2 / 86
Post officer
しおりを挟む
夕べ、よく寝てなかっためぐは
不覚、お風呂で眠ってしまったので
(笑)
気がつくと、どやどやと
お風呂に入ってくる、女の子たちの声。
壁の時計を見ると、まだ10時くらい。
しばらく、ベッドで眠らせてもらって....
どこか、遠くにオルゴールが聞こえた。
その曲は、ショパン。
練習曲10-3、別れの曲、と
映画につかわれて有名になった曲だった。
ポーランド生まれのフレデリック・ショパン。
病弱だった彼が、祖国への別れを描いた曲、なんて.....。
音楽の授業で習ったっけ。
めぐは、眠りながら、なんとなく聞いていた。
ショパンは、魂をポーランドに帰してほしいと言ったんだっけ。
その、どこかノスタルジックなメロディは、めぐを空想に誘う。
魔法使いの魂。帰るところはどこにあるんだろ.......。
ふと、気づくと
めぐのベッドのそばに、Naomi。
緑の制服と、インクの匂い。
郵便屋さんの匂いだ...。と、めぐは
なんとなく、家に配達に来る郵便屋さんの事を
憧れて見ていた幼い頃、を
思い出したり。
なんとなく、いいね。
世のため、人のため。
そういう、使命感に浸って働くって。
正義の味方、みたいだもん。(w)。
「めぐ」と、Naomiは微笑みながら。
めぐは、なんとなく幸せに目覚めた。「あー、おはよ、Naomi。」
「お風呂でのぼせたの?大丈夫?」と、Naomiは笑ってて。
優しい友達の有難さを思う、めぐだった。
「仕事いいの?」と返すと
Naomiは「もう終わり」と。
よく見ると、窓の外は
もう、お日さまが傾いていて。
「夕方かー。」と、めぐは、のんびり言う。
全然変わってない、と、Naomiは言うけれど
めぐは、3年前そのままが来てるから当然(笑)。
タイムスリップ、なんて言っても
Naomiが実感できる訳もない。
「じゃ、起きて、めぐ。リサんとこ行こうよ。」と、Naomiは
やっぱり友達思いのいい子。
ふつう、ハイスクール卒業して3年も経てば
ボーイフレンドとかできちゃって。
友達同士の付き合いって、一時希薄になったりするけど.....。
と、めぐは思ったりする。
「そういえば、郵便局って24時間営業だったんだっけ。」早番かなにかかな、と
別に気にとめずに、めぐは、お風呂から出ようとして......。
めまいがして、立てなかった。
露天風呂で眠って、のぼせたらしい.......。
次に目が覚めると、めぐの目前には
白い天井が。
「お気づきですか?」と
優しい言葉を掛けられて、どうやら、めぐは
薬品の臭いがする空間、ベッドに寝ていると分かった。
下着を付けずに、シーツに包まっているのは変な感じ。
なんとなく、落ちつかない。
「ここは、どこですか?」めぐは、そんな言葉を空間に放つと
さっきの声の主は「郵便局の医務室です」と
答えた。
郵便局って
、お医者さんもあるのね(笑)。
本当に住めるね、と
めぐは微笑んで、起き上がろうとしたけれど
ちょっと、ふらふら。
「まだ、眠っていてください」と言った
その言葉の主は、
白衣、短い髪、そっけない服装、でも
清潔感のある雰囲気、で
ああ、女医さんかな、と
めぐは思う。
男の先生でなくてよかった、と
めぐは、お風呂から運ばれる間に
オールヌードを見られちゃったのかしら(笑)と
恥ずかしくなった。
でも、まあ、思ってもしかたないけど。
コインランドリーに服を入れといて、
洗ってる間、お風呂に入ってて。
そう、思って
気づくと
めぐの服は「郵便局の年金保険」なんて書かれた紙袋に入って。
枕元にあった。
下着も(笑)。
男の人が取ったのかしら......(笑)
なんて、
それを思うと、また、めぐは恥ずかしくなって。
女医さんに、「あの、あたしの服....。」と
言うと、女医さんは
「ああ、女子バレー部がね、お風呂で倒れたあなたをバスタオルでくるんで、担いで来てくれて。
その時に、あなたの服を
持ってきてくれたの。
女子バレー。
めぐは、朧げな記憶を紐解くと
そういえば、お風呂にいっぱい女の子たちが
来たような気がする。
あの子たちが運んでくれたの。
なんだか、申し訳ないような
気がしてしまった。
でも、考えて見ると
女湯だから、男の人が来る訳もない(笑)
technology and biology
でも、あたしたちは違う。
と、めぐは信じている。
ぞれぞれに、恋人ができたって
ずっと、友達だもん。
男の子との付き合いとは違って
一生、分かち合える幸せ、
そんな、気持ちでめぐはいた。
だから、リサの事も気になる。
Naomiは、気丈なようだけれども
本当は、困ってるんじゃないかな?
