷く。
「お前のために、用意していた機体だ。本当なら……もう少し前に渡すつもりだったが、タイミングがなくてな。
元の機体を失った代わりに、この機体をG3レースに登録しておいた。まぁ、勝手な事なのかも、しれないがね」
新たな乗機となる、その機体――。リッキーは目の前に存在するそれを眺める。
「俺の為に…………この機体を……」
リオンドは少し、すまなそうな表情を見せた。
「……お前には、何も出来ていなかったことが、多かったからな。これは、せめてもの償いだ。
機体の名は、ワールウィンド。フウマに譲ったテイルウィンドの兄弟機だ。だが、タイプはシュトラーダに近い加速型だ、操作系統もそれに近いものに換えておいた。きっと、使いこなせるはずだ」
「……親父」
今までは、自らのことなど、気にもしていないと、思っていた。
だが――それは、ただ機会が見つからなかった、それだけかもしれない。
実際、分からないことは多いが、この機体、ワールウィンドは、リッキーの為のものだ。
それならば……。
「ん、何だ?」
「正直……俺にもまだ、煮え切らない部分もあるし、アンタを何て思えばいいか分からない。
だが、今回は俺のために、ここまでしてくれた。――感謝するよ、親父」
リッキーはリオンドに、慣れていないが、精一杯の礼を言った。
対する彼は、少しだけ、嬉しそうにほほ笑む。
「ありがとう、リッキー。その資格があるか分からないが、私も陰ながら……応援しているぞ」
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