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恋愛は不幸を誘う

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加藤は、そんな理由で
父や母が立派だった事に
無関心に育った。

音楽や、物語を楽しんだし
旅も好きだった。

そういうせいもあって、客観的に
ものを見る子供だった。


偉大な音楽家や、作家、科学者たちの
業績を沢山感じて育ったせいもあって


自己主張しても、そんなのは低次元だと
思うような子供だった。


だから、欲に駆られるなんて
キモチも知らなかった。


幼い頃から充足していたので
不足を知らない、そういうせいもあったろう。



ただ、兄はもう少し普通の人で

弟の加藤がそういう、醒めた子供だったので

攻撃をしかけたりする事もあった。



勉強がよく出来た加藤は、そのせいで
兄から妬まれ、机に向かっている時に
小突かれたりした事もあったりした。


近所の豆腐屋の大竹くんが
野球はできるのに勉強はダメだ、と言う事で
大竹くんのお母さんが、加藤を引き合いに出して
大竹くんをけなしたので


加藤は、大竹くんと疎遠になったりもした。



加藤のせいではないが、人間にはどこかしら
排他があるので

適当に馴れ合う事も必要である。



黙っていると、敵意があると誤解されてしまうのは

相手に排他があるから。妄想で

黙っている加藤を仮想敵、と見做してしまうからであったりもするが


それは、相手の被害妄想で

加藤にそういう感覚がないから、加藤は
知らず知らずに低次元なひとたちからは
疎遠になった。


それは、仕方がない。



ただ、女の子たちは当時は親和的だったし

顔立ちが甘く、穏やかな加藤を
女の子の仲間のように扱った。



今と違って、女の子は自分で護身しなくても
社会が守ってくれる時代だったのだ。





そんな理由で、加藤は自由で
人とあまり馴れ合うタイプではなく
個人を貴ぶ人格に育った。


どういう訳か、女の子には人気があったので
別に恋人が欲しいとか思った事もなかったが
周りには、いつも女の子がいた。


若干鬱陶しいとさえ思うのは(笑)
支配的に振る舞う女の子の場合、だったりした。




そういう性格だったので、ひとりが好きで
なので、ゆりの要求も若干迷惑に思っていた(笑)



が、泣かれてしまっては従う他ない、と
加藤も諦めた。


その上、ゆりの父親が加藤に会いに来て

何もいわずに
帰って行ったが(笑)



加藤自身も、ゆりの保護者でいるつもりだった。



それが、ゆりには不満だったらしく


その夜の事件が起こる。




そのせいで、ゆりは
加藤をパートナーに選んだつもりだったらしい。



しかし、ゆりが普通の少女と違っていたのは

加藤の事を思いやる気持ちも強かった、と
言う事で



加藤が、科学者としての仕事の依頼を
受けた時



「自由にしていいよ、好きな事するのが
一番だもん」と、ゆり自身は
一緒にお店、何かのお店を経営したいと言う
夢があったのに、そう言って

加藤の事を思いやった。




そういう気持ちの子だから、加藤も
ゆりを愛おしいとも思ったし


しかし、もう少し年齢が進めば
ゆりの性急さも落ち着くだろう、とも思って



ひとまず、距離を置くことにしたのだった。
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