なんて、めぐは気遣かったりもする。
お風呂でのぼせるめぐだけど(笑)
でも、友達を思う気持ちは、強い。
それも、小さな社会。
世のため人のため。
実際、女の子同士のコミュニティーは
男の子のそれとは違ってる。
YAMAHA TR1
Naomiは、ロッカールームで着替えて、シャワー代わりに
地下の温泉に入ってくると言う。
「めぐも来る?」と
誘われたけど
「あたしはいいわ」と
のぼせためぐは、断る。
「そうよね」と
Naomiは笑い、ちょっと待ってて、と
小走りに、駆けてゆく。
その、後ろ姿は
学生の頃と、何も変わらない。
めぐの方は、まるっきり学生のまんま
なんだけど。
Naomiは、さっぱりといた顔で
5分くらいで戻ってきた。
「早い!」とめぐは驚く。
Naomiはにっこり笑う。
「めぐはのんびりさんだから」と
その笑顔には、若干疲れが見える。
「疲れてんじゃない?」と
めぐが言うと
おばさんみたいに言わないでよ、と
Naomiは笑って、郵便局の地下駐車場に向かって、階段を下りる。
めぐも、付いていくと
重厚な石段の果て、なーんとなく埃っぽいのは
手紙や小包が、一杯出入りするからだろうか。
それと、インクの匂い。
みんなのために、働く人達の
人間の息吹を感じるような、そんな地下の突き当たりにロッカールーム。
左手に、大浴場。
まだ、3時半くらいだから
配達員は帰って来ない。
「夜にはね、男湯も一杯よ、覗く?」と
Naomiは、いたずらっぽく笑う。
コツコツと、靴音がびびきそうな地下パーキングには
いっぱいの自転車、配達のバイク。
それと、小さなトラック。
壁極には、長靴、
それと、小部屋があって
そこには、レインコートが沢山吊されていて。
乾燥機。
配達って、雨の日もあるからなんだろう。
それで、お風呂もあるんだな。
そういう人々の苦労があって
手紙が運ばれる。
気にしなければ、気にならない。
そんなものだけど、いろんな人々の
おかげで
世の中が動いていると
実感できるひとこま。
電車もそうだけど。
と、めぐは、リサの事を思い出した。
電車を運転するのは
おじいちゃんへの贖罪の思い?
