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05 師匠と弟子
隅田川の虹
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「ほな、さいなら」
男は、ビニール袋を担ぎ踵を返した。
「ま、待って。オジさーん、弁当食べない?」
大地は、さっきから男の腹がグウグウ鳴るのを聞いていた。
「な、なんや君、食べへんのか?」
「エラーした上に三振までして、また学校で虐められる。食欲なんて湧かないよ」
大地は、俯いた。
「さよか?カーブを見したったさかい、見学料やな、そやそうしとこか」
男は、大地から弁当を受け取ると無心に頬張り出した。
「焼き肉弁当やんか、わいの好物や」
「お茶欲しいな、何や飲みモンないんか」
大地は、水筒の麦茶を差し出した。
「君は、名前なんて言うんや?」
「中川大地」
大地は、ぶっきらぼうに答えた。
「虐められる言うとったけどやな、虐めっ子っていったいなんや?」
男の目が真剣味をおびた。
「朝、校門の所で三、四人で待っててぼくに嫌がらせをするんだ。悪口を言ったりしてさ。帰る時も校門の所にいる。学校に行くのが嫌になる」
「コウモンの所に屯ってる?まるでギョウ虫みたいな奴らやで」
男は冗談のつもりで言ったのだが、大地の表情はさらに強ばった。とても笑える気持ちには、なれなかった。
「大地君、キミヒット打ちたいんか?」
大地は、黙って頷いた。
「教えたったる。ただし条件があるんや」
「な、何?」
大地の目が、久しぶりに輝いた。
「わいが大地君に教えるんやさかいに、わいが
師匠で、大地君は弟子や、ええか?」
大地は、素直に頷いた。
「今日から、わいを師匠と呼び!」
「分かりました、師匠」
男は、深く頷いた。
「ほな、バット振ってみいや、見たるさかい」
男の口調が熱を帯びてきた。
大地は、バットケースから金属バットを取り出した。
大地の運命は静かに変わり始めた。その惨めな道に光りが射し始めた瞬間であった。
男は、ビニール袋を担ぎ踵を返した。
「ま、待って。オジさーん、弁当食べない?」
大地は、さっきから男の腹がグウグウ鳴るのを聞いていた。
「な、なんや君、食べへんのか?」
「エラーした上に三振までして、また学校で虐められる。食欲なんて湧かないよ」
大地は、俯いた。
「さよか?カーブを見したったさかい、見学料やな、そやそうしとこか」
男は、大地から弁当を受け取ると無心に頬張り出した。
「焼き肉弁当やんか、わいの好物や」
「お茶欲しいな、何や飲みモンないんか」
大地は、水筒の麦茶を差し出した。
「君は、名前なんて言うんや?」
「中川大地」
大地は、ぶっきらぼうに答えた。
「虐められる言うとったけどやな、虐めっ子っていったいなんや?」
男の目が真剣味をおびた。
「朝、校門の所で三、四人で待っててぼくに嫌がらせをするんだ。悪口を言ったりしてさ。帰る時も校門の所にいる。学校に行くのが嫌になる」
「コウモンの所に屯ってる?まるでギョウ虫みたいな奴らやで」
男は冗談のつもりで言ったのだが、大地の表情はさらに強ばった。とても笑える気持ちには、なれなかった。
「大地君、キミヒット打ちたいんか?」
大地は、黙って頷いた。
「教えたったる。ただし条件があるんや」
「な、何?」
大地の目が、久しぶりに輝いた。
「わいが大地君に教えるんやさかいに、わいが
師匠で、大地君は弟子や、ええか?」
大地は、素直に頷いた。
「今日から、わいを師匠と呼び!」
「分かりました、師匠」
男は、深く頷いた。
「ほな、バット振ってみいや、見たるさかい」
男の口調が熱を帯びてきた。
大地は、バットケースから金属バットを取り出した。
大地の運命は静かに変わり始めた。その惨めな道に光りが射し始めた瞬間であった。
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