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エピローグ・今この時に続くなら
もう何も隠さなくても(視点混合・薄っすら性描写あり)
【風丸視点】
これまでマスターちゃんの前で頑なに脱がなかったのは、呪いによる首の痣を見せないためだった。誤魔化しようもなく不吉な見た目なので、追及は避けられないだろう。単に心配をかけたくなかったのもあるが、呪いのせいで俺自身がマスターちゃんに忌まわしいものだと思われそうで怖かった。
しかし痣にばかり気を取られていたが、よく考えたら
「か、風丸。服の下、こんなに傷が」
リクエストどおり服を脱がせてくれたマスターちゃんは、俺の上半身を見て目を見張った。愚かなことに、俺はその反応を見るまで、ちっとも気づかなかった。体中に残る傷痕は俺にとって、あまりに当たり前だったから。
でも普通の人間の体は
「……ゴメン。汚いよな、俺の体」
ユエルやアルゼリオたちのように身分の高い者は、戦士でも負傷すればすぐに治癒されるので傷痕が残らない。でも俺のような使い捨ての下忍には、回復魔法なんて上等なもんはいちいちかけてもらえなかった。
自分で手当てした傷は、消えない痕になって体のあちこちに残った。ろくな扱いもされず、真っ当な生き方もして来なかった証拠。傷一つ無い綺麗な体のマスターちゃんと比べて、傷だらけの醜い自分が急に恥ずかしくなった。
自分から「脱がせて」とか浮かれたことを言っておいて、急に小さくなる俺に
「汚くなんてありません。これは風丸が、がんばって生きて来た証拠ですから」
マスターちゃんは瞬時に否定すると、自分も痛そうに涙ぐみながら
「こんなにたくさん怪我して、すごく痛かったですよね。きっとすごく大変だったのに、生きていてくれて、ありがとうございます」
そう言って真正面から俺を抱きしめてくれた。
ずっと自分が生きている意味が分からなかった。一方的に踏みにじられるだけの人生なんてあまりに惨めだから、里長を殺すまではと粘っていたが、それはこの世に不要なゴミ同士が潰し合うだけのこと。害し害されるだけの人生に、なんの意味があるんだと思っていた。
でもマスターちゃんは俺の醜い生き様を、がんばったと褒めてくれた。俺が生きていることを1人でも喜んでくれるなら、今日ここに至るまで飲み続けた苦汁にも意味がある。
そんなことを思ったら、もうマスターちゃんには二度と無様な姿は見せまいと思っていたのに、これまで無意識に堪えて来た涙が一気に溢れた。
言葉もなくいきなり泣き出した俺を見ても、マスターちゃんは引いたり困ったりせずに
「今までずっと大変でしたね。でも、もう大丈夫ですよ」
優しい言葉をたくさんかけながら、俺が泣きやむまで温かい腕で抱きしめてくれた。
【由羽視点】
多分これまでずっと1人で飲み込んで来た涙を一気に流した風丸は
「お風呂、気持ちいいですか?」
言葉を発するのも億劫みたいで、私の質問にコクンと頷きながら、今は大人しくお風呂に入っています。
折に触れて感じることですが、風丸には年齢よりも世間擦れした部分と、傷ついた子どものまま取り残された部分があるようです。風丸の家族については、お母さんが自分を置き去りにして、死んでしまったとしか知りません。
私が家族から当たり前のように注がれて来た愛情を、風丸は十分に受け取れなかったんだと思います。もしそうなら風丸が子どもの頃に受け取れなかったものを、今から少しずつでも満たしていきたいです。
そんなことを思いながら、風丸をお風呂に入れた後。
「マスターちゃん。したい」
すっかりしゃべらなくなったので、今日はもう寝るだけかと思いましたが、掠れた声で後ろから抱き締められました。
いつもの「イチャイチャしよ」の明るいテンションですら断れないのに、こんな切実な求め方をされて断れるはずがありません。と言うか、私だって風丸が欲しいので
「……はい。私も風丸としたいです」
ちょっと照れつつも素直に答えると
「でも私は、お風呂がまだなので。ちょっと待ってもらって……」
しかし体を洗いに行こうとしたところ
「って風丸?」
腰にタオルだけ巻いた風丸は、私をひょいと抱き上げてベッドに下ろすと
「ひぃっ!? 無言ではじめないでください! 今日は1日中、外に居て本当に汚いんですって!」