そんな、リサは
でも、世の中のために。
早起きしたり、夜遅くまで働いたり。
素敵だなぁ、と
感心しているめぐの前を歩くNaomiは
一台のオートバイの前で歩みを止めた。
銀色に輝くオートバイ。
それは、Vの形にエンジンがそびえ
まっすぐの排気管は、メタリック。
「かっこいー」と、めぐは手をはたいた。
そのオートバイは、銀色のガソリンタンクが
鈍く光る、シックなスタイル。
黒いシート、大きなヘッドライトは丸く。
Naomiは、エンジンを掛ける。
低い音が、地下のパーキング全体を揺するように響く。
「リサんとこ、いこ?」Naomiは、にっこり。
白いヘルメット、普段着の可愛らしい服なので
かえってそれが、個性的に見える。
めぐは、オートバイのエンブレムを見た。
金色に光るそれは、YAMAHA、と読め
シートの下にあるサイドカバーにはTR1.と書かれていた。
「鳥?」とめぐは読んだので
エンジンの響きに混じり、Naomiは笑う。
「あはは!ティーアールワン、よ。」と。
Naomiは、オートバイの左に立って、センタースタンドを外す。
柔らかいサスペンションは、ふんわり、と
猫の足のようにオートバイを沈ませた。
「乗って」と、Naomiが言うので
めぐは、オートバイの後ろに乗る。
エンジンの排気音は断続的に、低い太鼓のようだ。
Naomiの背中につかまる。
ライダー、ナオミは
クラッチレバーを握り、ギアを1速に入れた。
そのままクラッチレバーを離し、アクセルを捻る。
滑り易くてつるつるの地下駐車場のコンクリートの上で、TR1は
後輪を回転させた。
前には進んでいないので、斜めに後輪が流れながら。
アクセルを少し戻し、ライダー・ナオミは
カウンター・ハンドルを切りながら
前に進んだ。
朝、見かけた郵便配達の青年たちが、日焼けの顔で
口笛を鳴らす。
TR1は、斜めに滑りながら
地上へのスロープを昇る。
暗い地下から地上へ昇ると、目映くて
天に昇るってこんな気持かな、なんて
めぐは思った。
風・夢・オートバイ
地下駐車場から、YAMAHA TR1は
ふたりを乗せて、飛び出る。
軽快な車体と、エンジンの力強い回転力は
オートバイの前輪を、軽く持ち上げるように
舞い上げる。
大きなタイヤは、少し空を切る。
細身で清々しいホイール。
タイヤは、MADE IN FRENCH MICHELIN A48 90/90 - 19と
黄色い文字で浮き出し彫刻がなされていて。
からから、と空回りすると
アルミニウム・ダイキャストのホイール、切削加工されている端面が
光を浴びて、きらきらと虹色に彩りを添えて。
オートバイは美しい。
機能的なものは、どんなものでも美しいが
それは、フラクタル・ジオメトリ理論と言う幾何学上の概念で
証明できている。
地上にある全てのものは、このジオメトリで証明できるのだ。
音響工学で言えば、i/fゆらぎ理論がそれに当たるが
それも、幾何学で言うとフラクタルである。
オートバイは、宙に飛び出るように
地上で跳ねる。
後ろのタイヤは、やわらかい
猫の足のようなサスペンションのせいで
十分に地面に接地している。
でも、ばねの伸び代を越えて、一瞬
宙に舞うリア・タイヤ。
エンジンが空転しないよう、ライダー・ナオミは
アクセルを少し戻す。
リアタイヤは、着地する瞬間に
その回転差で、路面との間で摩擦し
飛行機が着陸するときのような音を放つ。
後ろに乗っているめぐは
エンジンの力強い鼓動を、体全体で感じて。
「オートバイって楽しい」そう思う。
それで、あの、岬までの旅をした
モペッド、リトル・ホンダの事を思い出し
同時に、ルーフィのことも思い出してしまう。
楽しい思い出、だったけど....。
あたしひとりを愛してほしい。
そんな希みを、叶えられそうにないから
あきらめた人。
お気に入りのバンダナに、ついた染みのように
バンダナがある限り、その染みも残る。
それは、記憶。
でも、めぐは魔法使いだから
染みを消す事だってできる。
記憶を組み替えるのは、夢。
夢を見ることで、記憶は生まれ変わる。
めぐは、魔法使いだから
夢を自由に見る技術も持っている。
そう、その魔法で
今、親友リサを助けに行くのだ。
オートバイ、YAMAHA TR1と
もうひとりの親友、Naomiと。
夢の世界へ、いざ!
不覚、お風呂で眠ってしまったので
(笑)
気がつくと、どやどやと
お風呂に入ってくる、女の子たちの声。
壁の時計を見ると、まだ10時くらい。
しばらく、ベッドで眠らせてもらって....
