ふたりのMeg

深町珠

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魔法の呪文・ノイズシェープ

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魔法の呪文・ノイズシェープ


その、重大な事態にも
ルーフィは明るい。

軽快、と言うのだろうか。

それもイギリス流なのだろうか。

そういえば、007もそうだったような感じだったし

あんまり、ヒーローって
あたふたしない感じもする。


そうでないと、ヒーローにはなれないような気も・・・・する。


魔法を使うのには、集中力が大事なので

めぐは、途中で気が散り易いので・・・。ルーフィの後を追って
時間旅行しようと思ったけれど

本の中の世界に入ってしまったりした。


その集中を助けるために、昔の人は呪文、とか
魔法のことばを使ったりしたけれど
あれは、お念仏とか、おまじないと一緒で


そのことば自体に、力があるわけじゃない。



使う人の心を集中させるためのものなのだ。



ひとの心は、いつも記憶と演算と繰り返す。

演算、つまり連想記憶と関連は

いろんなことがらを結びつけて考える、と言うこと。


つまり、気が散る、って事で

それに長けた人は、反対に集中が下手だ。



それは、ドパミンと言う化学物質の一種が、脳の中の
神経を接続する事で行われたりするので

効き目を良くする
薬品があったりする。




集中しすぎてしまう人を、少し楽にする意味の薬、だ。





面白いことに、コンピュータにもそういう事があったりする。


適当に無駄な計算を繰り返させる事で、ノイズを均一にする方法、
ディザ、なんて言ったりする。


そうすれば、ノイズが気にならなくなったり。


それはつまり、集中を妨げないような考え方。





あるいは、ノイズ自体を細かく刻んでしまうよう
高速計算を繰り返す方法。

ノイズシェープ、なんて言ったりする。


それも、気が散らないようにノイズを細かくする方法。





魔法を使う時、魔方陣を書いたり、呪文を唱えたりするのは
つまり、頭に沢山の計算をさせて


気が散らないようにする、と言う事なのだけど・・・。





それで、めぐが
集中できれば、つまり


魔法をしっかり使えるようになれば

ルーフィを、元の世界に送る事が出来るかもしれない。



いま、この異なる世界で孤立無援のルーフィを
助ける事ができそうなのは・・・たぶん、めぐだけだろうか。









魔法・再生



たぶん、めぐは
坊やに魔法を見られていても
大丈夫だろう、と

ルーフィーは推測した。


それは、坊やが、たぶん
この異なる世界ではなくて
ルーフィーの住んでいる、向こう側の世界・・・・・
魔物や悪魔が3次元の世界に
入る事ができない、ふつうの人間界。


天界・魔界などの境界が
はっきりしていて、ふつう、乗り越える事の出来ない世界。


そういうところから、来た坊やだから。


そんなふうに、ルーフィーは思ったり。



でも、魔法使いは楽観的だ。



「そのうち、なんとかなるだろう」(笑)。



いっつも、そんなふうに生きてきたし

魔法が全部使えなくなれば
たぶん、ルーフィー自身が消滅してしまうだろうから(笑)。


なぜかと言うと、いま、ここに居られるのは

魔法で時空間旅行をしているおかげだから。


「とりあえず、見られた魔法だけ、かな。」




そのうち、めぐちゃんが魔法をちゃんと使えたら

向こうの世界に連れていって貰って

魔法を修正すればいい。


そんなふうに、ルーフィーは思ったり。


魔法は、プログラムみたいなものだから


バグ修正のように、悪いところを
直せばいいけど


それは、魔法が作られた18世紀に戻らないと出来ない。




サーバーにおいてあるプログラムを
クライアントから直せないのと似てる(笑)。


似てると言うか、コンピューターは
現代の魔法なのだ。







そんなルーフィーの思いとは無関係に

坊やは、お腹いっぱいになったので

眠くなったのか。


こっくり、こっくり。



眠りかけた。





「あらあら・・・・。」クリスタさんは微笑んで。


めぐも、にこにこ「かわいい・・・・・育児室に行きましょう」



と、レストランのシェフにお礼を言って。



シェフは「またいらっしゃい。困った時はお互い様」と。


にこにこ。



シェフは山育ちなので、ひとに優しい。


飼っている、と言う
やぎのミルクを、みんなに御相伴。



やぎのミルクは、ちょっとすっぱ味があって

爽やかな味わいだった。



「チーズもあるんですよ、こんどまた」



と言って、にこにこ笑った。








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