141 / 204
第十章 Grand Galaxy Grand prix [Action!〕
それぞれへの想い
しおりを挟む
――――
G3レース、前半戦の最後の舞台となるのが……この惑星エメラルドである。
一番先に出発した団体――第一陣のレーサーは、すでにこの星に到達し、レースを繰り広げていた。
そして……それに交じって、フウマのテイルウィンドも飛ぶ。
――ようやくここまで来たって感じ。……まだ相手は残っているけど、今の僕なら――
テイルウィンドは第一陣のレース機体を、次々に相手にしては、それを打ち破る。
最も、この場にいるのは何も第一陣ばかりでなく、腕の良い第二陣、第三陣のレーサー達の機体も、この場に到達し、フウマに立ちはだかる。
そして、第四陣のレーサーも一人、彼の近くを飛行していた。
加えてそのレーサーとも、見知らぬ間柄でもない。今、相手からの通信を、フウマは受け取っている。
「……そっちの方が先に、ここまで来ていたんだね。人の事を言うくせして、自分だってやるじゃないかよ……ジョン!」
テイルウィンドの少し先には、ブルーの機体色を輝かせたスワローの姿がある。
〈僕の場合は、ちょっと運が良かっただけだよ。むしろ……前半戦だけでここまで上位に上がって来た、フウマ、君の方こそ才能があるさ。
やはり……僕の目に狂いはなかったって所か〉
「いつもそう言ってくれるのは嬉しいけど、何だか、会うたびにそんな感じだと、少しこそばゆいかな」
少し苦笑いするフウマに、ジョンは首を横に振る。
〈まぁそう言わないでさ、僕、人を見る目には自信あるんだから。
だから、さ……やっぱり、君が僕の仲間になってくれたら……とても光栄だな〉
「言っているだろ? 面白そうな申し出だけど、今は後回しだって」
〈……そう、だったね。なら今はこの際だ! 君の実力を、たっぷり僕に見せておくれよ!〉
どうやら向こうも本気のようだ。
ジョン・コバルトとその機体、スワロー、その実力そして、フウマの成長の成長の程は、果たして……。
――――
惑星エメラルドの、鬱蒼としたジャングルに覆われた、緑色の大地。
この地域はまだ平坦なジャングルが広がるのみで、それに今はまだ、大気も安定している。
しかし……この星の気候は、非常に変化しやすいとの事だ。現在は良いが、この先どうなるかは、分からない。
そんな中で、エメラルドの空では――いくつものレース機が飛ぶ。
G3レースは数多くのレーサーと機体が参加する、一大レースだ。あまりに多いために、一度に全機出発が不可能なほどに。
よって、これまでのレースに対する成績を元に、第一陣から第二陣、第三陣、そして第四陣とグループを分けて別々にスタートさせると言う、一定のハンデも兼ねた方法をとった。
そんな中、第一陣はもちろん、ここまでリードを伸ばした第二陣、第三陣の中でも特に優秀なレーサーでさえ、フウマには敵わない。
第四陣に選抜されたフウマ、そしてテイルウィンド……。もちろん両者の間に、実力の差がある事も要因だが――フウマ自身の成長も大きかった。
それは彼自らも気づきつつあり、これまでの思いさえも……変化を見せていた。
――シロノ……。これまではただの負けず嫌いで対抗することばかりだったけど……本当は僕よりも、ずっと凄くて恰好良いレーサーだって、ようやく気が付いたんだ。だから今は――そんなシロノに少しでも、追いつきたいんだ!――
そして同じく第四陣に選抜される程の実力を持つとされる、ジョンとその機体スワローさえも、徐々に……そして確実に、距離を縮め、すぐ傍にまで接近する。
〈……ふっ! やっぱりすごいよ、フウマは! 君のその腕と……そして、レースに賭ける強い意志、それが僕に伝わって来るよ!〉
レースで対決を繰り広げる、スワローとテイルウィンド。
フウマの巧みな記述により、すぐに機体はスワローの真横を取った。
しかし、スワローもそう簡単には先を譲らない。
両者は拮抗し、互角に近い性能と能力を引き出し、対決する。
「……正直言うとさ、自分でも幾らか……上手くなった気もするんだ。何しろG3レースだから、張り切っているからかな?」
競い合いながらも、二人は会話する。
モニター越しのジョンは、朗らかな笑みを見せた。
〈かもしれないけど、それでも着実に、腕を上げているはずさ〉
彼はその成長を、高く評価した。
それ程までにジョンは……フウマを認めていたのだった。
彼は、こうも続ける
〈まだまだ、君はもっと成長するはずさ。……頑張ってあげないといけない、大切な人だって――いるわけだからね〉
そんなジョンの言葉に、フウマは頷く。
「うん。とても……とても大好きな、ちょっと恥ずかしいけど、愛してる女の子がいるんだ」
フウマの意識にあったのは、よく彼に優しい笑顔を見せる大切な人……ミオの姿だった。
――ミオ、昔から僕と一緒にいてくれたよね。これまでは幼馴染だったけど、これからは……それよりもずっと、大切な人なんだ!
