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上り2列車 寝台特急はくつる 定刻発車
しおりを挟むそうして、ベッドメイキングが済んだ列車を見ていると
感慨深い、めぐ。
「がんばったね。」と、れーみぃも微笑む。
ふと、気づくと
食堂車の明かりが点いていて。
湯気が立っている。
「そうだ、まだ仕込みをしてるんだ!」と
めぐは気づく。
キッチンのあるドアのところへ駆けていくと
列車料理長さん、料理人さん。
黙々と仕込みをしていた。
リサ、めぐ、れーみぃ、naomi、ミシェル。
思わず「手伝います!」と。
自分たちの列車だもん。
ミシェルにとっては、
’おじいちゃんの国鉄’だし(笑)。
列車料理長さんは、穏やかに笑って
「ああ、もう、仕込みは済んでるんだ。
ありがとう。地上部隊に頼んどいたから、電話で」
スケジューリングを上手くするのが、マネージャー、である。
なので、料理人さんたちも
苛立つ事もない。
物理的な時間に余裕があれば。
そして、時間が足りない時に
苛立っても、無意味で
苛立つとミスが増えるのだ。
なので、沈着冷静でいるべきなのだけど
それが難しいのは、人間の心で
時間の間隔は、地上の時間と合っていないから。
記憶やイメージの中では、時間間隔が規則的じゃないから。
それにイライラしても無意味なので
目の前の作業を、淡々と続ける事が
正しい行動なので
最終目的をイメージしてしまうから、イライラ
するのであるけれど。
つまり、神様の思うように
地上の時空間、3次元のそれから
掛け離れた(4次元の)時空間のイメージを
欲求するから起こる、
比較して、現実的な行動を取らないで
希望、欲求を重視するからそうなってしまう。
克己制欲、なんて格言が5000年前からあるけれど
それも、同じ事を言っているから
人間は、5000年の間
そこだけは進化が進まずに
いま、進化しようとしているのかもしれない。
それでも、何か手伝いたくって
めぐたちは、食堂車のテーブルセットをしたり。
キッチンの、お芋の皮を片付けたり。
気がつくと、昨日の夜一緒だった料理人さん。
それと、今夜乗務する料理人さん。
一緒に、お仕事。
「そっか。あたしと一緒。」めぐは、思う。
列車が、定刻で走るために
みんなで、頑張ってるんだね。
それは、誰の為でもなくて
みんなのため。
みんなが乗る列車だもの。
そういう気持ちなら、がんばっても
気持ちいい。
でも、お金儲けの為だとか
急かされて、訳もなく仕事させられるなら
気持ちよくない(笑)。
そんなものだと思う。
列車は、30分前に駅に入るので
そろそろ出発。
20時30分。
「みんなのために働くって、なんか、いーよね」れーみぃは、お嬢さんだから
そんな感想を。
上り2列車の、支度が間に合って
車庫から、折り返し始発のbluemorrisへの
回送2列車に、乗せて貰って。
戻る道、レールの響きを聞きながら
食堂車のとなり、ロビーカーで。
めぐは、れーみぃの感想を
にこにこしながら聞いていた。
「うん、楽しかった」と、めぐも言う。
めぐは、アルバイトで図書館に勤めていたから
みんなのために働くって感じ、なーんとなく
分かってた。
でも、列車で人を運ぶって事、夜行列車だから
眠ったり、ご飯食べたり、お風呂入ったり。
その、いろんな事をお世話する事の
大変さ、は
また、違う感動だった。
本の貸し借りと違って、生活そのもの。
食べ物の好みを伺ったり。
具合の悪い人の手当てをしたり。
そういう、深い関わりの仕事は
結構、大変だけどやり甲斐があったな、なんて
めぐは、思ったりもした。
夜行列車も、乗る人が減って
だんだん、なくなってしまうけど
でも、残っていてほしいな、なんて
めぐは、思ったり。
naomiは、
ふたりの隣で、さわやかな到達感に
包まれていて。
鉄道の仕事に就ける、リサのこれからを
思う。
苦労もあるだろうけど、使命感のある
素敵な仕事。
自身の目指す、郵便局にも
似た印象を持っているけれど。
「一緒に、がんばろうね」
そんな風に、心でつぶやいた。
24時間働いてる、郵便局は
夜行列車みたいかな、なんて思ったり。
そんなところに、1列車車掌を勤めた
リサのおじさん、来訪。
さすがに眠そうなのは、昨日の夜から
寝ていないから。
それを見ると、夜行列車が素敵だと
思っているめぐや、れーみぃも
途中で、交代してあげればいいのに、なんて
思ったり(笑)する。
夜遅く働くのって、大変なんだって
実感して思ったり。
「おじさん、疲れてる?」ミシェルは、
ロビーの椅子に座って、夜景を眺めつつ。
風邪を引いて、熱があったにしては
元気なのは、やっぱり若いから。
おじさん、いやいや、元気だと
いいつつ、声はかすれていて。
やっぱり、歳には勝てない(笑)。
「夜行って大変だね」と
ミシェルは言う。でも、おじさんは
「この列車も、なくなるからの、いつか。
それまではがんばるんだな。
ほれ、じいちゃんの列車だし」と
ミシェルたちから見た、じいちゃんの、と言う
言葉を使った。
おじさんにとっては、お父さんの列車。
それだけに、きつい夜行の仕事でも
降りる訳にいかない、と
そんな風に思っている。
そんな使命感、それも
生きて行くのに大切なこと。
仕事が、みんなお金儲け、みたいな
価値観がよく分からない、相場で価値が変わってしまうようなものの為に働くなら
それこそ、ギャンブルでもした方が
働くよりいい。
