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花見の苦しみ
しおりを挟む私は、都内の零細企業に入社した新卒の新米社員である。
簡単な社内研修を終えて、初めて仰せつかった仕事は、「おい、新米!今度の土曜日に○野公園で花見をするから、場所を取っといてくれ!」
有給でしょうか、ではないですよね。はい、分かりました。では、何時? 五時半⁇
「馬鹿野郎!早く行かねーとダメなんだよ」
先輩は、○士館大学柔道部出身の完全体育系。ウムを言わさない縦社会。
イヤだな~、この日本特有の縦社会。
アメリカがよかった。花見がないし。
どーして休みの日に有給もつかず、早朝からノルマを果たさなければならないのか。
私の人権は?
考えても無駄なのである。
小さな封建社会に人権はゆらぐ。
私は、下戸である。アルコールは全くダメで、あの穀物が発酵した匂いを嗅ぐと、私の血液は逆流し、胃は微振動して胃酸がアップしてくるのである。
「俺の酒が飲めねーのか?」
もしあの悪魔の液体を体内に流し込んだら最後、前後不覚となり醜態を晒して、翌日は周囲の人たちから叱責非難され、女子の失笑をかうのである。
私には、こういった儀式のどこが楽しいのかが、さっぱり分からない。
さらに今年は、場所取りなるノルマまでついて、これが難行苦行でなくて何だろうか。
もし花見か、千日回峰行か、と聞かれたら私は迷うことなく後者を選択するだろう。
理由は、呑まなくていいから。
ブッシュマンなど未開の人種は、成人になるために何らかの試練をくぐらねばならないという。
だとしたら、これは会社が用意した試練なのか。
会社が用意した新卒用のバンジージャンプなのか。
そう理解するしかなかろう。
応援ありがとうございます!
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