その少女、きせいちゅうにて

やまがみ

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目覚め

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             ――その虫は雨が降る森の中で目を覚ました――

 その虫は背中に14-1と書かれているウジムシのような形をしていた。ただ、ウジムシと違いその口にはおびただしい量の牙があった。

「はぁ……はぁっはぁ……」

 雨が降る森の中を虫がさまよっていると、1人の裸足の少女か背中から血を流しながら走ってきた。

「はぁっはっあっ……ぐ……」

 少女は何かから必死に逃げるように走っていた。転けそうになりながらも焼けるように熱く、痛い背中の傷を我慢して走り続ける。

「どこに行った!さがせ!」

「まだ近くにいるはずだ!見つけろ!!」

「くそっあのガキ!!噛みやがって!ぶっ殺してやる!!」

「おいおい殺すなよ!高値で売れる商品なんだ!」

 4人の男達が少女を追って森を走る。男たちの腰には剣がつるされていて、言動からも少女の保護者などでは無いことがわかる。男たちのうちの1人には腕に小さが歯型が付いていて血を流していた。

「あっぐぅっ……」

 足がもつれ、ついに少女はこけてしまった。その音を聞き付け、男達が走ってくる。

「いたぞ!あそこだ!」

 虫の前には少女の幼い背中があった。裂けた服から覗く左肩から右脇にかけて痛々しく、赤黒くそまる肉と血が見える傷口。その傷口に虫は近づき、肉を喰らい血を吸いながら少女の体へと侵入していく。

「ぎっ!?ぁぁあぁあああぁ!?いだぃい!いだい!!!」

 少女は突然の激痛に泣き叫びながら背中を掻きむしる。そんなことは構わず虫はどんどん侵入していき、脳へと進んでいく。

「あぁぁぁぁぁぁああぁああ!?がっ……ぎぃっ」

 虫は少女の脳へ至るとその体から無数の触手をだし、脳へ繋ぎ自分の物へと変質させていく。

「あ……ぁぁあ……」

 少女は白目を向き、ヨダレを垂らしながら体をビクビク痙攣させる。その間にも虫の侵食は進む。脳を支配した虫は次に臓物や筋肉、骨を変質させていった。すると、背中の傷が傷口から出た触手が覆うようにして治り、小石などを踏んでできた足の裏の傷も治っていった。その間に少女を見つけた男たちが追いつき、捕らえようとする。

「いたぞ!捕らえろ!!」

「今度こそ逃がさねぇぞガキ!」

「なんか様子へんじゃねぇか?」

「んな事はどうでもいいからさっさと戻るぞ。ここはもう魔域のはずだ」

 男のひとりが少女に近づき、その痙攣した体を持ち上げる。

「よし、撤収するぞ」

「ったく手間取らせやがって……」

「うぁ……」

 体を完全に支配した虫は最後にその体を分解し、脳の1部となり少女を完全に乗っ取った。

「んぅ……」

 何日も森をさまよい、何日か何も食べていなかった虫、もとい少女はとてもお腹を空かせていた。

 おなかすいた……なにか食べ物……

 少女はうっすらと目を開け、目の前に男の喉笛があるのを見つけた。

 美味しそう……肉……

 少女はゆっくりと顔を上げ、その無防備な喉笛に噛みつき、食いちぎった。

「あ?がひゅっ」

 息を吸えなくなった男は少女を落とした。男は喉から大量の血を流し、胸を掻きむしりながら倒れた。男は必死に息を吸うが、食いちぎられた喉からひゅーひゅーと漏れ出るだけで肺には送られない。
 少女は新鮮な肉と血をゆっくりと咀嚼し、嚥下した。

「は?」

「あ?おい、どうした?」

 その男は1番前を歩いていたため、他の男達からは何をされたのか見えていなかった。男たちは痙攣している男に近づき、喉が噛みちぎられているのに気がついた。

「死んでやがる……」

「喉を噛みちぎられてるなこれ」

「気をつけろ……魔物がいるかもしれねぇ」

 男たちは腰の剣を抜き、周囲を警戒し始めた。

「おいし……」

 新鮮な肉を食べたことで少し体力が回復した少女は、男たちを食らうために本能に従い魔法を発動させた。
 

「がっ!?」

「ごはっ……」

「ぎっ……」

 少女は倒れた男に覆い隠されていたため、魔術を発動させたことを男たちに気づかれることはなかった。なので容易に男たちを殺すことが出来た。少女が発動させた魔術は男たちの腹を貫き、臓物を地面に叩きつけた。それと同時に少女のポケットに入っていた宝石が3つ消滅した。

 「よかった仕留めれた……」

 初めて魔術発動させたけど上手くいって良かった……

 少女はゆっくりと男の下から這い出でると、男4人を同じ場所に集め食事をすることにした。

「ホカホカ……おいし」

 静かな森に血を啜り臓物を咀嚼する音が響く。

「やっぱいちばん美味しいのは心臓だね」

 少女は食事をしながらこの体のことを調べることにした。少女は腸を喰らいながら脳をサルベージし、記憶を覗いた。

―――――――――――――――――――――――

 女性が騎士に剣で腹部を貫かれていた。その騎士の胸にはドラゴンと剣で飾られた宝石型の紋章があった。

「……げ……に……げて……」

 母親らしき人物はその綺麗な銀色の髪を血に染め剣で貫かれたまま、もたれ掛かるようにして騎士を止めながら少女に逃げるように言う。




「それでは……○○さんに良い来世が訪れますように……それでは行ってらっしゃいませ!」
 ―――――――――――――――――――――――――

「ふむふむ…なるほどなるほど…」

 少女は血まみれの手を顎に当て、うんうんと頷く。

「寄生した時に脳傷ついたかな…読み取れる記憶がこんなけしかない…それになんか最後に変な声だけが聞こえたし……」

 これ以上探ってみても読み取れないと判断した少女は一旦記憶を読み取るのを辞めた。男たちの臓物を食べ終えた少女は血まみれの体を洗うために川を探して森を歩き始めた。

「あっそういえばこの世界はステータスって言うのがあるんだった」

 まるで少女は他の世界を知ってるかのようにそう呟いた。すると、少女の目の前に小さな半透明の板のようなものが現れた。

「えーっとどれどれ」


 ―――――――――――――――――――――――――
 ステータス
 筋力:F
 魔力:D+
 耐久:G-
 俊敏:E+

 スキル
 遠見Lv1、弓術Lv2、

 ユニークスキル
 宝石生成、宝石魔術

 アルティメットスキル
 ????(封印中)

 ―――――――――――――――――――――――――

「宝石……」

 少女がポケットに手を入れると、小さな宝石が2個ほど入っていた。立ち止まり取り出して空にかざしてみると、血に濡れたそれは何かを恨むかのように怪しく輝いていた。

 それにしてもこの体どうなっているんだろ……寄生して操るつもりだったのに何故か一体化してしまった。そういう体質なのか、それともそのために造られたのか……
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