ネオ・ヴァラニア 〜アナル開発すると魔法が強くなるMMOで

なエタそ

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25.納品、報酬、ルカ

 閑話休題。
 ステータスを確認した僕達の認識は、「ステータスがカンストするのが早すぎる」で一致した。
 ネオ・ヴァラニアという広大なワールドのボリュームを考えれば、まだ成長要素があるはずだと思ったのだ。
 他のゲームでいうと、上級職へとクラスアップするみたいな。ネオヴァラに職業やクラスはないが、代替システムがあるのかもしれない。

 そう予想した僕達は、差し当たって情報収集をすることにした。
 ゲーム脳な我々は、たとえ脳と下半身が直結しようとも、このままイベント周回セックスをするのならレベル上限を解放してからにしたいと思う生き物である。
 当初はイベントに参加する気がなかったので、そもそもイベント報酬が何なのか二人とも把握していなかった。情報収集はR18休憩にはもってこいだ。

「一旦、フロランティアの街に戻って納品だなぁ」
「ですね。納品してイベント報酬を確認。それから、レベルの解放条件を調べましょうか」
「おっけー。じゃあ中央広場集合で」
「はい」

 僕達は長いこと居座り続けた花園ガーデンから『風と花の街フロランティア:中央広場』のポータルへと移動した。

 街はイベント真っ最中なだけあって、盛況だった。そよ風と花の匂いがさらに街中を華やかにしている。そんなリリース初日よりも大勢のプレイヤーとニアマンが行き来する人混みの中からジルを探すのは一苦労だ。

「ミュラーさん!」

 キョロキョロしていると、ジルが人の波を掻き分けて僕の腕を掴んでくれた。

「ジル! あっちから抜けれそう!」

 僕がパッと振り返ると、周りの人達もパッと僕達を見やった。
 うん?
 ジルに行き先を指差しながら、僕は首を傾げる。
 わざわざ足を止めた通行人達はひどく驚いたような表情で僕とジルを交互に見比べているが、僕に心当たりはない。何か用かと目が合った人達に視線で問いかけてみても、皆、一様に「何でもない」と首を横に振るばかり。
 変だなと思ったが、ジルに「行きましょう」と促されたので移動することにした。

「……俺以外に、イイ人がいましたか?」
「いっ、いるわけない! いるわけないでしょ、僕のこと揶揄ってる?」
「フフッ、ならいいんですが。ミュラーさん魅力的だから……」

 ジルが困ったように眉を八の字にして微笑む。
 魅力的なのはどっちだよ!
 そんな僕好みの表情して僕を困らせて、あなた僕のこと相当狂わせているんですよ?
 全くもう。分かってやられてもお手上げだけど、無自覚なのもタチが悪い。

「その辺の人にナンパされてもついていかないよ。ジルがナンパしてくれるなら大歓迎だけど?」
「か、考えておきます、誘い文句」
「あははっ、楽しみにしてるね」

 僕はこれ見よがしにジルの左腕に両腕を絡め、「この可愛いイケメンは僕のです」アピールをしながら歩いた。
 それにしても視線を感じるんだよなぁ。
 まぁ、その原因は程なくして判明するんだが。



 納品所は、中央広場の近くに設置されていた。いつもは屋台が出ているイベントスペースが、丸ごと『精霊達の春祭』特設会場になっている。
 色とりどりに飾られたフラワーアーチ、華やかなメインステージ、メッセージボードや掲示板、そしてイベントアイテム『春祭の花弁』の集積所。
 『春祭の花弁』受付カウンターは先客がいて混み合っていた。遠方からでも処理はしてもらえるが、折角ならカウンターの奥も見物してみたいと思い、僕達はイベントスペースを軽く一周して時間を潰した。

「ん? 何これ?」
「どれです?」

 掲示板の前に立った僕は目を疑った。
 ボードの材質は木材なのに、表示はホロウィンドウで物理全無視。まぁ利便性を優先した結果だろうからそれは良いが、問題は内容だ。
 『精霊達の春祭 中間ランキング』と題され、順位とプレイヤー名が掲示されているが……。