このレースの勝利は、彼女の為にも……だから――
「だからこそ……僕は、全身全霊で行くんだ!」
そして、フウマはその拮抗を打ち破り――ジョンのスワローを抜いた。
〈素晴らしいね、やっぱり君は。――ますます、気に入ったよ〉
テイルウィンドに先を越されても、満足そうなジョン。
彼とその機体を置いて、テイルウィンドは先を行った。
ここまで来ると、もう他の機体は一、二機程度……。
フウマは現在順位を確認すると――何と、すでにトップ九位に入っていた。
それに先頭を飛行する、ジンジャーブレッドの乗機、ブラッククラッカー。距離はまだ遠いが、それでも頑張れば前半戦の内に、到達可能な距離であった。
そう……フウマにとっては、ジンジャーブレッドの存在も大きい。
かつて数十年前、誰にも敗北を許さなかった伝説のレーサー、ジンジャーブレッド。
数多くのレーサーの憧れであり、そして、最大の壁となる……そんな人物だ。
――そして、ジンジャーブレッド。あの伝説となったレーサーにも、僕はもう、ここまで手が伸びているんだ。……あと少し、あと少し頑張れば……もっと僕は、成長出来る気がするんだ。
今の僕が敵うかどうか分からないけど、それでも――
先程は、穏やかなだった天候――。しかし、その空は灰色の雲に覆われ暗くなって行き、雨もポツポツと降り始めている。
安定し、あまりなかった気流も乱れが生じていた。さっきまでそんな兆候がなかった分、あまりに急な変化の始まりだった。
……恐らく、この先も更に、天候は荒くなって行くだろう。
それはまるで――これからの激戦を、予感させるように思えた。
G3レース、前半戦の最後の舞台となるのが……この惑星エメラルドである。
一番先に出発した団体――第一陣のレーサーは、すでにこの星に到達し、レースを繰り広げていた。
そして……それに交じって、フウマのテイルウィンドも飛ぶ。
――ようやくここまで来たって感じ。……まだ相手は残っているけど、今の僕なら――
テイルウィンドは第一陣のレース機体を、次々に相手にしては、それを打ち破る。
最も、この場にいるのは何も第一陣ばかりでなく、腕の良い第二陣、第三陣のレーサー達の機体も、この場に到達し、フウマに立ちはだかる。
そして、第四陣のレーサーも一人、彼の近くを飛行していた。
加えてそのレーサーとも、見知らぬ間柄でもない。今、相手からの通信を、フウマは受け取っている。
「……そっちの方が先に、ここまで来ていたんだね。人の事を言うくせして、自分だってやるじゃないかよ……ジョン!」
テイルウィンドの少し先には、ブルーの機体色を輝かせたスワローの姿がある。
〈僕の場合は、ちょっと運が良かっただけだよ。むしろ……前半戦だけでここまで上位に上がって来た、フウマ、君の方こそ才能があるさ。
やはり……僕の目に狂いはなかったって所か〉
「いつもそう言ってくれるのは嬉しいけど、何だか、会うたびにそんな感じだと、少しこそばゆいかな」
少し苦笑いするフウマに、ジョンは首を横に振る。
〈まぁそう言わないでさ、僕、人を見る目には自信あるんだから。
だから、さ……やっぱり、君が僕の仲間になってくれたら……とても光栄だな〉