でも、そうじゃなくって。
愛する者の、住む国、みんなの鉄道を
運営する為に。
そう働くなら、それはとても尊い仕事になる。
そういう仕事をしていれば、その人は
気高い人になる。
皆から尊敬されて。
お金儲けのために拘泥している人々が
尊大に振る舞っても、得られない
尊敬、である。
そういう人々の気持ちが、夜行列車を
走らせている。
お金なんてものがなければいいのに、なんて
思ったりもするけれど
お金が悪いわけ、でもなくて。
お金、と言う道具を上手く使えない人間がダメなのだろう。
お金があるから、貯蓄ができる、けれども
お金儲けのために、悪い事をして
心が貧しくなったら、それはヘン。
お金を使って、豊かな暮らしをするならいい、のだけど。
この2列車、ノーススター号も
乗車券は、あまり安い値段では売られていない。
高校生のアルバイト料で言えば、3日分くらいの金額になるだろうか。
でも、尊い労働の対価として、一晩、1列車に乗せてもらえた。
そのことに、みんな満足していた。
2列車、上りの「ノーススター」は、始発のbluemorrisに着く。
先頭には、特急用機関車が連結される。
さっき、最後尾についていたディーゼル機関車は、切り離されて
海辺の引込み線に行き、線路を切り替えて退避した。
「なんか、旅が終わっちゃった」と、めぐは言う。
「そーだね」と、れーみぃ。
Naomiは、無言だったけど「あ、制服着替えなきゃ!」と
大事な事に気づく(笑)。
リサのおじさんも、まだ車掌の白い制服、重いかばんを持ったまま
「んだ、乗務員センターに置いていけ?」
....そういう訳で(笑)みんな、着替えと荷物を列車に取りに行って。
なんとも、慌しい発車待ち。
リサとミシェルは、普段着だけど。
ブルーの車体に、白いラインの列車は
綺麗に洗われて。
4番線ホームに、扉をバタリ、と開いて。
めぐたち乗務員(笑)は
そこで交替。
慌ただしく降り立つ、ホーム。
駅20時30分、でも、上り2列車に乗る
人達はのどかに
列車に乗り込む。
見送るめぐたちも、感慨無量。
働くって、素敵な事なんだ。
そう、みんな思って。だから
「リサ、いいなぁ国鉄内定で」と、naomi。
「きっと郵便局、入れるよ」と、リサ。
......もちろん、未来には入っているのだが(笑)。
その事を、めぐも勿論忘れている(笑)。
から、この日、誰も知らない未来の事。
れーみぃは、なんと白バイ警官になっていたり。
そんな未来が待っているかも、知れなかったり。
未来って、決まってないからワクワクなんだし。
これから走り出す列車、みたいに。
リサのおじさんも、とっくに
家に帰っていられる時間だった。
でも、地震があって
そのせいで、乗務が長引いて。
それでも、不平を述べるでもなく
黙々と、仕事をする。
そういうところは、やっぱり農耕と牧畜の国、この国のひとらしい。
植物を多く食べ、近代化以前は
豚肉すら食しなかった種族の末裔らしい。
だから闘争的でない。
northeastらしく、農耕を共同体でする
そういう文化に慣れ親しんでいるから
そういう理由もある。
記憶の中に、生れついて
そういう資質を受け継いでいるのだ。
あまり、闘争的な神経が活性的でない。
秩序的で。
そういうところは、顔だちや表情にも現れる。
なので、リサのおじいちゃんが機関車乗りに
なったのも自然、だったのかもしれず
適性があったのだろう。
血統、だから
リサのおじさんも鉄道職員、リサも当然に。
「ミシェルも、国鉄に入れ」と、おじさん(笑)
ミシェル自身、今夜の経験で
なんとなく、鉄道の仕事もいいかな、なんて
思うようにもなった(笑)。
そんな時、神様の思惑とは違って
外国の人達は、この国の国鉄や郵便局を
民営化して、その資産を乗っ取ってしまおうと
計画を重ねていたりする。
それはもちろん、この国の人々が
我慢強くて従順だから、反乱など
起こらない、そういう目算に依るものだったりした。
確かに、今まではそうだったけど(笑)
たとえ、魔法がなかったとしても
みんなの国鉄を、外国のお金儲けに
使わせたりしない。
そういう、国鉄マンの心意気が
よくわかったリサには、もう迷う気持ちも
無かった。
めぐたちも、信じるものができた、
そんな感じだった。
上り、2列車の車掌さんは
もちろん、リサのおじいちゃんの後輩だ。
「おお、ごくろさん」と、リサの姿を見て。
リサも、恥ずかしそうにご挨拶。
「機関車空けて待っとる」と、その意味な事を
訛った言葉で言って。
2列車車掌は、乗務員室に入った。
最後尾。
ドアスイッチが開いてるから
列車を見渡すと、赤いドアランプが並んで
壮観だ。
鉄道、と言う大きな規模を意識する
瞬間だ。
2列車、発車21時。
感慨深く、見守るめぐたち。
車掌は、ホームの信号を見て
時刻確認。
マイクで、発車アナウンス。
手笛を吹いて、ドアスイッチ扱い。
一斉に、ドアが閉じ
赤いドアランプが、ぱらぱら、と消える。
車掌は、列車無線で「2列車車掌です、2列車機関士どうぞ」
返答が、ノイズ混じりに入る。
「2列車、定刻発車」。
車掌は、乗務員扉から窓を開けて。
機関車は、ゆっくりと動く。
編成が引かれて、音もなく進み始めると
なーんとなく、ホームで見守るみんなに
ため息。
「あーあ、行っちゃう」
ゆっくりゆっくり、走りはじめるブルートレイン。
闇の中に消えてゆく。
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