「『1位 ミュラー』、『2位 ジル』……?」
「えっ、俺達ですか?」
「だよね? まだ納品してないのにワンツーって。何のバグ?」
「……あっ。ミュラーさん、小さく説明の記載がありますよ」
「どこ?」
「こっち」

 ジルは僕の手が添えられたままの左腕を上げた。
 ランキングのルールが載っている別のホロウィンドウ。そこには、イベント終了時には未納品の『春祭の花弁』も自動で回収される旨が記されていた。
 それなら納品しに来る分だけ手間じゃんって話だけど、イベント期間中なら納品と引き換えに報酬のアイテムなどを貰うことができるし、時々おまけがつくらしい。回復薬などの消耗品もあるので、イベント期間中の出費を抑えられると考えれば、街に出たついでに納品するのは全然アリ。
 で、こまめに納品するプレイヤーと放ったらかしにするプレイヤー、両方のイベント参加意欲を高める為に、ランキングは納品未納品に関わらず、累計獲得数で集計している。
 ランキング掲示板の横では、ランキングに対するコメントが大いに盛り上がっていた。要約するとそういうことらしい。

「バグじゃないのかぁ」
「あ、ランキング更新された」
「マジ?」
「ほら、4位と5位が入れ替わってる」
「わぁお。もしかして、上の方って僅差だったりする?」

 眺めていると、またすぐに4位と5位が逆転した。そして、しばらく眺めていると、なんと3位も4位と接戦を繰り広げはじめたではないか。
 しばらく観察していたが、現在何もしていない僕達が抜かされることはなかった。不動の1位、2位である。
 先ほど妙に視線を感じたのはこれだろう。ワンツーのネームタグが揃っていたら、僕も二度見すると思う。
 ランキングにポイントは載っていないので仔細は分からないが、イレギュラーな事態を逆手に荒稼ぎした自覚のある僕は居た堪れない気持ちになった。共犯者のジルも、同じく苦笑している。

「……3位から5位は、3Pしてるのかも?」
「……今、6位も変動しましたよ。あ、その下の方も動きが」
「ジーザス! そんなことより報酬だ。重要なのはイベント報酬!」

 ランキング報酬次第で、僕は悪人にならねばならない。グレーゾーンに手を染める覚悟をした。
 だが、確認したところ、イベントのランキング報酬は、お金と装備に使えるレア素材など。それに、上位は『紹介状』がつく。

「『紹介状を持つ者は、任意の精霊に会うことができる』……なるほど?」
「花の精霊フローラには会いましたが、他の精霊も紹介してもらえるみたいですね。ミュラーさん欲しいです?」
「んー……、マストではないかな? コメント見てると、精霊って意外と多く存在してるみたいだし、頑張れば会える気がする。ジルは欲しい?」
「いや、俺も今回はそこまで。正攻法なら狙ったかもしれませんが、事故とはいえ初日の花園スタートはチートくさすぎましたね。ミュラーさんが良いならランキング報酬は狙わずに、納品報酬だけで十分です」
「だよねぇ」

 調子に乗ってイベント周回セックスをしたが、やはりあれはチート級の効率だったらしい。
 上位2割に食い込めたら儲け物だと思ったが、流石にワンツーはやりすぎ。これ以上は他のプレイヤーに申し訳ない。

 僕達は掲示板前を静かに離れ、納品カウンターへと向かった。
 順番待ちの人はおらず、受付のニアマンのお姉さんが朗らかな笑顔で迎えてくれた。

「ようこそお越しくださいました。集めた春祭の花弁を納品されますか?」
「はい。とりあえず全部。あと、納品報酬のリストって見れますか?」
「ありがとうございます。『春祭の花弁』の納品はこちらへお願いいたします。報酬リストはこちらです」