「言っているだろ? 面白そうな申し出だけど、今は後回しだって」
〈……そう、だったね。なら今はこの際だ! 君の実力を、たっぷり僕に見せておくれよ!〉
どうやら向こうも本気のようだ。
ジョン・コバルトとその機体、スワロー、その実力そして、フウマの成長の成長の程は、果たして……。
――――
惑星エメラルドの、鬱蒼としたジャングルに覆われた、緑色の大地。
この地域はまだ平坦なジャングルが広がるのみで、それに今はまだ、大気も安定している。
しかし……この星の気候は、非常に変化しやすいとの事だ。現在は良いが、この先どうなるかは、分からない。
そんな中で、エメラルドの空では――いくつものレース機が飛ぶ。
G3レースは数多くのレーサーと機体が参加する、一大レースだ。あまりに多いために、一度に全機出発が不可能なほどに。
よって、これまでのレースに対する成績を元に、第一陣から第二陣、第三陣、そして第四陣とグループを分けて別々にスタートさせると言う、一定のハンデも兼ねた方法をとった。
そんな中、第一陣はもちろん、ここまでリードを伸ばした第二陣、第三陣の中でも特に優秀なレーサーでさえ、フウマには敵わない。
第四陣に選抜されたフウマ、そしてテイルウィンド……。もちろん両者の間に、実力の差がある事も要因だが――フウマ自身の成長も大きかった。
それは彼自らも気づきつつあり、これまでの思いさえも……変化を見せていた。
――シロノ……。これまではただの負けず嫌いで対抗することばかりだったけど……本当は僕よりも、ずっと凄くて恰好良いレーサーだって、ようやく気が付いたんだ。だから今は――そんなシロノに少しでも、追いつきたいんだ!――
そして同じく第四陣に選抜される程の実力を持つとされる、ジョンとその機体スワローさえも、徐々に……そして確実に、距離を縮め、すぐ傍にまで接近する。
〈……ふっ! やっぱりすごいよ、フウマは! 君のその腕と……そして、レースに賭ける強い意志、それが僕に伝わって来るよ!〉
レースで対決を繰り広げる、スワローとテイルウィンド。
フウマの巧みな記述により、すぐに機体はスワローの真横を取った。
しかし、スワローもそう簡単には先を譲らない。
両者は拮抗し、互角に近い性能と能力を引き出し、対決する。
「……正直言うとさ、自分でも幾らか……上手くなった気もするんだ。何しろG3レースだから、張り切っているからかな?」
競い合いながらも、二人は会話する。
モニター越しのジョンは、朗らかな笑みを見せた。
〈かもしれないけど、それでも着実に、腕を上げているはずさ〉
彼はその成長を、高く評価した。
それ程までにジョンは……フウマを認めていたのだった。
彼は、こうも続ける
〈まだまだ、君はもっと成長するはずさ。……頑張ってあげないといけない、大切な人だって――いるわけだからね〉
そんなジョンの言葉に、フウマは頷く。
「うん。とても……とても大好きな、ちょっと恥ずかしいけど、愛してる女の子がいるんだ」
フウマの意識にあったのは、よく彼に優しい笑顔を見せる大切な人……ミオの姿だった。
――ミオ、昔から僕と一緒にいてくれたよね。これまでは幼馴染だったけど、これからは……それよりもずっと、大切な人なんだ!