どこか、遠くにオルゴールが聞こえた。
その曲は、ショパン。
練習曲10-3、別れの曲、と
映画につかわれて有名になった曲だった。
ポーランド生まれのフレデリック・ショパン。
病弱だった彼が、祖国への別れを描いた曲、なんて.....。
音楽の授業で習ったっけ。
めぐは、眠りながら、なんとなく聞いていた。
ショパンは、魂をポーランドに帰してほしいと言ったんだっけ。
その、どこかノスタルジックなメロディは、めぐを空想に誘う。
魔法使いの魂。帰るところはどこにあるんだろ.......。
ふと、気づくと
めぐのベッドのそばに、Naomi。
緑の制服と、インクの匂い。
郵便屋さんの匂いだ...。と、めぐは
なんとなく、家に配達に来る郵便屋さんの事を
憧れて見ていた幼い頃、を
思い出したり。
なんとなく、いいね。
世のため、人のため。
そういう、使命感に浸って働くって。
正義の味方、みたいだもん。(w)。
「めぐ」と、Naomiは微笑みながら。
めぐは、なんとなく幸せに目覚めた。「あー、おはよ、Naomi。」
「お風呂でのぼせたの?大丈夫?」と、Naomiは笑ってて。
優しい友達の有難さを思う、めぐだった。
「仕事いいの?」と返すと
Naomiは「もう終わり」と。
よく見ると、窓の外は
もう、お日さまが傾いていて。
「夕方かー。」と、めぐは、のんびり言う。
全然変わってない、と、Naomiは言うけれど
めぐは、3年前そのままが来てるから当然(笑)。
タイムスリップ、なんて言っても
Naomiが実感できる訳もない。
「じゃ、起きて、めぐ。リサんとこ行こうよ。」と、Naomiは
やっぱり友達思いのいい子。
ふつう、ハイスクール卒業して3年も経てば
ボーイフレンドとかできちゃって。
友達同士の付き合いって、一時希薄になったりするけど.....。
と、めぐは思ったりする。
「そういえば、郵便局って24時間営業だったんだっけ。」早番かなにかかな、と
別に気にとめずに、めぐは、お風呂から出ようとして......。
めまいがして、立てなかった。
露天風呂で眠って、のぼせたらしい.......。
次に目が覚めると、めぐの目前には
白い天井が。
「お気づきですか?」と
優しい言葉を掛けられて、どうやら、めぐは
薬品の臭いがする空間、ベッドに寝ていると分かった。
下着を付けずに、シーツに包まっているのは変な感じ。
なんとなく、落ちつかない。
「ここは、どこですか?」めぐは、そんな言葉を空間に放つと
さっきの声の主は「郵便局の医務室です」と
答えた。
郵便局って
、お医者さんもあるのね(笑)。
本当に住めるね、と
めぐは微笑んで、起き上がろうとしたけれど
ちょっと、ふらふら。
「まだ、眠っていてください」と言った
その言葉の主は、
白衣、短い髪、そっけない服装、でも
清潔感のある雰囲気、で
ああ、女医さんかな、と
めぐは思う。
男の先生でなくてよかった、と
めぐは、お風呂から運ばれる間に
オールヌードを見られちゃったのかしら(笑)と
恥ずかしくなった。
でも、まあ、思ってもしかたないけど。
コインランドリーに服を入れといて、
洗ってる間、お風呂に入ってて。
そう、思って
気づくと
めぐの服は「郵便局の年金保険」なんて書かれた紙袋に入って。
枕元にあった。
下着も(笑)。
男の人が取ったのかしら......(笑)
なんて、
それを思うと、また、めぐは恥ずかしくなって。
女医さんに、「あの、あたしの服....。」と
言うと、女医さんは
「ああ、女子バレー部がね、お風呂で倒れたあなたをバスタオルでくるんで、担いで来てくれて。
その時に、あなたの服を
持ってきてくれたの。
女子バレー。
めぐは、朧げな記憶を紐解くと
そういえば、お風呂にいっぱい女の子たちが
来たような気がする。
あの子たちが運んでくれたの。
なんだか、申し訳ないような
気がしてしまった。
でも、考えて見ると
女湯だから、男の人が来る訳もない(笑)
technology and biology
でも、あたしたちは違う。
と、めぐは信じている。
ぞれぞれに、恋人ができたって
ずっと、友達だもん。
男の子との付き合いとは違って
一生、分かち合える幸せ、
そんな、気持ちでめぐはいた。
だから、リサの事も気になる。
Naomiは、気丈なようだけれども
本当は、困ってるんじゃないかな?
