上 下
6 / 15

5話「おっさん、少女(男)に本気を出す」

しおりを挟む
「お、りゃぁぁぁああ!!」

 キン、と剣の交わる音。
 右の短剣が唸り、試験官の首を狙う。

 だが、腕に掌底を打たれ軌道が逸れ、あらぬ方向へと進む我が片腕を見て───

 即座に、左の短剣を振るう。

「甘いッ!!」

 おっさんの西洋剣が軌道に割り込み、強制的に剣が止められる。その様子を見て、ニヤリと微笑むおっさん。
 だが、何を勘違いしているか分からないが、

 ───まだ、俺の攻撃は終わらない。

 左の短剣が止められているのを良いことにその場で上体を倒し、脇腹に蹴りを入れる。

「───────ゴフッ!!」

 痛いだろう?そりゃあ痛かろうな。敢えて柔らかく、脆い部分を狙ったのだから。

 おっさんは嗚咽し、鍔迫り合いをしていた剣が緩くなる。そこで地面に足をつけて体制を一度立て直し......

 頭部に衝撃。

「ガッ!?」

 体が地面に落ちる最中、見るとおっさんは片足を俺の頭部辺りに上げ、上半身を斜め下にしていた。

 ──つまり、回し蹴りを喰らったのだ。

「頭、がぁ......」

「ふぅ~、つい本気になっちまったぜ。いや、いい勝負だったぜ?俺には届かないようだがな!」

 そんな戯言が聞こえるが、地面に突っ伏した俺は意識が遠退くのを感じていた。

 あー。これ、俺、もうダメっぽ─────

 そして、意識は光差し込まぬ闇に沈んだ。

「おいっ!大丈夫か!?......クソ、気絶しやがった!」

「あー、サティーさんがまたいたいけな少女を気絶させたー。だからホドホドに、って言ったんすよー」

「だけど...その少女、中々の物を見せてもらったぜぇ。けけけ、将来が楽しみだぁ......俺たちのクランに勧誘するかぁ?ケッケッケ」

「そんなことより早く医務室へ送れ!頭部の怪我は割りとシャレにならん!!おらっ、サティー何ぼうっとしてやがる!!!」

「お前ら......本当に頼りになるなぁ......おじさん、嬉しいよ......」
しおりを挟む

処理中です...