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第8話・波乱
離れている間
今日から導き手は、律子さんだけの仕事です。お役ご免になった私は、ここに来たばかりの頃のように、ひとり農場物語をはじめました。
ぶっちゃけ師匠と釣りをしたり、牧場の老夫婦を手伝ったり、ユニちゃんと畑のお世話をしているほうが性に合っているので、久しぶりに楽しかったです。
特に地下にあるダンジョンには日の光が届きません。だから外の風に吹かれながら、たくさんお日様を浴びられて気持ち良かったです。
しかし夜になると、私の気分はまた沈みました。はじめて一線を越えてから、夜はいつも一緒に寝ていた風丸が部屋に来なかったからです。
「風丸……」
遠慮がちに呼びかけつつ、彼の部屋をノックしました。返事が無いのでドアを開けるも、中には誰も居ませんでした。昨日の別れ際、様子が変でしたし、避けられているのかもしれません。
『俺は他の人間なんか要らない! アンタが欲しいんだよ!』
……あの言葉に「うん」と言えなかったから、怒らせてしまったのかもしれません。
風丸のことを、律子さんには相談できませんでした。風丸は多分、自分の内心を人に知られるのが嫌いです。だから彼の心の脆い部分を、勝手に人に話すのは躊躇われました。
私の前には出て来なくなりましたが、遠目に風丸が律子さんたちと行動している姿は何度か見かけました。いつもどおり飄々としていたので、心に秘めたものがあっても取り繕うだけの強さがあるなら、かえって触れないほうがいいかもしれない。そう考えて静かに距離を置きました。
しかし実際は私のほうが気落ちしていたようで
『最近、君からアイツの匂いがしないね。孕ませる気かと思うほど、しつこく抱かれていたようなのに、どうして急に離れたの?』
お城の裏に作った畑で、ユニちゃんに問われた私は
「分かりません。最後に部屋を訪ねて来た日、怒らせてしまったので、気に障ることを言ってしまったのかも」
弱弱しく微笑んで返すと、ユニちゃんは心配してくれたのか
『突き刺して来てあげようか?』
「えっ? 何を?」
戸惑う私に、ユニちゃんはいつもどおりの静けさで
『君の恋人。さんざん君を食い物にして、理由も言わずに捨てるなんて最低だから』
ユニコーン流の厳しい制裁を、風丸に加えようとするユニちゃんに
「いやいや。彼にも何か事情があるんです。最低とかじゃないので大丈夫です」
『でも由羽は傷ついたんでしょう? ずっと悲しそうな顔をしているよ』
確かに風丸と不仲になってしまったのは悲しいです。でも私がいちばん辛いのは
「私が傷ついたんじゃなくて、風丸が心配なんです。最後に話した時、すごく辛そうだったから。彼が苦しんでいるのを知りながら、何もしてあげられないのが悲しいんです」
この世界で風丸と出会って、一時でも笑顔にできて幸せでした。それが本当の気持ちなら、元の世界に残して来た大切な人たちや大好きなものを全て失くしても、風丸のそばに居たかったです。
でも風丸が私に執着するのは、私のトリップ特典である『風丸を幸せにする力』の影響です。このまま私と居たら、風丸が本来辿るはずだった人生や、出会うはずだった人たちとの縁を壊してしまいます。
その中には風丸に本当の幸せを教えてくれる運命の人だって居るはずだから、いつまでも偽りの幸せで縛り付けておくわけにはいきません。だから風丸のことは心配ですが、魔王の再封印を見届けたら、大人しく元の世界に帰ろうと決めていました。
ぶっちゃけ師匠と釣りをしたり、牧場の老夫婦を手伝ったり、ユニちゃんと畑のお世話をしているほうが性に合っているので、久しぶりに楽しかったです。
特に地下にあるダンジョンには日の光が届きません。だから外の風に吹かれながら、たくさんお日様を浴びられて気持ち良かったです。
しかし夜になると、私の気分はまた沈みました。はじめて一線を越えてから、夜はいつも一緒に寝ていた風丸が部屋に来なかったからです。
「風丸……」
遠慮がちに呼びかけつつ、彼の部屋をノックしました。返事が無いのでドアを開けるも、中には誰も居ませんでした。昨日の別れ際、様子が変でしたし、避けられているのかもしれません。
『俺は他の人間なんか要らない! アンタが欲しいんだよ!』
……あの言葉に「うん」と言えなかったから、怒らせてしまったのかもしれません。
風丸のことを、律子さんには相談できませんでした。風丸は多分、自分の内心を人に知られるのが嫌いです。だから彼の心の脆い部分を、勝手に人に話すのは躊躇われました。
私の前には出て来なくなりましたが、遠目に風丸が律子さんたちと行動している姿は何度か見かけました。いつもどおり飄々としていたので、心に秘めたものがあっても取り繕うだけの強さがあるなら、かえって触れないほうがいいかもしれない。そう考えて静かに距離を置きました。
しかし実際は私のほうが気落ちしていたようで
『最近、君からアイツの匂いがしないね。孕ませる気かと思うほど、しつこく抱かれていたようなのに、どうして急に離れたの?』
お城の裏に作った畑で、ユニちゃんに問われた私は
「分かりません。最後に部屋を訪ねて来た日、怒らせてしまったので、気に障ることを言ってしまったのかも」
弱弱しく微笑んで返すと、ユニちゃんは心配してくれたのか
『突き刺して来てあげようか?』
「えっ? 何を?」
戸惑う私に、ユニちゃんはいつもどおりの静けさで
『君の恋人。さんざん君を食い物にして、理由も言わずに捨てるなんて最低だから』
ユニコーン流の厳しい制裁を、風丸に加えようとするユニちゃんに
「いやいや。彼にも何か事情があるんです。最低とかじゃないので大丈夫です」
『でも由羽は傷ついたんでしょう? ずっと悲しそうな顔をしているよ』
確かに風丸と不仲になってしまったのは悲しいです。でも私がいちばん辛いのは
「私が傷ついたんじゃなくて、風丸が心配なんです。最後に話した時、すごく辛そうだったから。彼が苦しんでいるのを知りながら、何もしてあげられないのが悲しいんです」
この世界で風丸と出会って、一時でも笑顔にできて幸せでした。それが本当の気持ちなら、元の世界に残して来た大切な人たちや大好きなものを全て失くしても、風丸のそばに居たかったです。
でも風丸が私に執着するのは、私のトリップ特典である『風丸を幸せにする力』の影響です。このまま私と居たら、風丸が本来辿るはずだった人生や、出会うはずだった人たちとの縁を壊してしまいます。
その中には風丸に本当の幸せを教えてくれる運命の人だって居るはずだから、いつまでも偽りの幸せで縛り付けておくわけにはいきません。だから風丸のことは心配ですが、魔王の再封印を見届けたら、大人しく元の世界に帰ろうと決めていました。
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