異世界に招かれしおっさん、令嬢と世界を回る

いち詩緒

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第64話 領主との再開

 王城からエドワーズ領主の館に着いたのは日が落ちて間もない夕方であった。馬車から降りるとメイドと領主が出迎えてくれた。
 ライリーは疲れで多少は静かになったが様子はおかしいままである。出迎えのメイドのエミリアの手を取り「やあ、出迎えて貰えてうれしいね」と言った。事情をすぐ察したエミリアはすぐにこちらへとダイニングに案内した。

 ダイニングに着くと領主が待っており、随分と美味しそうな料理が並んでいる。領主が旅はどうだったのかとライリーらに尋ねた。まず、ソフィアが答える。

「はい。お父様。今回の旅は王国から魔族領の南部地域に南下を続けた旅で、主に密輸組織とそれに関係した魔族と魔貴族の動向を探る事が主な任務でした。
 王城で旅の成果を確認したところ、密輸組織と取引していた王国貴族の摘発に成功したとのことです。組織の全貌はこのまま泳がせて解明していくとのことでした」

「うむ。ご苦労。我が娘が立派に国のため、世界のために働いている事を誇らしく思う。ところでライリーとは色々あったんだろう?」
「うう……それは、えっと……」

 ライリーが答える。

「領主様、ソフィアは魔法士として立派に作戦に携わり多くの成果を残しました。ソフィアは今後も優秀な魔法士であり、王国と世界をリードする貴族となるでしょう」
「いや、そうじゃない。君といい関係になったのではないかと聞いている」

「ええ! それはもう! 私の作った料理を美味しそうに食べ、夜に私の寝床に潜り込んできて潤んだ瞳で今度は……」
「ちょっと! ライリー! それ以上は言わないで!」

「いやあ。良い事じゃあないか。ライリー、旅が終わったら是非、娘と結婚してくれ」
「領主様! その発言はあまりにも縁起が悪すぎます。ソフィアとのハッピーエンドのためにも!」

「う~ん……やはり魔族領との波動差でおかしくなっているのがまだ治らないようだ。エミリア、彼に酒をどんどん飲ませるんだ」

 エミリアは領主に答えた。

「はい。旦那様。どのお酒がよろしいでしょうか?」
「あまりキツイのを飲ませると急に酔いが回った時がいけないので、濃いめのビールを用意してくれ」

「ではお持ちします」

 そう言うと、エミリアは黒いビールを持ってきた。飲むと、濃厚なコクと香りがありかなり酔いが回りやすい感じがある。

「しかし、魔族領では君も大変だったんじゃないか? 毎日のように魔族領に行きたくないと言っていたからな」

「ええ。それはもう大変でした。……ゴクッ、ゴクッ……ですが愛するソフィアと一緒に過ごす時間がいつも私の心を癒し、前の世界でも……ゴクッ、ゴクッ……舐めさせられた辛酸がトラウマとなり脳裏に過る事もあれど、……ゴクッ、ゴクッ……ソフィアを感じる程、幸せを感じて乗り越える事が出来ました」

「あ、ああ……それは何よりだ。寄って饒舌になっているのかおかしいから饒舌になっているのか分からんが」
「そうそう。旦那様、ユニコーン牧場で魔族領の中では先進的な農業をしているのを見ました。無駄が無いようで浮かせた金で酒池肉林の宴を毎晩のように催しており欲望にまみれた日々を過ごしておりました」

「そこは父と呼びなさい。それについては報告を聞いている。何でも廃棄するようなものでも何でも金になるものは使って稼いでいたようだ。魔族領ではよくある事だ。従業員に還元せずに自らを満たすために使う」
「そこで思ったのが私が前に居た世界ではよくある経営者だなと思った次第です」

「そうか。あれがよくある事なのか。そうなると次に君たちが向かう魔族領では考えが読みやすいのかもしれないな」
「ま、魔族領! もう私は行きたくありません。この王国でソフィアと幸せに暮らしとうございます! ……ゴクッ、ゴクッ!」

「その言葉は嬉しいが、魔族領への遠征はまだまだ続くぞ。と言っても、当分の間はこの王国で過ごし、英気を養うといい。
 しばらく王国で過ごした後に向かうのは、まずは、帰還前にいた街に転移する。そこから兵員を多少、変更し街から山が見えたと思うがそこへ向かい、北上する。
 すると工業都市に到着するのだがここは悪徳商人、悪徳企業の巣窟で住民の大半が金の事ばかり考えている」

「そんなところに……一体、何をしに向かうのでしょうか?」
「ああ。おそらく密輸品の出所の多くはここだろうからその生産施設の破壊とかじゃないかと思う」

「ここへ来て激しい戦いが……」
「いや。私がこないだ王城で聞いた作戦内容では生産施設の破壊をすればいいので魔族や悪徳商人とかの住民を積極的に倒す事はしないと聞いている」

「まあ、倒しまくったところで住民全員が急に心を入れ替えるとかはしないでしょうし」
「そういう事だ」

「お父様、ライリーがかなりフラフラしています」
「そうだな。エミリア、執事と一緒に彼を部屋に運んで寝かせてくれ。これだけ酔っていれば深い眠りに入って朝まで起きないだろう」

 そう言うとエミリアと執事はライリーを部屋に運び、ベッドに寝かせた。

―― 夢の中 ――

 花の咲き乱れる丘を登り、いつものガゼボへと向かった。辿り着くと、そこにはいつものように聖母のような女性が待っていた。

「こんばんは。ついに王国へ帰って来れましたね」
「はい。ですが、今度は北に上らされるようですが?」

「まあ、そこまでのんびりと出来るわけではありませんがしばらくはこの王国で過ごせますので英気を養うと良いでしょう」
「そう言えば起きている時は魔族領との波動差で感情の制御が上手くできないのですが、明日の朝には治っているのでしょうか?」

「はい。このあとあなたの魔力等を調整しておきますので正常に戻っていますよ。と言っても王国に戻ってきた事でしばらくは清々しさを常に感じますからそういう意味では他人からは気分がいい状態なんだなという程度には見えると思います」

「よろしくお願いします。次の魔族領ですか。いや~……」

「気が重いのは分かりますが今、魔族領の一部では革命の気運が高まっています。今回、魔族の密輸についての詳細を探っている事が、魔族を牽制する事に繋がっておりそれを知った以前から魔族のやり方に不満のある民が蜂起しそうな状態になっているのです」

「なるほど。それは進化するためにも良い事ではありますね。しかし、自己中心的で金の事ばかり考えていると言っていましたが?」

「あなたが居た前の世界の事を思い出してください。せっかく革命を起こしてもそれを悪用する人間の何と多い事か。
 この世界の魔族の狡猾さが無くなるにはまだまだ時間がかかります。革命を起こさせてガス抜きをした後に分かりにくく支配する算段も考えているわけです」

「ああ。となると、さっきまで居た南部よりも高度な文明の地域ですがその分、賢い民もいれば狡猾な民も居るといったところでしょうか?」
「そんなところです。蜂起しそうな民は正義に基づいて立ち上がろうとしていますが、その周りの民は単なる不満とその解消のために付いていこうとしている者も多いのです」

「ああ……王国民のように善に基づいた思考が出来ればいいのに」
「さて、嘆いていても魔族領にそのうち行く事に変わりはありません。さあ、明日からの王国での暮らしをご堪能あれ」

―― 翌朝 ――

 何ともいえない言葉を聞いた後の目覚めは微妙な気分になるのかと思ったが、やはり王国での朝は素晴らしい目覚めだ。
 さて、今日はどうするか。
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