なんて、めぐは気遣かったりもする。
お風呂でのぼせるめぐだけど(笑)
でも、友達を思う気持ちは、強い。
それも、小さな社会。
世のため人のため。
実際、女の子同士のコミュニティーは
男の子のそれとは違ってる。
YAMAHA TR1
Naomiは、ロッカールームで着替えて、シャワー代わりに
地下の温泉に入ってくると言う。
「めぐも来る?」と
誘われたけど
「あたしはいいわ」と
のぼせためぐは、断る。
「そうよね」と
Naomiは笑い、ちょっと待ってて、と
小走りに、駆けてゆく。
その、後ろ姿は
学生の頃と、何も変わらない。
めぐの方は、まるっきり学生のまんま
なんだけど。
Naomiは、さっぱりといた顔で
5分くらいで戻ってきた。
「早い!」とめぐは驚く。
Naomiはにっこり笑う。
「めぐはのんびりさんだから」と
その笑顔には、若干疲れが見える。
「疲れてんじゃない?」と
めぐが言うと
おばさんみたいに言わないでよ、と
Naomiは笑って、郵便局の地下駐車場に向かって、階段を下りる。
めぐも、付いていくと
重厚な石段の果て、なーんとなく埃っぽいのは
手紙や小包が、一杯出入りするからだろうか。
それと、インクの匂い。
みんなのために、働く人達の
人間の息吹を感じるような、そんな地下の突き当たりにロッカールーム。
左手に、大浴場。
まだ、3時半くらいだから
配達員は帰って来ない。
「夜にはね、男湯も一杯よ、覗く?」と
Naomiは、いたずらっぽく笑う。
コツコツと、靴音がびびきそうな地下パーキングには
いっぱいの自転車、配達のバイク。
それと、小さなトラック。
壁極には、長靴、
それと、小部屋があって
そこには、レインコートが沢山吊されていて。
乾燥機。
配達って、雨の日もあるからなんだろう。
それで、お風呂もあるんだな。
そういう人々の苦労があって
手紙が運ばれる。
気にしなければ、気にならない。
そんなものだけど、いろんな人々の
おかげで
世の中が動いていると
実感できるひとこま。
電車もそうだけど。
と、めぐは、リサの事を思い出した。
電車を運転するのは
おじいちゃんへの贖罪の思い?
そんな、リサは
でも、世の中のために。
早起きしたり、夜遅くまで働いたり。
素敵だなぁ、と
感心しているめぐの前を歩くNaomiは
一台のオートバイの前で歩みを止めた。
銀色に輝くオートバイ。
それは、Vの形にエンジンがそびえ
まっすぐの排気管は、メタリック。
「かっこいー」と、めぐは手をはたいた。
そのオートバイは、銀色のガソリンタンクが
鈍く光る、シックなスタイル。
黒いシート、大きなヘッドライトは丸く。
Naomiは、エンジンを掛ける。
低い音が、地下のパーキング全体を揺するように響く。
「リサんとこ、いこ?」Naomiは、にっこり。
白いヘルメット、普段着の可愛らしい服なので
かえってそれが、個性的に見える。
めぐは、オートバイのエンブレムを見た。
金色に光るそれは、YAMAHA、と読め
シートの下にあるサイドカバーにはTR1.と書かれていた。
「鳥?」とめぐは読んだので
エンジンの響きに混じり、Naomiは笑う。
「あはは!ティーアールワン、よ。」と。
Naomiは、オートバイの左に立って、センタースタンドを外す。
柔らかいサスペンションは、ふんわり、と
猫の足のようにオートバイを沈ませた。
「乗って」と、Naomiが言うので
めぐは、オートバイの後ろに乗る。
エンジンの排気音は断続的に、低い太鼓のようだ。
Naomiの背中につかまる。
ライダー、ナオミは
クラッチレバーを握り、ギアを1速に入れた。
そのままクラッチレバーを離し、アクセルを捻る。
滑り易くてつるつるの地下駐車場のコンクリートの上で、TR1は
後輪を回転させた。
前には進んでいないので、斜めに後輪が流れながら。
アクセルを少し戻し、ライダー・ナオミは
カウンター・ハンドルを切りながら
前に進んだ。
朝、見かけた郵便配達の青年たちが、日焼けの顔で
口笛を鳴らす。
TR1は、斜めに滑りながら
地上へのスロープを昇る。
暗い地下から地上へ昇ると、目映くて
天に昇るってこんな気持かな、なんて
めぐは思った。
風・夢・オートバイ
地下駐車場から、YAMAHA TR1は
ふたりを乗せて、飛び出る。
軽快な車体と、エンジンの力強い回転力は
オートバイの前輪を、軽く持ち上げるように
舞い上げる。
大きなタイヤは、少し空を切る。
