花の舞散る季節

色音花絵

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季節一 夏

未来

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 春はやることが無くなって丁度暇になったこともあり、七が眠っているうちにと、書を読み始めた。自分のことが書かれているのならば、知っておかなければならないだろう。例え、どんなことが書かれていたとしても。
 ぱらぱらと頁を捲れば、確かに春のことが書かれている。書き殴ったような筆跡で、お世辞にも上手いとはいえない字ではあるが、それも何とか読み取れるほどのものだった。此処でいう『娘』とは、きっと神月家の娘、つまりは春のことを指すのだろう。名前が書かれずとも、此処に居る娘は春一人しか居ない。春以外にあり得る筈が無かった。
「一一〇五年、娘が生まれる。一一一三年、陰陽師と会う。一一一四年、刺客に襲われ、殺されかける……!?」
 読み進める間に、自分でも気付かないうちに、春はその文字を声に出して読んでいた。最初の二つはもう起きたことで、確かに当たっている。春が生まれたのは一一〇五年。陰陽師、つまり七と会った今年は、その八年後の一一一三年。
 春は来年の出来事に、思わずぶるりと身震いした。言いようのない不安が春の胸を締め付ける。刺客など、生まれてこの方、此処に来たことはないのに。一体、何処の誰が刺客だというのだろう。春には見当も付かなかった。しかし、幾ら悩んだところで、答えが出る筈はない。一度生まれた不安を拭い去ることも出来ないのだ。
 春は書をぎゅっと胸に抱き寄せ、何も起こらないようにと祈った。眠っている七を起こさないように立ち上がる。まるで書を隠すように、前屈みになりながらそれを力強く握り締めて、春は部屋を後にしたのだった。

 それは紅色の夾竹桃の花が舞散る、蒸し蒸しと暑い夏の日のことだった。
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