松美

dragon49

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植木屋の大将

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 東京の下町で盆栽屋を営む田中大造は、中学しか出ていない典型的な昭和の職人気質の親父だ。
  大造は、中学を卒業するとすぐに十五の歳から盆栽屋の師匠に師事して鍛えられた。 
 地元が東京の下町ということもあって、言葉は荒いし、指示が伝わらないと手が出ることもある。
 そういった関係もあり、十名前後は常にいた日本人の弟子たちも一人、また一人と去って行き、気がつくと周囲には青い目の若人ばかりになった。
  大造は、午前中にホースで水をやったり、剪定バサミでパチリパチリと松の手入れをするのだが、青い目の弟子たちに指示を出すのにさすがに日本語だけでは伝わらないと悟ったのか、イヤホンで英語を聴くことも多くなった。
  時節は夏休み、まだ小学生の外孫の松美が埼玉から泊りがけで遊びに来るというので大造はなにやら気がせいて朝から嬉しくそわそわしている。
  大造には長男の大作と長女の松代がいたが、長男の大作は都内の理工系の大学を卒業するとすぐにIT系の企業に就職してしまい、長女の松代はサラリーマンの他家に嫁いだ。
  大作は帰省する度に跡目を継がないかとせっつかれるので家にはよりつかないが、松代にはその話もでないので安心して娘の松美を連れて来る。
  大作は、この外孫にあたる松美が自分の跡目を継いでくれないかと密かに淡い期待を抱いている。
 「松美、よく来たな。いくつになった?」
  「うーん、十歳!」、キティの柄が入ったポーチを覗きながら松美が答えた。
  「将来は何になりたいんだ?」
   「女子アナ」
 大作は困った孫娘だと言わんばかりに説教を始めた。
  「いいか、松美。この盆栽の松をよーく見てみろ。どうなってる?」
「針金で曲がりくねって松が苦しそう」
「これはな、日本人の人生を表現してるんだ。曲がりくねって回り道した人ほど味が出るんだ。分かるかな?」
  「うーん、難しくて分からない」
大造は、まだ機が熟していなかったと渋面を作った。
  「それよりお爺ちゃん、私ディズニーランドに行きたい」
  「今は夏休みだろ、さぞかし混むんだろうな」、大造は眉をひそめた。
「皆んな、並んでアトラクションに乗ってるよー、ねー行こうよー」
 「あー、それならここにいても同じだね」
   「どーして?盆栽しかないじゃない」、松美は泣き出しそうになった。
 「よーく見てみろ。まつばかりじゃねえか!」、松美にとって大造のどや顔は理解不能のものであった。
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