このレースの勝利は、彼女の為にも……だから――
「だからこそ……僕は、全身全霊で行くんだ!」
そして、フウマはその拮抗を打ち破り――ジョンのスワローを抜いた。
〈素晴らしいね、やっぱり君は。――ますます、気に入ったよ〉
テイルウィンドに先を越されても、満足そうなジョン。
彼とその機体を置いて、テイルウィンドは先を行った。
ここまで来ると、もう他の機体は一、二機程度……。
フウマは現在順位を確認すると――何と、すでにトップ九位に入っていた。
それに先頭を飛行する、ジンジャーブレッドの乗機、ブラッククラッカー。距離はまだ遠いが、それでも頑張れば前半戦の内に、到達可能な距離であった。
そう……フウマにとっては、ジンジャーブレッドの存在も大きい。
かつて数十年前、誰にも敗北を許さなかった伝説のレーサー、ジンジャーブレッド。
数多くのレーサーの憧れであり、そして、最大の壁となる……そんな人物だ。
――そして、ジンジャーブレッド。あの伝説となったレーサーにも、僕はもう、ここまで手が伸びているんだ。……あと少し、あと少し頑張れば……もっと僕は、成長出来る気がするんだ。
今の僕が敵うかどうか分からないけど、それでも――
先程は、穏やかなだった天候――。しかし、その空は灰色の雲に覆われ暗くなって行き、雨もポツポツと降り始めている。
安定し、あまりなかった気流も乱れが生じていた。さっきまでそんな兆候がなかった分、あまりに急な変化の始まりだった。
……恐らく、この先も更に、天候は荒くなって行くだろう。
それはまるで――これからの激戦を、予感させるように思えた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
死んだはずの貴族、内政スキルでひっくり返す〜辺境村から始める復讐譚〜
のらねこ吟醸
ファンタジー
帝国の粛清で家族を失い、“死んだことにされた”名門貴族の青年は、
偽りの名を与えられ、最果ての辺境村へと送り込まれた。
水も農具も未来もない、限界集落で彼が手にしたのは――
古代遺跡の力と、“俺にだけ見える内政スキル”。
村を立て直し、仲間と絆を築きながら、
やがて帝国の陰謀に迫り、家を滅ぼした仇と対峙する。
辺境から始まる、ちょっぴりほのぼの(?)な村興しと、
静かに進む策略と復讐の物語。
日本の運命を変えた天才少年-日本が世界一の帝国になる日-
ましゅまろ
歴史・時代
――もしも、日本の運命を変える“少年”が現れたなら。
1941年、戦争の影が世界を覆うなか、日本に突如として現れた一人の少年――蒼月レイ。
わずか13歳の彼は、天才的な頭脳で、戦争そのものを再設計し、歴史を変え、英米独ソをも巻き込みながら、日本を敗戦の未来から救い出す。
だがその歩みは、同時に多くの敵を生み、命を狙われることも――。
これは、一人の少年の手で、世界一の帝国へと昇りつめた日本の物語。
希望と混乱の20世紀を超え、未来に語り継がれる“蒼き伝説”が、いま始まる。
※アルファポリス限定投稿
老聖女の政略結婚
那珂田かな
ファンタジー
エルダリス前国王の長女として生まれ、半世紀ものあいだ「聖女」として太陽神ソレイユに仕えてきたセラ。
六十歳となり、ついに若き姪へと聖女の座を譲り、静かな余生を送るはずだった。
しかし式典後、甥である皇太子から持ち込まれたのは――二十歳の隣国王との政略結婚の話。
相手は内乱終結直後のカルディア王、エドモンド。王家の威信回復と政権安定のため、彼には強力な後ろ盾が必要だという。
子も産めない年齢の自分がなぜ王妃に? 迷いと不安、そして少しの笑いを胸に、セラは決断する。
穏やかな余生か、嵐の老後か――
四十歳差の政略婚から始まる、波乱の日々が幕を開ける。
40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私
とうとうキレてしまいました
なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが
飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした……
スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます
中身は80歳のおばあちゃんですが、異世界でイケオジ伯爵に溺愛されています
浅水シマ
ファンタジー
【完結しました】
ーー人生まさかの二週目。しかもお相手は年下イケオジ伯爵!?
激動の時代を生き、八十歳でその生涯を終えた早川百合子。
目を覚ますと、そこは異世界。しかも、彼女は公爵家令嬢“エマ”として新たな人生を歩むことに。
もう恋愛なんて……と思っていた矢先、彼女の前に現れたのは、渋くて穏やかなイケオジ伯爵・セイルだった。
セイルはエマに心から優しく、どこまでも真摯。
戸惑いながらも、エマは少しずつ彼に惹かれていく。
けれど、中身は人生80年分の知識と経験を持つ元おばあちゃん。
「乙女のときめき」にはとっくに卒業したはずなのに――どうしてこの人といると、胸がこんなに苦しいの?
これは、中身おばあちゃん×イケオジ伯爵の、
ちょっと不思議で切ない、恋と家族の物語。
※小説家になろうにも掲載中です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる