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121・評価ポイント
しおりを挟む「え? まぁ確かにメンバーが欠けた状態でも訓練自体は継続可能だけどーーまさか、続ける気なの!?」
クリミアは目を細めると責める様に此方を睨んでくる。「無茶をするな」と言ったばかりなのにと言わんばかりに……しかし、ナルの為にも俺の為にも今は頑張らなくてはならないのだ。
は~っとクリミアは大きな溜息を一つ吐く、「どうせ言っても聞かないんでしょう?」ーーと。
「ん~、もし何とか拠点まで到着出来たとしてもギリギリ、占拠までは無理かも……」
「ーーそりゃ占拠は無理かもしれないけど、辿り着くだけでも評価には入るんだろ?」
ちょいちょいと手招きされ、俺は赤ん坊を抱きながら地べたに座るクリミアの直ぐ横に座った。
「いい? 君はまだ知らないだろうから教えるけどーー」
クリミアから聞いた訓練評価の内容はこうだ。
「拠点を制圧・占拠を維持する 500p」、これが今回の目的であり目標だ。ただ、占拠するのだからそれが出来る分隊は一つだけ。勿論、その分隊の評価が最上位であるのは間違い無い。
次に「拠点に辿り着く 150p」、任務として最低限の事である。評価は5人全員が辿り着く事を前提としているので、欠けた人数×30ポイントがマイナス評価となる。
つまり拠点に辿り着けたのが三人だと、五人全員が辿り着いた分隊よりも二人分の60ポイントがマイナスとなる訳だ。
最後にこの訓練の代名詞でもある「名札の数×5p」である。個人ポイントではあるが、分隊のポイントとして加算される。尚、名札を失ってもポイントを失う事は無い。
軍事訓練として、定められた任務を遂行する事が重要である為、どれだけの名札を集めたとしても目標である拠点を占拠した分隊のポイントを上回る事は出来無い、例えその分隊が名札がゼロでもーーとの事だが、占拠する為の攻略戦や占拠後の防衛戦で結構な数の名札が集まるので実際には名札ゼロは有り得ない。
「成る程……評価はポイント制なんだな」
他にも様々な評価ポイントがあるらしい、そこまでは教えてはくれなかったが……150pが最低ラインで、それ以下は評価が著しく下がり追加訓練が課せられるみたいだーー赤点取って補習受けるみたいな感じか。
「君の場合、最低ラインくらいはグイーっと越えて無きゃ色々と厳しいんじゃないかな……でも、今回の戦闘がどう影響するかだね」
「ーー取り敢えず、最低ラインーー150pか」
ギュスタンが言っていた評価落ちってのはこの最低ラインを下回る事だろう。
(今、うちの分隊が持つ名札は十九枚で95pーー最低でも二人は拠点に到達しなきゃならないのか……)
◇
兄貴がソワソワしている、どうやらこれから拠点を目指すつもりらしい……俺たちはいつも拠点に辿り着く前にリタイアしてる事が多いからな。
「ジョルク……君も行くのかい?」
「あぁ! いつも最下位の俺達が、今回は異例の絶好調なんだぜ! ここで行かなきゃ英雄とは言えないだろう? なぁ!」
とは言っても、ナルは無理だろうなぁ。ナルの魔力は人形創作者に無理矢理引き出された所為で枯渇寸前ーーそのせいで回復魔法を掛けても自己治癒促進の効きが悪いとアレスさんが言っていた。
そして、ヨイチョは恐らくナルに付き添うんだろう。
「なぁに、俺と兄貴が分隊ポイント稼いできてやる! ヨイチョは此処でナルと待ってれば良いさ! なぁ!」
「ーーいや、僕も行くよ。ここに居ても、もう僕がナルに出来る事は無いし……それに、君達だけじゃ心配だからね」
驚きだーーヨイチョがナルを置いて行くなんて!
「ナ、ナルはいいのかよ……なぁ?」
「あはは、本当は支援金狙いさ。今はさ、ナルの義手の為に少しでも可能性を広げたいんだ」
そうか、支援金か! 何かそんなのあるって聞いた事があるな! 尤も俺達には縁の無い話だから詳しくは知らないけど……。
ーーん? それってナルと関係あんのか?
まぁ、良く分かんねぇけど……ヨイチョがやる気になってるなら応援するのが英雄の務めだよなぁ!
「そうか! じゃあ頑張らなきゃなぁ!」
◇
俺達はアレスにナルを、クリミアには赤ん坊を預け、再び目標である拠点へと進み出した。
ヘルムが待つ川辺に寄ってから行くと言うと、ギュスタンも仲間が待機する場所へ戻ると言うので川辺までは四人で行く事になった。
「それにしても団長の魔法は凄かったね!」
「兄貴は間近で見たんだろ? なぁ、どうだった?」
「間近ってか、ガッツリ喰らったけどな?」
「ふん、良く言うわ」
あははと笑うジョルクとヨイチョーー冗談だと思ってるっぽいけど本気だからな? お陰でお気に入りのパンツが使い物にならなくなったんだから!
元の世界から持ち込んだ一張羅のパンツだったのに……。
(そういえば、ビエルさんと話せ無かったなーー出会った時以来、挨拶ぐらいしかした事は無いんだけど)
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