科学は、如何にしてヒトを幸せにするか~ななの例~

深町珠

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若い

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でも、加藤は
魔法使いではないから
時間を飛び越えたりする事は、自力では
できない。
(神様と一緒に、ルーフィのところへ
行ったけど)。


でも、記憶の中では
いつだって、好きな時に戻れる。



思い出があるから、生きていけるし
これからも生きて行こうと思う。

そう思える人生は、貧乏だって素敵だと思う。


そういえば、その少女との恋は
終わった訳ではなかった。


それは、2月になって
世間では、バレンタインデーとかで
華やいだ気分になる頃。



加藤は、バイトから契約社員として
店長になってくれないか、と言われて

そんなつもりはないから断ったのだけれども



実は、それは少女の願いで
バイト先に彼女が働きかけた結果、だったりして。



それを知らない加藤は、勿論断った(笑)ので

少女としては、ずっと、一緒に居たいと言う
願いを拒否されたと思ったらしく


思い込みの激しい子なので、嫌われたと
思ったりしたらしい。




それから、バイトに来なくなって。



気になっていた加藤は、郵便の仕事の途中
彼女の家のほうへ行って見ると
瞼にガーゼを貼った彼女に偶然出会い



「どうしたの?それ」




「なんでもない。加藤さんに関係ない。ゴメン、心配かけて」 と

少女は、そんな時でも加藤に気遣う優しい子だ。




後に、バイト仲間の由香に聞くと



ずっと泣いていたから、顔が腫れたと言う事らしかった。





そんなに、一緒に居たかったのか、と

加藤は、少女が不憫になった。



別に、加藤自身が特別良い人間でも
優しい訳でもないけれど


少女は、他に頼れるものがないのだろうと
そんな風に思って。





理由はわからないけれど
高校にも行けなくなって、自分で
職業を選んで、専門学校に進んで
自立の道を歩んでいる、真面目な子には
違いなかったし

真っ直ぐに愛を求める気持ちの子。


駆け引きをしたりせずに。


そういう子を、護ってあげたいとは思うけど



バイト先で一緒より、せっかくの技能を
生かしたほうがいいし

加藤自身も、仕事が回ってきたら
バイトを辞めて、技術者に戻って

その上で少女を支えてあげようと
そんな風に思っていた。


でも、17歳の気持ちは性急で

それには満足できなかったらしい。



「アタシ、18歳になったんだ」と
少女は、右の瞼にガーゼを貼ったまま笑った。

その笑顔が痛々しくて、愛しくて。
加藤は、両手で包んだあの時の香りを
思い出した。


胸が苦しい、少年の気持ちで。

「おめでとう、よかったね」と
笑顔で加藤も返した。



「早く結婚して、可愛い赤ちゃんほしいな」と
少女は、らしく語る。



「ほんとは、あの店をふたりでやっていけたら良かったんだけど」と、性急さは若さゆえ。




「そうか、ゴメンね」と、加藤は答えた。




「うん、好きな事して生きるのが一番だよ。
アタシもそうしてる加藤さんがいいと思う。
なんか自由な感じで、他の人と全然違う」

と、ふつうに話す少女。

こんなにも自然に、自分の事を見ていて
くれたんだな、と
加藤は感謝する。


「君もそうだよね」と、加藤は笑った。

郵便局の、緑のブレザーのまま。

赤いIDカードには[郵便課 非常勤職員]と
あり
それが、ゆらゆら。


少女は、気づき「あ、ゴメン、お仕事邪魔して。
その制服似合うね、じゃ」と、笑顔で
駆けて行った。


ミニスカートなど穿かず、いつも
スラックスだったのにも、何か理由が
ありそうだったが


その日も、普段加藤が好んでいた
キャメルのコーデュロイと
同じ色合いのものを、いつしか穿いて来ていた
それを着用していた。



でも、洒落た感じに見えたそれは
加藤のものと同じユニクロだとは思えない(笑)。




早く結婚したい。

加藤は、その言葉の意味をよく理解して
いなかった(笑)。



出逢ってすぐの頃も、そう言っていたので



それが、ただのシュプレヒコールの
ように聞こえた。






思えば、おかしな子で


出逢ってすぐに、自分の名前をフルネームで書き


名刺のように手渡したり。



身の上を細かく話し、「こんなアタシを
どう思う?」と尋ねるので



「いいんじゃない」と加藤が答えると


「ホントにそう思う?」とか
すごく嬉しそうに言うので


何が嬉しいんだろと(笑)加藤は
思っていたりしたけれど



そんな想い出も、とても愛おしく
思えたりする。
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