汗やら何やらで汚れた体を、好きな人に触れさせたくなかったのですが
「やだ。待てない」
風丸は不機嫌そうに言うと、あっという間に私を脱がせて
「アーッ!? せめてペロペロはやめてください! 本当に汚いんですってぇぇ!」
最初こそお風呂に入っていないことを気にする余裕もありましたが
「あっ、ああっ。風丸っ、風丸っ」
「やっと大人しくなったね。流石に中まで舐められたら諦めついた?」
いちばん汚いところまで舐められて諦めがついたというよりは、久しぶりの快感で訳が分からなくなってしまいました。風丸も多分、本当は私の状態を知っていて
「もっと汚いのが気にならなくなるくらい、俺がいっぱい汚してあげるね」
エッチしたら元気が出たのか、すっかりいつもの風丸です。それから本腰を入れて抱かれました。
ただそれはお色気忍者らしく技巧を尽くすというよりは
「こうしてずっと裸で抱き合いたかった。もう何も隠さないで、全身でアンタを感じられんの、すげー嬉しい」
肌と肌を触れ合わせて、少しでも多くお互いを感じ取ろうとするような抱き方に
「私もすごく幸せです。ずっと風丸の顔を見ながら、したかったから」
風丸の頬に手を伸ばしながら、彼の顔を見上げました。飢えるような余裕の無い表情も、心地よさそうに閉じられた瞼も、眩しそうに注がれる眼差しも、ようやく見ることができて
「今すごく愛されているって思います」
言った後で自惚れかなと気に病みましたが、風丸は私の手を取ると
「……だって愛してるもん」
ちょっと恥ずかしそうに口にして
「愛しているよ。魔法じゃなくてアンタだから。世界中の何より大切だ」
愛情を伝えるように私の指先にキスして、再び律動をはじめました。
翌朝。珍しく私のほうが風丸より先に目が覚めました。久しぶりなのでなかなか止まれなくて、割とぐったりして眠ったんですが、そんな私よりも風丸のほうがさらに疲れていたみたいです。
きっと昨日今日の話じゃなくて、もっとずっと昔から1人で張り詰めて生きて来たから。もう気を張らなくていいと思ったら、これまでの疲れがドッと出たのかもしれません。
「……これからはずっと一緒ですから。1人じゃないから大丈夫ですよ」
私の胸を枕に眠る愛しい人の頭を、起こさないようにそっと抱きしめました。
これまでマスターちゃんの前で頑なに脱がなかったのは、呪いによる首の痣を見せないためだった。誤魔化しようもなく不吉な見た目なので、追及は避けられないだろう。単に心配をかけたくなかったのもあるが、呪いのせいで俺自身がマスターちゃんに忌まわしいものだと思われそうで怖かった。
しかし痣にばかり気を取られていたが、よく考えたら
「か、風丸。服の下、こんなに傷が」
リクエストどおり服を脱がせてくれたマスターちゃんは、俺の上半身を見て目を見張った。愚かなことに、俺はその反応を見るまで、ちっとも気づかなかった。体中に残る傷痕は俺にとって、あまりに当たり前だったから。
でも普通の人間の体は
「……ゴメン。汚いよな、俺の体」
ユエルやアルゼリオたちのように身分の高い者は、戦士でも負傷すればすぐに治癒されるので傷痕が残らない。でも俺のような使い捨ての下忍には、回復魔法なんて上等なもんはいちいちかけてもらえなかった。
自分で手当てした傷は、消えない痕になって体のあちこちに残った。ろくな扱いもされず、真っ当な生き方もして来なかった証拠。傷一つ無い綺麗な体のマスターちゃんと比べて、傷だらけの醜い自分が急に恥ずかしくなった。
自分から「脱がせて」とか浮かれたことを言っておいて、急に小さくなる俺に
「汚くなんてありません。これは風丸が、がんばって生きて来た証拠ですから」
マスターちゃんは瞬時に否定すると、自分も痛そうに涙ぐみながら
「こんなにたくさん怪我して、すごく痛かったですよね。きっとすごく大変だったのに、生きていてくれて、ありがとうございます」
そう言って真正面から俺を抱きしめてくれた。
ずっと自分が生きている意味が分からなかった。一方的に踏みにじられるだけの人生なんてあまりに惨めだから、里長を殺すまではと粘っていたが、それはこの世に不要なゴミ同士が潰し合うだけのこと。害し害されるだけの人生に、なんの意味があるんだと思っていた。
