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spirit of

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ロビーコーナーで、夜を楽しむ神様たちに
車掌が検札に掛かる。


無粋な事は言わず、スマートに
切符を見て回る、ベージュの制服は
昔ながらの鉄道職員と同じ、心を持った
男たちのひとりだ。


そう、徹夜勤務に耐える事もまた

魂を磨く行為のひとつである。


仮眠時間があるとは言え、僅かに数時間に過ぎず
乗客の安全と乗降を守る、夜行列車の車掌は
国鉄の頃と、変わりない誇り高い仕事である。



運営が国から、民間に変わったとしても
仕事に架ける誇りに変わりない。

男の仕事とは、そういうものだし
そこに、日本人らしい魂がある。



仮に、健康を損なうような仕事であった
としても、男として生き甲斐を感じる仕事なら
それで、喜んで仕事に就けるものである。



量子物理学で言うなら、自由に飛び回る
光のような人生より、敢えて

使命、と言うヒッグス環境のため
エネルギーを使う事を選ぶ、そんな生き方こそ
日本人らしい生き様と言える。



つまり、そんな魂のある生き方の前に

損得など、微塵の意味もない。



些細な日常に拘泥せず、孤高に生きる。
それが、侍である。




「なるほど、それで試練か」と
めぐの国の神様は、車掌の後ろ姿に

日本の神様の、意図を思った。

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