細身で清々しいホイール。
タイヤは、MADE IN FRENCH MICHELIN A48 90/90 - 19と
黄色い文字で浮き出し彫刻がなされていて。
からから、と空回りすると
アルミニウム・ダイキャストのホイール、切削加工されている端面が
光を浴びて、きらきらと虹色に彩りを添えて。
オートバイは美しい。
機能的なものは、どんなものでも美しいが
それは、フラクタル・ジオメトリ理論と言う幾何学上の概念で
証明できている。
地上にある全てのものは、このジオメトリで証明できるのだ。
音響工学で言えば、i/fゆらぎ理論がそれに当たるが
それも、幾何学で言うとフラクタルである。
オートバイは、宙に飛び出るように
地上で跳ねる。
後ろのタイヤは、やわらかい
猫の足のようなサスペンションのせいで
十分に地面に接地している。
でも、ばねの伸び代を越えて、一瞬
宙に舞うリア・タイヤ。
エンジンが空転しないよう、ライダー・ナオミは
アクセルを少し戻す。
リアタイヤは、着地する瞬間に
その回転差で、路面との間で摩擦し
飛行機が着陸するときのような音を放つ。
後ろに乗っているめぐは
エンジンの力強い鼓動を、体全体で感じて。
「オートバイって楽しい」そう思う。
それで、あの、岬までの旅をした
モペッド、リトル・ホンダの事を思い出し
同時に、ルーフィのことも思い出してしまう。
楽しい思い出、だったけど....。
あたしひとりを愛してほしい。
そんな希みを、叶えられそうにないから
あきらめた人。
お気に入りのバンダナに、ついた染みのように
バンダナがある限り、その染みも残る。
それは、記憶。
でも、めぐは魔法使いだから
染みを消す事だってできる。
記憶を組み替えるのは、夢。
夢を見ることで、記憶は生まれ変わる。
めぐは、魔法使いだから
夢を自由に見る技術も持っている。
そう、その魔法で
今、親友リサを助けに行くのだ。
オートバイ、YAMAHA TR1と
もうひとりの親友、Naomiと。
夢の世界へ、いざ!
0
あなたにおすすめの小説
三十年後に届いた白い手紙
RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。
彼は最後まで、何も語らなかった。
その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。
戴冠舞踏会の夜。
公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。
それは復讐でも、告発でもない。
三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、
「渡されなかった約束」のための手紙だった。
沈黙のまま命を捨てた男と、
三十年、ただ待ち続けた女。
そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。
これは、
遅れて届いた手紙が、
人生と運命を静かに書き換えていく物語。
3歳で捨てられた件
玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。
それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。
キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。
憧れのスローライフを異世界で?
さくらもち
ファンタジー
アラフォー独身女子 雪菜は最近ではネット小説しか楽しみが無い寂しく会社と自宅を往復するだけの生活をしていたが、仕事中に突然目眩がして気がつくと転生したようで幼女だった。
日々成長しつつネット小説テンプレキターと転生先でのんびりスローライフをするための地盤堅めに邁進する。
アワセワザ! ~異世界乳幼女と父は、二人で強く生きていく~
eggy
ファンタジー
もと魔狩人《まかりびと》ライナルトは大雪の中、乳飲み子を抱いて村に入った。
村では魔獣や獣に被害を受けることが多く、村人たちが生活と育児に協力する代わりとして、害獣狩りを依頼される。
ライナルトは村人たちの威力の低い攻撃魔法と協力して大剣を振るうことで、害獣狩りに挑む。
しかし年々増加、凶暴化してくる害獣に、低威力の魔法では対処しきれなくなってくる。