でもマスターちゃんは俺の醜い生き様を、がんばったと褒めてくれた。俺が生きていることを1人でも喜んでくれるなら、今日ここに至るまで飲み続けた苦汁にも意味がある。
そんなことを思ったら、もうマスターちゃんには二度と無様な姿は見せまいと思っていたのに、これまで無意識に堪えて来た涙が一気に溢れた。
言葉もなくいきなり泣き出した俺を見ても、マスターちゃんは引いたり困ったりせずに
「今までずっと大変でしたね。でも、もう大丈夫ですよ」
優しい言葉をたくさんかけながら、俺が泣きやむまで温かい腕で抱きしめてくれた。
【由羽視点】
多分これまでずっと1人で飲み込んで来た涙を一気に流した風丸は
「お風呂、気持ちいいですか?」
言葉を発するのも億劫みたいで、私の質問にコクンと頷きながら、今は大人しくお風呂に入っています。
折に触れて感じることですが、風丸には年齢よりも世間擦れした部分と、傷ついた子どものまま取り残された部分があるようです。風丸の家族については、お母さんが自分を置き去りにして、死んでしまったとしか知りません。
私が家族から当たり前のように注がれて来た愛情を、風丸は十分に受け取れなかったんだと思います。もしそうなら風丸が子どもの頃に受け取れなかったものを、今から少しずつでも満たしていきたいです。
そんなことを思いながら、風丸をお風呂に入れた後。
「マスターちゃん。したい」
すっかりしゃべらなくなったので、今日はもう寝るだけかと思いましたが、掠れた声で後ろから抱き締められました。
いつもの「イチャイチャしよ」の明るいテンションですら断れないのに、こんな切実な求め方をされて断れるはずがありません。と言うか、私だって風丸が欲しいので
「……はい。私も風丸としたいです」
ちょっと照れつつも素直に答えると
「でも私は、お風呂がまだなので。ちょっと待ってもらって……」
しかし体を洗いに行こうとしたところ
「って風丸?」
腰にタオルだけ巻いた風丸は、私をひょいと抱き上げてベッドに下ろすと
「ひぃっ!? 無言ではじめないでください! 今日は1日中、外に居て本当に汚いんですって!」
汗やら何やらで汚れた体を、好きな人に触れさせたくなかったのですが
「やだ。待てない」
風丸は不機嫌そうに言うと、あっという間に私を脱がせて
「アーッ!? せめてペロペロはやめてください! 本当に汚いんですってぇぇ!」
最初こそお風呂に入っていないことを気にする余裕もありましたが
「あっ、ああっ。風丸っ、風丸っ」
「やっと大人しくなったね。流石に中まで舐められたら諦めついた?」
いちばん汚いところまで舐められて諦めがついたというよりは、久しぶりの快感で訳が分からなくなってしまいました。風丸も多分、本当は私の状態を知っていて
「もっと汚いのが気にならなくなるくらい、俺がいっぱい汚してあげるね」
エッチしたら元気が出たのか、すっかりいつもの風丸です。それから本腰を入れて抱かれました。
ただそれはお色気忍者らしく技巧を尽くすというよりは
「こうしてずっと裸で抱き合いたかった。もう何も隠さないで、全身でアンタを感じられんの、すげー嬉しい」
肌と肌を触れ合わせて、少しでも多くお互いを感じ取ろうとするような抱き方に
「私もすごく幸せです。ずっと風丸の顔を見ながら、したかったから」
風丸の頬に手を伸ばしながら、彼の顔を見上げました。飢えるような余裕の無い表情も、心地よさそうに閉じられた瞼も、眩しそうに注がれる眼差しも、ようやく見ることができて
「今すごく愛されているって思います」
言った後で自惚れかなと気に病みましたが、風丸は私の手を取ると
「……だって愛してるもん」
ちょっと恥ずかしそうに口にして
「愛しているよ。魔法じゃなくてアンタだから。世界中の何より大切だ」
愛情を伝えるように私の指先にキスして、再び律動をはじめました。
翌朝。珍しく私のほうが風丸より先に目が覚めました。久しぶりなのでなかなか止まれなくて、割とぐったりして眠ったんですが、そんな私よりも風丸のほうがさらに疲れていたみたいです。
きっと昨日今日の話じゃなくて、もっとずっと昔から1人で張り詰めて生きて来たから。もう気を張らなくていいと思ったら、これまでの疲れがドッと出たのかもしれません。
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