 僕はインベントリを開き、この6日間、二人で頑張った成果を指定の場所へ放り込んだ。
 ドロップされた花弁で木編みの籠が山盛りになり、数枚がヒラヒラと舞い落ちる。

「まぁ!」

 あ、1回では無理なのか。
 数を減らして隣の籠に盛り付ける。それも満杯になり、次の籠に入れようとした所で、係の人が慌てて大籠を持ってきた。
 僕の残りを入れた後にジルもそこへ納品すると、大籠はこんもりとした花弁で埋め尽くされた。
 淡い光を放つ花弁は見応えがあり、背後を通りかかったプレイヤー達が「えっ」と足を止めている。

「……お二人とも、合計が1,500枚を超えておりましたので、規定の品をお渡しいたしますね。よろしければ、是非また納品にいらしてください!」

 ホクホク顔の受付嬢から、納品報酬が次々とアイテムインベントリに送られてくる。

『納品報酬:精霊の霊薬×30、精霊の妙薬×50、最高級蜂蜜×20、ハナカライト鉱石×10、HP回復ハイポーション×50、MP回復ハイポーション×50、SPローション×50…………』
『累計報酬:限定装備「春の花衣」「春祭の花冠」「春風の足環」、スキルポイント+30…………』

 ログに『~を獲得しました』の文言が表示されるが、中身が多すぎて省略されている。
 報酬リストはほぼチェックが入った状態に変わり、今後貰えるアイテムはお金と消耗品の繰り返し。
 精霊達の春祭に合わせたお洒落なイベント限定装備もゲットできたし、これは思わず僕もホクホク顔だ。

「良かったね! これだけ潤沢なら、レベル上限解放に本腰を入れられそう」

 ジルもニコニコして、「ですね」と肯首した。
 イベントと報酬関連はこれでオッケー。
 よし、じゃあ次だ。
 僕が満足してジルと歩き出そうとした、その時。

「――やあああぁぁっっと見つけた……っ!!」

 人混みを割って、弾丸のような勢いで突っ込んでくる小柄な影があった。
 小悪魔な美少年の外見。艶やかな黒髪のショートボブが揺れるたびにピンクのインナーカラーが愛らしく、同じピンクの瞳を印象付ける。
 ここぞとばかりに臍や太腿を強調している黒色のショートジャケットとホットパンツは初期装備のはずだが、まるで彼の為に特注でデザインされたかのように似合っていた。

 僕は一目で「あ、この子がジルの弟(妹)か」と察した。

「は? ルカ!? なんでここに……」
「なんでじゃないでしょ、お兄ちゃん!! ずーっとネオヴァラに篭りっきりなのに、メッセージ送っても返信ないじゃん! やっと見つけたんだから逃がさないよ!」

 ルカはジルの右腕をガシッと掴むと、火の出るような勢いでまくしたてた。
 ボイスチェンジ機能で外見に見合った少年の声に変えているのだろうが、口調などは日常のままのようだ。あまりにも自然に行われる兄妹らしいやりとりは、僕には新鮮に映った。

「え、いや、ルカ、後で聞くから今は……」
「問答無用! ちょっとツラ貸しなさい!」

 僕が見たことがないジルの様子に感心していた、その時。

「――ルカさんんんッッ、待ってーーッ!!」

 次は金髪の大男が飛び出してきた。
 あまりの騒々しさに、波が引くように僕達の周りだけ人がいなくなっている。
 急に立ち止まったせいで、ハァハァと息が乱れている白シャツの胸元がエッチなこの男。
 なんと、ナンパ師の丹波さんだった。

 僕もジルも丹波さんにナンパされたことがある。僕達は驚いて彼を見たが、丹波さんは僕達よりもルカさんを優先した。
 丹波さんがルカさんの手を掴もうとする。
 だが、ルカさんはにべもなくサッと躱すと、ジルの腕をグイッと引っ張って走り出した。
 
「お兄ちゃんっ、いいから来てッ!!」
「うわっ、わ、す、すみませんミュラーさん、少し抜けます……!」

 そうしてルカさんに引きずられ、ジルはあっという間に人の波の向こうへと消えていってしまった。

 ポツン、と取り残される僕。
 それに丹波さん。

「え、何これどういう状況?」

 分かったのは、ジルって本当に面白いってことだけ。イベントエリアに監禁の次は身内に拉致されるとか、早々ありえないじゃん。
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