まだ赤ん坊の娘イェッタは何処からか降りてくる『知識』に従い、魔法の威力増加、複数合わせた使用法を工夫して、父親を援助しようと考えた。
幼い娘と父親が力を合わせて害獣や強敵に挑む、冒険ファンタジー。
「カクヨム」「小説家になろう」にも掲載しています。
Sランク冒険者の受付嬢
おすし
ファンタジー
王都の中心街にある冒険者ギルド《ラウト・ハーヴ》は、王国最大のギルドで登録冒険者数も依頼数もNo.1と実績のあるギルドだ。
だがそんなギルドには1つの噂があった。それは、『あのギルドにはとてつもなく強い受付嬢』がいる、と。
そんな噂を耳にしてギルドに行けば、受付には1人の綺麗な銀髪をもつ受付嬢がいてー。
「こんにちは、ご用件は何でしょうか?」
その受付嬢は、今日もギルドで静かに仕事をこなしているようです。
これは、最強冒険者でもあるギルドの受付嬢の物語。
※ほのぼので、日常:バトル=2:1くらいにするつもりです。
※前のやつの改訂版です
※一章あたり約10話です。文字数は1話につき1500〜2500くらい。
聖女を追放した国は、私が祈らなくなった理由を最後まで知りませんでした
藤原遊
ファンタジー
この国では、人の悪意や欲望、嘘が積み重なると
土地を蝕む邪気となって現れる。
それを祈りによって浄化してきたのが、聖女である私だった。
派手な奇跡は起こらない。
けれど、私が祈るたびに国は荒廃を免れてきた。
――その役目を、誰一人として理解しないまま。
奇跡が少なくなった。
役に立たない聖女はいらない。
そう言われ、私は静かに国を追放された。
もう、祈る理由はない。
邪気を生み出す原因に目を向けず、
後始末だけを押し付ける国を守る理由も。
聖女がいなくなった国で、
少しずつ異変が起こり始める。
けれど彼らは、最後まで気づかなかった。
私がなぜ祈らなくなったのかを。
処刑された勇者は二度目の人生で復讐を選ぶ
シロタカズキ
ファンタジー
──勇者は、すべてを裏切られ、処刑された。
だが、彼の魂は復讐の炎と共に蘇る──。
かつて魔王を討ち、人類を救った勇者 レオン・アルヴァレス。
だが、彼を待っていたのは称賛ではなく、 王族・貴族・元仲間たちによる裏切りと処刑だった。
「力が強すぎる」という理由で異端者として断罪され、広場で公開処刑されるレオン。
国民は歓喜し、王は満足げに笑い、かつての仲間たちは目を背ける。
そして、勇者は 死んだ。
──はずだった。
十年後。
王国は繁栄の影で腐敗し、裏切り者たちは安穏とした日々を送っていた。
しかし、そんな彼らの前に死んだはずの勇者が現れる。
「よくもまあ、のうのうと生きていられたものだな」
これは、英雄ではなくなった男の復讐譚。
彼を裏切った王族、貴族、そしてかつての仲間たちを絶望の淵に叩き落とすための第二の人生が、いま始まる──。
夫に顧みられない王妃は、人間をやめることにしました~もふもふ自由なセカンドライフを謳歌するつもりだったのに、何故かペットにされています!~
狭山ひびき
恋愛
もう耐えられない!
隣国から嫁いで五年。一度も国王である夫から関心を示されず白い結婚を続けていた王妃フィリエルはついに決断した。
わたし、もう王妃やめる!
政略結婚だから、ある程度の覚悟はしていた。けれども幼い日に淡い恋心を抱いて以来、ずっと片思いをしていた相手から冷たくされる日々に、フィリエルの心はもう限界に達していた。政略結婚である以上、王妃の意思で離婚はできない。しかしもうこれ以上、好きな人に無視される日々は送りたくないのだ。
離婚できないなら人間をやめるわ!
王妃で、そして隣国の王女であるフィリエルは、この先生きていてもきっと幸せにはなれないだろう。生まれた時から政治の駒。それがフィリエルの人生だ。ならばそんな「人生」を捨てて、人間以外として生きたほうがましだと、フィリエルは思った。
これからは自由気ままな「猫生」を送るのよ!
フィリエルは少し前に知り合いになった、「廃墟の塔の魔女」に頼み込み、猫の姿に変えてもらう。
よし!楽しいセカンドラウフのはじまりよ!――のはずが、何故か夫(国王)に拾われ、ペットにされてしまって……。
「ふふ、君はふわふわで可愛いなぁ」
やめてえ!そんなところ撫でないで~!
夫(人間)妻(猫)の奇妙な共同生活がはじまる――
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる