上 下
356 / 418

正義の危うさ

しおりを挟む
名雪は、美しいドレスを纏って
整備工場にやってきたのだが

そういう格好をして見たかったので
まだ、男の子とデートもした事がなかった
から

夢と憧れで、お嬢様みたいなドレスを
纏ってみたのだった。



それを、石川は愛らしいと思い、微笑みを
持って名雪を迎えた。



「いい子だよな」石川は、バスの下で
エンジンのネジを緩めながら
そんな事を思う。


「でも、加藤さんが好きなんだろうな」と
今は、加藤と一緒に住んでいると言う事に
若い男らしい、あらぬ想像をする(笑)。


想像と言うのは、大抵自分の行動から
するものだ(笑)。


加藤がどんな人柄か、は
石川は知らないので



愛らしい名雪は、加藤のものになってしまったと

そんな風に思うのだろう(笑)。







それは伊原も同様で


名雪が、石川の下から
帰ろうとした姿を見て


伊原自身には、知らん顔(笑)の
名雪に腹立たしく思うが


それも、伊原が幼い頃
母親が伊原にあまり興味を示さずに
伊原が淋しい思いをした心の傷を刺激するので

そう思う。



その記憶を思い出したくないのだけど
刺激されて嫌な気持ちになるのだ。




でも、伊原は弱い男なので

あくまで部下だったから名雪に
偉そうに接していただけで


つまり、パワハラである(笑)。



それは、実は劣等感の持ち主だからで
負けて傷つきたくないので
力関係がないと話もできないので(笑)ある。



さりとて暴行する程の力もない。


名雪にさえ跳ね飛ばされてしまいそうな
小柄な男である。





そういう男なので、発想もそれに基づいている。



名雪と、愛紗の両親に電話を掛け


「富士山急行の総務です、お嬢様が退職なされたのでご挨拶まで」と

一見親切を装って、親に不安感を煽った。



会社の寮から出ていって、行方不明(笑)などと


余計な事を言うが



伊原は、伊原なりに


加藤へ対する正義と思っていたのだろう。


伊原の、果たせぬ性的妄想から(笑)



加藤が嫌らしい中年で、名雪や愛紗を
汚していると想像して
そんな事をしたのだろう。


しおりを挟む

処理中です...