上 下
80 / 258

love kindness

しおりを挟む
ふたたび改札を通り、サンライズ・エクスプレスが来るまで
地下の銀の鈴で待つ事にした、神様たち。
歩きながら、もう閑散としてきた駅の風景を眺めながら

これが旅情と言うものだろうか、なんて
それぞれに思う、4者。


地下1階銀の鈴からは、そのまま高架の東海道本線ホームに
エレベータで上がれるので、そこだけは優等列車らしい雰囲気である。


今は、新幹線がメインとは言うものの、旅の主役はやはり
長距離夜行列車だろう、などと言うのは
人間の感傷であろうか。




「コーノスケ・マツシタはどうして会社に家族の幻想を持ち込んだのだろう?
ソケット・アダプタの特許も公開して儲けをフイにしたり」と、ドイツの神様。


「そうして、日本は一体になって。日本全体が発展しようとしていたんだね。
そういう時代だったんだ。よく、ソニーの商品アイデアを真似したといわれるけど
彼は、そういうアイデアを安くみんなに提供するのが、マツシタの使命だと
思っていたはずだよ」と、アメリカの神。



「そうね、それもひとつの愛かもしれないわ」と、フランスの女神。




それがどうしてこんなに、日本はなってしまったのだろうと
それぞれ、思っている。


やっぱり、本当の日本人とは違うものが
日本人の顔をしてなりすましているようにしか思えない。



そう思う、神様たちだった。




愛があれば、思いやりも生まれるし
それは、たとえひとりで生きていたって変わるものじゃない。


それを、思い出すのが「記憶」だったら。
しおりを挟む

処理中です...