筋トレ民が魔法だらけの異世界に転移した結果

kuron

文字の大きさ
22 / 287

22・見習い騎士団の実力

しおりを挟む

 訓練開始の合図が鳴ってから三時間、草原に残る何かを引きずった跡はすぐに見つかった。勿論、オイラ達にはこれがアイツの分隊が通った跡だって事はすぐに分かったっス!多分これはあのデカいシールドを引きずった跡っスね、間違いないっス!そして、あんな重い装備持ってるのは・・・・アイツしか居ないっス!

 オイラ達の分隊は、アイツの分隊が森へ入ったのを見てから少し遅れて森へ入った。事前にアイツがどの方向へ向かうのかを確認しておよその場所を把握したって訳っスよ、オイラ達賢い!
 今回の訓練はウービンさんとの賭け狙いの連中がほとんどっスからね、序盤にさっさと倒さないと横取りされるっス。

「見つけたっス!あそこ!あそこに向かって有りったけの魔法を撃つっス!」
「何だあれ?もうキャンプの準備してんのか?」
「ははは、勝負捨ててんだろ」

 草むらの中に現れた円形にひらけた場所、彼奴らは此処でキャンプをするつもりっスね。準備が早すぎる気はするけど、あんな重そうな装備を持ち歩いてるんだから体力無くなるのは当然っスね。
 一応、穴を掘って隠れてるみたいだけどバレバレっス、あそこの分隊はカスばっかりだから力押しで行くっスよー!!

「これでクリミアさんに晩酌して貰えるっ」
「数は力っスよ!押せ押せで行くっス!」
「石弾丸ストーンパレット!石弾丸ストーンパレット!」
「俺、この訓練が終わったらウルトさんに告白するんだ…俺を・・・・叩いて下さいって!」

『ーーーっぇえ!?』



 俺達が付けた目立つ痕跡をノコノコと辿ってきた相手分隊は、簡易的に作られた拠点に向かってすぐに攻撃を仕掛けてきた。土魔法で出来た無数の小さな石粒…点では無く面での全体攻撃だ。

 つまり、それは相手分隊には塹壕の中が良く見えてない事を示している。もしも俺達が見えているなら、一点集中で狙って攻撃した方が効率も良いし精神的な圧もかけられるはずだからだ。バラバラと此方を探る様に放たれる土魔法の威力は俺が持つシールドで十分に防げるものだった。

「ん、こんなもんか…えーと二人共、大丈夫か?」
「だ、大丈夫だもん!ナルは大丈夫…大丈夫だもん!」
「タンク盾役ですか…微妙に使いづらいですね貴方…団長は何を考えてるのでしょう?土魔法で壁作った方が効率的でしょうに…」

 ナルは頭上を飛び交う石粒に頭を抱え涙目になっているが、俺は投石を板に受ける程度の衝撃をシールドに感じながら拍子抜けしていた。
 正直クリミアやカイルが放つ魔法に比べるとかなりショボい。腕の太さ程ある氷柱を急に顔面目掛けて撃ってくるウルトの魔法の方が何倍も怖い!

(ハッ!?まさかウルトはコレを見越して?)

 ウルトは俺が魔法で攻撃される事に慣れさせる為に…いや、そんなわけ無いな。アイツは面白がってやってたわ、純粋に暴力を楽しめるタイプだ絶対!

 しかし、こうして見習い団員の魔法を受けてみると正規の騎士団やパカレー軍の凄さが良く分かるな。何というか…当たり前だが見習い団員には殺気がまるで感じられない。

 大猪とパカレー軍、短期間に意図せぬ死線を二度も越えて来た俺には精神的な余裕があった。一撃一撃が必殺の威力があったあの時の攻撃の緊張感に比べるとこっちはまるでお遊びだ。

「おいナル、そろそろコッチも反撃しないと怪しまれるぞ?」

 拠点には俺とナルとヘルムしか居ない。ヘルムが立てた作戦は分隊を二つに分け、拠点に敵の注意を引き付け、その隙に背後へ回り込んだジョルクとヨイチョが敵を無力化する作戦だ。

 本来なら拠点を防衛しながら、向こうの魔力を消耗させつつ攻撃の機会を窺うのが定石らしいのだが、こちらには攻撃魔法を使えるのがジョルクとナルしか居ない。

 手数が圧倒的に足りなく決定打に欠ける為、囮組みと奇襲組みの二組に別れたのだ。

「こ、怖いっ!やっぱり無理だもんっ!」
「はぁ?最悪だ…囮の意味無いじゃないですかっ!」
「ま、まぁまぁ、ほらっ俺が石でも投げるからさっ?意外とコントロール良いんだぜ?」

半べそかきだしたナルをオロオロしながら宥める、やっぱりヨイチョ居なきゃ駄目じゃないこの子?ヘルムは癇癪起こしてるし…何だここは、保育園か!?

 その時、向こう側からジョルクの大声が聞こえてきた。ここからでも木の枝から相手分隊を見下ろしながらポーズを決めるジョルクが見える。

「さぁ俺に任せろっ!なぁ!」

 ジョルクは相手分隊を目視するとすぐに芝居がかった詠唱を始めた。

『我が手に 集いし 大気の鼓動ォ! 風の刃となりて 我が宿敵にィ・・・・』

「ちょっ、馬鹿ですか!?見つかってないアドバンテージが無駄にぃ!?」
「ま、まぁ確かに目立ってはいるけど…先手打てるならいいんじゃないの?」

 隣のヘルムが地団駄踏んでイラついてる。・・・おいおい大丈夫か、顔真っ赤だぞ?
確かにさ、見つからない様に一気に制圧するのが理想だろうけど。

「大丈夫だよ、『喧嘩は先手必勝』って言うしさっ」
「普通ならそうですよっ、普通ならっ!彼…ジョルクの場合は違うんですよっ!あぁ、最悪だ!やはり私は周りに恵まれ無い!」

「どわぁぁ!」

ーーージョルクの足元の木が弾け飛ぶ!

ナルは物凄く申し訳なさそうな顔で俺を見上げて言った。

「・・・ジョルク、詠唱が物凄く遅いんだもん…」
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう

お餅ミトコンドリア
ファンタジー
 パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。  だが、全くの無名。  彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。  若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。  弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。  独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。  が、ある日。 「お久しぶりです、師匠!」  絶世の美少女が家を訪れた。  彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。 「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」  精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。 「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」  これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。 (※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。 もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです! 何卒宜しくお願いいたします!)

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

大学生活を謳歌しようとしたら、女神の勝手で異世界に転送させられたので、復讐したいと思います

町島航太
ファンタジー
2022年2月20日。日本に住む善良な青年である泉幸助は大学合格と同時期に末期癌だという事が判明し、短い人生に幕を下ろした。死後、愛の女神アモーラに見初められた幸助は魔族と人間が争っている魔法の世界へと転生させられる事になる。命令が嫌いな幸助は使命そっちのけで魔法の世界を生きていたが、ひょんな事から自分の死因である末期癌はアモーラによるものであり、魔族討伐はアモーラの私情だという事が判明。自ら手を下すのは面倒だからという理由で夢のキャンパスライフを失った幸助はアモーラへの復讐を誓うのだった。

「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~

あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。 彼は気づいたら異世界にいた。 その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。 科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

処理中です...